バーチャルウォーター(仮想水)

バーチャルウォーターを計算しよう!身近なものの仮想水を量るには?

私たちが日々使う食材の中には、輸入によって得ているものも含まれています。日本は食料自給率が低いため、食生活の多くを輸入によって支えられています。
この輸入食料品の中には、私たちが目にできない多くの「水」も一緒に輸入し、消費しています。

この記事では、バーチャルウォーターの計算方法や身近なものの仮想水を量る方法について説明します。

バーチャルウォーターから分かる水問題とは?

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バーチャルウォーター(仮想水)とは


そもそもバーチャルウォーター(仮想水)とは何なのか、そこから説明します。

農作物や畜産物などを育てる際、必ず水を使用します。そのため製品として私たちの元に届くまでに、目には見えない大量の水が消費されていることになります。
それらを国内ではなく他国から輸入すれば、その国や地域で消費されるはずだった水を、私たちが間接的に使用することになります。

このように輸入食料品について、全てを国内で生産したと仮定したとき、必要な水量を算定したものがバーチャルウォーターであり、その算定された分だけ私たちは無意識に消費していることになります。
目には見えない潜在的な水であることからバーチャル(仮想)の水ということです。
日本では多くのバーチャルウォーターを使用しています。日本の水の消費は、国内で賄っている分が全体の23%程度であり、他77%は輸入によるものです。しかもそれは飲料水として輸入しているわけではなく、食料品に含まれるバーチャルウォーターとして得られているものです。

日本は現状水不足になることはないため、充分に使用できる水があります。
しかし食料自給率は低いため、海外から様々な食料品を輸入することになり、結果としバーチャルウォーターに頼る状態になっています。
これにより、日本は世界でも有数のバーチャルウォーター輸入国として知られており、先進国の中でも上位に入ります。
またバーチャルウォーターに依存していることから、国内の水の消費を抑えているため、本来使うはずだった量の水を「節約」している国であり、日本はその節約量が多い国の中にも含まれています。

(出典:独立行政法人国際協力機構JICA「4.仮想水でみる途上国依存」)

バーチャルウォーターの問題

バーチャルウォーターの問題は深刻ではあるものの、すぐさま解決できない問題でもあります。
水は私たちの生活に欠かせないものであり、あらゆる場所で使用されます。地球上にある水のほとんどは循環しており、人間はその中の一部を利用しているため、本来であれば充分な水があるはずですが、そう上手くもいきません。

河川や湖沼などは満遍なくあるわけではないため、人が住んでいる地域によっては水源が近くにないという状況もあります。
そのような地理的偏在はインフラの整備などにより改善できます。現に日本は上下水道を整備することで水が得られない地域はほとんどありません。
しかし経済的理由からインフラ整備が満足にできていない国もあります。特に開発途上国や貧困国などは顕著です。

このような富による偏在に加えて、近年は気候変動による干ばつや洪水なども影響しており、水不足や、それによる水ストレスに曝されている国や地域が増加しています。
日本のように水ストレスから生活を守る余裕がある国だけではないため、水問題に影響を受けている国もあります。

一方で、バーチャルウォーターは輸入食料品に含まれている潜在的な水の総量であることは触れましたが、開発途上国や貧困国の中には農作物や畜産物により経済が回っている国もあります。
貿易の主輸出品目もそれらに偏ることになりますが、それらを水の乏しい国から水に余裕がある国が買い取れば、その分だけ水不足の国の貴重な水を生産国外で消費することになります。

有限である水を使用することで土地の水は枯渇し、本当なら使えるはずだった水を得られず脱水症状などで命を落とす人も出てきます。
また土地の水分が失われることで、砂漠化などが進行してしまい、状況はより悪化する可能性もあります。

それならば輸入をしなければ良い、というわけでもありません。水不足や水問題を抱える国の多くは経済的にも乏しく、主輸出品目が食料品である国もあると言いましたが、もしそれらの輸入を止めてしまえば、今度は生産国の経済的に立ち行かなくなってしまいます。
つまりただ単に海外の食料品を輸入しなければ、バーチャルウォーターの問題は解決できるというわけではありません。

  • バーチャルウォーターとは、全てを国内で生産したと仮定したとき、必要な水量を算定したもの
  • 国内で賄っているバーチャルウォーターは全体の23%程度であり、他77%は輸入によるもの
  • 開発途上国や貧困国では、経済的理由から上下水道などのインフラ整備が満足にできていない国もある


(出典:ウォーターエイド「世界水の日報告書 2019」)
(出典:国際開発センター「目標6 安全な水とトイレを世界中に」,2018)

バーチャルウォーターを計算してみよう

私たちの身近な食品には多くのバーチャルウォーターが含まれています。
例えば日本では主食となっているお米ですが、食卓で出すときには1合や3合など測って炊飯を行います。

仮に1合のお米を生産したとして、収穫するまでに消費される水は555リットルとされています。もし3合炊くのであれば、消費される水は単純に3倍ということになります。
1号は150gなので、150gのお米を作るのに555リットルが必要ということです。

同じ穀物ではそばは1食あたり145g必要であり、この生産にはバーチャルウォーターが667リットル必要になります。
一方で生うどんは1食100gあたり160リットルなので、お米やそばと比べても少ない水で済みます。元々原料となる小麦は水はけの良い土地で育つため、潜在的な水も少ない傾向にあります。

穀物だけでなく果実や野菜とも比べてみると水分量が多い夏の風物詩であるスイカは、1個2750gを基準として、501リットルの水が必要とされます。
これだけを見ると多くの水分が必要ですが、お米やそば同様に150g程度を基準とすれば、27リットル程度になるため、同質量であれば実はそれほど多くありません。
ただしスイカは150gで生産できるわけではないので、1個作るのに501リットルのバーチャルウォーターが含まれていると考えるようにしましょう。

このようにバーチャルウォーターを計算する際には、それぞれの品目の基準となる量(単位)があるので、それを元に計算する必要があります。
またバーチャルウォーターは定義として、輸入食料品を消費国が国内で生産した場合、必要となる水の推定を算出したものであり、国ごとに異なります。
上記の数値はあくまで日本国内でのバーチャルウォーターの基準になりますので注意してください。
こちらは環境省が発表している「バーチャルウォーター(VW)量 一覧表」から確認することができます。
あるいは環境省で「バーチャルウォーター量自動計算」が公開されていますので、下記の公式サイト上でそちらを利用することもできます。

自分でバーチャルウォーターを計算する方法

バーチャルウォーターを自分で計算するためには、電卓を用いることをおすすめしますが、バーチャルウォーター基準値(VW基準値)が分かれば、算出は可能です。
こちらもバーチャルウォーター量一覧表、あるいはバーチャルウォーター量自動計算で確認できます。
下記はバーチャルウォーターの量を求める計算式です。

VW基準値(㎥/t)×使用量(t)×1,000(l/㎥)=バーチャルウォーターの量(l)

バーチャルウォーターの基準値の単位は㎥/tです。
つまり食料品1t(トン)あたり何㎥(立法メートル)の体積の水を消費しているか、を表しています。水の量が体積を用いており、1㎥を1,000l(リットル)で換算します。

例えば環境省が発表するVW基準値によれば、牛肉は20,600㎥/tです。これを基準に2kg(=0.002t)の牛肉を買ったとすると以下の計算が成り立ちます。

20,600(㎥/t)×0.002(t)×1,000(l/㎥)=41,200(l)

結果、41,200l(リットル)のバーチャルウォーターを含むことになります。計算する際の使用量は自分で用意する必要がありますが、後の数値は固定です。

VW基準値は下記の公式サイト一覧表などから食材を探し、用いてください。
また使用量はtを基準とするため、もしgやkgならばtに直す必要があります。

  • 1g=0.000001t
  • 1kg=0.001t

こちらを基準に単位変換を行って計算に用いてください。

  • 仮に1合のお米を生産したとして、収穫するまでに消費される水は555リットルとされている
  • バーチャルウォーターは定義として、輸入食料品を消費国が国内で生産した場合、必要となる水の推定を算出したものであり、国ごとに異なります。
  • バーチャルウォーターの基準値の単位は㎥/t(食料品1t(トン)あたり何㎥(立法メートル)の体積の水を消費しているか)

(出典:環境省「仮想水計算機」)
(出典:環境省「バーチャルウォーター(VW)量 一覧表」)

バーチャルウォーターに似た概念「ウォーターフットプリント」


バーチャルウォーターは輸入食料品を全て国内で生産したと仮定して算出されるものです。
しかし、それ以外にも生産された原材料を加工した製品も輸入されます。このように原材料の栽培や生産だけでなく、製造や加工、輸送、流通、消費、さらに廃棄やリサイクルまでのライフサイクル全体で定量的に評価し、環境への影響などを評価するために用いられるのがウォーターフットプリントです。
バーチャルウォーターに似ていますが、生産だけでなく手元に届き、さらに廃棄されるまでに使用される全ての水を定量化したものです。
ウォーターフットプリントにはバーチャルウォーターも評価基準の1つとして用いられます。
バーチャルウォーターの問題を理解する上では、ウォーターフットプリントについても触れておく必要があります。

ウォーターフットプリントとは

  • 原材料の栽培や生産だけでなく、製造や加工、輸送、流通、消費、さらに廃棄やリサイクルまでのライフサイクル全体で定量的に評価し、環境への影響などを評価するために用いられるもの
  • 生産だけでなく手元に届き、さらに廃棄されるまでに使用される全ての水を定量化したもの
  • バーチャルウォーターも評価基準の1つ

(出典:環境省「ウォーターフットプリント算出事例集」,2014)

バーチャルウォーターを計算して問題を身近に感じよう


バーチャルウォーターは目に見えない潜在的な水になります。調理などに水を使わなかったとしても、食材を作るために多くの水が消費されています。
それは国内ならともかく、多くを輸入品に頼っている日本にとっては、海外の水を日本にいながら消費していることになります。
バーチャルウォーターの問題は、その量が目に見えないことによって実感できないことも危機感の欠如につながっています。

食材から消費した水分を取り出すことはできませんが、計算することで私たちがどれだけのバーチャルウォーターの恩恵を受けているか数値化することができます。
バーチャルウォーターの問題を身近に感じるため、そして深刻であることを知るためにも、まず日常的に使う食材などのバーチャルウォーターを算出してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人
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