「テロリズム」と聞いて何を思い浮かべますか?
日本から離れた遠い国で起こる、自分とはあまり関係のない出来事だと感じる方が多いかもしれません。
主に警察や自衛隊などの公的な機関がテロ対策を担っていますが、私たち一人ひとりがテロと無関係とは言いきれないのです。
テロを未然に防ぎ、自分や大切な人々の安全を確保するためには、官民一体となったテロ対策が必要です。
本記事では、テロ対策に必要な行動へ、他人事ではなく自分事として積極的に参加していただくために、SDGsでも撲滅を目指すテロリズムについて解説します。
持続可能な開発目標・SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」のターゲットや現状は?
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SDGsとは?
SDGs(Sustainable Development Goals)とは「持続可能な開発目標」のことです。SDGsは2015年9月の国連サミットにて全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に示された国際的な目標です。
このアジェンダでは世界中の「誰一人取り残さない」持続可能で包摂性のある世界を実現するために、SDGsとして17の目標(ゴール)を設定し、目標達成に向けて2030年までに各国が協調して行動することを求めています。
SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」とは?
SDGsの目標16がこの記事のテーマである「テロリズム」に関するものです。目標16で目指すことは「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」とされています。
この目標は12のターゲットから構成されています。ターゲットとは目標をブレイクダウンした関連分野における「個別の目指す状況」であり、個々のターゲットを達成することで上段の目標が達成されるという構造になっています。
そして、目標16の11番目のターゲット(16.a)が「テロリズム」に関するもので、具体的には「特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。」とされています。
(出典:外務省「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」)
(出典:総務省「SDGsの指標」)
テロリズムとは?
「テロリズム」という言葉はよく耳にしますが、国際的にコンセンサスを得た唯一の定義はありません。
第193回国会における質問への答弁によると、「『テロリズム』とは、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受入れ等を強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいう」とされています。
最近の国際テロ情勢
公安調査庁によると、2020年3月に世界では4件のテロ等が発生しており、そのうち3件はISIL(Islamic State in Iraq and the Levant:イラク・レバントのイスラム国)が犯行声明を発出しています。
ISILは2015年にシリアで邦人2人を殺害したとみられる映像をインターネット上で公開したスンニ派過激派組織です。そのルーツは、2001年9月に約3,000人(邦人24人を含む)が死亡した米国同時多発テロ事件を引き起こしたイスラム(スンニ派)過激派組織アルカイダにあり、アルカイダ最高指導者への忠誠を表明して「イラクのアルカイダ聖戦機構」という名称で2004年に設立されたのが始まりです。
2016年以降もISIL関連組織などにより邦人が死亡するテロ事件が起きています。2019年4月21日にはスリランカで起きた連続爆破テロ事件で、邦人を含む257人が死亡し負傷者が500人以上となりました。この事件に対して、ISIL(※1)による犯行声明が出されています。
また、いずれの勢力によるものかは明らかになっていませんが、2019年12月4日にはアフガニスタンにおいて、同国で人道支援に取り組んできたNGO「ペシャワール会」の日本人医師・中村哲氏を含む6人が武装勢力に銃撃されて死亡しています。
このように、日本人とテロは決して無関係ではありません。
※1:出典内ではISILの別称である「IS」と表記
ISILの動向
ISILは、イラクおよびシリアを拠点に活動するスンニ派過激組織です。2014年「カリフ国家」である「イスラム国」の「建国」を表明して以来、2015年までにシリアとイラクの多くの地域を支配しました。その後、2017年末までに両国の全ての支配都市・町を失ったものの、シリア東部やイラク北部などを拠点とし、両国各地でテロを続けています。
同組織はインターネットなどを通じて組織の宣伝や戦闘員の勧誘を行い、イラクおよびシリアの国外から4万人以上にのぼる外国人戦闘員などが両国に移住したとの指摘があります。ISILの勢力が縮小するにつれてイラク、シリアに流入する外国人戦闘員の数は減少しつつあるとみられる一方、こうした戦闘員が戦闘訓練・実戦経験を積んだ後、本国に帰国してテロを実行する懸念があり、彼の地でのテロ活動は対岸の火事では済まされなくなっています。
また、世界の各地で既存のイスラム過激組織などがISILへの忠誠を表明し、中には、「イスラム国の領土」として「州」を称する複数の関連組織が設立される動きがあり、シリアおよびイラク両国外で影響力を拡大させています。
さらに同組織は、米国を中心とした「対ISIL有志連合」を「十字軍連合」と位置付け、日本もその一員と名指ししています。このような前提のもと、有志連合参加国の市民を標的として、観光地や公共交通機関など、不特定多数の人々が集まるソフトターゲットを標的としたテロの実行を指向していることから、我が国・邦人に対する国際テロの脅威は強まっていると言えるでしょう。
アルカイダの動向
アルカイダは、主に欧米諸国およびイスラエルに対するテロを主張するスンニ派過激組織で、アフガニスタンとパキスタンを活動地域としています。同じくスンニ派過激組織であるISILとは対立しており、米国およびその同盟国を主な攻撃対象とする「グローバル・ジハード」を主張しています。
同組織は、米国同時多発テロ事件を主謀した前指導者オサマ・ビン・ラディンをはじめ、多くの幹部が米国の作戦により殺害されるなど弱体化しているとみられますが、現最高指導者アイマン・アル・ザワヒリや将来の最高指導者候補と目されるハムザ・ビン・ラディン(※2)らが声明の発出を継続しており、2018年の声明発出数は、2013年~2017年の5年間で最多となった2017年に並ぶなど、活発な宣伝活動を維持しています。
アルカイダ系国際テロ組織として、イエメンを拠点に活動するアラビア半島のアルカイダ、アルジェリアに拠点をおくイスラム・マグレブ諸国のアルカイダ、ソマリアを拠点とするアル・シャバーブなど複数の組織がテロ活動を継続しています。
※2:前最高指導者オサマ・ビン・ラディンの息子
(出典:衆議院「衆議院議員逢坂誠二君提出テロリズムの定義などに関する質問に対する答弁書」)
(出典:公安調査庁「世界のテロ等発生状況」)
(出典:公安調査庁「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」)
(出典:公安調査庁「アルカイダ」 )
(出典:外務省「テロ・融解情報 スリランカ」)
(出典:外務省「中村哲医師ら6名が犠牲となったアフガニスタンでの銃撃テロ事件について(外務大臣談話)」)
(出典:公安調査庁「最新の国際テロ情勢」)
(出典:防衛省「令和元年版防衛白書」)
国連のテロ対策
テロ行為を防止するための国連の行動は1963年にさかのぼりますが、2001年9月11日にアメリカで起こった同時多発テロ以後、テロ対策に関する各国の国際的な協調行動が活発化しています。
近年では、2016年5月26日~27日に開催された伊勢志摩サミットにおいて、G7リーダーは「テロ及び暴力的過激主義対策に関する行動計画」を作成しました。この計画では、具体的なテロ対策である「関連する国連安全保障理事会決議の履行」「情報共有と協力」「国境警備」「航空保安」「テロ資金対策」および「民間部門との連携」に加え、「暴力的過激主義を防止するための対話を通じた寛容の促進」や「途上国への能力構築支援の重要性」を掲げています。
これに続く2016年10月14日、日本を含む72ヵ国は共同声明「暴力的過激主義防止に関する国連のグローバル・リーダーシップのための原則」を発表しました。この声明では、暴力的過激主義防止に関する加盟国の理解を深めること、暴力的過激主義防止を国連の役割に広く取り入れることなどを国連に対して要請しています。
また、翌年(2017年)イタリアで開催されたタオルミーナ・サミットにおいては、伊勢志摩サミットで発出したG7行動計画の完全な実施に引き続きコミットし、独立声明「テロ及び暴力的過激主義との闘いに関する G7 タオルミーナ声明 」が採択されました。この声明では、「第一に、我々は、テロリストによるインターネットの悪用と闘う。」と主張し、テロ目的のための強力な手段(テロ組織等へのリクルート、暴力へとつながる過激化や扇動の誘発など)ともなりえるインターネットの運用・利用について関連する企業・機関・指導者などとの連携を強化することを重要視しています。
このような経過を背景に、2019年6月28日~29日に開催されたG20大阪サミットでは、「テロ及びテロに通じる暴力的過激主義(VECT)によるインターネットの悪用の防止に関するG20大阪首脳声明」において、「オンラインプラットフォームに対し、テロリストやVECTのコンテンツがインターネット中継され、アップロードされ、又は再アップロードされることを防ぐ取組の野心や速度を高めるよう、強く促す。」など各種の取組が発表されています。
国際的なテロ対策はテロ活動等を防止するために、時代の変化に合わせて、各国が協働するとともに民間企業などとも連携しながら進められています。
(出典:国際連合広報センター「国際テロリズム」)
(出典:外務省「テロ及び暴力的過激主義対策に関する G7 行動計画(仮訳)」)
(出典:外務省「第8回グローバル・テロ対策フォーラム(GCTF)閣僚級会合における河野外務大臣ステートメント」)
(出典:外務省「共同声明「暴力的過激主義防止に関する国連のグローバル・リーダーシップのための原則」の発表」)
(出典:外務省「テロ及び暴力的過激主義との闘いに関する G7 タオルミーナ声明 (仮訳) 」)
(出典:G20大阪サミット2019「テロ及びテロに通じる暴力的過激主義(VECT)によるインターネットの悪用の防止に関するG20大阪首脳声明」)
日本のテロ対策
日本では、諸外国から大勢の選手や観戦者が来日するであろう2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、テロ対策の強化も重要なテーマとなってきました。
新型コロナウイルス感染症の拡大・流行に伴い、本大会は2021年へと延期(※3)されましたが、それによってテロの脅威が減少したわけではありません。日本を含む国際社会が、国境を超えて引き起こされるテロとの闘いは続いています。
※3:東京2020大会の新開催日程は、オリンピック競技大会が2021年7月23日から8月8日まで、パラリンピック競技大会が2021年8月24日から9月5日までとなった
警察におけるテロ対策
警察庁によると、「テロはその発生を許せば多くの犠牲を生む」ため、「テロ対策の要諦(てい)はその未然防止」にあり、防ぎきれず「テロが発生した場合には、被害を最小限に食い止め、犯人を早期に制圧・検挙することが必要」としています。警察では、「未然防止」および「事態対処」の両側面からテロ対策を推進中です。
特に「未然防止」の観点から、警察は首相官邸、原子力関連施設等の重要施設の「警戒警備体制」を強化し、テロ関連情報の収集・分析を行うために各国治安情報機関等との連携を一層緊密にしています。
また、テロリスト等の入国を防ぐために、事前旅客情報システム(APIS)(※4)、外国人個人識別情報認証システム(BICS)(※5)、乗客予約記録(PNR)(※6)等を活用した水際対策を推進しています。
※4:Advance Passenger Information Systemの略。航空機で来日する旅客及び乗員に関する情報と関係省庁が保有する要注意人物等に係る情報を入国前に照合するシステム
※5:Biometrics Immigration Identification & Clearance Systemの略。来日する外国人に入国審査の際に提供させた個人識別情報と関係省庁が保有する要注意人物等に係る情報を照合するシステム
※6:Passenger Name Recordの略。航空券を利用して入国する旅客の予約情報
官民一体となったテロ対策
「未然防止」は警察の取組だけでは達成できないため、次のような「官民一体となったテロ対策」が推進されています。
テロ対策パートナーシップ
テロを許さない社会を作るために、民間の各機関(電力、ガス、情報通信、鉄道等のインフラ事業者、大規模集客施設を営む事業者等)とともに「テロに対する危機意識の共有」や「大規模テロ発生時における協働対処体制の整備」等が行われています。
爆発物の原料となり得る化学物質の販売事業者等に対する管理者対策等の推進
テロリストが武器を入手できないようにするため、過去に国内外の事案で爆発物の原料に使用されたことがある化学物質(※7)を指定し、これら物質の販売事業者に対し、販売時の本人確認を徹底するよう指示したり、不審な購入者への対処要領を示したりしています。
※7:硫酸、塩酸、過酸化水素、硝酸、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、尿素、硝酸アンモニウム、アセトン、ヘキサミン及び硝酸カリウムの11品目。
テロ資金対策
テロには資金が必要ですから、「未然防止」のために、テロリストの資金源を断つことが重要です。日本ではテロ資金提供処罰法(※8)に基づき、テロリストに対するテロ資金の提供等を規制しています。また、2020(令和2)年4月1日現在、安保理制裁委員会により指定されたISILおよびアルカイダ関係者等394個人および94団体、および、その他のテロリスト等7個人および26団体の合計401個人および120団体に対し、外為法(※9)に基づく資産凍結等の措置を実施しています。
※8:公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律
※9:外国為替及び外国貿易法
京都コングレス
新型コロナウイルス感染症の世界的な感染状況等に鑑み、開催が延期されましたが、今年2020年4月20日から京都で「第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)」が開催される予定でした(※10)。同会議は、5年に1度開催される犯罪防止・刑事司法分野で国連最大のもので、前回の2017年はカタールのドーハで開催されました。
京都コングレスでは「2030アジェンダの達成に向けた犯罪防止、刑事司法及び法の支配の推進」を全体テーマに掲げ、国際社会が直面する組織犯罪、腐敗やテロなどの脅威に効果的に対処するための指針を打ち出していく予定です。
前述のとおり、目標16では「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」ことを目指しています。
我が国の法務省は、法の支配等の普遍的価値を国内外に行き渡らせようとする取組である「司法外交(Justice Affairs Diplomacy)」を推進しており、SDGs達成に向けて、京都コングレスの開催を通じた世界への貢献が期待されます。
※10:2020年4月8日現在、新開催日程は未定
(出典:外務省「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」)
(出典:東京2020オリンピック公式ウェブサイト「東京2020大会の新開催日程を発表」)
(出典:警察庁「令和元年版 警察白書」)
(出典:外務省「テロ資金対策」)
(出典:京都コングレス 第14回 国連犯罪防止刑事司法会議「第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)について」)
(出典:法務省「ICD NEWS No.77」)
SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」達成のためにもテロ対策は重要
SDGs目標16のターゲットの一つである16.aでは「暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築」が求められています。
この条件を満たし、SDGs目標16を達成するためには、各国が協調・協働するとともに関係機関や民間企業などとも連携してテロ対策を進めることが求められます。
ここまでに述べたようにテロでは多くの日本人も被害にあっています。また、我が国の市民もテロの標的とされており、このことは我々の一人ひとりがテロ被害の対象となりえることを意味します。
自分だけではなく、身のまわりの大切な人々の安全を守るためにも、テロリズムについて理解を深め、テロ対策に必要な行動へ積極的に参加していくことが必要でしょう。
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