平和と公正をすべての人に

SDGsにも関連するシリア内戦について理解しよう

2015年に新たに国連サミットで採択されたSDGsは、企業の間でも大きな注目を集めています。
しかし、実際にはSDGsがどのような効果を生むのかを知らない方も多いかもしれません。

この記事では、SDGsにおける目標16「平和と公正をすべての人に」の内容と、シリア内戦とSDGsの関連性、シリア内戦の概要などについて解説します。

持続可能な開発目標・SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」のターゲットや現状は?

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SDGsとは


SDGsとは、「持続可能な開発目標」と呼ばれており、2001年に策定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継として採択されました。

2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標であり、17のゴール・169のターゲットから構成されており、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。

MDGsと大きく違う点は、MDGsが発展途上国にのみ限定されていた目標であったのに対して、SDGsは先進国自身も一緒になって取り組むユニバーサル(普遍的)なものとして定義されているのです。

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」とは

SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」は、「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」と定義されています。

主に「人権の尊重」「法の支配」「グッド・ガバナンス」及び、透明かつ効果的で責任ある制度に基づく平和で包括的な社会を目指しています。

  • SDGsとは、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標
  • SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」は、「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」と定義されている
  • (出典:外務省 JAPAN SDGs Action Platform 「SDGsとは?」)
    (出典:農林水産省「SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット」

    SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」を達成するために


    SDGsで掲げられる目標16は、世界で起きている戦争や紛争の解決が大きな割合を占めています
    しかし、戦争や紛争などが起きている背景は国の政治、貧困など数多くの要素が複雑に絡んでいます。

    一言に紛争といっても、実際には根深い問題として世界の大きな問題となっているのです。
    世界で起きている紛争の中で、大きなものとしてシリア内戦があります。

    SDGs目標16とシリア内戦

    具体的にSDGsの目標16では、「平和」「安定」「人権」「法の支配」などがメイントピックとして定義されています。
    世界の国々を見ると、紛争と暴力などの悪循環に陥っている地域もあり、国の開発に破壊的な影響を及ぼします。
    また、法が紛争によって働かなくなった場合は、性暴力、犯罪、搾取、拷問も蔓延しているため、リスクに曝された人々を保護する措置をとらなければいけません。

    SDGsはこのような問題を明文化することで、世界全体がこの問題に取り組んでいく流れを作るきっかけになるのです。

    この観点から、SDGsの目標16の達成には、シリア内戦の解決が大きく貢献するのです。

    SDGsのさまざまな目標がシリア内戦の解決から始まる

    SDGsの目標16は12のターゲットで構成されています。
    その中でも紛争に関連が深いものについて紹介します。

    ターゲット
    16.1 あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
    16.2 子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
    16.4 2030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
    16.a 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。

    シリア内戦が解決に向かうことで、このような目標16で掲げられているいくつかのターゲットを達成するためのスタート地点に立つことが可能となります。

    また、シリアに対する多くの援助・支援も、度重なる紛争などによって支援体制が簡単に崩れてしまう可能性もゼロではありません。

    まずは、内戦・紛争を止めることで様々な支援が行き届きやすくなるのです。

  • SDGsで掲げられる目標16は、世界で起きている戦争や紛争の解決が大きな割合を占めている
  • SDGsの目標16では、「平和」「安定」「人権」「法の支配」などがメイントピックとして定義されている
  • 様々な支援が行き届きやすくなる
  • (出典:国連開発計画(UNDP) 駐日代表事務所 「16.平和と公正をすべての人に」)
    (出典:農林水産省 「SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット」

    シリア内戦とは?


    シリア内戦は、アラブの春をきっかけに始まったと言われています。

    シリアでは40年に渡るアサド大統領の独裁政権の下、国民が社会経済に対して長年不満を抱いていました。

    2011年、アラブの春をきっかけにシリアで始まった抗議運動の中心となったのが、政権から虐げられていたスンニ派の人々です。

    スンニ派の人々を中心としてシリア全土に抗議運動が広がり、スンニ派を主とする反政府軍とシーア派を主とするアサド政権政府軍との対立から内戦へと発展しました。

    アラブの春とは?

    2010年12月、チュニジアで起きたジャスミン革命という民主化運動が起こり、それが中東諸国へ波及し、やがてアラブ諸国へも広がることで、2011年に「アラブの春」へと発展しました。

    民主化運動から内戦へ

    最初は民主化を求めるデモ運動だったにも関わらず内戦に至った原因は、スンニ派を中心とする反政府軍が周辺国から支援を受け武装蜂起し、自由シリア軍を結成したこととされています。

    シリア内戦の変遷

    自由シリア軍が拡大する中、意見の対立からヌスラ戦線という過激派が結成され、アサド政権と政府軍に壊滅的な打撃を与えました。

    アサド政権がロシアやイランのサポートを受けて反撃し、政府軍側のシーア派過激組織ヒズボラが参戦することで内戦はますます激しくなりました。

    さらにイスラム国の介入で内戦は泥沼化し、国民は大量の難民となってしまったのです。

    やがてイスラム国は欧米諸国やロシアを敵に回したことで、集中的に攻撃を受け崩壊します。

    イスラム国の崩壊により、政府軍を支持するロシアと反政府軍を支持するアメリカ軍との対立へと変わっていきました。

    2017年、アサド政権がサリンなどの化学兵器を爆撃に使ったことから、アメリカ軍がシリアの空軍基地を空爆するもののアサド政権への攻撃は限定的となります。

    2018年、トランプ大統領はイスラム国の掃討が完了したとしてアメリカ軍を撤退させ、シリアへの直接的な介入は終わりました。しかし、反政府軍への支援は続いているため代理戦争状態が続いています。

    宗教的、政治的思惑が複雑に絡み合う中、クルド人勢力やトルコ支援勢力も加わり、シリアでは現在も内戦は続いているのです。

  • シリア内戦は、アラブの春をきっかけに始まったと言われている
  • スンニ派を中心とする反政府軍が周辺国から支援を受け武装蜂起し、自由シリア軍を結成したことが内戦に至った原因
  • 宗教的、政治的思惑が複雑に絡み合う中、クルド人勢力やトルコ支援勢力も加わり、シリアでは現在も内戦は続いている

  • (出典:法務省「国別情報及びガイダンス シリア: シリア内戦」,2016)
    (出典:公益財団法人 日本国際問題研究所「シリア内戦の帰趨とイスラエル北辺の安全保障環境」)
    (出典:外務省 わかる!国際情勢「「アラブの春」と中東・北アフリカ情勢」)

    SDGsに関連するシリア内戦の解決に向けて私たちができること

     

    現在は日本でも、様々な支援が各団体で行われています。
    国連UNHCR協会などの機関では、シリアに対する緊急支援活動に対する寄付などを行っています。

    根本的な紛争・内戦の解決はもちろんのこと、最終的には生活に現在困窮している人たちの支援も求められます。
    私たちが直接支援することは難しいですが、このような現状を知り、まずは小さなことから支援を行っていくことが大切です。
    そして、この広がりがSDGs達成につながり、より良い世界へと変わっていくでしょう。

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