私たちは医療や保健、介護などの発達により、長く生きられるようになりました。
しかし生きていれば病気や怪我などに見舞われることもあります。
それによって命を奪われることもあるでしょう。
もちろん全てを回避するのは難しいですが、病気の中には私たちの心がけ次第で発症のリスクを抑えられるものもあります。
SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットとなっている「非感染性疾患」とは世界的に見ても死因率が高い疾患となっており、日本でもその数は多いとされています。
この記事ではその「非感染性疾患」の実態について説明します。
持続可能な開発目標・SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットや現状は?
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SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットを達成するために
日本は長寿の国として知られています。日本の平均寿命、または平均余命は2018年の時点で男性が81.25歳、女性は87.32歳でした。
これは世界でもトップクラスであり、日本の医療や介護など福祉が整備されていることの1つの指標となります。
ちなみに平均寿命、厚生労働省では平均余命とされているデータは出世時の健康余命であり、肉体的・身体的及び社会的に健全な状態で何歳まで生存できると期待されているかを表した年数です。
あくまで指標の1つでしかありませんが、高齢者になっても長く生きられる可能性が、日本の医療制度や介護制度、食事や生活環境によって為されていると言えます。
一方で、世界では医療機関の整備もままならず、医療従事者が絶対的に不足している国や地域もあります。
妊産婦や乳幼児の死亡率、HIVやマラリアなどによる感染症、生活習慣病などの非感染性疾患など様々な要因で命を落とす人が日々存在します。
清潔な環境で、医療が整っており、健康や保健に対しての知識があれば救えた命があるにも関わらず、それらが欠けていたことにより、失われた命です。
このような悲劇をなくし、持続可能な社会を作り上げるため、持続可能な開発目標(SDGs)では目標3の「すべての人に健康と福祉を」を目標に掲げ、ターゲットを定めて、国際的に取り組みを行っています。
予防と治療、教育、予防接種キャンペーン、リプロダクティブ・ヘルス(※)関連のケアやサービスを提供することで死を回避できることから、世界各地でこれらを行えるよう、各国や関連機関、支援団体が協力して取り組みに当たっています。
また、医療を完全に普及させ、全ての人が安全で効果的な医薬品とワクチンを利用できるようにすることを目指しており、ワクチンに関する研究開発への支援、それによる手頃な価格の医薬品の提供も目標達成のために不可欠であり、先進国の様々な研究機関で推進されています。
※リクロダクティブ・ヘルス:性と生殖に関する健康
(出典:国際開発センター「目標3 すべての人に健康と福祉を」,2018)
(出典:厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況」,2018)
(出典:総務省「世界の統計2020」)
世界に蔓延する非感染性疾患(NCDs)の実態
非感染性疾患とは人から人へ伝染することなく、長期間に渡り一般的に緩やかに進行する疾患です。
心臓発作や脳卒中などの循環器疾患やがん、慢性呼吸器疾患、糖尿病、生活習慣病などが挙げられ、NCDs(NonCommunicable Diseases)と呼称されることもあります。
WHOが発表している資料では、世界ではこのNCDsによって年間4,100万人が死亡しています。これは世界全体の全ての死因の71%に当たるとされています。
また毎年30~69歳までの間にNCDsで1500万人が死亡し、そのうちの85%が低中所得国で発生しています。
2000~2015年にかけてHIV/エイズやマラリアなどの感染症の発生件数は世界的に低下しましたが、サブサハラアフリカなどではHIVの感染リスクが高く、集団での感染拡大などが世界各国で懸念されています。
また2015年までの肝炎の感染者は134万人、マラリアの感染者は1,000人あたりで94人という感染率になっています。
こういった感染症との人類との戦いは長きに渡って続けられており、医薬品やワクチン、治療法などが確立され、改善も見られています。
そんな感染症対策が進む一方で、NCDsの死亡率は高い水準で推移しています。同じく2015年で比較すると70歳未満の死亡者数の約56%がNCDsによるものだと推測されています。
NCDsの中でも特に心疾患による死亡は大部分を占めており、年間1790万件にも及んでいます。その後にがんが900万人、呼吸器疾患が390万人、糖尿病が160万人と続いています。
SDGsではこのような状態を懸念し、NCDsによる若年死亡率を予防や治療によって3分の1に減少させることを数値的なターゲットとして定めていますが、2018年時点のデータでは達成には程遠い状況です。
NCDsは喫煙やアルコールの摂取、健康的な食事や運動の不足によって起こっているため、目標達成のためには人々の意識の変容が必要な状況です。
日本における悲感染性疾患(NCDs)の実態
日本でもNCDsによる死亡率は高いとされています。
2017年のデータによれば、死亡原因として最も高いのはがんの27.9%であり、その後を心疾患の15.3%、脳血管疾患の8.2%が続きます。
上位3つの死因がNCDsであり、心疾患と脳血管疾患は循環器疾患であることから、23.5%がこれに当たることが分かります。
循環器疾患だけで言えば、がんを凌ぐ死亡率であることも伺えますし、医療や保健、衛生が整った日本においては感染症疾患よりもNCDsの方が脅威であり、死亡率が高いということになります。
また日本で介護が必要になった主な原因のうち脳血管疾患が16.6%、心疾患が4.6%でした。個別に見れば認知症が18.0%でこれらより高いのですが、循環器疾患としてまとめると21.2%を占め、主な原因の首位となります。
日本の医療費の構成割合においても、循環器疾患が19.7%で1位、がんが14.1%で2位となっており、日本における医療や介護全体において、NCDsが大きな割合を占めていることが分かります。
(出典:厚生労働省「非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方について」,2019)
(出典:厚生労働省「循環器病の診療実態の把握に関する現状と課題」,2017)
(出典:日本WHO協会「WHOファクトシート(日本語版)」,2018)
非感染性疾患(NCDs)による死亡率を抑えるために必要な取り組みや目標とは
NCDsの主な原因は喫煙やアルコールの摂取、不健康な食事や運動不足が原因なため、これらを改善する対策が必要となります。
例えば不健康な食事や運動不足であれば、自治体と地域のフィットネスクラブが協力し、健康増進プログラムを実施するといった取り組みが始められています。
また、喫煙に関しては医療機関による禁煙プログラムの提供によって、喫煙を止める働きかけなどが全国的に、そして世界でも広がっています。
さらにWHOの「NCDs Global Action Plan」(※)では、アルコール分野において、有害なアルコールの使用を10%削減することを目標として取り組みが行われています。
特にアルコールは循環器疾患や糖尿病のリスクを高めることから、15歳以上の人口あたりのアルコール消費量や、青少年及び成人における有病率や死亡率を指標として、削減目標の達成に向けた対策が実施されています。
※NCDs Global Action Plan:
NCDsの予防とコントロールのためにWHOが加盟各国に示したロードマップで、政策の選択肢を示したもの
(出典:国際開発センター「目標3 すべての人に健康と福祉を」,2018)
(出典:厚生労働省「「WHO NCDs Global Action Planについて」」)
非感染性疾患を抑えるために、取り組みや目標を意識して生活しよう
NCDsは私たちの生活の変化や、裕福になったことによる習慣の変化がもたらした現代病とも言える病気です。
NCDsの発生は先進国で特に顕著であり、日本をはじめとして、世界中で問題となっています。
そしてその原因が生活の中に潜んでいることから、NCDsの発症を抑える鍵は私たち自身の生活にあると言えるでしょう。
医療や保健に頼るのも確かに1つですが、不健康な食事や運動不足は私たちの意識次第で改善することができます。
そういう意味では糖尿病の一部や生活習慣病は私たちが気を付けていけば防げる疾患です。循環器疾患も、健康的な生活を行えば回避できる可能性がある疾患です。
今一度自分の生活を見直し、NCDsを発症を回避できる方法を一人ひとりが実践していくことで、SDGsの目標達成に大きく近づくことができます。
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