妊産婦の死亡率は高所得国と開発途上国では大きな差ができています。
ではどうしてそのような差ができてしまうのでしょうか。
ここでは妊産婦の死亡率に関する現状や解決していくための取り組みについて紹介します。
持続可能な開発目標・SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットや現状は?
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年間30万人以上の妊産婦が死亡
SDGs(持続可能な開発目標)のターゲットの中には、妊産婦の死亡率(MMR)の引き下げというものがあります。
これはすべての国で2030年までに出生10万人に対して70人以下にまで引き下げるというもので、それぞれの国はこの目標に向かって女性に対する保険や社会環境づくりを行っています。
MDGs(国連ミレニアム開発目標)の成果
SDGsの前身であったMDGs(国連ミレニアム開発目標)では、1990年の時点で10万人に対して380人であった死亡者数を2015年までに95人まで引き下げるという目標がありました。
しかし2013年の時点で10万人に対して210人の死亡者数と、45%の低下を見せたものの達成目標としてはまだまだ足りていないという実状です。
この妊産婦の死亡率は世界の様々な課題のなかでも高所得国と低所得国の格差が大きい課題とされています。
低所得国が抱える現状と課題
開発途上地域では出産に必要な安全で衛生的な設備がまだまだ不足しており、出産時に熟練した医療専門家が立ち会っている数値も低くなっています。
1990年の時点で56%しかなかったこの数値は2012年には68%にまで上昇したものの、それでも2014年時点では約4,000万人が医療専門家の立ち会いなしで出産しています。
そのうちの8割ほどは村落部、過疎地などとなっており都市部よりもはるかに条件は悪くなっていることがわかります。
目標を達成していくためにはこういった地域での支援、開発が急務とされています。
2015年に発表された報告書では、妊産婦死亡者数約30万人のうち約9割をサハラ以南のアフリカ地域と南アジア地域が占めており、その比率は3:1となっています。
アフリカのナイジェリアやインドは総人口が多いだけにその割合も大きくなっており、この2ヶ国だけで死亡者数全体のうちの34%を占めるほどです。
しかし、こういった国や地域では長期的に支援や開発を行っていくための資金や人材が不足しており、健康、保健、福祉サービスがなかなか行きわたらずに定着もしないという問題があり、できるだけ早い対策が望まれています。
(出典:日本ユニセフ 公式サイト)
(出典:国連人口基金東京事務所公式サイト)
妊産婦が命を落としてしまう原因は?
こういった地域において妊産婦が命を落としてしまうことにはいくつかの理由や原因があります。
まず相対的に見て、これらの国や地域では女性の社会的地位や文化的地位が低いという特徴があります。
そのために女性の健康や保健が軽く扱われているのです。
貧困
また、根本的な貧困問題もあります。
死亡率が高くなっている地域、特に都市部から離れた過疎地や村落地では貧困に苦しんでいる地域が多くなっています。
こういった地域では安定して栄養価の高い食べ物を得ることができず、栄養不足の状態に陥っていることも少なくありません。
妊産婦は多くの栄養素を必要としているのですが、それが十分に足りていないために命を落としてしまうことにつながっています。
交通アクセスの悪さ
また、もし食べ物が手に入る機会があったとしても、数が少ないこと、ここまでの輸送費や途中マージンの問題などが合わさって非常に高額になるという問題もあります。
貧困地域ではなおさら、こういった状況では食べ物を得ることはできなくなってしまっているのです。
適正価格で食べ物を得るためには安定して食料が生産されることの他にその地域までの交通アクセスなども関係しています。
道路などの交通アクセスが整備されていない場所へは移動手段、輸送手段がかなり限定されてしまうために時間や手間が多くかかります。
支援物資を運ぶ、支援人員が移動するにあたっても交通インフラの整備が重要になってきます。
ただ、これは大規模な事業になるために政府や大企業の支援がなければ実現は難しくなっており、すぐに解決されない課題でもあります。
医療施設・スタッフの不足
そして医療設備や医療スタッフが不足している問題もあります。
安全で衛生的な医療設備が備えられていれば妊産婦の死亡率を低下させることが期待できますが、費用や資材の問題からなかなか整備がされていません。
また、医療の専門家がそういった村落に常駐することも難しくなっているのが現状です。
紛争
妊産婦の死亡率が高い地域では戦争や紛争が起きたりして治安が悪いということがあります。
戦争や紛争が起こると住居や田畑などがすべて失われてしまい、避難したりしなければならなくなります。
避難キャンプなどに行く場合もありますが、そういった場所では食料や衛生用品なども十分にはなく、衛生環境が悪いところも多くあります。
こういった原因や理由が重なって妊産婦が命を落としてしまっているのです。
(出典:日本ユニセフ 公式サイト)
SDGsで目指すべきラインは?
妊産婦の死亡率は少しずつ減少傾向にあるものの、2017年時点でも全世界で30万人以上もの妊産婦が亡くなっています。
SDGsの目標3の指標の中には妊産婦の死亡率を下げるという指標が含まれています。
すべての国で2030年までに出生10万人に対して70人以下にまで低下させるという数値ですが、現在のところ達成は難しいペースとなっています。
すぐに達成できない理由の一つに国や地域によっての格差が激しいということがあります。
例えば日本とカンボジアを比べると、カンボジアの妊産婦の死亡率は日本の34倍にものぼります。
また、早い年齢(思春期出産)での出産はそれだけ母体に与える影響も大きくなるのですが、この率が世界でもっとも高い地域がサハラ以南のアフリカです。
しかしそれでも現在行われている取り組みによって少しずつは成果が出ています。
サハラ以南のアフリカの妊産婦の死亡率はここ15年ほどの間に35%、5歳未満児の死亡率は50%が低下しました。
思春期出産率も2000年の時点では1,000人当たりに対して56人でしたが、2018年には44人にまで減少しています。
(出典:国際連合広報センター公式サイト)
1人でも多くの命を救うために必要な支援は?
妊産婦の死亡率を下げるためにも様々な取り組みが行われています。
その中でも力が入れられているのが「出産場所の確保」です。
サハラ以南のアフリカや南アジアの地域では自宅出産をする妊産婦が多くいます。
これらの地域には安全で衛生的な医療設備が整っていなかったり、教育された医療スタッフが不足したりしています。そのため、母親や新生児が感染症にかかるリスクが高まったり、難産や出血が多いといった緊急事態に適切に対応することができず、母子が命を失ってしまうことがあります。
そこで、保健センターのような施設で出産してもらうように人々に促す活動が行われています。衛生管理が行き届き、教育された医療スタッフが配置された施設で、安心して出産してもらうためです。
しかし、医療スタッフを教育するためには時間や手間がかかります。
また、その地域での社会的な慣習なども考慮しなければならず、保健センターまでの交通アクセスの整備も必要になってきます。
それでも地道な活動によって少しずつ成果が出てきている途中段階に差し掛かってきているのが現状です。
サハラ以南のアフリカ、南アジアへの支援が急務
妊産婦の死亡率はサハラ以南のアフリカと南アジアで特に高くなっています。
現在も様々な支援は行われていますが、まだまだ足りていません。
そこで、私たちが支援活動を行っている団体に少しずつでも寄付をすることで、活動を支えることができ、妊産婦の命を救うことにつながります。
まずは現状を知り、私たちにできる支援方法を探してみてはいかがでしょうか。
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