先進国や開発途上国関係なく、世界中のすべての人にとって、健康と福祉は重大な課題です。
予防や治療をすれば治る病気にも関わらず、毎年多くの人が命を落としている現状があります。
この記事では世界の健康や福祉現状と課題となっていることを解決していくための方法、取り組みについて紹介します。
持続可能な開発目標・SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットや現状は?
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SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」が目指す世界
2000年にMDGs(ミレニアム開発目標)が制定されてから、世界中で健康と福祉に対する意識が高まりつつあります。
健康と福祉の推進については持続可能な開発目標(SDGs)となる2030アジェンダを構成する17のグローバル目標の3番目に設定されているものです。
すでに「幼児死亡率の引き下げ、妊産婦の健康改善、HIV/エイズ、マラリア、その他の感染病などの疾病対策」については一定の成果をあげており、1990年からの約30年間で予防が可能な病気による子どもの死者は半減しています。
さらに妊産婦の死者も半分近く減少していますし、HIV/エイズの新規感染者数も2000年から2013年にかけて3割減少したほか、620万人以上がマラリアから助かっています。
しかし、これだけの成果を出していても、2017年には5歳になる前に命を落とす子どもは540万人にものぼりました。
はしかや結核などしっかりとした予防がされていれば救うことができた病気で毎日16,000人の子どもが亡くなっています。
また、深刻なのは子どもだけでなく妊産婦も同様で、下記表のように近年は増加の傾向にあることがわかります。
2010年 | 2013年 | 2015年 | |
妊産婦死亡数 | 287,000人 | 289,000人 | 300,000人 |
下記表で示す通り、特にサハラ以南のアフリカ地域は状況が悪く、南アジア地域との2地域に世界妊産婦死亡数の86%が集中しているのです。
サハラ以南のアフリカ | 南アジア | |
妊産婦死亡数 | 201,000人(妊産婦死亡数の66%) | 66,000人(妊産婦死亡数の22%) |
このような状態を改善していくことがSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」の目標です。
そして、感染症や妊娠に関連する病気は、しっかりとした予防・治療を行ったり、子どもたちが教育を受けることで回避することにつながります。
持続可能な開発目標(SDGs)は「エイズ、結核、マラリアその他の感染症の蔓延を2030年までに食い止める」という誓約を出しています。
具体的には医療をすべての地域に普及させ、すべての人が安全で効果的な医薬品とワクチンを利用できるようにするということです。
そのため、適切なワクチンを開発するための支援や適正価格での医薬品の提供などが、目標を達成するために必要となります。
(出典:国際開発センター公式サイト)
世界の健康や福祉の分野の現状
では健康と福祉に関する世界の現状について、特に深刻な問題となっている以下の項目について順番に解説します。
乳幼児の死亡率
前述した通り、2017年には5歳になる前に命を落とす子どもは540万人子どもたちが亡くなっています。
そして、生後1カ月間に亡くなった新生児の数は250万人と半数近くを占めています。
以下の表からわかる通り、2017年に死亡した15歳未満の子どものうち、ほとんどが5歳児になる前になくなっていることがわかります。
2017年に死亡した15歳未満の子ども、推定630万人の内訳 | |
---|---|
5歳児未満 | 530万人 |
5歳以上 | 100万人 |
死亡した子どもの地域での内訳 | |
---|---|
サハラ以南のアフリカの地域 | 50% |
南アジアの地域 | 30% |
ユニセフ統計・調査・政策局長であるローレンス・シャンディ氏は「緊急に行動を起こさなければ、今から2030年までに、その半数を新生児が占める5歳未満児5,600万人が命を落とす」と述べており、早い段階での医薬品や安全に使用できる水、電力、ワクチンなどの普及が必要とされています。
子どもの死亡に関する特徴
世界のすべての地域で子どもにとってもっとも危険と言われている時期は生まれてから最初の一ヶ月です。
2017年では世界中で生後一ヶ月のうちに亡くなった新生児は約250万人にものぼっています。
また、子どもの死亡に関しては以下のような特徴と傾向が見られています。
これらの現状に対して、持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット3.2では「2030年までに新生児の予防可能な死亡を根絶する」としており、様々な取り組みが行われ、下記表のとおり、世界で亡くなる子どもの数は減少傾向にあります。
1990年 | 2017年 | |
5歳児未満 | 1,260万人 | 540万人 |
5歳から14歳 | 170万人 | 100万人以下 |
新生児の死亡に関するデータを持っている195ヵ国のうち、このターゲットの目標数値を2018年度までに達成している国が118ヵ国、2030年までに達成が見込まれる国が26ヵ国となっています。
つまりこのままでは達成できない国が50ヵ国ほどあることが問題となっているのです。
これらの国が2030年までに達成することができればさらに1,000万人の5歳未満で死亡する子どもの命が救われるということになります。
(出典:日本ユニセフ 公式サイト,2018)
妊産婦の死亡率
妊産婦の死亡率は2000年から2015年のうちに37%低下しています。しかしそれでも2015年には世界全体で30万人ほどの女性が妊娠や出産の際の合併症で亡くなっています。
出産時に医療従事者が立ちあっている割合は2000~2005年のうちは62%でしたが、2012~2017年には80%ほどにまで改善しています。
しかしこの確率は発展途上国では非常に低くなっており、発展途上国の村落部などではまだまだ56%程度しかありません。
死亡率が高いサハラ以南アフリカ地域でも妊産婦死亡率は35%低下していることからも取り組みは順調に進行途中ではあるものの、まだまだ完全ではないという状態だと言えます。
(出典:国際連合広報センター公式サイト)
感染症・伝染病
子どもたちが安全で健康に生きていくためには「安全な水」「衛生環境」「安定した栄養の摂取」は欠かせません。
栄養不足で体力が落ち、免疫も弱っている状態のときに汚れた水や不衛生な環境に接すれば感染症や伝染病にかかりやすくなるのです。
そこでSDGsでは安全な水を届けることができるような井戸などの給水設備の設置、衛生的なトイレや下水施設の建設、衛生施設までのアクセスの整備が目標と定められて取り組みが行われています。
同時に予防接種事業にも取り組みが行われています。
予防接種を適切に行うことは、予防可能な要因で命を落としていた子どもたちを確実に救っています。
2017年時点では、ジフテリア、はしか、百日咳、破傷風などの感染症から毎年200万~300万人が予防接種によって助かっているとされています。
現在よりもさらに予防接種が行われていけば、150万人以上の命を新たに救うことができると言われています。
(出典:日本ユニセフ 公式サイト,2017)
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは
ユニバーサル・ヘルス・ガバレッジ(UHC)とは「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ということを意味しており、先述した問題を解決するためにも重要な役割を担います。
持続可能な開発目標(SDGs)においてもUHCを達成することが目標としてあげられ、目標を達成するためには以下の2点が必要とされています。
これらを達成するためには、「物理的アクセス」「経済的アクセス」「社会慣習的アクセス」が改善されていくことが求められています。
2017年12月に公表されたWHOと世界銀行による「2017 UHCグローバルモニタリングレポート」では、全世界の人口の半分(約35億人)が健康を守るための質の高い基礎的サービスにアクセスできていないとされています。
開発途上国や地域では村落部、地方部、僻地居住者、低所得者層だけでなく女性や障碍者、少数民族などは適切な保険医療サービスを受けることができていないこともあります。
また、高すぎる医療費の負担を理由に医療を受けることができなかったり、医療サービスを受けることで貧困化しているということもあります。
それらを様々なアクセスを通して解決していくことが望まれているのです。
(出典:独立行政法人 国際協力機構JICA公式サイト)
世界の国々が協力しUHCの達成を目指そう
持続可能な開発目標・SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」を達成していくには国や行政だけでなく、非営利団体や企業、個人など様々な人が関わり、解決に向けた行動をする必要があります。
まずは現状を知り、私たちができる方法について考えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
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