現在、9人に1人の子どもが貧困といわれている日本。
「見えない貧困」の中にいる子どもたちの居場所づくりとして、こども食堂の活動が広がりをみせています。
全国的に広がっているこども食堂ですが、今回は神奈川・横浜地域での支援や取り組みに注目していきます。
*出典:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省
こども食堂とは?目的やメリット、これからの課題、支援方法などについて解説
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横浜市や神奈川県のこども食堂事情は?
地域別で見ると2016年の神奈川県の貧困率は7.7%、ひとり親世帯の貧困率は45.6%とされています。
そして、地域コミュニティの繋がりが弱まっている今、貧困世帯の子どもたちへの支援をいかに届かせるかが課題になっています。
そんな中、地域の子どもたちへの食事の提供、居場所づくりを行っていることから、こども食堂の役割が大きくなってきています。
(出典:横浜市「横浜市子どもの貧困対策に関する計画」,2016)
横浜市や神奈川県のこども食堂の数
こども食堂の数は2018年3月時点で神奈川県内で169箇所、横浜市においては2015年の時点で1箇所のみでしたが、2年後の2017年には70カ所を超える食堂があることが分かっています。
神奈川・横浜地域でのこども食堂急増の背景は、既存の福祉活動の枠にはまらず、自宅や飲食店を解放するなど、地域の人々の自発的な行動が広がっている結果です。
横浜市内のこども食堂の約7割は、食事の提供の他にも遊び場や学習支援を行う環境を用意しており、月に1回開催される食堂が最も多い状況です。
子どもの参加料金は100円としている食堂が半数程で無料で提供している食堂が3割程になっています。
横浜市では令和元年度時点において「よこはまふれあい助成金」を制定しており、横浜市内で行われるこども食堂のような非営利な地域福祉事業や生涯福祉事業の支援を目的とし、対象の団体に助成金を補助しています。
こういった行政の後押しも、こども食堂激増の要因の一つです。
(出典:NPO法人全国子ども食堂支援センターむすびえ「2018年こども食堂全国箇所数調査発表資料」,2018)
(出典:横浜市社会福祉協議会「よこはまふれあい助成金」)
子ども・若者・子育てを社会で支える取り組みも
さらに神奈川県のNPOが、子ども・若者・子育てを社会で支えようという目的でプロジェクトを立ち上げました。
これは多くの市民、企業・各種団体等から寄せられた寄付金を基にした市民基金で、こども食堂のような地域の中に子どもや若者、子育てに関わる人が交流できる場を運営する団体を助成しています。
行政・民間ともに地域社会で子どもたちを支える意識は高く、これから事業をより広げていく環境は整い始めています。
- 2016年の神奈川県の貧困率は7.7%、ひとり親世帯の貧困率は45.6%
- 神奈川県のこども食堂の数は2018年3月時点で169箇所
- 横浜市では「よこはまふれあい助成金」を制定している
神奈川県が補助金を提供するこども食堂に関する事業は?
神奈川県ではこども食堂などのように地域の人々が自発的に問題解決に取り組む団体、組織に対して補助金を提供する制度が市ごとに定められています。
令和元年度時点で、こども食堂に関して補助金が支給される市の事業について見ていきます。
川崎市地域子ども・子育て活動支援助成事業
川崎市では「地域社会全体で子ども・若者を見守り、支えるしくみづくり」の理念を促進するために活動する組織に対して、補助金を援助する「地域子ども・子育て活動支援助成事業」の運用が2018年から始まりました。
社会福祉法人やNPO法人等の営利を目的としない団体が対象で、一定の要件を満たしている必要がありますが、対象経費の1/2の補助金を受け取る事ができます。
活動を実施する日数によって上限額が変わる仕組みです。
川崎市内のNPOでは経済的に課題を抱えている小学校4年生~高校3年生の子どもたちを対象に、夕食を無償で提供するこども食堂と、学習指導を行う「私塾」の役割を併せ持った場所づくりが行われています。
進学したい子どもや夢を持つ子どもたちを支援し、希望を持たせることを目的とされ、事業の補助も利用されています。
地域の見守り拠点づくり事業
「地域の見守り拠点づくり事業」は小田原市が取り組んでいる事業で、地域全体で子どもを見守り育てるスクールコミュニティの理念のもと、地域にある学校や公民館を活かして、子どもたちの居場所の基礎を作っています。
加えて、食事の提供とともに学習支援や体験活動を実施するこども食堂型の地域の見守り拠点を運営する組織には、その初期費用や運営費用の一部を負担しています。
初期経費では上限10万円、運営費には事業を実施する月数×1万円が支給されます。
小田原市では地区エリアごとに、特色ある活動を展開しています。
久野地区
子どもたちの健全育成を図るため、こどもの生活と学習をサポートしたい親の会のメンバーが外遊び、昔遊びや、絵本の読み聞かせ、ハロウィンパーティーや、折り紙教室などの体験学習を実施しています。
早川地区
PTAを中心とした地域の人々により作られた組織では、週末にイベント型で子どもたちの居場所づくりをしています。これまでにペットボトルロケットづくり、グラウンドゴルフ大会、プランクトン観察会、ラジオづくり、絵手紙教室、クリスマスケーキを作り、茶道体験教室などバラエティに富んだ活動を実施しています。
下堀地区
自治会を中心組織が結成され、公民館を会場に子どもと地域の人々の交流の場を提供しています。
子どもたちは卓球やバドミントン、ゲーム、そして宿題など思い思いの時間を過ごします。
3月には世代間を超えた「スポーツ大会」が公民館で開かれ、ペタンクや卓球などが行われています。
こども食堂支援事業(補助金)大和市
大和市では、子ども食堂を運営する団体への補助金を設けています。
毎月1回以上、1回あたり3時間以上の子ども食堂を実施し、1回あたり10食以上の食事を提供できる体制をとることが条件となっています。
1回ごと17,000円の運営費だけでなく、初期経費も1団体10万円以内で補助対策となっています。
さらに食事提供の他にも伝承遊びなどを通して、世代間の交流の機会を子どもたちに与える「世代間交流事業」や、子どもたちの学習や社会体験を支援する「学習支援事業」を実施した場合に、実施ごとに3,000円が支給されます。
開成町子ども・子育て支援活動助成事業
開成町では、2018年から次世代を担う子どもたちを地域全体で支え、地域で協力してまちづくりを行うという理念のもと「子ども・子育て支援活動助成事業」を行っています。
こども食堂のように「子どもが安心・安全に過ごすことができる居場所づくりを行う事業」「学習又は遊びの場の提供を行う事業」「孤食や育児 の孤立を防止する事業」「困難を抱えた子どもや家庭を支援する事業」を実施している団体に対して補助金を支給しています。
補助額は年間の活動日数によって上限が変わります。
- 神奈川県ではこども食堂に関して補助金が支給される市の事業がある
- 地域の見守り拠点づくり事業や子育て支援活動助成事業など
- 各地域の子ども食堂で様々な取り組みや工夫が行われている
(出典:神奈川県「子どもの貧困対策推進計画」,2015)
横浜市や神奈川県のこども食堂の活動を応援しよう!
全国的に数が増えているこども食堂ですが、どこもその運営費や人材の確保に課題を抱えています。
直接的には支援ができない方でも、神奈川県や横浜市では寄付によってこども食堂の活動を支援することができる環境が整い始めています。
今後さらに地域での活動を広げていくためには行政だけでなく、私たち一人ひとりが行動することが必要となるでしょう。