世界には絶滅に瀕している生物が多数存在します。その中でも鳥類は環境の影響を受けやすく、哺乳類や爬虫類などほかの生物に比べても多くの種が絶滅危惧種に指定されるほど危機的な状況です。
世界的に見てどのような種が絶滅危惧種に指定されているのか、どうして絶滅に瀕しているのか、どのような対策が取られているかなどを、こちらの記事で紹介します。
陸の絶滅危惧種とは?レッドリストにある動物の種類・数、原因と対策についても紹介
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世界には絶滅危惧種が多数存在する
現在、この地球には人間を含め様々な生物が存在しています。地域によって環境も異なるため、地域ごとに多種多様な生物が存在し、生物多様性のもと共存しています。
しかしその生物の中には絶滅のおそれがある種「絶滅危惧種」に指定されるほど、個体数を減らしているものもいます。
これはいくつかの要因により起こっていますが、その要因のどれもが人間の生産活動によるものだと言われています。
私たち人間の活動は地球温暖化や気候変動を起こす原因を生み出しており、これにより気温の上昇や豪雨や異常少雨、洪水や干ばつ、森林火災などにもつながっています。
また森林の過伐採や海洋の汚染など、そこに住む動植物の環境を破壊してしまうことで、生きていけない状況を作り上げています。
あるいは動物によっては乱獲による取引なども行われ、個体数を著しく減らすという直接的な原因も人間は作り出しています。こう言った理由で絶滅危惧種は増え続けています。
このような種の現状を把握するのは困難であり、既に絶滅してしまった種もあるかもしれません。
ただ絶滅危惧種を保護するためには、その種の現在の状態を調査し、まとめる必要があります。このような調査を国際的に行っている組織としてIUCN(国際自然保護連合)国際自然保護連合で略称がIUCNが存在します。
国際自然保護連合(IUCN)が公表するレッドリスト
自然及び天然資源の保全に関する国際同盟、この通称が国際自然保護連合で略称がIUCNです。
この組織は1948年にスイス・グランのジュネーブ郊外に設立され、自然及び天然資源の保全に関わる国家や政府機関などの連合体として野生生物の保護や自然環境。天然資源の保全の分野で専門家による調査を行っています。
もちろん調査だけに留まらず、関係各方面への勧告や助言、開発途上地域に対しての支援なども実施しています。
その一環として関係各所へ現状調査が行えている野生生物の状況、そして絶滅のおそれがある種を評価し、取りまとめて公表しているのが「レッドリスト」と呼ばれるリストです。
このリストには2019年12月時点で112,432種が記載されており、うち30,178種が絶滅危惧種と認定を受けています。
絶滅危惧種の分類
レッドリストには絶滅してしまった生物を含め、絶滅危惧種がこれだけ多く記載されていますが、状況に応じていくつかに分類されています。
絶滅危惧種はI類とII類に分けられており、そのI類の中でもIA類とIB類に分けられています。
また絶滅危惧種ではないものの、個体数の減少など変化が見られれば「絶滅危惧」へ移行する可能性がある種を準絶滅危惧種と評価しています。
IUCNではこのような評価のものとで、現在も調査を続けており、まだ調査・記載が終わっていない種や既に評価が終わったものも引き続き動向を見守り、変化によってその評価を変えています。
(出典:IUCN「REDLIST」)
※各学術名をこのサイトで検索して確認
絶滅危惧種に指定されている鳥
分類 | 評価 | |
---|---|---|
絶滅危惧I類 | 絶滅危惧IA類(CR) | ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの |
絶滅危惧IB類(EN) | IA類ほどではないが、近い将来における野性での絶滅の危険性が高いもの | |
絶滅危惧II類(VU) | 絶滅の危険が増大している種 | |
準絶滅危惧(NT) | 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種 |
レッドリストには30,000種以上の絶滅危惧種が指定されており、これは評価を受けている種の27%にあたります。
このうち鳥類は14%を占めており、日本を含めて様々な地域に存在しています。日本では沖縄の固有種であるヤンバルクイナ(Gallirallus okinawae)や北海道にのみ生息するシマフクロウ(Ketupa blakistoni)が絶滅危惧IB類と評価されています。
また日本発祥のウズラ(Coturnix japonica)はかつて絶滅危惧II類でしたが、現在は準絶滅危惧種となりました。
日本やロシア、中国、韓国に渡って生息するコウノトリ(Ciconia boyciana)も絶滅危惧IB類に分類されます。
また世界に目を向けるとムナグロワタアシハチドリ(Eriocnemis nigrivestis)やフィリピンの固有種であるミンドロヒムネバト(Gallicolumba platenae)は絶滅危惧IA類と評価されています。
(出典:IUCN「RED LIST」)
※各学術名をこのサイトで検索して確認
様々な鳥が絶滅危惧種になってしまう原因とは
鳥には様々な種類が存在します。それは他の動物も同様ですが、水鳥や渡り鳥など特定の環境でしか生きられない種も多数存在します。
そのため鳥は環境の影響を受けやすく、個体数を減らす可能性が高いです。日本の種を例に見てみると、現在絶滅危惧種として指定されているものの個体数減少の原因と考えられているのは、地球環境の変化を含め、人間による開発で生息・生育環境の影響を大きく受けていることが挙げられています。
また人間によって持ち込まれた外来種の存在や人間による乱獲も個体数を減らすことになる要因となっています。
これは日本だけに留まらず、世界規模で見ても各地で同じような原因により、多くの鳥類が絶滅危惧種となってしまっている、あるいはなりつつあります。
環境の変化による影響を受けたるライチョウ
現在地球規模で温暖化が進んでいますが、その温度の上昇により鳥たちは生息域を変えざるを得ないものも存在し、その中には適応できないものも出てきています。
日本に生息するライチョウは北アルプスや南アルプスなど日本の高山帯に生息しています。
しかし地球温暖化による気温の上昇により、生息域に適した地域の標高が上がります。このまま進行して行けば、ライチョウは現在より高い標高に逃げ場がないことから、現在は絶滅危惧種と評価されていませんが、今後絶滅するおそれが高まる危険性を持っています。
外来種により個体数を減らしたヤンバルクイナ
沖縄県北部のやんばる地域にのみ生息する飛べない鳥がヤンバルクイナです。かつては2,000羽近くの個体数が確認されていましたが、現在はその数を大きく減らしています。
その要因が外来種である「マングース」の存在です。およそ100年前に日本に持ち込まれた外来種ですが、このマングースが生息範囲を拡大し、ヤンバルクイナを捕食するようになりました。
このヤンバルクイナだけでなく、多くの生物がマングースに捕食されており、沖縄の生態系は深刻な被害を受け、絶滅危惧種となる種も増えています。
(出典:環境省「日本の生きものたちをまもろう」,2017)
絶滅危惧種に指定されている鳥類を守るために
世界では絶滅危惧種に指定されてしまった鳥類を守るため、3つの条約を締結して保護を行っています。それが「ワシントン条約」、「二国間渡り鳥保護条約(協定)」、「ラムサール条約」です。
ワシントン条約
ワシントン条約は鳥類だけでなく、他の生物も含めた野生動植物の国際取引の規制を輸出国と輸入国が協力して実施、絶滅危惧種の保護をはかることを目的としています。
二国間渡り鳥保護条約(協定)
二国間渡り鳥保護条約は、季節によって国と国を行き来する渡り鳥についての保護条約になります。
この条約は対象とする渡り鳥によって結ぶ国が異なりますが、日本はアメリカ、ロシア、オーストラリア、中国と締結しており、絶滅危惧種に指定された鳥類を相互に通報し、輸入規制などを行っています。
ラムサール条約
ラムサール条約では、水鳥を含む動植物の生息・生育地となる湿地などの保全を促進するために策定された条約です。
締約国がその領土内にある国際的に重要な湿地を1ヶ所以上指定して登録し、湿地の保全や賢明な利用促進のためにとるべき措置などをについて規定しています。
(出典:外務省「ワシントン条約」)
(出典:環境省「二国間渡り鳥保護条約」)
(出典:環境省「ラムサール条約」)
私たちの行動が絶滅危惧種の鳥を守ることにもつながる
現在絶滅危惧種として指定されているものの多くは、私たち人間がこれまで行ってきた生産活動による影響を受け、その個体数を減らしています。
地球温暖化や気候変動、森林や湿地、海洋の汚染など環境破壊によるものから、乱獲や商業取引などによる利用など間接的または直接的な要因ばかりです。
外来種の持ち込みに関しても生態系を破壊してしまうことから、環境破壊の一部と言わざるを得ません。
絶滅危惧種の増加による生態系の崩壊は、いずれ私たちの生活にも多大な影響を与える可能性があります。
地球温暖化や気候変動などもそうですが、このままにしておけば人間もいずれは絶滅する種となるかもしれません。
そうならないためにも私たちは今ある環境に対して、また絶滅危惧種に対して保全や再生、保護を行っていく必要があります。
環境を整え、共存し、個体数を再び増やすことができる社会を作っていくことが重要です。そのためにもまずは絶滅危惧種についての知識を増やし、私たちにできることを知って取り組んでいくことをおすすめします。
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