現在、世界の先進国を中心として移民が流れ込んでいます。国によっては毎年100万人を超える移民を受け入れている国もあり、その対応に追われています。
移民の流入は問題なども多いことから、良い印象をもたれることは少ないですが、移民を受け入れることはメリットもあり、共生をすることで国内の経済を発展させることにもつながります。
この記事では移民を受け入れるメリットを中心に紹介します。
移民とは?どのような問題があり、どのような政策が行われているの?
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世界で広がる移民の波
2020年時点の世界では多くの移民が先進国などに押し寄せており、受け入れを余儀なくされている状態が続いています。
これは今に始まったことではなく、2012年頃から世界各地で徐々に増加した結果ですが、国や地域によって移民が増え始めた理由には違いがあります。
例えばヨーロッパであればシリアやロヒンギャなど国内での紛争や内戦などにより、難民となった人が増えたことで受け入れざるを得ない状況ができたのもその一つです。
あるいは日本のように、外国人労働者を受け入れ、労働力を確保するといった政策により、増加したケースもあります。
ただし一つ注意しないといけないのは、日本は表向きには移民政策を行っておらず、移民と外国人労働者との間に線引きを設け、外国人労働者の受け入れの姿勢を見せています。
日本における難民の現状や、日本が難民受け入れに厳しい理由、日本にやってきた難民に対して個人ができる支援については以下の記事で解説しています。
>>難民認定率、日本はたった0.2%。日本が難民受け入れに厳しい理由とは
国際的に明確な移民の定義こそありませんが、国際移住機関(IOM)では「本人の法的地位や移動の自発性、理由、滞在期間にかかわらず、本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している、または移動したあらゆる人」と定めており、その定義に従えば日本に来る外国人労働者も移民であるとされ、調査上は移民を毎年受け入れていることになっています。
こちらの書籍では、この日本の二面性がもつ問題点を解説しています。
各国が移民を受け入れることで発生する問題が、世界的に注視されており、移民政策によるデメリットを強く押し出してしまっています。
移民の条件を満たせず合法的に入国できない不法移民の増加や、違法雇用による劣悪な環境下での労働、給与格差、社会保障や医療保険を受けられない問題が発生します。
(出典:OECD「国際移住データベース」,2017)
※サイト内の「Inflows of foreign population」にあるExcelファイルを参考
移民を受け入れるメリット
先述したように移民を受け入れることはデメリットがある一方、メリットもあります。どのようなメリットが発生するのか、見ていきましょう。
労働力の確保ができる
現在、特に日本は少子高齢化と人口減少によって労働力人口が減少傾向にあります。
実際に主要先進国と比べても、総人口に占める労働力率は、日本が60.1%、アメリカが62.8%、カナダが65.7%、ドイツが60.9%、イギリスが63.5%と比べると低くなっています。
一方で全体の需要の増加から、労働力人口の減少が起こることで需要に対応しきれなくなる危険性も出てきます。
そのような状況を打開するためにも移民を受け入れることにより労働力を確保できるメリットが生まれます。
日本では移民ではなく外国人労働者を受け入れているスタンスですが、この恩恵を受けるために、入国管理法を改正して新しい在留資格を創設するなど、積極的な姿勢を見せています。
ただし在留可能期間は短く、もともと居住していた国に住む家族の帯同は認めないなど、大量流入や長期的な滞在をさせないことで移民となることを防いでいます。
他国に関しても、国内外の増える需要に対して労働力を得るために、移民政策を行っている国もあることから、各国政府としてはこのメリットの重要性を認識しているようです。
世界における研究でも、移民の受け入れが経済効果に良い影響を与えることが明らかになっています。
その代表例が、移民が急増しているチリの経済状況です。チリでは2010年から2017年に間に移民が急激に流入しました。
移民の増加によりチリでは職を奪われ、給与面などにも影響を与えるかと思われました。実際はチリ人の給与への影響はわずかであり、むしろ若くて優秀な労働力を獲得できたことから、チリの経済へプラスの貢献がされたという見方がなされています。
もちろん流入する移民の目的や、国内の経済状況、移民政策など様々な観点で他国と違いがあるため、必ずしもすべての国で同じように作用するとは限りません。
しかし、移民を受け入れることで労働力を確保できるというメリットにおいては、どの国においても一定の効果が得られると考えられています。
(出典:労働政策研究・研修機構「10月1日現在人口の推移 1920年~2019年」,2019)
(出典:労働政策研究・研修機構「15歳以上人口、労働力人口 1948年~2019年 年平均」,2019)
(出典:労働政策研究・研修機構「性別・年齢階級別人口・労働力人口・労働力率(2016年)」,2016)
(出典:J-STAGE「移民増加がチリ経済に与える効果」,2019)
新たなニーズの獲得
移民を受け入れることで、デメリットの一つとされるのが外国人の雇用により、自国民の職が奪われる可能性です。
当然、これも起こりうる問題としては考慮しなければいけませんが、外国人の増加により、新たなニーズが生まれることも期待されています。
それは国内にも新しい産業や雇用が生まれることにもつながるため、これまで国内にはなかった職が生まれるかもしれません。
経済的にプラスに働くことは先述しましたが、労働力の確保だけに留まらず、ビジネス面においてポジティブに働く可能性が高いことが伺えます。
日本を例に取ると、伝統的な文化の守り手として外国人労働者が従事するケースも生まれています。
日本の伝統工芸である以上、日本人が継承すべきという考えもありますが、後継者がいないものも存在し、失われる文化となる可能性もあります。
しかし伝統工芸は国内のみならず海外からも高い人気を誇っており、その技術を学ぶために日本に来る外国人も少なからず存在します。
伝統継承のみならず、日本人とは違った視点や価値観を持つ外国の人たちが新たに、そしてこれまでにないアイデアの創生にもつながることから、移民を受け入れていくことで発生する相乗効果はあると考えられます。
グローバル化への対応
世界がグローバル化する一方で、日本は言語の壁により他国より進んでいない現状があります。
外国語の教育の低年齢化などを進めていますが、この遅れにより国際競争における競争力の低下が課題となっています。
しかし移民を受け入れることで、言語の壁についても障害を取り除き、競争力を高める可能性も出てきます。
また日本人と外国人との間に生まれた子どもの中には、外国語と日本語を使い分けているケースもあり、今後そのような子どもがグローバル社会の中で活躍できる場も生まれます。
あるいは純粋な日本人であっても、外国人とコミュニケーションを行う場が増えるためグローバルな視点を持つこともできるでしょう。
伝統工芸の従事する外国人もその一つです。外国人に人気がある以上、海外にアプローチできる人材が加わることで、世界へと日本の伝統工芸を発信する糸口が生まれます。
これからの時代、国内だけでなく、海外に向けた産業のあり方などを模索し、競争力を高めていくためには、移民を受け入れていることがメリットに働きます。
社会保障制度を支える
日本では特に少子高齢化により、高齢者の人口が増加し、年金など社会保障を支える人口が減りつつあります。
社会保障の財源が確保できないことから、消費税を上げることで対応していますが、このまま人口が減り続ければ、それすらも覚束なくなります。
仮にITを利用して生産性を保てたとしても、消費する人口が減れば消費税による税収は減少し、社会保障が圧迫される可能性が出てきます。
移民の受け入れは、社会保障制度を適用する人口の増加や悪用などの危険性も出てきますが、根本的に社会保障制度を成立させるための人口が必要となるため、受け入れるメリットの方が大きいと考えられます。
移民を受け入れ、共生することで生まれるメリットを大切にしよう
移民の受け入れは、いくつもの課題があることは確かです。
しかしメリットがあることも事実であり、言語や思想など違いはあっても、共生していくことは可能です。
そこで相手を否定することは人種差別にもつながりますが、何よりも同じ世界に生きる人間同士なので、分かりあうこともできます。
そのためには政府の政策だけに関わらず、私たち自身が移民の受け入れや他国の人との関わり方についてよく考えていく必要があります。
こちらの書籍では、日本で約10年を過ごした筆者の経験や思考が紹介されています。
日本が今後も外国人を受け入れ、共生していくために社会はどのような問題を乗り越えるべきなのか、自分にできることは何なのか考えさせられる一冊です。
これまでになかった考え方や文化を取り入れることで生まれる相乗効果は、きっと私たちにとってもプラスに働くでしょう。
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