産業廃棄物

産業廃棄物と一般廃棄物の違いとは?

人の活動は様々なごみを生み出します。
それは生活の中から出るものや経済活動の中で出るものなど多種多様ですが、どれもが廃棄物として処理されます。
しかし、すべてが同じように処理されるわけではなく、一般廃棄物と産業廃棄物に分けられ、厳格なルールの下で処理が行われます。

国連サミットで採択されたSDGsでは廃棄物による環境などへの問題を改善するため、目標12「つくる責任 つかう責任」のターゲットとして、12.5 「廃棄物の発生防止、削減、リサイクルおよび再利用(リユース)により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」というものが掲げられています。
その目標達成に向けて、日本でも様々な取り組みが行われています。

この記事では、廃棄物が「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分類される違いなどを紹介します。

産業廃棄物とは?種類や一般廃棄物との違いなど詳しく解説

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廃棄物とは


廃棄物処理法によれば、廃棄物とは「汚物または不要物であって固形状または液状のもの」であり、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分けられます。

それぞれの発生の仕方や処理責任の所在、許可・監督の管轄、処理業者や施設に違いがあります。
それらを細かく分類して規定しているのが廃棄物処理法です。
まずは一般廃棄物、産業廃棄物のそれぞれの規定などを見ていきましょう。

産業廃棄物とは

産業廃棄物とは事業活動に伴って発生した廃棄物のうち、法令で定められた20種類を言います。
ここで重要なのは事業活動で生じた廃棄物全てが産業廃棄物ではないという点です。
廃棄物を分類したとき、該当する品目は以下の通りです。

あらゆる事業活動に伴うもの 排出する業種などが限定されるもの
燃え殻
汚泥
廃油
廃酸
廃アルカリ
廃プラスチック類
ゴムくず
金属くず
ガラス、コンクリート、陶磁器くず
鋼さい
がれき類
ばいじん
紙くず
木くず
繊維くず
動物系固形不要物
動植物性残渣(※1)
動物のふん尿
動物の死体

※1 動植物性残渣(どうしょくぶつせいざんさ):動物性や植物性の固形状の不要物(動物、魚の皮・肉・骨、卵から、貝がら、肉・乳類の加工不良品等)

「あらゆる事業活動に伴うもの」の12品目は業種に関係なく、排出された場合は産業廃棄物となるものです。
それに対して「排出する業種などが限定されるもの」の7品目は業種が指定されています。
そのため該当しない業種から発生した場合は産業廃棄物として取り扱われません。

残りの1項目は産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記の産業廃棄物に該当しないものになります。
具体例としては廃棄物処理施設などから出る汚泥のコンクリート固化物などが当たります。
これらは産業廃棄物を排出した事業者の責任の下、廃棄物処理法などの基準に則って自ら処理するか、産業廃棄物処理業者に委託して処分してもらうことになります。
どちらを選択しても、法令を遵守して最終処分まで行う責任は排出事業者にあることから、厳しい規定となっています。

産業廃棄物処理の許可や管理は都道府県が行っています。処理責任がある排出事業者の監督や、処理を委託される産業廃棄物処理業者の事業許可、産業廃棄物処理施設の設置や譲渡の許可などです。
これらの条件のもと分類され処理されますが、これは一般的な産業廃棄物であり、条件によっては特別管理産業廃棄物というものが存在します。

特別管理産業廃棄物

特別管理産業廃棄物は「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物」と指定されている廃棄物です。
これには後述する特別管理一般廃棄物も含まれており、2種類を総称して特別管理廃棄物と言います。
これらは危険な廃棄物であることから、通常の廃棄物よりも厳しい規制と処理基準を設けています。特別管理産業廃棄物に該当するのは以下の通りです。(特別管理産業廃棄物のうち特定有害産業廃棄物としても分類されているものもあります)







廃油(揮発油類、灯油類、軽油類(難燃性のタールピッチ類等を除く)
廃酸
廃アルカリ
感染性産業廃棄物(特別有害産業廃棄物)








廃PCBなど(※2)
PCB汚染物
廃水銀など
指定下水汚泥
鉱さい
廃石綿など
燃え殻
ばいじん
廃油(有機塩素化合物等、1,4-ジオキサンを含むもの)
汚泥、廃酸または廃アルカリ

通常の産業廃棄物と重複しているものがありますが、特定の危険物質を含む、またはその濃度が高いものが該当します。
これらは特別管理産業廃棄物規制に伴い、国家資格を持った選任者がいる状況での処理が必要になります。選任要件に該当する人が講習を受けることでその資格を得ることができます。

※2 PCB:ポリ塩化ビフェニルの略称で、水に溶けず絶縁性が高い化学的に安定した物質

一般廃棄物とは

一般廃棄物は基本的に「産業廃棄物に該当するもの以外全て」と規定されています。
品目としては、産業廃棄物の条件を満たしていないものが一般廃棄物として処理されます。これを事業系一般廃棄物と言います。
先ほど紹介した排出する業種が限定されているものに該当する7品目のうち、指定された業種以外の廃棄物が一般廃棄物になります。

  • 紙くず
  • 木くず
  • 繊維くず
  • 動物系固形不要物
  • 動植物性残渣
  • 動物のふん尿
  • 動物の死体
  • また燃え殻、廃プラスチック類、金属くずなどの一部は一般廃棄物として処理されることがあります。
    事業系一般廃棄物はほぼすべての廃棄物を指すと考えられがちですが、分別を徹底すれば食べ残した物やリサイクルできないものが該当することになります。

    一般廃棄物の処理責任は市町村が負っています。一般廃棄物処理業者への事業許可や監督も市町村が行いますが、一般廃棄物処理施設の設置や譲渡などの許可や監督は都道府県が行っています。

    特別管理一般廃棄物

    先ほど触れた特別管理廃棄物の一種です。
    こちらも一般廃棄物ではあるものの、危険物質に該当するものであり、以下の品目が当たります。

  • PCB使用部品
  • 廃水銀
  • ばいじん(ごみ処理施設の集じん施設で生じたばいじん)
  • ばいじん、燃え殻、汚泥(ダイオキシン特措法の特定施設である廃棄物焼却炉から生じたもので、ダイオキシン類を3ng/gを超えて含有するもの)
  • 感染性一般廃棄物
  • こちらも特別管理産業廃棄物管理責任者を選任し、国家資格を得た状態で適切な処理が行わなければいけません。

    廃棄物の分類は重要!

    一般廃棄物と産業廃棄物は品目や分類、処理責任や業者など様々な違いがありましたが、これらを判断することはとても重要です。
    理由としては一般廃棄物と産業廃棄物は処理において規定が違うため、委託処理に必要な許可が異なります。
    また処理責任者も一般廃棄物と産業廃棄物では違います。一般廃棄物では市町村が、産業廃棄物は排出事業者が責任を負います。
    そのため判断を誤り、産業廃棄物で処理しなければいけないものを一般廃棄物として処理しようとすると法令違反で処理責任者と共に判断を行った自分自身も違反する可能性があります。
    ただし単純にどちらに該当するか判断しにくいものもあります。そうならないためにも、品目を調べ、判断方法を理解しておくことが重要です。

  • 廃棄物とは「汚物または不要物であって固形状または液状のもの」であり、一般廃棄物と産業廃棄物に分けられる。
  • 発生の仕方や処理責任の所在、許可・監督の管轄、処理業者や施設に違いがあり、それらを細かく分類して規定しているのが廃棄物処理法である。
  • 処理責任者も一般廃棄物と産業廃棄物では違い、一般廃棄物では市町村が、産業廃棄物は排出事業者が責任を負う。

  • (出典:環境省「廃棄物処理法の概要」)
    (出典:旭川市「事業系ごみの種類と一廃・産廃の分類表」)
    (出典:京都市情報館「事業系一般廃棄物と産業廃棄物」)
    (出典:豊田市「10分でわかる◎産業廃棄物ちょっと講座」,2018)
    (出典:環境省「特別管理廃棄物規制の概要」)

    産業廃棄物は「混合物」と「総体物」でも分けられる


    産業廃棄物は必ずしも1つの品目に分別できるわけではなく、複数の品目が分離不能な状態で混合した混合物として廃棄しなければいけないものもあります。

    例えば、事務機器として使用される複合機は廃プラスチック類とガラスくず類、金属くず類が複合したものになります。
    また、事務所などに使われる蛍光灯は水銀使用製品産業廃棄物に分類されるガラスくずなどと金属くずが複合しています。これらを廃棄するときには、分解してまで処分する人はいません。
    混合物によく似たもので総体物という廃棄物もあります。紛らわしいですが、こちらは複数の品目が分離不能な状態で混合したものですが、1つの品目の割合が極端に高いものが該当します。
    例えば鉄筋コンクリートはがれき類と金属くずの混合物ですが、がれき類が全体の大部分を占めているのであれば、総体はがれき類として取り扱います。
    また廃油混じりの汚泥であれば、廃油の混入量が5%未満であれば、総体は汚泥と判断されます。

  • 複数の品目が分離不能な状態で混合した廃棄物を総体物と言う。
  • 総体物は1つの品目の割合が極端に高いものが該当する。

  • (出典:豊田市「10分でわかる◎産業廃棄物ちょっと講座」,2018)

    廃棄物を適切に処理するため、きちんと違いを見極めよう


    廃棄物は一般廃棄物でも産業廃棄物でも品目や条件に合わせて分別し、適切に処理されなければいけません。
    廃棄物の処理は品目によっても処理方法が異なり、基準に則った処分をしなければ、私たちの生活を含め環境に大きな影響を与えることになります。

    廃棄物処理法が制定された背景には、高度経済成長期の公害問題や生活環境の悪化があり、それらを防ぐために法令によって厳しく規制を行うことになりました。
    法令は制定されてから50年の間に何度も改正されていますが、それは時代や消費される商品の変化など様々な理由によるものであり、この法令では処理だけでなく廃棄物の発生抑制も目的としています。

    SDGs目標達成に向けて環境への負担を減らすためにも、自宅や仕事先で適切な廃棄物の分別ができるよう心がけていくことが重要です。

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