世界では飢餓や食糧問題が大きな課題となっており、多くの人が苦しんでいます。飢餓は世界中で蔓延していますが、深刻度は国や地域によって様々です。
世界中で解決すべき課題とされている深刻な飢餓に対して、どのような支援が行われているのでしょうか。
この記事では飢餓の現状について紹介します。
飢餓とは?原因や世界の現状を知り、私たちにできることを考えよう
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世界の飢餓の現状は?
スーパーやコンビニなどに行けば食糧が手に入る日本とは違い、地域によってはその日の食糧さえ手に入れることが難しい国や地域があります。
2018年時点で、世界では飢餓に陥っている人が8億2,160万人もいると報告されています。
その中でも最も厳しい状況に置かれているのがアフリカです。
アフリカの飢餓蔓延率は世界で最も高いといわれており、その人口は2億5,610万人と言われています。
アフリカのどの地域でも蔓延率は着実に上昇していますが、特に東アフリカでは人口の30.8%が栄養不足に苦しんでいる状況です。
また飢餓人口が最も多いのはアジアであり、5億1,390万人以上といわれています。
飢餓人口の多くは南アジア諸国に住む人々であり、アフリカとアジアの両地域であらゆる形態の栄養不良が起こっています。
世界の発育阻害の子どもの10人中9人、消耗症(身長に不相応な低体重)の子どもの10人中9人はアフリカとアジアの地域に集中しており、南アジアとサハラ以南のアフリカ地域では3人に1人の子どもが発育阻害となっています。
さらに中程度及び深刻な食糧不安の人口は20億人、低出生体重児の人口は2,050万人など、2018年時点での飢餓に関しての様々なデータが出ています。
- 世界中で飢餓に陥っている人は、2018年時点で8億2160万人
- アフリカの飢餓蔓延率は世界で最も高いといわれており、その人口は2億5610万人
- 飢餓人口が最も多いのはアジアであり、5億1390万人以上
(出典:WFP「世界の飢餓人口は3年連続で未だ減少せず、肥満は依然増加傾向-国連の報告」,2019)
飢餓・食糧不足が深刻な国は?
2021年のハンガーマップを基に、栄養不足の人口割合を地域ごとに分類し、それぞれの割合の範囲で該当する国名をまとめました。
ハンガーマップは国連世界食糧計画(WFP)が発表している世界地図で、世界の飢餓状況を栄養不足人口の割合により色分けして表現されています。
栄養不足の人口の割合 | 地域 | 国名 |
---|---|---|
35%以上 | 東アジア | 北朝鮮 |
アフリカ | マダガスカル ソマリア ルワンダ コンゴ民主共和国 コンゴ共和国 中央アフリカ リベリア |
|
北アメリカ | ハイチ | |
西アジア | イエメン イラク |
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25-34.9% | 南アジア | アフガニスタン |
アフリカ | モザンビーク タンザニア ボツワナ チャド シエラレオネ |
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南アメリカ | ベネズエラ | |
15-24.9% | 東南アジア | 東ティモール パプアニューギニア ソロモン諸島 |
南アジア | インド | |
アフリカ | エチオピア ケニア アンゴラ ナミビア ガボン トーゴ |
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北アメリカ | ニカラグア グアテマラ |
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5-14.9% | 中央アジア | キルギス パキスタン |
東南アジア | インドネシア フィリピン シンガポール ボヌアツ フィジー ニューカレドニア カンボジア タイ ベトナム ラオス ミャンマー バングラディッシュ |
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南アジア | スリランカ バングラディシュ |
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西アジア | オマーン ヨルダン イラン |
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アフリカ | 南アフリカ エスワティニ エジプト スーダン カメルーン ネイジェリア ベナン ガーナ コートジボワール セネガル ガンビア モーリタニア マリ |
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南アメリカ | パラグアイ ボリビア ペルー エクアドル コロンビア ガイアナ スリナム トリニダード・ドバゴ バルバドス グレナダ |
|
北アメリカ | ドミニカ国 パナマ ホンジュラス エルサドバドル ジャマイカ メキシコ |
このように見てみるとアジア、アフリカ、中南米の地域で栄養不足の人々の割合が多いことが分かります。国によって割合に違いはありますが、そのほとんどが深刻な飢餓状態に陥っていることがわかります。
- アフリカやアジア、中南米で栄養不足の人々の割合が多い
- 35%以上の国はサハラ以南のアフリカ2集中している
- アジアの国々では栄養不足の人の割合が5~14.9%であることが多い
(出典:WFP「ハンガーマップ2021」)
栄養不足の人口が35%以上の国と飢餓の理由
栄養不足の人口が35%以上の国は上記の表からも分かるとおり、11カ国も存在しています。この国々の飢餓状態は、国によって事情が違います。
どのような事情で飢餓状態にあるのか、国ごとに要因などを紹介します。
北朝鮮
北朝鮮の飢餓の理由は気候変動と異常気象にあります。
2019年5月に発表されたデータでは乾燥や猛暑、洪水の影響で、農業生産の収穫量が過去10年間の中でも最低水準の推定490万トンにまで落ち込んでいます。
そのため北朝鮮は深刻な食糧不足に陥っている状態です。
2019年に発表されたデータでは、10年前の2008~2009年にも農作物が不作となり収穫量が少なく、この年の水準をさらに下回ったのが2018~2019年の収穫量とされています。
この10年間は食糧不足が続いていることで国民に食糧が行き渡らず、栄養不良を抱える女性や子どもたちが約77万人にものぼり、1,000万人以上が食糧不足となっています。
(出典: WFP「北朝鮮、農業生産が過去10年間で最低に。1000万人が食料不足」,2019)
マダガスカル
マダガスカルは、干ばつに見舞われると、収穫量が大きく減少する地域です。
収穫期直前には、最も食糧が少なくなり不足する「リーンシーズン」と呼ばれる期間があるほどです。
さらに2018年と2019年の収穫期には害獣と変則的な降雨により、とうもろこしに深刻なダメージを与えました。
このため南マダガスカルの9地域に住む約90万人が、急速に食糧不足に陥りました。
(出典:WFP「南マダガスカルで学校給食から広がる笑顔と希望」)
ルワンダ
ルワンダは25年前の1994年に、80万人以上の人が大虐殺されました。
そこから大幅な発展をとげ、「アフリカの奇跡」とまで言われていますが、今でも人口の35%が飢餓状態に陥っています。
これだけの発展を遂げたルワンダですが、農村部では多くの人が農業に従事しています。
この地域でも近年は気候変動の影響を受けており、予期せぬ大規模で高頻度の大雨や干ばつが原因で農業が不作に陥ることが増えています。
そのため食糧不足が起こるとともに、農村部の人々が困難に直面している状況です。
(出典:WFP 「虐殺から25年、ルワンダの“いま”を訪れる」)
中央アフリカ
中央アフリカはインフラ整備の不足による輸送コストの高さに加え、度重なる政情不安と、長年の紛争の影響により、2018年時点で国内避難民を含む約200万人が食糧危機に陥り、乳幼児の約40%が栄養障害を抱えています。
国連世界食糧計画(WFP)をはじめとした支援機関や団体が南アフリカの人々にたびたび食糧支援を行ってきましたが今も食糧危機は続いており、深刻な飢餓状態となっています。
(出典: 外務省「中央アフリカに対する国連世界食糧計画(WFP)を通じた無償資金協力(食糧援助)に関する書簡の交換」,2018)
コンゴ共和国
コンゴ共和国では、紛争や避難民の拡大と長期化のため、飢餓が広がっています。2016年から2017年の1年間で、緊急食糧支援を必要とする人が180万人増加し、770万人となりました。
緊急食糧支援を必要とする770万人は、食糧事情を5段階に分類した場合、最悪の「レベル5 飢餓」状態の寸前である「レベル4 緊急事態」か「レベル3 危機」に属します。
紛争が深刻な飢餓状態を引き起こしているのが、コンゴ共和国の現状です。
(出典: WFP「コンゴ民主共和国 紛争により770万人が食糧難に」,2017)
リベリア
リベリアは2014年から2015年にかけてエボラ出血熱が大流行し、人的・物的ともに多大な被害を生みました。
そのため経済成長率は0%となり、未だに厳しい経済・社会状況に陥っています。主食である米は需要の大半を輸入に頼らざるを得ず、それが財政を圧迫していることもあり、食糧配給もままならず、重度の飢餓状態となっています。
(出典:WFP「国連WFP、リベリアのエボラ隔離地区へ食糧支援」,2014)
(出典:外務省「リベリア及びシエラレオネに対する国連世界食糧計画を通じた無償資金協力(食糧援助)に関する書簡の交換」,2017)
イエメン
イエメンにおける飢餓の根本的な原因は、紛争です。紛争の副産物である経済危機と通貨安が、2021年の食料価格を2015年以来の高水準に押し上げています。
また、ウクライナ危機が重大な輸入ショックにつながり、食料価格をさらに押し上げるとみられています。イエメンはほぼ全面的に食料輸入に依存しており、小麦の輸入の30%はウクライナから調達しているからです。
出典:WFP イエメン:資金が枯渇し、かつてないレベルの深刻な飢餓
イラク
イラクでは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックや、気候変動により湖が干上がったり河川の水位が下がったりするなどしており、食糧生産に影響が出ているのが現状です。
また、イラクを含む中東地域はウクライナ産小麦に頼っていた面があり、今後もさらなる危機的状況に陥る可能性の高い地域になっています。
コンゴ民主共和国
コンゴ民主共和国では紛争と飢餓が互いに悪影響を与えています。
紛争の影響により、いくつかの州に広がって人々が移動していることも飢餓の要因の一つです。
コンゴ民主共和国では食料不安が拡大し続け、2700万人が深刻な食料不安に陥っています。推定340万人の子どもが急性栄養不良にあります。
コンゴ民主共和国は、世界最大の飢餓危機のひとつです。
出典:WFP コンゴ民主共和国(カサイ地域)支援
ソマリア
3年連続雨季に雨が降らなかったことで、極度に悪化した干ばつによって国が荒廃しています。
この40年間で最も乾燥した状況の中で、合計600万人が深刻な食料不安に直面しています。干ばつは、他の繰り返される気候ショック、継続して危険で不安定な状態の影響を悪化させています。
出典:WFP ソマリア緊急支援
ハイチ
食料や燃料価格の高騰を伴って始まった世界的な食料危機は、自然災害や政治的混乱によって、すでに支援を必要としていた地方と都市部のハイチの人々に大きな打撃を与えました。
これらが市民の不安の拡大に繋がり、経済活動と輸送を完全に麻痺させました。
最近のコレラの発生と飲料水の不足によって状況はさらに悪化しており、さらに多くの人びとが生存の危機に瀕しています。
出典:WFP ハイチで初の壊滅的な飢餓
- 北朝鮮:気候変動と異常気象
- マダガスカル:干ばつ
- ルワンダ:予期せぬ大規模で高頻度の大雨や干ばつ
- 中央アフリカ:インフラ整備の不足による輸送コストの高さ、度重なる政情不安、長年の紛争
- コンゴ共和国:紛争や避難民の拡大と長期化
- リベリア:ボラ出血熱の大流行
- イエメン:紛争、ウクライナ危機よる小麦輸入価格の高騰/li>
- イラク:新型コロナウイルス感染症のパンデミックや気候変動、ウクライナ危機による小麦輸入価格の高騰/li>
- コンゴ民主共和国:紛争や避難民の拡大/li>
- ソマリア:干ばつ/li>
- ハイチ:世界的な食料や燃料価格の高騰、自然災害、政治的混乱/li>
飢餓で苦しむ人々の現状を知ろう
飢餓で苦しむ人々は世界に大勢います。
WFPをはじめとした支援機関や各国が様々な取り組みを行い、飢餓で苦しむ人々を支援しています。
私たちにも飢餓で苦しむ人を支援できます。支援を行っているのは国や関係機関だけではなく、様々なNPO・NGOも取り組んでいます。
飢餓で苦しむ人を支援しているNPO・NGOに寄付やボランティアなどで協力することで、飢餓で苦しんでいる人たちを助けることができます。
そのためにもまずは現状を知り、私たちができることを考え、行動に移していくことが大切です。