高齢化による社会問題は、数十年前から起こっており急速に進行しています。
このような事態に日本政府は対策を講じていますが、今なお根本的な改善には至っておらず、既に様々な影響が出ています。
高齢社会になるのはなぜなのか、高齢化によって起こる問題はどのようなものがあるのか、この記事で紹介します。
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高齢社会の進行とその要因
日本は25年前から高齢社会へと突入しています。明確な定義こそありませんが、65歳以上の高齢者人口が14%以上となると高齢社会であると言われています。
日本は1995年に高齢者人口が14%を超え、14.6%となりました。さらに2010年には23.0%となり、21%を超えたことで超高齢社会に入りました。
2018年時点では高齢者人口の割合は28.1%と3割に迫る勢いとなっています。
高齢者人口の増加
医療分野の発展などにより、日本の平均寿命は2017年時点で男性が81.09歳、女性が87.26歳と長寿であり、少しずつ平均寿命は延び続けてます。
65歳以上の人口増加に伴い、死亡者数も増加傾向にありますが、仮に人口の年齢構成に変化がないとしたとき、年齢調整死亡率は低下傾向にあると言われています。
戦後の生活環境の改善や食生活・栄養状態の改善、医療技術の進歩によって年齢調整死亡率が大幅に低下し、1947年には男性23.6、女性18.3だったものが、2017年には男性4.7、女性2.5まで低下しています。
都道府県別に死亡数を人口で割った通常の死亡率である「粗死亡率」と比較すると各都道
府県の年齢構成に差があるため。高齢者の多い都道府県では高くなり、若年者が多い都道府県では低くなる傾向があります。
このような年齢構成の異なる地域間で死亡状況の比較ができるように、年齢構成を調整した死亡率が「年齢調整死亡率」です。
少子化の進行
65歳以上が高齢者人口なのに対して、0~14歳が年少人口、15~64歳を生産年齢人口と言います。
戦後の日本では1947年から1949年の3年間と1971年から1974年の4年間にベビーブームがやってきました。
1947年からの3年間で起こった第一次ベビーブームでは出生数805万人、1971年からの4年間で起こった第二次ベビーブームでは出生数816万人となっています。
しかしピークを迎えた後は出生数は減少傾向にあり、2017年には出生数が94万人、人口1,000人当たりの出生数である出生率は7.6%と低下することになります。
2016年には初めて年間の出生数が100万人を割り、今なおも減少している現状です。
合計特殊出生率では第一次ベビーブーム以降急速に低下し、1947年に4.32だったものが、1956年には2.22となり人口置換水準前後でしばらくは推移していきましたが、1975年に1.91と2.00を下回ったあとは継続的に低下していき、2005年には過去最低となる1.26、2017年時点でも1.43と低い水準となっています。
ここで合計特殊出生率とは「その年次の15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子供の数に相当する」ものを表しています。
また人口置換水準とは「人口を長期的に維持するために必要な水準」のことです。
- 2018年時点では高齢化の進行により高齢者人口の割合は28.1%と3割に迫る勢いである
- 65歳以上の人口増加に伴い、死亡者数も増加傾向にありますが、年齢調整死亡率は低下傾向にあるとされている
- 日本は、1971年から1974年の4年間にベビーブームのピークが過ぎたことも要因の一つとなり、少子化の進行が深刻である
(出典:内務省「平成22年版高齢社会白書」)
(出典:内務省「令和元年版高齢社会白書」,2019)
(出典:内務省「令和元年版高齢社会白書」,2019)
(出典:内務省「令和元年版高齢社会白書」,2019)
(出典:厚生労働省「年齢調整死亡率について」)
高齢化が進むことによる影響
高齢化が進むことで日本に与える影響はいくつもあります。その中でも大きな問題となるのが経済成長と社会保障制度です。
どちらも生産年齢人口に属する人たちに依存していますが、高齢者人口が増加することにより、生産年齢人口の負担が増すことになります。
経済成長への影響
経済活動は労働力人口に大きく関係があります。生産年齢人口に属する人々が労働力人口に当たりますが、高齢化や少子化によって労働力人口も急速に減少している現状です。
これは高齢者1人あたりを支える労働力人口の人数が減ることとなり、負担が増えるということです。このように労働力人口の減少が経済にとってマイナスに働く状態を「人口オーナス」と言います。
また高度経済成長期などでは、生産力の上昇や労働力人口が増加することによって成長率が高まっていく状態を「人口ボーナス」と言います。
そして人口減少が国内市場の縮小をもたらすことで、投資家などからは投資先としての魅力が低下していると判断されます。これは人々の集積や交流を通じたイノベーションを生じさせにくくなるため、経済など様々な分野での成長力が低下することにつながります。
他にも労働力不足を補うための長時間労働問題や、適正なワーク・ライフ・バランスの改善問題、少子化問題により、経済規模の縮小など経済成長にブレーキをかけることになります。
社会保障制度への影響
年金や介護などの社会保障制度への影響も非常に深刻なものとなっています。
これは高齢者1人に対して、生産年齢人口が何人で支えているかを数値的に見ると分かりやすいです。
高度経済成長期にあった1960年、バブルであり少子高齢化に入った1980年、そして2014年で比較すると、高齢者1人を支える生産年齢人口の人数は、1960年は11.2人、1980年が7.4人、2014年が2.4人となります。
この状態がこのまま進むと、2060年には高齢者1人に対して生産年齢人口約1人で支えることになり、このような社会を「肩車社会」と呼びます。
肩車社会が訪れることで、医療や介護費を中心に社会保障に関する給付と負担のバランスがより崩れることにつながるのです。
合計特殊出生率が回復するのであれば、2060年には1.6人、2110年には2.1で支えることになると予想されていますが、それでもなお生産年齢人口への負担は大きいものとなります。
- 高齢化の進行は、経済成長と社会保障制度に大きな影響を与えている
- 経済活動は労働力人口に大きく関係があり、高齢化や少子化による労働力人口の急速な減少により経済成長が低下している
- 肩車社会が訪れることで、医療や介護費を中心に社会保障に関する給付と負担のバランスがより崩れることになる
(出典:内務省「第2章 人口・経済・地域社会の将来像」,2015)
高齢社会への対策とは
日本政府は高齢化の進行から、基本方針と枠組みを整え、分野別に対策を起こっています。
その分野は就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、研究開発・国際社会への貢献など、全ての世代の活躍推進である6分野です。
誰もが安心できる公的年金制度の構築や資産形成などの支援、介護サービスの充実や認知正施策の推進など様々な施策が行われています。
しかし高齢化に対しての施策だけでは根本的な解決には至っていません。上記のように、少子化と高齢化が絡み合い現在の問題が浮上しています。
出生率が上がらず、少子化が進行して行けば将来的に高齢者を支える生産年齢人口は減少し、一人当たりの負担が大きくなるとされているのです。
今必要なのは高齢社会の対策だけでなく、少子化や現在の労働問題など総合的な施策が必要不可欠であると言われています。
- 日本政府は、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、研究開発・国際社会への貢献など、分野別に対策を行っている
- 施策としては、公的年金制度の構築や資産形成などの支援、介護サービスの充実や認知正施策の推進などである
- このまま進行すると、将来的に高齢者を支える生産年齢人口は減少し、一人当たりの負担が大きくなるとされている
(出典:内務省「令和元年版高齢社会白書」)
高齢社会を支えていくために
高齢社会は大きな問題の一つです。生産年齢人口に大きな負担が発生し、経済発展にも影響を与えていると言われています。
医学の発展や生活が豊かになったことで今後も高齢者人口は増加していく傾向にあります。今の状態をどのようにに支えていくか、将来的に負担を減らしていけるか対策を講じていくことが必須となります。
社会保障など日本全体における施策に関しては政府を中心とした取り組みを必要とします。
しかし私たちにもできることはあります。まずはこの高齢社会の問題について知り、理解を深めていくことから始めることをおすすめします。
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