いじめは学校や職場など、コミュニティがあれば起こる可能性があります。
実際に毎年、学校向けのいじめの実態調査が行われますが、認知件数や現状などが数値として細かく出てきます。
この記事では、いじめ問題の現状を知ってもらうために、認知件数など実際のデータを合わせて紹介します。
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認知件数で見るいじめ問題の現状
2020年時点、文部科学省ではいじめについて定期的な調査を行っており、児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査が全国的に実施されています。
その中で国公私立の小・中・高・特別支援学校および都道府県教育委員会や市町村教育委員会を対象としていじめの調査を行っています。
2018年度の調査によれば、小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数は全国で54万3,933件という結果でした。
これは前年度の調査の41万4,378件を10万件以上、31%も上回る結果です。
児童生徒1,000人あたりの認知件数とすると40.9件であり、前年度が30.9件であることから10件も増加していることが分かります。
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いじめの種別ごとの認知件数
いじめの認知件数について学校数全体で見ると、2018年には3万49校が認知しており、全学校数に占める割合は80.8%になりました。
校種ごとに過去5年間の結果を比べたとき、小学校における認知件数は、いじめ防止対策推進法が成立した2013年が11万8,748件なのに対して、2018年は42万5,844件と大幅に増加していることが確認されています。
ただし小学校におけるいじめの認知件数だけが増加しているわけではなく、中学校、高校、特別支援学校のすべてで増加が見られており、2013年と2018年の結果ではどの校種でも2018年の方が多いことが分かります。
学年ごとのいじめの認知件数を2016年から2018年までの3年間で比較したとき、どの年でも小学2年が最も多く、次いで小学3年、小学1年が続き、学年が上がるにつれて減少傾向にあります。
またいじめの認知件数は、2013年のいじめ防止対策推進法の施行を機に増加しており、それまで減少幅は違えど、認知件数は減少傾向にありました。
つまり法整備が行われたことでいじめの積極的な認知が行われるようになり、これまでいじめとして認知されなかった問題を、いじめとして認定するようになったとも言えます。
実際に調査において、いじめの認知件数が多い学校について「いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けた取り組みのスタートラインに立っている」と肯定的な評価をされています。
都道府県別にいじめの1,000人あたりの認知件数を見たとき、2018年の結果では宮崎県が最も多い101.3件、佐賀県が最も少ない9.7件でした。
また認知件数が多い都道府県上位5つは宮崎県(101.3件)、大分県(92.4件)、山形県(91.7件)、京都府(91.7件)、茨城県(89.3件)であり、少ない都道府県5つは佐賀県(9.7件)、富山県(12.8件)、石川県(13.7件)、三重県(16.5件)、愛媛県(17.4件)です。
最も多い宮崎県と最も少ない佐賀県では認知件数に大きな差があります。宮崎県が積極的に認知しているという捉え方もできますが、一方で都道府県や市町村ごとでいじめが発生する環境に大きな差が出ている可能性も示唆されているのです。
いじめの重大事態の件数も増加傾向に
いじめによる重大事態の件数も、2013年の法整備以降増加傾向にあります。
重大事態とは、「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認める事態」および「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認める事態」のことを指します。
これをまとめたものを発生件数として見たとき、2018年は602件で前年度が474件であることから、128件(約27%)増加し、いじめ防止対策推進法が施行して以来、最多を記録しました。
小中学校における不登校はいじめ以外の理由で起こっているものもありますが、いじめを理由として学校に行けなくなったという子どもも確実に増えていることが分かります。
また602件の中にはいじめを苦に自殺をしてしまった件数も含まれることから、いじめは子どもたちの健やかな成長を妨げるだけでなく、生命を脅かす大きな問題として扱われてきました。
実際2018年の厚生労働省と警察庁が公表している児童生徒の自殺者数によると、小・中・高合わせて332人の自殺者が出ており、このうちいじめ問題を理由に自殺したと確認された子どもは中学生で3人、高校生で6人、合計9人となっています。
(出典:文部科学省「重大事態」の解説(案)」)
(出典:文部科学省「平成30年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」,2018)
いじめ問題の発見や解消状況、態様などの件数
いじめ問題の認知件数が細かく出される中で、発見に至った経緯や解消状況、態様についてのデータも公表されています。
これによると、2018年時点でいじめを発見するきっかけとなったのは「アンケート調査など学校の取り組みによるもの」が最も多い52.8%でした。
また次点では本人からの訴えが18.3%、学級担任が発見したものが10.6%と続いています。
この結果から、いじめを早期発見するために積極的に行われているアンケート調査が結果につながっていることが分かります。
加えていじめられている生徒の相談先で最も多いのは学級担任への相談であり、80.1%とほとんどが担任に助けを求めているのです。
いじめの認知件数が増加している一方で、早期発見・早期対応できることで解消状況も高い割合となっています。
2018年時点でいじめが解消している件数の割合は84.3%と高い結果が報告されました。
ただし、それまで認知されていたいじめの解消がなされただけで、新しいいじめが発生していることも事実です。
このようないじめのうち、態様として最も多いのは「冷やかしやからかい、悪口や脅し
文句、嫌なことを言われる」といったことであり、全体的な割合の62.7%と半数以上を占めています。
ほかにも様々な態様が見られますが、特に近年増加傾向にあり、いじめの発見を遅らせるなどの問題となっているのが「パソコンや携帯電話等を使ったいじめ」の発生です。
これは全体の認知件数における3.0%に留まっていますが、件数としては2018年で1万6,334件、前年度が1万2,632件と増加傾向にあることが分かっています。
いじめの認知件数が増加し、早期の発見や対応ができるようになった一方で、新しいいじめの形も生まれており、さらなる対策も必要です。
(出典:文部科学省「平成30年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」,2018)
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いじめ問題を解決するためには現状や様々な件数を知ることも必要
いじめ問題は根深く、様々な要因によりどのような学校や学年でも起こり得る可能性があります。
そのため子どもたちの変化などには注意深く見守る必要がありますが、それは1人の力では難しいことです。
また認知件数からも分かる通り、多くのいじめが存在しています。これらをすべて解消し、新しいいじめを生まないというのも困難なことは確かです。
しかし子どもたちの健やかな成長や心身、生命そのものを守るために教育現場にいる教職員だけでなく、地方公共団体や保護者、地域が協力していかなければいけません。
そのためにもまずはいじめ問題の現状を把握し、どのような状態なのか件数などから理解しておく必要があります。
私たちに無関係のこととは思わず、子どもがいるいないに関わらず、いじめをなくし、子どもたちを守るための行動を起こしていきましょう。