いじめは大きな社会問題として取り上げられており、法整備を経て組織的に対策を行わなければいけないほど深刻なものとなっています。
特に小中学校ではいじめの発生が多く見られ、早期の発見や対応、適切な取り組みが求められています。
この記事では、いじめとは何か、原因や対策、支援はどのようなものがあるのか紹介します。
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いじめの定義
いじめは学校や職場などのコミュニティが存在するところで発生することがある、特定の人物への「攻撃」です。
正確には文部科学省が定めた定義があり、それに該当したものをいじめと認定していますが、このいじめの定義は時代により変化しています。
時代に合わせた定義が必要となり、最初に定められた定義から、3度の変更・追加がありました。そして、2013年に「いじめ防止対策推進法」が施行され、その中で定められたものが、2020年時点でも適応されています。
この法律によれば、
「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。
「いじめ」の中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められ、早期に警察に相談することが重要なものや、児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるような、直ちに警察に通報することが必要なものが含まれる。これらについては、教育的な配慮や被害者の意向への配慮のうえで、早期に警察に相談・通報の上、警察と連携した対応を取ることが必要である。
としています。
(引用:文部科学省「いじめの問題に対する施策」・「いじめの定義」)
いじめには様々な種類がある
いじめの定義は、学校や職場など現代で起こる多様化したいじめに対して、定められたものです。
学校でのいじめはいくつかの態様に分けることができます。
文部科学省のデータによると、小学校や中学校、高校、特別支援学校で特に多いのは、「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」となっています。
2021年に行われたいじめの状況に関するアンケートでは小学校や中学校、高校でも60%近い数値と、非常に高い割合になりました*。
次に高い割合を占めるのが「軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする」、「仲間はずれ、集団による無視をされる」、「ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする」が続きます。
身体的な攻撃、心理的な攻撃がそれぞれ行われていますが、さらに犯罪行為にも該当する「嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする」、「金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする」、「金品をたかられる」というものも発生しています。
また現代のインターネットやSNSの普及により「パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷や嫌なことをされる」といった発見が難しいいじめも発生しているのです。
いじめ防止対策推進法における定義はこういったいじめの態様をカバーし、防止するために定められています。
いじめは職場などで起こることもあり、パワハラは上司や同僚などから殴られる、物を投げつけられるなど脅迫や名誉毀損、意図的な仲間外れや無視、過度な業務上の要求なども含まれます。これらは職務・業務上の人間関係を利用したものです。
ほかにも性的な発言や行動、視覚的なものによるセクハラや、倫理を逸脱している嫌がらせ行為であるモラハラなどもあります。
(出典:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」,2018)
(*出典:文部科学省 令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
いじめが起こる原因とは
いじめが起こる原因を探る上で、まずいじめの構造というものを理解しなければいけません。
いじめは「いじめる生徒」と「いじめられる生徒」の単純な2層構造ではありません。
直接手を出さないが、いじめをはやし立てたり面白がったりして見ている生徒を「観衆」、巻き込まれたくない・次のターゲットになりたくないという感情から見てみぬ不利をする生徒を「傍観者」とした4層構造となっています。
いじめが一過性のものではなく持続的に拡大していくのは、いじめる生徒といじめられる生徒だけでなく、観衆や傍観者の立場にいる生徒の影響が大きいとされているのです。
現在はSNS上のいじめなどが増加していますが、その匿名性から安易に誹謗中傷がなされるようになり、簡単に被害者や加害者を生み出してしまう構造にあります。
このようにいじめが大きな問題になるのは、構造的な問題が要因にあるとされており、この構造がある上で、いじめが起こる環境やいじめる側、つまり加害者となる原因が、いじめというものを起こさせると考えられています。
いじめが起こる環境的な原因とは
いじめが起こりやすい環境は、主に「子どもにとってストレスの多い環境」です。
不満やストレスが多い環境は、それだけで子どもを攻撃的にしてしまい、我慢が苦手である子どもや、誰かに認めてもらいたい子どもは、そのはけ口として他者へと攻撃を向けてしまいます。
また子どもにストレスがある環境をそのまま放置してしまうことも原因と言えるでしょう。
これは先に紹介した観衆にも同じことが言えます。
傍観者は、たとえそれが間違ったことであると理解していても、巻き込まれることを恐れて見て見ぬふりをすることが多いです。
それはさらなるストレスを発生させ、ほかのいじめを起こさせる要因にもなってしまいます。
(出典:文部科学省「いじめ対策Q&A」)
いじめの加害者となってしまう原因
なぜいじめの加害者となってしまうのか、そこには複数の要因があります。
いじめの対象となった子どもとは無関係で身勝手な理由で、遊びや快楽を目的としたいじめをしたり、また自身のストレスを攻撃しやすい相手に対してぶつけるというものもあります。
これらは先述したように、子どものストレスが多い環境下で、その発散のために行われるものであり、いじめの対象となる生徒にはまったく身に覚えのないところから発生するのです。
周囲へ同調することが、集団でいじめを行う原因となり得ます。
観衆や傍観者としてではなく、実際にいじめを行う子どもとの関係を維持したい、同調しなければ次のターゲットにされるなどの強迫観念から加害者としていじめに加担してしまうことがあるようです。
(出典:J-Stage「なぜいじめはエスカレートするのか? 」)
学校や民間団体が行ういじめの対策や取り組み
学校や民間団体が行っているいじめの対策や取り組みは、いくつかあります。
ポイントを絞った「実効性のある指導体制の確立」や「適切な教育指導」、「いじめの早期発見と対応」、「いじめを受けた生徒(被害者)へのケアや弾力的な対応」、「家庭や地域社会との連携」の5つに分けることができるのです。
それぞれのポイントに沿って、どのような対策や取り組みが行われているのか紹介します。
実効性のある指導体制の確立
いじめが起こった際、いかに迅速に対応して悪化を防ぎ、表面上ではなく根本的な解決に行きつけるかが重要です。
そのため、いじめの発生についてきめ細かな状況把握を行い、学校および教育委員会は相互に連絡や報告を密に行うことが求められています。
校長をリーダーとして、教職員の役割分担や責任の明確化を図り、全教職員が密接な情報交換を行うことで共通認識を持ち、連携して指導に取り組む実効性の高い体制作りが行われました。
いじめが起こったとき、子どもが1人で抱えてしまうのと同様に、その訴えを学級担任が抱え込むようなこともあることから、校長への適切な報告がなされるような組織作りも合わせて実施しています。
また学校ごとにいじめの問題についての教職員の共通理解や指導力の向上を行うために、事例研究やカウンセリング演習などの実践的な校内研修の実施も進められているのです。
生徒への適切な教育指導
いじめは様々な原因や理由により起こり、直接いじめをする加害者だけでなく、周りでいじめをはやし立てる観衆や、見て見ぬ振りをする傍観者の存在により、早期発見を妨げ、長期化やいじめのエスカレートを起こす場合があります。
そのためいじめの防止も含め、すべての生徒への指導として「いじめは人として絶対許されない」という認識を一人ひとりに徹底することが必要です。
観衆や傍観者になったとしても加害者と同様に許されることではなく、いじめを大人に伝えることが正しい行為であるということも合わせて指導しています。
いじめを告げると、次の標的にされるといった恐怖もあるため、教職員が徹底して生徒を守り通すことも言葉と態度で示すことが求められています。
被害者になったら友人や教職員や親に必ず相談できることを伝えておくことで、1人で抱え込む状況を作らないことも指導として行われます。
また道徳教育が教科として導入されたことで、お互いを思いやり尊重することや生命や人権を大切にする態度の育成などを適切に指導し、いじめ問題を解決するためにはどう関わったら良いかを、子どもが主体的に考える場を設けました。
ほかにも加害者となってしまった生徒が、心理的な孤独感や疎外感を感じ、次のいじめに発展することを防ぐような指導も継続して行われており、いじめを許さないという学級経営が行われています。
いじめの早期発見・対応
いじめを迅速に発見するためには、常に子どもたちの様子に目を行き届かせていかなければいけません。
ただ学級担任であっても子どもたちの関係や状況をすべて把握することは難しいため、生徒の悩みを教師が受け止められる環境づくりをしています。
生徒には全人格的な接し方を心がけ、日頃からできるだけ深い信頼関係を築くことを求めているのです。
またいじめを見つけるための積極的な取り組みとして、スクールカウンセラーや養護教諭など学校内の専門家との連携を行い、生徒だけでなく親からのいじめの訴えや、兆候などのシグナル、些細な事象であっても受け止め、教職員同士で情報交換などを行い、事態の把握も行います。
早期の対応には事実関係の究明も必要となるため、被害者の心理的圧迫感を受け止めつつ、本人だけではなく友人関係などからも情報収集を行い事実関係を正確かつ迅速に把握するように学校側は努めてるのです。
被害者へのケアと弾力的な対応
いじめが起こったとき、最も留意すべきは被害者の心のケアです。いじめを受けた生徒は何よりも心に大きな傷を負い、その後の生活や将来に支障をきたす可能性があります。
そのため被害者に対して親身な教育相談を充実させるために、スクールカウンセラーなどの活用や養護教諭との連携を積極的に図ることや、全教職員の教育相談に関する能力向上に向けた校内研修などが実施されているのです。
また生徒指導室とは別に教育相談室を設け、被害者が相談しやすい環境の整備も同時に行われています。
いじめが一時的に止まっても、再発してしまっては意味がありません。そのため被害者の立場に立ち、緊急避難的に欠席を容認することも良いものとされています。
保護者と十分な連携を取りつつ、学習に支障が出ないような工夫など十分な措置を講じることや、被害者と加害者のグループ替えや席替え、あるいは学級替えなども必要に応じて行うことがあります。
親の希望によっては、関係学校の校長や関係者の意見も十分に踏まえつつ、就学すべき学校の指定の変更や区域外就学を認めるなどの措置も配慮しながら行うことが可能です。
民間団体の取り組み例としてはNPO法人Learning for All の活動があります。
Learning for All はさまざまな理由で苦しむ子どものために支援。学校へ行けなくなった子どもの教育支援や、安心できる居場所づくりなどに努めています。
月1,000円の寄付で、いじめなど様々な理由で苦しむ子どもたちの心と学習面をサポートできます。
>>Learning for All について詳しく見る
家庭や地域社会との連携
いじめの問題に対しては、その現場となり得る学校での対応が重要となりますが、それだけに固執すると解決できないこともあります。
そのため学校でいじめを把握した場合には、迅速に親や教育委員会に報告をし、適切な連携を図っているのです。
またいじめの対処方針指導計画などの情報について、積極的な公開と保護者の理解や協力を求めること、いじめ問題に関して学校と保護者や地域の代表との意見交換機会を設ける機会なども設けています。
民間団体の取り組み例として認定NPO法人カタリバの活動があります。
カタリバでは、不登校支援の一環として、行政が設置する適応指導教室などで学習や体験活動の機会を提供。このような支援を受けることは、苦しむ子ども本人に限らず、その家族の支えにもなるでしょう。
月1,000円の寄付で、いじめなど様々な要因で苦しい思いをしている子どもたちに学びの機会を届けられます。
>>カタリバについて詳しく見る
いじめの被害者に対する支援も
いじめの被害者に対しては支援も行われています。それは学校と連携して取り組みを行うスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーによるものです。
スクールカウンセラーはいじめの被害者の心的外傷への対応を最優先に行うため、被害者はカウンセリングを支援として受けることができます。
また被害者がより大きな心的外傷を被る可能性があるのであれば、加害者との仲直りを延期することや、必要に応じて再発防止のために加害者のカウンセリングも行うことが可能です。
スクールソーシャルワーカーの被害者に対する支援は、被害者と加害者に関する見立てや手立てにより、いじめの解消や再発防止のための取り組みです。
その際に、被害者と加害者だけでなく、保護者同士や教職員同士、保護者と学校にも対立構造が予想されるため、保護者会や学校のチーム会議を開催するなどの支援も行われます。
(出典:文部科学省「不登校児童生徒への支援について」)
以下の記事では、いじめをなくすための身近で簡単にできることが解説されています。
まずは気づくことから。気になる方はぜひご一読ください。
>>いじめをなくすために私たちにできることとは?
いじめがない学校生活や社会を目指すために
いじめはどのような環境下でもコミュニティがあれば起こる可能性があるのです。
またいじめそのものは、環境がいじめを起こさせる条件が重なることで発生させてしまうことも原因や理由から明らかになっています。
いじめは被害者に大きな傷を与えます。加害者側はそこまで深刻に考えていなくても、被害者には自殺を考えるほどの恐怖や絶望感を与えることもあるのです。
心に負った傷は消えず、後遺症として残ることも少なくありません。
いじめがどこででも起きるような現状を続けていては、今後誰の将来を奪うことになりかねないのです。
そんな悲劇が繰り返されないためにも、いじめがない社会を目指していかなければいけません。
学校や地方公共団体、関連機関が組織的に対策を行い、保護者と連携して取り組んでいける体制も作られています。
すべての人が一丸となって子どもを被害者にも加害者にもしない環境を作っていきましょう。
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