この記事では、Learning for All代表の李さんについて、
「どんな人なの?」
「なんで貧困地域出身なのに東大に合格したの?」
「なんでLearning for Allの活動を始めたの?」
という点はもちろんのこと、
「Learning for Allは何を目指しているの?」
「もし支援するとしたら私の寄付ってどう使われるの?」
という「まさに今考えていること」まで、徹底的にインタビューしてきました。
Learning for Allへの支援を考えている方の参考になると思います!
先に結論を紹介しておくと、
- ・李さん自身が、困難に直面する子どもが多い地域で育った当事者。小学生の時、恩師との出会ったことにより東大合格に至った
- ・Learning for All は「子どもにとって何が一番必要か」を追求し続ける団体
- ・Learning for All への寄付金は「深刻な生きづらさを抱える子たち」に使われ、さらに政策提言にも活かされる
という感じでした。Learning for Allを支援は以下のリンクから行えます。ぜひこの機会に支援を検討してみてください。
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Learning for All 代表の李さんってこんな人!
認定特定非営利活動法人 Learning for All 代表理事 李 炯植(り ひょんしぎ)さん
Learning for All の代表理事、 李 炯植(り ひょんしぎ)さんは1990年兵庫県生まれ。
地元尼崎の公立小学校を卒業後、県内の中高一貫の私立進学校を経て、東京大学に入学。教育学部を卒業後、東京大学大学院教育学研究科を修了しました。
子どもの支援の原点は、大学在学中に貧困家庭の子どもの学習支援を行うボランティア活動に参加したこと。4年生の時には教室責任者も務めるほど深く関わるようになります。
その団体から学習支援部門が独立することになり、李さんは新団体の代表のオファーを受けます。大学院在学中の2014年に特定非営利活動法人Learning for All を設立、同法人代表理事に就任しました。
Learning for All の活動を通し、これまでに延べ10,500人以上の困難を抱えた子どもへの無償の学習支援や居場所支援を行ってきました。
李さんはLearning for All の代表理事以外にも、全国子どもの貧困・教育支援団体協議会 副代表理事や内閣府「こども政策推進に係る有識者会議」の臨時構成員も務めています。
また、活動が評価され、2018年、「世界を変える30歳未満の30人」が選ばれる「Forbes JAPAN 30 under 30」に選出されました。さらに、李さんやLearning for All の活動は、日経新聞やNHKスペシャルをはじめとしたメディアにも多く取り上げられています。
プライベートでは一児の父。週末は我が子と遊んだり、サウナに行ったりして過ごすそうです。プライベートの時間のかなり多くを海外サッカー観戦に費やしているようですが、あまり社内では知られていないそうです。
困難な状況に置かれている子どもたちについて知ったきっかけとは?
学習支援から始まったLearning for All の活動。
今では学習面だけでなく、食事支援、居場所づくり、保護者支援など、生きづらさを抱える子どもたちを包括的に支援しています。
ここでは李さんが、日本の子どもの教育環境に課題があることに気づいたきっかけをお聞きします。
クラスの半分は生活困窮家庭だった
ーー日本に支援が必要な子どもたちがいる、と知ったきっかけを教えてください。
シンプルに答えると「貧困や格差が激しい地域で育った自分が、日本のトップ校である東大に進学した」からです。世の中の一番良い面と厳しい面を知ったから、とも言えます。
私が生まれた兵庫県尼崎市は、貧困や格差が結構激しい地域で、私自身も貧困世帯の多いエリアで育ちました。
現在Learning for All が関わっているような貧困、教育格差、虐待、障がい、外国人差別など、色々な社会課題が身近にある環境で生活していました。
小学校のクラスの半分くらいは、ひとり親家庭や生活困窮世帯の子どもでした。
ーーそのような環境で育ちながらも東大に合格されたのですよね?
はい、そうです。東大に行くことになった理由の1つは、小学校6年の時の担任の先生との出会いです。6年生の秋に、先生に「あなたは東大に行けるだけのIQがあるから受験をして、もっと勉強できる環境にいきなさい」と言われました。先生が親に連絡し、家庭教師がやってきました。
家庭教師の力を借りながら受験勉強をし、なんとか中高一貫の私立校に入学しました。この学校の特進コースで、高校3年までの6年間、朝から晩までみっちり勉強させられました。
高校になっても、小6の時の担任の先生は私の人生に登場します。
高校1年生の時、先生が超ハードな塾の入塾テストに申し込んでくれて、合格した私は高校2年からその塾に通うことになりました。ここでの勉強を経て、東大を目指すことが現実的になってきた、という感じです。
ーーそれにしても、その担任の先生、李さんの人生を大きく変えましたね。「東大に行けるIQがある」と先生に言わせるほど、李さんは誰もが気づく頭脳の持ち主だったのですか?
自分自身、際立って頭が良いと感じることはありませんでした。先生に家庭教師を勧められた当時は塾にも行っていませんでした。
ただ、振り返ってみるとLD(学習障害)の子などにつくように言われ、教科書全部に読み仮名振ってあげたり、授業中に分からないことがあったら教えてあげたりということは、ずっとしていた気がします。
「していた」というより、その先生に「やらされていた」と言ったほうが正確かもしれません(笑)。
きっと先生がそういうものを見出す目を持っていたんでしょうね。
ーーその先生に出会っていなかったら、李さんはどんな人生を送っていたのでしょうか?
公立中にそのまま他の友人たちと一緒に進み、高校卒業後に就職していたんじゃないでしょうか。大学には恐らく行っていなかったと思います。
私の住んでいた地域は尼崎の中でも一番治安が良くないと言われる地域でした。
先輩にカツアゲされるから中学校に行けないと言って、1年間学校に行っていない子もいるような地域。先生に出会わなければ、私はそんな環境にがっつり身を置いていたと思います。
大学へ行ってNPOを立ち上げるなんて、そんな想像すらしていませんでした。私の人生設計は、先生との出会いによって良い意味で完全に狂ったのだと思います。
今Learning for All が力を入れていることや、李さんの夢を先に読みたい方はこちら
>>Learning for All への私たちの寄付はどのように使われる?
地元の友人と東大生の埋められない格差
ーー「尼崎の中でも一番治安が悪い」と言われる地域で育った李さんが東大へ。どんな大学生活を送っていたのですか?
今まで自分が育った環境と全く別世界過ぎて、馴染めなかったです。同級生たちの社会階層の高さに驚きました。
小学校からずっと名門私立に通っていた人や帰国子女など、テレビドラマでしか見たことのないような、別世界に生きる人たちの存在に衝撃を受けました。
そんな感じだったので、大学に居場所を見つけられず、授業もあまり出ずに遊び歩いていました。
ーーその頃、地元の友だちとは交流はあったのですか?
はい、成人式で地元に戻り、小学6年のクラスで集まる機会がありました。40人のクラスで半分がひとり親家庭で育っていました。その中で大学に進学したのは私を含めてたった3人。私には完全にアウェイでした。
私が東大に入学したのが2009年、ちょうどリーマンショックの時期です。友人の中には、高校卒業後に工場に就職したけれど、リーマンショックの影響で仕事が週休4日になり、生活費を稼ぐために宅配ピザのお店でバイトを掛け持ちしている子がいました。
その子は、高校卒業後に就職ではなく専門学校に進学したかったのですが、母親が自分の彼氏にばかりお金を使って学費を出してくれないような家庭。夢を諦め、働いていました。
また、シングルマザーで、3人目の生まれたての子どもを成人式に連れてきている友人もいました。
ーー李さんが出会う東大生とは全く違う生活をしていた訳ですね。
生まれ育った環境や与えられた教育など、様々な環境の差で子どもたちの人生の可能性が左右されていると、それまで気づいていませんでした。
私はのうのうと東大で奨学金をもらいながら生活して、何もやっていなかった。
片や地元では、ほとんどの友人が大学進学していないし、就職してもみんな不安定な就労だし、シングルマザーで子ども3人を養わないといけなかったり、といった状況でした。
生まれ育った環境が一緒だったとしても、与えられた教育機会が違うだけで、こういう差が生まれてしまうということに気づいたのです。
Learning for All の詳しい活動内容についてはこちら
>>Learning for All は誰の役に立つ?活動内容や支援先について調べてみた
子どもの貧困率は下がったが……
ーー20年ほど前に李さんが子どもの頃に過ごした環境と、今の子どもたちが置かれている環境は今も変わっていませんか?相違点はありますか?
子どもの貧困率だけを見ると下がっています。ただし、不登校や虐待、自殺の件数は上がっていて、毎年、過去最高値を更新し続けているのです。厳しい状態が続いています。
厳しい環境に置かれている子たちは昔からいましたが、より社会全体の受け皿が減ってきています。
このような子どもたちを、学校が受け止めることが厳しい状況になってきています。また、高齢化により社会の中で動くお金の量も減ってきています。
子どもだけでなく、子どもがいる家族の置かれる状況は厳しくなってきていると考えています。
子ども支援をはじめた理由とは?
自分の生まれ育った環境と、周りの東大生との格差に気づいた李さん。
次は、実際に「格差」という課題にご自身が主体的に取り組み始めたきっかけをお聞きします。
「当事者であった自分にしかできないことがある」と考えた
ーー子どもたちが置かれている環境によって生まれる「格差」に気づいたわけですが、この問題の解決にご自身が関わっていきたいと思った理由を教えてください。
やはり地元の成人式での経験のあと、人生を通じて自分なりに関わっていきたいと思いました。
大学で出会った教授の影響で、そのころには学者になりたいと思っており、大学院進学を決めていました。子どもの貧困や教育格差について研究したいと思っていました。
ただ、理論だけではだめ、実践しなければいけない、両方やりたい、と21歳の時に先輩に声をかけられて始めたTeach for Japan(※)のボランティア活動を通して気づきました。
(※教育系NPO。後にTeach for Japanの教育支援事業が独立してLearnig for All の設立に至る)
当時一緒にボランティアをしていた学生たちはエリートが多く、「エリートによるボランティア団体」という感じでした。ホームレスを横目に通学したり、変なおじさんに追いかけられたり、など私みたいに厳しい環境で育ってきた人は、もちろんいませんでした。ボランティアの子たちには原体験がなかったのです。
ーー確かに、なかなか想像しがたい環境ですね。
一方、私にとっては目の前の困難を抱えた子どもたちの置かれている状況が、自分が昔育った環境そのままでした。
子どもたちの立場を、理論だけじゃなく現場含めて理解しているのは私しかいない。つまり、自分だからこそできる、還元できるものが多いと思いました。またその厳しい環境を抜け出してきたからこそ、この子たちに対してできることが何かあるとも感じました。
この気持ちが、「子どもの貧困」という社会課題と関わっていきたいと強く思ったきっかけです。
ーー東京大学では教育学部に在籍されていましたが、当時目指していた職業はありましたか?教育学部に進んだのは元々教育に興味があったのでしょうか?
東大では3年生から学部が分かれるため2年生で学部を選択するのですが、じわじわとそのあたりから教育を通じて人の可能性は変わると感じていました。
学力や学歴が人生における選択肢差に繋がっている、生まれてきた環境によって生じる機会の差は、必ずしも個人の努力だけでなんとかなる問題ではないのではないか、というのが肌感覚でありました。それを踏まえて、教育ってなんのためにあるんだろうか、って考えたりしていた時期です。
2年生までに、階層社会論や教育格差について勉強しました。格差が生じる理由、存在する理由を社会学的なアプローチで考えるのです。では、なぜ格差を容認していけないのか、教育はどうあるべきか、もっと理念的なものを考えたいと思ったので、教育哲学が学べる場所として教育学部への進級を選んだという感じでした。
大学院生だった李さんの挑戦
ーー21歳の時に始めたTeach for Japanでのボランティアが今の李さんに繋がっていくわけですが、Teach for Japanではどんな活動をされていたのでしょうか?今に活かされていることはありますか?
葛飾区の生活保護世帯の子どもたちに無償で学習指導を行う活動で、学生ボランティアの責任者をしていました。とにかく、現場を作るのがすごく大変でした。
学力を上げるためにはどのように学習支援したら良いのか。発達障がいや不登校、虐待などの問題を抱える子たちの支援をどのように行ったらいいのか。素人だったので、とにかくトライ&エラーの繰り返しです。
最初は、教えども教えども学力が上がらない子たちもいました。中学3年生の1年間、うちの教室で勉強したのに、どこの高校にも受からず、引きこもりになった子もいます。私たちの接し方が悪くて、学習支援拠点に二度と来なくなった子もいます。
そういう子どもたちに対して、できることがあったのにできなかった、という失敗はたくさんあります。数えきれないほどの挫折を味わいました。そこからずっと学び続けて今まで来ています。子どもたちから色々教えてもらいました。
ーーLearning for All は、李さんがボランティアをされていたTeach for Japanから完全に独立して、学習支援を軸に設立されたのですよね。
はい、大学院1年生の時に、Teach for Japanの関東と関西の学習支援の事業部長を任されたのですが、その直後に、学習支援事業だけに取り組む別の団体を立ち上げて代表に就任してほしいというオファーを頂きました。
ーー大学院生なのに、いきなり団体の立ち上げと経営を任されたわけですね。様々な苦労があったのではないでしょうか?
そうですよね。経営の経験がないのに経営をし始めたわけです。当時の私は、「ビジョンとかミッションってなんですか?」「経営計画ってなんですか?」「そもそもこれどういうビジネスモデルで回ってるんですか?」という状態でした。そういうことを勉強するところから始まりました。
立ち上げまでの時間は1年半。法人を作って、事業継承をして、ファンドレイズ(寄付金集め)をして、人を雇い、オフィスを見つけ……さらに同時並行で学習支援の現場を回し改善する、という日常も変わらずありました。とんでもなく大変でした。
オフィスといえば、開所2週間前まで内装を何も決めておらず、家具もありませんでした。一人暮らしの引っ越しと同じように考えていたんです。
当時コワーキングスペースに通っていたのですが、そこの店長にこの話をしたら、「ここの内装だって何千万円もかかってる、お前らなめてんのか」みたいに怒られてしまいました。と同時にそこのお店に通う内装業者の方を紹介してくれたのです。
その方がまたとても熱いお兄さんで、「お前らいいことやってるんだから、オフィスもこだわった方がいい」と。廃材を集めて、徹夜で全部組み立ててくれて。総額30万円でやってくれました。私たちも木材運んだりして手伝いました。また、共用部の壁をぶち破って大家さんに怒られた、という思い出もあります。
このような熱い人たちに支えられたエピソードはいくつもあります。
>>Learning for All について詳しくみる
李さんが描くLearning for All の理想の組織の形
Learning for All は、子どもの学習支援を行う団体として立ち上がったわけですが、創立から2年後の2016年、学習支援だけでなく、居場所づくり、食事支援、保護者支援も開始します。
また、目の前の子ども一人ひとりの支援だけでなく、社会を動かすための普及活動やアドボカシー(政策提言)にも取り組み始めます。
さらに、2018年にはLearning for All が現場での活動を通して得たノウハウを全国で活動する他の子ども支援団体に共有・展開する事業も開始しました。
どんどん進化するLearning for All ですが、李さんはどのような理想を持って団体を運営しているのでしょうか。
学習支援から子どもに関する全ての支援へ
ーー2016年に子どもを包括的に支援すると決めた理由を教えてください。
もっと早い学年から学習支援を始められていれば、という課題があったのと、学習面の支援だけでは解決できない根深い問題があったからです。
小学生の学習支援を通して、留学し夢を叶えていく子などを見送る一方で、中学3年生でも分数ができない子どもたちもいました。
小学校4年生あたりでこの子たちに出会っていたら取り返しがついていたのに、遅すぎた……と思うことがあったのです。中学3年生まで来ると、子どもが完全に自信を失ってしまっているのです。もっと早い段階で支援を始められたら、という課題意識がありました。
また、180cmの身長がある中学生の男の子に夏休み明けに会ったらがりがりにやせ細っていた、ということがありました。夏休みの間は給食がなく、家にも食べるものがないため痩せこけてしまったのです。
勉強を教えても解決しない、とても根が深い問題だと思います。
このような子に週1-2回お弁当を渡しても支援としては足りません。生活、食事、家族など様々な面からきっちりサポートする必要があります。
”学習支援”という切り口から子どもたちのサポートを始めましたが、活動を続ける中でこのように、子どもたちの抱える課題の深さにどんどん出会いました。早期から切れ目なく包括的にサポートしていくことが、子どもたちの自立において重要だと考え、活動内容を広げてきました。
今では6-18歳の世代の子ども達に、学習、生活、訪問支援など包括的なサポートを提供しています。
ーー「学習支援」という具体的で分野を絞った活動から、支援の範囲を広げることに不安はなかったのですか?
Learning for All は、子どもが中心、子ども第一主義という考えのもと、「子どもが主語」の団体です。常に、子どもたちのニーズから我々が何をすべきか考えていて、その結果が今の活動内容というわけです。
もちろん、分野が1つに絞られていないので、経営的にはなかなか難しいところもあります。
ーーちなみに包括的な支援をすると決めた時の、職員のみなさんの反応はいかがでしたか?学習支援団体だと思って入ったのに……などはありませんでしたか?
驚くことに、社内からは「待ってました!」という声をたくさん聞きました。それどころか、大学卒業時にLearning for All を離れた元学生ボランティアが「そういう団体に進化するのなら」と、戻ってくるということもありました。
また、ビジョンが広がったことで、今までだったら入ってこなかったようなスタッフが新しく入ってきたり、と組織の人材面にも良いことが起こりました。
管理部門にきちんと投資しながら現場のリーダーを生み出す
ーーLearning for All は李さんが設立され、現在も代表を務められていますが、活動を長く続けるための組織のあり方や、新しいリーダーの育成など、どのようにお考えでしょうか?
私以外のリーダーがたくさん出てくる団体にしたいです。実際、もうそうなっています。
子どもに近い「現場」が、子どもにとって何が一番重要か、今、私たちが何をしなければいけないかを一番分かっています。ですので、できるだけ子どもたちと日々向き合う支援現場に権限を委ねたり、現場が動きやすいような環境を作ることを心がけています。
つまり、子どもたちと現場が真ん中にいて、それを支援しているのが経営、という形です。
一方で、NPOは広報や人事、マーケティング、ファンドレイジング部門などのバックオフィスがしっかりしていないと、現場が動けません。
現場が子どもたちに集中できるのは、バックオフィスが強いからだと思っています。ですので、ちゃんとバックオフィスにも投資することを意識しています。管理部門が万全に整った状態で現場の支援をする、という感じです。
子ども支援の業界ってとても離職率が高いのですよね。低賃金かつ労働環境も過酷なことが多いです。基本的には「感情労働(※)」です。ですので、職員のケアがとても大切だと考えています。
徹底して現場のメンバーが働きやすい環境をLearning for All で作っていき、他の子ども支援の現場にも提言していきたいです。
※感情労働:サービス提供相手に対して、心理的にポジティブな働きかけをする仕事。労働者は自身の感情のコントロールを求められる。接客業など人と接する仕事の大半が感情労働にあたる。
Learning for All への私たちの寄付はどのように使われる?
ここまでの李さんのお話を聞き、Learning for All の活動をサポートしたい!と思い始めた方もいると思います。私たちがLearning for All の活動を支援する方法の1つに、いつでもどんな場所からでも行動を起こせる、お金の寄付があります。
では、私たちの寄付は実際どのように役立つのでしょうか。寄付の使い道について李さんに聞いてみました。
寄付を活用した活動を元に政策提言。全国の子どもたちへ
ーーまさに今寄付をしたら、そのお金は具体的にどのように使われるのでしょうか?
私たちの活動エリアにいる「生きづらさを抱えた状況に直面している子」たちへのアプローチに使われます。さらに、その先の活動として政策提言を行い、それが全国の子どもたちを支援することに繋がります。
国や自治体が子どもの支援を行っている中で、なぜ私たちのような民間団体が活動しているのかの理由とともに詳しくお話します。
まず「生きづらさを抱えた子」たち、この子たちは、学校や行政などによる、既存の支援の仕組みではカバーしきれず、支援に動いたとしても遅すぎることが多いです。
最近は親の虐待でお風呂に入っていない、ご飯を食べていないという子や、自殺未遂に及ぶ子どもなど、重篤なケースが増えています。虐待件数、自殺件数ともに過去最高、という全国の数字を反映するように、うちの団体の虐待対応件数もコロナ前に比べて3倍(年間)になっています。
既存の仕組みでは対応しきれないこういった子どもたちの支援は、まず私たちのような民間団体が頑張る必要があります。そして民間の活動原資は寄付です。
今寄付をしたら何に使われるか?に対する答えは「生きづらさを抱える子たちに真っ先に」使われます。でも、みなさんからの寄付は、一番つらい状況にある子たちを支援する活動に役立てて終わり、ではありません。
一番支援が必要な子たちに対し国が十分な支援をできていない、という課題の解決のため、必ず政策提言につなげます。Learning for All が、みなさんからの寄付でずっと子どもたちをサポートするのではなく、最終的には国の制度、政策として国費で対応していく必要があります。
私たちが見ている子どもたちと同じ状況の子は全国にいます。しかし残念ながら、Learning for All だけでは全部に対応できません。
寄付を原資にして行った活動を、きちんと政策に変えていくことで、現在カバーされていない全国で生きづらさを抱える子たちに支援を届けることに繋げていきます。
現場の支援活動と政策提言、どちらも作れることがLearning for All の強みだと思っています。
Learning for All の寄付の使い道について詳しく知りたい方はこちらの記事もご一読ください。
>>Learning for All の寄付の使い道は?寄付金の使われ方や寄付募金の方法を解説!
現場を知っているからこそ政策作りまで関わるのが私たちの責任
ーーLearning for All として、または李さん個人として、どちらでも良いので、実現したい「夢」を教えてください。
真面目な回答になってしまいますが、現場の声をきちんと政策に反映できるようにしていきたいです。
政策提言に関わるようになり、現場で起こっていることがまだまだ政策まで繋がっていない、という感覚を持っています。現場で起こっていること、現場の子どもの声を元に、良い政策が作られ実行され、さらにきちんと評価と改善を行い次の計画に反映されるようにしたいと思っています。
子どもの現状から課題を設定し、政策の目標を置き実施する。そして、結果から学んで次の政策を作る。この「当たり前のこと」がまだまだできていません。
国として、良い政策作りと、そのPDCAをきちんと回せるようにならない限り、この社会はかなり厳しいと感じています。ですので、政策の改善まできちんと回す、というところまで絶対やりたいと思っています。
私たちみたいな現場で活動しているNPOこそが政策作りまでちゃんと関わり、子どもたちを見ている責任を果たすという意味でも大切だと思います
ーー現在の政策において「ここが変われば劇的な変化が起きるのに。でも簡単には変わっていかないだろう」と感じてる点はありますか?
子どもたちに配分しているこの国の予算が少ない点です。
GDP比で他国と比べても少ないです。岸田政権も今進めようとしているところではありますが、子どもたちにかける予算を倍増させる必要があると思います。それくらいお金をかけて、力を入れていかなければいけない分野ではないでしょうか。
子どもは社会の宝
ーー政策とは別に、社会がこんな風に変わっていって欲しい、という願いはありますか?
もっと子どもに優しい社会になるといいな、と思います。子どもは社会の宝です。地域や大人全体で、自分の子、他人の子に関係なく子どもたちを支えていかなければいけないと思います。みんながそういう生き方ができればいいな、と。特に自分が子どもを持ってこの想いが強くなりました。
実際、近所の子どもに声かけるか迷いますよね。今の時代、声のかけ方を少し間違えると不審者になってしまうので。
ただ、子どもからリスクを取り払うというのは、彼らから色々な地域の繋がりも奪っていることにもなっています。昔のように、大人が上手に繋がりながら子どもたちを見守るコミュニティを創る、という形はどこかで取り戻さないと非常に厳しいです。
大人一人ひとりが子どもを見守る。そういう社会にみんなで変えていけるといいな、と思います。
ーー約1年前にお子様が誕生されてから、団体への向き合い方や目指す方向性は変わりましたか?
「育児と仕事の両立」に対する理解度がすごく上がりました。
Learning for All の職員比率は女性が高く、また活動自体も女性が活躍する場面が多いです。さらに、団体が支えている保護者もシングルマザーが多いです。
今まで、育児と仕事の両立は大変だ、とデータを元に分かってる風にしゃべっていましたが、子どもが生まれてから自分事として実感しました。育児と仕事の両立は、ものすごく大変です。両立できていることが奇跡的というか。
どう大変なのか、どのくらい大変なのかを身をもって理解したので、社員の働きやすさや女性のキャリア、男性育休など、経営者としてものすごく考えが深まりました。毎日反省しています。
困っている子どもたちを支えるのはみなさんの力が必要
ーー最後に、李さんのお話を聞いてLearning for All への寄付を検討し始めた方にメッセージをお願いします。
全国には「今この瞬間」困っている子どもがたくさんいます。Learning for All は、活動を通じてその子たちとたくさん繋がっています。しかし、私たちだけでその子たちを支えるのは難しいです。
一人でも多くの人に寄付という形でLearning for All の活動を応援していただき、困っている子どもたちに温かい手を差し伸べていただけると嬉しいです。
>>子どもの貧困を学習支援で解決する「Learning for All 」はどんな人におすすめ?その理由を徹底解説
まとめ:李さんの夢は、現場の声をきちんと政策に反映し、より多くの子どもを助けること
この記事ではLearning for All の代表 李 炯植さんに、子ども支援に関わり始めたきっかけ、団体設立について、寄付の使われ方についてなどをインタビューした内容を紹介しました。
内容をまとめます。
- ・Learning for All 代表の李さんが子ども支援に関わる理由の1つは、困難に直面する子どもが多い地域で育った当事者だから
- ・Learning for All への寄付は既存の支援がカバーできない「深刻な生きづらさを抱える子たち」に使われる
- ・李さんの夢は、日本を「現場の声をきちんと政策に反映できる」国にすること
李さんは、ご自身が肌で感じ取った「育つ環境による格差」で苦しむ子どもが少しでも減るよう、現場での活動、そして政策提言活動を続けています。
学習支援特化から子どもの包括的支援に方向転換をしたように、Learning for All はこれからも「子どもにとって何が一番必要か」を追求している団体です。
私たちが、進化を続けるLearning for All を支える方法の1つにお金の寄付があります。
子どもの支援は一朝一夕にはいかず、継続が必要です。また、現場の活動を政策提言まで持っていくにはさらに長い期間が必要になるため、持続的に支えられる「マンスリーサポーター(継続寄付)」がおすすめです。
Learning for All には、しっかりしたバックオフィスがあるため、みなさんの寄付は最大限に活用され現場にきちんと届くことと思います。
▼LFAについて他の内容も読みたい方はこちら(横にスクロールします)▼
Learning for All の団体データ
団体名 | NPO法人 Learning for All |
所在地 | 東京都新宿区新宿五丁目1番1号ローヤルマンションビル404号室 |
代表者名 | 代表理事 李炯植 |
活動内容 | 1.<一人に寄り添う> 困難を抱える6~18歳の子どもが自立するまでを、早期から切れ目なくサポートする、居場所づくり・学習支援・食事支援・保護者支援などを通した『地域協働型子ども包括支援』の実践。 2.<仕組みを広げる> 『地域協働型子ども包括支援』の全国展開を目指した、ノウハウ提供・共有プラットフォームの運営。 3.<社会を動かす> 現場での支援活動や全国の子ども支援団体とのネットワークづくりを通じた、普及啓発・人材育成・政策提言活動。 |