猛暑日は夏になると発生し、暑さによって熱中症を引き起こし、命を奪うこともある危険な現象です。
このような人体にとって危険な温度となることは昔からありましたが、現在のような頻度で現れることはなかったと記録されています。
猛暑が頻発するようになったのはいつ頃からなのか、猛暑日はいつから始まったのか、気候変動の歴史とともに紹介します。
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猛暑日とは?
日本は四季を持ち、夏には気温と湿度の上昇とともに暑苦しいと感じる日が何日も発生することがあります。
天気予報では連日、最高気温とともに暑さに対する注意と、熱中症への対策の呼びかけなどが行われますが、その中でも特に警戒を呼びかけられるのが「猛暑日」と予想される日の行動です。
この猛暑日には明確な規定がされており、気象庁では最高気温が35℃以上になれば猛暑日、30℃以上35℃未満であれば真夏日として予報を行います。
そもそもこの猛暑日という言葉は2007年まで気象庁が用いる予報用語には存在していませんでした。
それが2007年に行われた予報用語改正により、猛暑日と熱中症が新たに追加されることになりました。
なぜこのタイミングで追加されることになったのか、それには猛暑日に関しての経緯が関係しています。
猛暑日発生の変化と推移
猛暑日がいつから発生していたのか、それに関しての明確なデータは残っていません。
これは現在の気象庁に残る気象器機の観測記録が、その据付が完了した1875年からしかないためです。
気象観測は明治政府によって開始されたものであり、イギリス人測量士の協力を得て、気象庁の前身となる工部省測量司と気象器機が設置され、東京府下(現在の東京都)の三角測量が開始されました。
その観測結果によれば1875年には猛暑日が記録されており、35℃を超える日がすでにあったとされています。
残念ながら資料不足により、何日間猛暑日があったのかなどははっきりとしていないようですが、それでも真夏日や猛暑日がこの頃からあったことが分かります。
ただし毎年あったわけではなく、翌年の1876年、1878年に観測されたあとは、1886年まで観測された記録はなく、その後も5~7年周期で観測され、1900年と1901年に観測されてからは20年以上観測されない年が続きました。
気象庁では1910年以降、2019年までに各年で何日間の猛暑日が観測されたか、日最高気温35℃以上の年間日数を公開しています。
それによると、1912年までは猛暑日が現れたのは1日以下の日が続いたことが明らかになっています。
1914年に1日以上の猛暑日を記録していますが、それ以降は数年に1回そのような年が現れるようになりました。
多いときでは1929年に3日以上、1942年に5日以上を記録しており、これらの年は真夏日も多かったことから暑さが厳しい夏となりました。
それ以降は3日以内の年が続き、1年に数日猛暑日となる非常に暑い日がある程度でした。
しかし1994年になり、年間6日以上の猛暑日を記録しました。これは当時では観測史上最多日数であり、全体的な気温も高かったことから酷暑となっています。
またそれまでと一変し、1994年以降は3日以上を記録する年が1年から5年の間に現れ、多いときは4日以上を記録する年もありました。
そして2018年には7日以上の猛暑日を記録し、過去最多を更新しています。短い期間の間にそれまでに見られなかった頻度で猛暑日が現れるようになり、毎年訪れる夏を厳しいものにしました。
猛暑日に記録した最高気温の変化
最高気温についてもこの短い期間に変化が見られます。2018年は真夏日の日数も多い年ではありましたが、猛暑日や真夏日の日数だけでなく、その気温にも注目が集まりました。
気象庁が観測を開始してから最高となる41.1℃を記録したのが、この年です。加えて歴代の最高気温のランキングのうち、同率を含めて21の上位記録の中に7つの観測値が含まれています。
どれも40℃を超えており、猛暑日の中でも特に暑い日が頻発したことが分かります。
21位までのランキングの中に含まれる最も古いものが1933年の40.8℃であり、この頃から40℃を超えることはあったようですが、同じ年に各地で発生するようになったのは最近であり、1994年以降のデータがほとんどであることから短期間での変化が伺えます。
このような猛暑日の推移、そして最高気温の更新頻度の高さ、そしてそれに伴う生命への危険から、2007年に天気予報において猛暑日や熱中症を導入し、警戒を呼びかけることになったのです。
(出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」,2019)
(出典:気象庁「歴代全国ランキング」,2019)
(出典:気象庁「東京の夏日、真夏日、猛暑日、日最低気温が25℃以上の日の終日」,2020)
猛暑日はいつから始まった?
猛暑日の推移や増加については、これまで地球温暖化を含む気候変動との関連が証明されずにいました。
1875年以前にも猛暑日や猛暑に当たる年があったようであることは文献などにも残っているようですが、明確な観測記録などはなく、現在のように35℃以上というような規定もなかったので不明瞭な部分は多いです。
生命に危険を及ぼすような暑さであったことは確かなようですが、必ずしもこれが地球温暖化で起きたわけではありません。
地球温暖化は産業革命以降の工業化が大きな原因であり、それ以前には起こっていない現象です。
そうなるとそれ以前に起こっていた生命に危機を及ぼすほどの暑さとなっていた年は、別の影響が考えられます。
実際にこれまでの研究でも、大気は偶発的な「揺らぎ」を持っており、その影響で気温が急激に上昇することが分かっています。
そのため、これまでの猛暑日の増加や最高気温の上昇も、明確に地球温暖化が原因とまでは言い切れませんでした。
そんな中で日本における気象研究所や東京大学などとの共同研究により、新しい手法が生み出され、最近の猛暑日の増加、特に2018年の過酷な猛暑については、地球温暖化が関係していることが明らかになりました。
現在も研究は続けられており、さらに詳しい内容が今後明らかになると期待されていますが、1990年から2019年までの最近30年の猛暑日の変化は地球温暖化などの気候変動との関連が予測されています。
気候変動と人類の歴史
気候変動についてはここ50年ほどで徐々に注目されるようになりました。
それは地球温暖化による平均気温の上昇や、日本を含め各地を襲う豪雨や大型台風、あるいは少雨や干ばつ、猛暑や熱波などが気候変動による影響であると報告されたためです。
しかし気候変動自体は太古から起こっています。気候変動を起こす1つの要因は日射量であり、これは2万~10万年周期で変動します。
これにより長期スケールの氷期と間氷期を繰り返していることが明らかになっています。
この日射量変動は地球の自転軸の傾きや地球が太陽の周りを公転する移動が周期を持っていて、変動することが原因と考えられています。
つまり気候変動による気温の変化や災害に定義される現象は太古から起こっていたことが分かります。
しかし現在起こっている気候変動では、地球温暖化の傾向は説明することができず、これほど各地で頻発する災害や気象現象は異常であると言わざるを得ません。
これは人類が生活を豊かにする上で進めてきた工業化と、それによって排出された二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスによる地表の温度上昇が主因となり、異常気象とも言える気候変動を生み出していると見られています。
この二酸化炭素と地球温暖化の関連性は1889年にはスウェーデンの科学者によって指摘されていました。
しかしその時点ではそれほどの脅威とは考えられておらず、その深刻さが明らかになったのは1970年代になってからです。
科学の進歩により、科学者の間で地球温暖化が深刻な問題であると注目されるようになり、1988年になってやっと国際的な検討がなされるようになりました。
それが国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって設立された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)です。
現在も世界各地で気候変動による異常気象が観測されています。特に日本でも酷い猛暑となった2018年には世界各地が高温となり、被害が出ました。
例えばヨーロッパでは6~7月に少雨となり、降水量の減少で作物などに被害が及んでいます。その中でもスウェーデンでは高温と少雨により山火事が約50件発生しました。
インドでは6月と7月の2度に渡る大雨により、470人以上の犠牲者を出しています。アフリカ北部のサハラ砂漠では51.3℃、アメリカ西部のカリフォルニア州でも52℃という高温を記録し、生物が生息することが困難な気温を記録しました。
そして日本では2018年7月豪雨により220人以上が犠牲となり、同月には41.1℃を記録、度重なる真夏日や猛暑日により1,500人以上が熱中症によって亡くなっています。
さらに、2021年には北米及びヨーロッパ南部で、2022年にはヨーロッパ西部で、夏の顕著な高温を記録しました。
気候変動の歴史は非常に古いですが、人類の行いによって大きな被害が各地で起こる災害を引き起こし、生命を危険に曝す存在となったといっても過言ではありません。
(出典:環境省「気候変動適応法の施行について」,2018)
猛暑日を減らすために私たちができること
猛暑や気候変動は長い歴史の中で変化し、私たちの命を危険に曝すようになりました。
その中でも適応し生きていかなければいけないのですが、このまま何もしなければ、さらに厳しい夏が訪れるようになるかもしれません。
そうならないためにも私たちができることが、地球温暖化に対しての取り組みです。地球温暖化だけがすべての元凶ではありませんが、主因であることは確かであり、これは私たちの生活や経済など人間活動によって促進されています。
効果が期待できる取り組みとしては、地球温暖化が起こる原因となる温室効果ガスの排出を抑制することです。
節電や、公共交通機関を使用するなど私たちの生活の中で温室効果ガス、特に二酸化炭素を排出する行為はいくつもあります。二酸化炭素をまったく排出しない生活は送れませんが、抑制することは意識次第で可能です。
将来的に私たちや私たちの子孫が生きていける地球環境を作り、守っていくために、今できることを考え、実行に移していきましょう。
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