2019年にオーストラリアで起こった大規模な森林火災が話題となり、その被害などが広く認知されました。
森林火災は大規模化すれば恐ろしい災害であり、拡大を防ぐことが必要です。そのためには森林火災の原因を知るのは大切なことだと言えます。
今回は森林火災が起こる原因について解説します。
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森林火災はどこでも起こりえる災害
森林火災とは山や森林などで火が起こり、広範囲にわたって発生する火災のことです。山火事や山林火災、林野火災とも呼ばれるこの災害は、世界各地で発生しています。
2019年にはオーストラリアで大規模な森林火災が発生し、長期間に渡り広がり続けたことで、ニュースに連日取り上げられるなどして、規模や被害が伝えられたことで世界を震撼させました。
これは対岸の火事ではなく、日本でも起こりえます。
日本では海外ほど広大な森林はないものの、木々に覆われている山はあり、出火の仕方や燃え広がり方によっては大規模化する可能性は十分にあるのです。
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日本における森林火災
日本の森林火災は大きく報道されないだけで、毎年発生しています。そのほとんどが小規模なものですが、2012年から2017年の5年間で平均1,386件も出火しています。
森林火災により焼損した面積は平均779haと決して狭い面積ではありません。
過去には大規模な森林火災も起こっています。消火には自衛隊ほか、地元の消防だけでなく周辺都市の消防の手も借りて行われました。
多くの人員と機材を投入して時間をかけやっと消し止められましたが、多くの木々が焼損しました。
このような大規模な森林火災は風向きや風の強さによっては、周辺にある人家にも被害を及ぼし、避難を余儀なくされることもあります。
小規模な森林火災も、消火活動が遅れれば大規模になる可能性は十分にあります。森林火災は、それだけ危険な災害なのです。
(出典:農林水産省林野庁「日本では山火事はどの位発生しているの?」)
なぜ森林火災は起こるのか
危険な森林火災はなぜ起こってしまうのか、その原因は大きく分けると2つあります。それは自然発火と人為的要因です。
日本でも海外でも原因として挙げられるのは、このどちらかになります。日本での森林火災の原因は人為的要因による割合が大きく、自然発火は稀としています。
世界でも基本的には人為的要因による森林火災がほとんどですが、国や地域によっては自然発火による森林火災が起こりやすい場所もあります。
自然発火
自然発火による森林火災は、乾燥を起因とするところが大きいとされています。森林などが乾燥することにより、落ち葉や枯れ草の水分が失われます。
風が吹くことで枯れ葉同士が摩擦して種火が生まれ、他の乾燥した枯れ葉や枯れ草へと燃え移ることで、火災は広がっていきます。
この要因による森林火災は昔から起こっています。アメリカやオーストラリアでは自然発火がたびたび起こっており、今回のオーストラリアの大規模な森林火災も原因の1つは自然発火ではないかと言われています。
自然発火は昔からある原因ではありますが、現在はより起こりやすい状況にあります。
地球温暖化による気温の上昇や気候変動による異常少雨、干ばつにより乾燥が起こりやすくなっています。
乾燥により枯れ葉などの摩擦が起こる可能性が高くなり、発火しやすい環境にあります。それに加えて、森林火災の大規模化は風による飛び火が原因とされています。
燃焼形態によっては火災風や火災旋風が起こることがあり、それによって森林火災の燃え広がるスピードは上がり、火の粉をまき散らす飛び火が広範囲に広がって、新たな火災を起こす可能性が高まります。
アメリカのカリフォルニアなどでは、秋から冬にかけてフェーンと呼ばれる乾燥した高温の風が吹く現象が起こります。
これがフェーン現象と呼ばれる自然現象ですが、この風により枯れ草に摩擦が起こる可能性が増え、森林火災を起こせば火災を広範囲化させてしまいます。さらに地球温暖化や気候変動が重なり、大規模な森林火災へと発展するのです。
世界的に見ても、干ばつが起こっている地域で森林火災が起こりやすい傾向にあるという報告があります。
カナダやモンゴル、朝鮮半島でも干ばつが起こったことによる森林火災が確認されています。
自然発火として摩擦による発火以外にありえるのは、落雷による森林火災ですが、こちらは発生自体が稀であり、起こってもそれほど長く燃焼しないことが分かっています。
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人為的要因
人為的な要因による森林火災は、世界的に見ても多く、日本でも森林火災のほとんどは人為的要因であると報告されています。
農林水産省が発表している日本の原因別出火件数データによると、焚き火、火入れ、放火、たばこによる森林発火が具体的な原因だと言われています。
火入れは焼畑農業のことを指し、火の範囲が管理しきれなくなって森林火災へと発展します。
2013~2018年までの原因別出火件数の内訳は焚き火が403件で全体の29.1%、火入れが203件で16.6%、疑いを含む放火が140件で10.1%、たばこが82件で5.9%でした。
火遊びによる39件の2.8%も含めると全体で64.5%が人為的要因によって発生しています。
放火を除けば、どの要因も人間による火の不始末であり、管理しきれなかった結果です。
つまり人為的な要因による森林火災は、人が心がけることで発生件数を抑制することが可能なのです。
(出典:農林水産省 林野庁「日本では山火事はどの位発生しているの?」)
(出典:農林水産省林野庁「山火事の直接的な原因にはどのようなものがあるの?」,2018)
(出典:気象庁「気温について」)
(出典:気象庁「1.2 世界の最近の異常気象と気象災害」)
森林火災の原因は地球温暖化・気候変動に関係する?
森林火災は地球温暖化や気候変動と大きく関係を持っています。
自然発火の発生件数の増加や森林火災の大規模化・長期化は、地球温暖化による気温の上昇や気候変動による異常少雨・干ばつによるものであることには前述しました。
この影響は北極圏にも及んでおり、大規模かつ長期的な森林火災が確認され、アラスカやシベリアでは深刻な状況に陥っています。
森林火災が地球温暖化や気候変動の影響を受けて発生・深刻化するように、森林火災も地球温暖化や気候変動に影響を与えているのです。
例えば、2019年9月頃から2020年2月頃までオーストラリアで広がっていた大規模火災では、約400メガトンもの二酸化炭素が大気中に放出されました。
またアマゾンでは2019年8月に熱帯雨林で4,000近くの火災が確認されており、255メガトンにのぼる二酸化炭素だけでなく、一酸化炭素や窒素酸化物、非メタン揮発性有機化合物などが大気中へ放出された可能性があり、懸念されています。
これら温室効果ガスや有害物質の放出により、地球温暖化への影響や大気汚染・海洋汚染への危険性があると考えられています。
さらに熱帯雨林には「地球の肺」と呼ばれるほど、地球の二酸化炭素を大量に吸収し、酸素に転換する機能があります。
しかし火災による森林の減少により、そのような炭素吸収機能が低下する恐れがあります。
つまり地球温暖化や気候変動が森林火災を誘発し、森林火災は地球温暖化や気候変動を進行させるという悪循環が生まれているのです。
(出典:国立環境研究所「世界気象機関、北極圏で記録的森林火災が発生していると報告」,2019)
(出典:国立環境研究所「世界気象機関、世界各地で発生している森林火災の気候影響を報告」,2019)
(出典:国立環境研究所「世界気象機関、オーストラリアの壊滅的な森林火災について報告」,2020)
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森林火災は私たちの生活にも影響を及ぼす
森林火災は私たちの生活にとても大きな影響を与えます。
周辺で森林火災が起こった場合、人家に火が飛んでくる可能性があり、被害を受ける可能性があります。
山間部や山の麓に住む人にとっては、森林火災も恐ろしい災害であることは確かです。一方で山や森林が近くにない都市部などに、影響がないわけではありません。
各地で森林火災が起こることで、地球温暖化や気候変動が進行する可能性があり、都市部を含む各地の気温は上昇し、真夏日や猛暑日、熱帯夜の日数が増えて熱中症の危険性が高まります。
また降水量の不足による水不足や、局所的に大雨が降る豪雨とそれに伴う洪水や土砂崩れなどの二次災害が起こる可能性もあるのです。
陸地や海洋の生態系にも影響を及ぼします。森林火災に大きく関わる植物の減少は二酸化炭素の増加を起こし、さらに地球温暖化を進行させてしまいます。
これらの影響は一部であり、他にも様々な弊害が発生すると予想され、悪循環となっています。
地球温暖化や気候変動への効果的な対策ももちろん必要ですが、人為的な要因による森林火災を避けることも重要です。
どちらの対策も行うことで、この悪循環を少しでも早く断ち切らなければいけません。
森林火災について知識を深め、山や森林での火の管理には注意を払うことが私たちにできることの第一歩になります。