森林火災は、大小様々な規模で起こりますが、どのような規模でも生態系や環境に大きな影響を与えると言われています。
樹木は生物や環境を守っていますが、焼失したときどのようなことが起こるのか、この記事で解説します。
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森林火災が及ぼす影響とは
森林火災は火が草花や木々に燃え移り、周辺の植物を巻き込みながらその勢いを増していきます。
一度燃え出すと様々なものを燃やし、規模を拡大していくため、早期の鎮火が求められます。
また森林火災は生態系だけでなく環境などにも大きな影響を与えてしまいます。
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森林が持つ役割
樹木は光合成を行います。これは植物全般に言えることですが、光合成を行う際には二酸化炭素を吸収し蓄えます。これにより大気中の二酸化炭素の量が減少し、地球温暖化や気候変動の緩和につながります。
また多様な動植物の生息場所の提供や土壌の侵食、崩壊を防止し、水資源の涵養(自然にしみこませ養成すること)や、洪水の抑制など様々な役割があります。
このような点から、森林火災による森林の焼失は生態系、自然環境、そして地球温暖化と多方面に影響を与えます。
生態系への影響
森林の生態系の中では多くの動植物が生きています。国や地域によってその種や数は異なりますが、植物や菌類、小型哺乳類、昆虫と様々です。
環境省がインドネシア東カリマンタン州で1982‐1983年起こった大規模な森林火災に対してその影響を調査した研究があります。
その調査結果では森林火災が酷く、重度被害林と設定された場所において森林火災の影響を受けなかった無被害の森林に比べ、生物多様性の方が大きく減少したことが明らかになっています。
樹木は火災により焼失したばかりでなく、その後発芽し定着した植物は見られなかったとされています。
菌類に関しては無被害林と軽度被害林そして重度被害林との間で異なる菌類が形成されており、樹木や湿った環境に依存する種が存在すること、重度被害林では高温・乾燥耐性のある特定の種が発見されています。
哺乳類に関しては無被害林で明らかに樹上性の種が多く、重度被害林に移動するにつれて地上性小型哺乳類の密度が増えていくタイプと減っていくタイプに分類されました。
これは樹木が失われることで、地上で生活する小型哺乳類の中でも増えた種類と減った種類がいることにつながります。
昆虫に関しても無被害林から重度被害林に移っていくにつれて主の構成が異なっているのです。
またカミキリムシを例に取ると重度被害林では火災後に個体数などの回復は進んでい
ませんでしたが、軽度被害林では回復の兆しが見られました。
このような結果から森林火災が起こった場所では、その規模や焼け方によって生物多様性の減少など生態系に大きく影響することが判明しています。
さらに焼失した度合いが高いと、その後自然に回復していくにはかなりの時間がかかる、あるいは回復しない可能性もあるのです。
(出典:環境省「E-2 森林火災による自然資源への影響とその回復の評価に関する研究」)
自然環境への影響
自然環境への影響も顕著に現れます。先述したように樹木は水資源の涵養を行っています。例え大雨が森林で降っても樹木がその水を蓄えるため、一気に河川に流れ込むことはありません。これにより洪水を抑制することができます。
また雨が少ない時期には少しずつ水を放出することで、私たちにとっても大切な水資源を確保できることになります。
しかし森林火災が起こり、樹木が焼失してしまうとこの役割を果たせず、雨が降ればダイレクトに河川に流れ込み洪水の発生や、雨が少ない時期に水が枯渇する恐れもあります。
さらに樹木が根を張ることで土壌の侵食や崩壊を抑えていますが、雨などで土壌が緩めば土砂災害の発生につながります。
地球温暖化・気候変動への影響
今世界でも問題視され、森林火災の影響を大きく受けているのは地球温暖化や気候変動と言われています。
二酸化炭素は地球温暖化を進める温室効果ガスの1つですが、樹木が森林火災や伐採によって数を減らすことで吸収される二酸化炭素よりも排出される二酸化炭素の方が多くなり、温室効果ガス増加の要因の1つとなっています。
また、森林火災の要因の1つに自然発火があります。これは高温・乾燥により落ち葉の水分が失われ枯れ葉となり、枯れ葉同士で擦れあうことで火が起こり火災につながります。
自然発火による森林火災は昔からあるとされていますが、起こることは稀とされていました。
しかし近年、地球温暖化や気候変動によって異常少雨や干ばつが各地で起こるようになり、その影響で自然発火を要因とした森林火災が起こりやすくなっています。
それだけではなく、高温で乾燥した気候に風が変わることで、大規模化・長期化しやすい状況に陥っているのです。
地域によっては「フェーン現象」と呼ばれる高温で乾燥した風が風下に流れるという自然現象が起こり、森林火災が拡大しているところもあります。
大規模な森林火災により粒子状物質が大気汚染を引き起こし、樹木が燃えることで二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスも増加につながっています。
これにより地球温暖化がさらに進むこととなり、悪循環が生まれてるのです。
(出典:環境省「世界の森林を守るために」)
(出典:国立環境研究所「世界気象機関、北極圏で記録的森林火災が発生していると報告」)
(出典:気象庁「1.2 世界の最近の異常気象と気象災害」)
(出典:気象庁「気温について」)
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森林火災防止のために私たちができる対策は
森林火災のほとんどは人為的要因であり、人間の火の不始末が原因です。焚き火や火入れ、たばこなどの消し忘れから森林火災へとつながっているのです。
火災が起こりやすい場所で焚き火をしない、焚き火など火気の使用中はその場を離れず、使用後は完全に消火するといった対策を行う必要があります。
また火が燃え移り、広がりやすいことから強風時や乾燥時には焚き火や火入れをしないという予防策もあります。
火入れをする際には許可を必ず取ることや、たばこは指定された場所のみで喫煙し、吸殻は必ず消し投げ捨てをしないことで森林火災の発生を防ぐことにつながります。
自然発火については全てに対策ができるわけではないですが、地球温暖化を緩和する行動を取れば、現状のような自然発火や森林火災の大規模化・長期化を減らせる可能性があると言えます。
そのため地球温暖化への取り組みを行っていかなければ、今後さらに自然発火による森林火災は増えてくことになります。
地球温暖化の大きな要因は二酸化炭素の排出量にあり、私たちの生活の中からも排出されています。
排出量を抑えるにはクールビズやウォームビズによる冷暖房に頼らない暮らし方の工夫や、温度設定を控える、電化製品の主電源をこまめに切る、長時間使わないコンセントを抜くといった節電をすることができます。
節電をすることで、その電力を作る発電所の燃料の消費も抑えられるため、二酸化炭素の排出も抑制できます。
また外出の際には自家用車の使用は控えて、バスや鉄道、自転車を利用する、自家用車を使う時もアイドリングストップを心がけるなどの取り組みも有効です。
(出典:農林水産省林野庁「山火事予防に当たって注意することは?」)
(出典:気象庁「地球温暖化を緩やかにするために私たちにできること」)
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森林火災は生態系や環境だけでなく私たちの生活にも影響する
森林火災は生態系や自然環境、地球温暖化と幅広く影響を与えています。特に地球温暖化との悪循環が進行していけば、どちらもさらに深刻化していく可能性は高いです。
既に2019年にはオーストラリアでこれまでにない大規模森林火災が発生しており、その影響が懸念されています。
森林火災の大規模化や長期化、地球温暖化の進行は私たちの生活にも影響します。気候変動により大雨が降ることや台風の大型化が相次いでいることから、洪水や土砂崩れが頻発する可能性もあります。
また地球温暖化の進行により、私たちが住めない環境になってしまう恐れもあります。未来の生活、そして生態系や環境を守るためにも、私たちができることを知り、取り組んでいくことが大切です。