森林火災は日本を含め世界各地で起こる災害です。2019年から今なお続くオーストラリアの森林火災は大規模であり、被害が深刻であったことから衝撃が走りました。
近年発生している大規模な森林火災はなぜ起こるのか、その原因についてこの記事で紹介します。
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世界各地で起こる森林火災
近年世界では様々な国や地域で大規模な森林火災が起こっています。森林火災はこれまでも幾度となく発生してきました。日本でも毎年1,000~2,000件程度の森林火災が起こっています。
ただし森林火災が大規模化あるいは長期化することは稀であり、日本だけでなく海外でも大規模な森林火災は珍しいものとされていたのです。
しかし近年、相次いで大規模な森林火災が発生しています。世界気象機関(WFO)の発表によれば、2019年6月以降、北極圏で100以上の大規模かつ長期的な森林火災が確認されています。
北半球で5月から10月に森林火災が発生するのは珍しくありませんが、2019年は発生地の緯度や森林火災の規模と持続期間が異例だと言われています。
森林火災が最も深刻だったのはアラスカとシベリアです。アラスカでは2019年7月4日に過去最高気温の32℃を記録しています。この地域では異例の高温と乾燥状態により、大規模な火災が発生したものと考えられています。
また、シベリアの森林火災発生地域でも2019年6月の平均気温は長期平均より10℃近く高かったと報告されています。
カナダではオンタリオ州付近で大規模森林火災による粒子状物質が大気汚染を起こしています。さらに欧州でもドイツ、ギリシャ、スペインなどで森林火災が発生しました。
北極圏では温暖化が特に急速に進んでおり、温暖化と降雨量の変化が森林火災のリスクを高め、発生シーズンを長期化させていると推察されています。
(出典:農林水産省 林野庁「日本では山火事はどの位発生しているの?」,2018)
(出典:国立環境研究所「世界気象機関、北極圏で記録的森林火災が発生していると報告」,2019)
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森林火災が起こるメカニズム
昔から森林火災の要因は変わっていません。大きく分けると自然発火と人為的要因の2つになります。
大規模化や長期化する理由は別にありますが、根本は自然発火と人為的要因にあり森林火災を発生させています。
自然発火と人為的要因
自然発火は乾燥化が進むことで発生します。
乾燥が進行すると落ち葉や空気中の水分が失われ、枯れ葉は風などでお互いが擦れあうことで摩擦を起こし、火がつきます。
これが後述する燃え方や広がり方によって他の枯れ葉や枯れ草、木々などに燃え移ることで森林火災となります。アメリカやオーストラリアでは自然発火によってたびたび森林火災が起こっていました。
しかし近年は地球温暖化による気温の上昇や、気候変動による異常少雨や干ばつなどで乾燥化が起こりやすくなり、先述したように北半球などを中心に各地で大規模かつ長期的な森林火災が相次いで発生している状態です。
また、森林火災を大規模化させる原因として「フェーン現象」が挙げられています。フェーンとは風下側に吹く乾燥した高温の風のことであり、この風が吹いた地域の温度が非常に高くなる現象です。
高温で乾燥した風であるため、火災が起こっているところに吹けば、火の手を広げるだけでなく、別のところからも出火させる恐れがあります。
アメリカのカリフォルニア州では秋から冬にかけてフェーン現象が起こるため、森林火災が発生する要因の1つと見られています。
もう1つの人為的要因は人が起こす火に由来します。山や森林などで起こした焚き火や火入れ、放火、たばこの火が要因となり森林火災を起こしています。
意図的ではなかったとしても、火から目を離す、火をしっかり消していないといった行為により、枯れ草や木々に火が燃え移り、森林火災へと発展しているのです。
燃え広がる方法
自然発火あるいは人為的要因で火がついても燃え広がらなければ森林火災にはなりません。
森林火災の燃え広がり方は主に4つあります。
1つは地表火です。地表を覆っている枯れ葉や枝、枯れ草などが延焼し、風の影響などを受け、通常時で時速4~7km、強風やのぼり斜面で時速10kmの速さで燃え広がります。火種によって火が広がる原因はこれが主になります。
次に挙がるのは地中火です。地表火と違い、地中の泥炭層などの有機物に引火して燃え広がります。延焼速度は遅く、火力こそ強くないですが、地表に出ないことから消火しにくく、数ヶ月に渡って燃え続けることもあります。一度鎮火した森林火災が再び起こる原因にもなっています。
樹冠火
また樹冠火という燃え広がり方もあります。地表から火が燃え移り、通常時で時速2~4km、強風の場合時速15km程度で燃え広がります。
一度樹冠火となると、次々と樹木に移るため拡大しやすくなることから、森林火災が大きくなる要因の一つです。
最後に樹幹火ですが、こちらは地表火から樹木の幹に移り起こります。樹木の内部が燃えるため、樹幹火から樹幹火のように燃え広がることがありません。
基本的には地表火から樹冠火へと広がっていき、森林火災が拡大していくケースがほとんどです。
(出典:気象庁「1.2 世界の最近の異常気象と気象災害」)
(出典:農林水産省林野庁「山火事の直接的な原因にはどのようなものがあるの?」,2018)
(出典:気象庁「気温について」)
(出典:消防庁「林野火災の飛火延焼に関する研究」)
(出典:宮城県「林野火災による被害材の利用可能性について」)
(出典:愛媛県「6 林業」,2016)
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大規模な森林火災が発生した国
実際に森林火災が大規模化または長期化した国、あるいは現在も続いている国があります。ここからはいくつかピックアップして紹介します。
オーストラリア
オーストラリアでは、ほぼ毎年森林火災が発生していますが、2019年9月から相次いで森林火災が起こっています。
火災範囲や被害は甚大であり、特に壊滅的な森林火災となったのがニューサウスウェールズ州で起こったものです。死者は28人を超え、住宅や土地が焼失し、生態系や環境が破壊されるなどの被害が報告されています。
これは2020年1週目に記録された40℃超えの気温や長期の雨不足、強風などが重なり火災の危険度が最高レベルに達していたときに起こったことが、ここまでの規模にまで発展したと推察されています。
(出典:国立環境研究所「世界気象機関、オーストラリアの壊滅的な森林火災について報告」)
アマゾン
世界気象機関(IMO)の報告によれば、アマゾン川流域各地で森林火災が環境を悪化させていると言われています。
2019年8月1日~24日かけてアマゾンの熱帯雨林で4,000近くの森林火災が確認されました。この火災は干ばつの影響だけでなく、森林伐採との関連性が強いとされています。
相次いぐ森林火災による先住民の村落などの直接的な火災被害に加え、一酸化炭素や窒素酸化物、非メタン揮発性有機化合物などの大気中への放出が懸念されています。
(出典:環境研究所「世界気象機関、世界各地で発生している森林火災の気候影響を報告」)
カリフォルニア
先にも触れましたが、カリフォルニア州では例年秋頃にかけてフェーン現象により、高温で乾燥した強風が吹き、多くの森林火災が発生しています。
2018年11月にはロサンゼルス郡とベンチュラ郡に跨がる大規模な森林火災が発生しました。
これにより住宅地域を含む96,949エーカーの土地に延焼が広がり、道路封鎖や停電などのインフラへの多大な影響が起こっています。
これにより避難生活を余儀なくされた方が多数あったほか、大気汚染の影響が広範囲に及びました。
(出典:在ロサンゼルス日本国総領事館「カリフォルニア州における山火事」)
ギリシャ
2008年8月のギリシャでも断続的な森林火災が発生しています。原因は夏場の猛暑による影響であり、同年6月にはアテネ郊外イミトス山で大規模な森林火災が発生しています。
また2007年にはペロポネソス半島を中心にアテネ近郊やエビア島などで大規模な火災が発生し、多くの死者を出しました。
(出典:在ギリシャ日本国大使館 領事部「ギリシャ国内各地における多発的火事・山林火事発生の危険性」)
ロシア
ロシアでも大規模な森林火災が起きています2018年にはシベリアや極東ロシアでも推定9万ヘクタール超の森林火災が発生したほか、同年7月にロシア連邦サハ共和国の森林火災から発生した煙が北極海を超え、アラスカ、カナダ北西部、グリーンランド西海岸に到達するといった被害も出しています。
(出典:国立環境研究所「世界気象機関、北極圏を中心に大規模な森林火災が発生中と報告」)
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大規模な森林火災は日本でも起こりえる災害
世界各地では紹介したような大規模化あるいは長期化し、甚大な被害を出した森林火災が発生しています。
日本では大規模な森林火災がほとんど起こりませんが、全くないわけではありません。
例えば夏季に日本の中でも最高気温を記録することが多い岐阜県多治見市では数年に1度のペースで大規模な森林火災が発生しています。
気温や強風が吹きやすい地形であることから、大規模化する可能性がある地域でもあります。
しかしこれが数年に1度で済んでいるのは、関係者の日々の防災や火災が起こったときの迅速な鎮火作業のおかげです。どの火災も早期に鎮火して大規模になることを防いでいます。
日本では大きな災害にならずに済んでいますが、そもそも森林火災を起こさないよう、私たちが気をつけていく必要があります。
人為的要因だけではなく、自然発火ももとを辿れば気候変動などが原因で頻度が高くなっています。このような要因に対して防災や緩和といった取り組みをすることで、森林火災は防ぐことができることから、常日頃意識をして取り組んでいくことが大切です。