気候変動は世界中の国々で関心が高い社会課題です。
しかしこれは今に始まったことではなく、かなり前からその変化が観測され、対策などを行わなければいけないと声が挙げられてきました。
そこで国際的に採択されたのが気候変動枠組条約です。この条約では気候変動に対して国際的な枠組みを設け、取り組みを行っていくことを主としていますが、この記事では内容や背景について紹介します。
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気候変動による被害とは
現在、世界では地球温暖化とそれを主として起こる気候変動により、人々の暮らしや自然環境、生態系が影響を受けています。気候変動は世界各地で起こっており、それによる被害が甚大となっているためです。
日本でも最近はその影響が顕著に見られます。
日本でも様々な影響があり、近年でいえば2018年7月豪雨は極めて大きな被害をもたらした豪雨災害であるとされています。
6月28日から7月8日にかけて降り続けた雨は、その総降水量が四国地方で1,800ミリ、東海地方で1,200ミリを超えたところもあり、7月月降水量平均値の2~4倍もの雨が降った地域もあります。
また台風の大型による被害も深刻であり、同年には猛烈な強さとなり日本を襲った台風21号や、千葉に壊滅的なダメージを与えた2019年の台風15号と台風19号なども甚大な被害をもたらしています。
風や雨だけでなく、気温でも危険な状況が訪れています。夏場の真夏日や猛暑日の増加です。
2018年7月には1946年の統計開始以来、埼玉県熊谷市で観測史上最高となる41.1℃、東京都でも初めて40℃超えを記録しています。
世界に目を向けてもこれらの気候変動は深刻な被害をもたらしています。シベリアやアルメニア、アメリカ西部、アフリカ北部、トルコでは高温による被害が相次ぎました。
特に赤道近くのモロッコでは43.3℃、サハラ砂漠で51.3℃、アルメニアで42.6℃と非常に高い気温を記録しています。
またスカンディナビアでは高温に加えて少雨なこともあり、2018年7月に50件もの山火事が発生しています。
気候変動は高温になるだけでなく、南米のように低温になる地域もあり、ボリビアでは月平均が平均比-3℃となった地域もあるようです。
さらに日本のようにインドやヨーロッパ南部では大雨にも苦しめられ、インドでは犠牲者280人以上を出す大雨が降っています。
- 世界では地球温暖化とそれを主として起こる気候変動に苦しめられている
- 豪雨災害、台風の大型による被害
- 夏場の真夏日や猛暑日の増加
(出典:経済産業省 九州地方環境事務所「気候変動適応法の施行について」,2018)
気候変動枠組条約とは?
このような気候変動はかなり前から起こっており、国際的な問題として取り挙げられてきました。
ここまで深刻化したのは最近ですが、1992年には国際的に気候変動枠組条約(UNFCCS)を採択、1994年に発行し取り組みにあたっています。
気候変動枠組条約は、目的やこれまでの経緯などを簡単にまとめたものであり、現在は197カ国と地域の全国連加盟国が締結および参加しています。
気候変動枠組条約
この気候変動枠組条約の最大の目的は温室効果ガスの削減です。大気中の温室効果ガスの安定化を目的に、地球温暖化がもたらす様々な悪影響を防止するため国際的な枠組みを定めるために採択されました。
全締約国の義務として、温室効果ガス削減計画の策定と実施、そして排出量の実績公表が課されています。
さらに日本などの先進国の追加義務としては、途上国への資金供与や技術移転の推進なども含まれます。
これは共通だが差異ある責任(CBDRRC :Common But Differentiated Responsibilities)という考えに基づいており、先進国は途上国に比べて重い責任を負うべきとされています。
京都議定書
気候変動枠組条約を達成するため、2020年までは京都議定書を具体的な枠組みと定めてきました。
これは当時の気候変動枠組条約締約国のみ署名と締結が可能であり、気候変動枠組条約を脱
退すれば京都議定書も脱退すると定められています。
主には先進国のみ条約上の数値目標を伴う削減義務負うものとされ、2008~2012年の第一約束期間で日本は6%、EUは8%、ロシアやオーストラリアに数値目標を課すものでした。
しかし1997年に採択したものの2001年にはアメリカが離脱、2012年にはカナダが2議定書から脱退したことや、第二約束期間における関連規定の採択途法定期継続性の問題、キャリーオーバーの規定などから、未発効となっています。
- 気候変動はかなり前から起こっており、国際的な問題として取り挙げられてきた
- 気候変動枠組条約の最大の目的は温室効果ガスの削減
- 気候変動枠組条約を達成するため、2020年までは京都議定書を具体的な枠組みと定めてきた
(出典:全国地球温暖化防止活動推進センター「気候変動枠組条約」)
(出典:経済産業省「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)とパリ協定の関係について」)
(出典:国立環境研究所 社会環境システム研究センター「京都議定書第2約束期間の設定について何が問題になっているのか?」)
(出典:環境省 「気候変動の国際交渉」)
気候変動枠組条約の歴史的背景
気候変動枠組条約では京都議定書の課題など、いくつかの歴史的背景が見られます。
気候変動に関する国際的な歩みは、この条約が定められた1992年から始まっています。条約に基づいて国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が1995年から毎年開催されるようになり、温室効果ガスの削減に向けて議論が行われてきました。
そんな中で1997年に開催されたCOP3で締結されたのが京都議定書です。2020年までの温室効果ガス削減の目標を定める枠組みでした。
しかし先述した通りアメリカの離脱やカナダの脱退、そもそも枠組みとして気候変動問題に有効に対処できるのかという疑問が声として挙がるようになりました。
京都議定書では先進国と開発途上国を分け条約上の義務などに差異を設けており、日本を含む先進国のみ削減目標に基づく削減義務が課せられました。
その一方で中国やインドなどは具体的な数値目標や義務がなかったこともあり、新興国を中心として温室効果ガス排出量が急増し、先進国よりも開発途上国のほうが多く排出するようになりました。
アメリカが離脱したのはこれが理由です。主要排出国であるアメリカや新興国が削減義務を負っていないことから、有効な対策を取ることが難しくなってきたことにより、京都議定書に変わる新たな枠組みの構築が急がれました。
パリ協定とは
このような状況の打開に向け構築されましたが、京都議定書に変わる新しい枠組であるパリ協定です。
このパリ協定は歴史上初めて全ての国が温室効果ガス削減に取り組むことを約束した枠組みです。
そのポイントとしては世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追及しています。
そのためできる限り早期に世界の温室効果ガスの排出量をピークアウトして、今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成することが盛り込まれています。
法的拘束力を有し、先進国、途上国関わらず国別貢献を5年ごとに提出および更新し、先進国は総量削減目標を継続、途上国も時とともに全経済の削減と抑制目標を目指すとされています。
パリ協定までの経緯
パリ協定は京都議定書に変わる枠組みとして2011年に開催されたCOP17から交渉がスタートしました。
それ以前の2010年には京都議定書の第二約束期間(2013~2020年)に代わるカンクン合意がなされていますが、法的拘束力はなく、先進国は総量削減目標があるのに対して、途上国は国別緩和行動を示す程度に留まっています。
一進一退の交渉は続き、4年の歳月を経て2015年のフランス・パリで開かれたCOP21で閣僚級の詰めによる連日連夜の交渉により、採択されたのがこのパリ協定でした。
先述したように、歴史上初めて先進国・途上国の区別なく気候変動対策の行動をとることを義務付けた歴史的合意として、公平かつ実効的な気候変動対策の協定となりました。
- 気候変動枠組条約では京都議定書の課題など、いくつかの歴史的背景が見られる
- パリ協定は歴史上初めて全ての国が温室効果ガス削減に取り組むことを約束した枠組み
- 歴史上初めて先進国・途上国の区別なく気候変動対策の行動をとることを義務付けた歴史的合意として、公平かつ実効的な気候変動対策の協定となった
(出典:外務省「わかる!国際情勢」)
(出典:経済産業省「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)とパリ協定の関係について」)
温室効果ガス削減に関する取り組みを
温室効果ガス削減に関する枠組みの策定や取り組みには、これまで国際的な議論や努力によって今のあり方が形作られています。
パリ協定の締結後、日本でも少しずつ削減の成果が見られ、温室効果ガスの総排出量は年々減り続けています。
それにはパリ協定以外にもたゆまぬ取り組みがあり、その成果が出始めたとも言えますが、協定も一助となったと考えられます。
しかし国際的な取り決めがなされ、各国が対策を講じてもそこに住む人々が生活の中で意識的に取り組まないのであれば、温室効果ガスの抑制目標の達成は叶わないでしょう。
私たち自身もこの取り組みや地球温暖化の現状を知り、できることを1つずつ行っていくことが大切です。
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