近年日本では大型の台風の通過や豪雨、猛暑、暖冬など、気候変動による様々な被害に見舞われています。 これらは地球温暖化を原因とするものばかりですが、地球温暖化が続けばいずれ取り返しのつかない状態に陥ってしまいます。
そうならないために、日本では気候変動適応法などの法律が制定されています。この記事ではその気候変動適応法について、内容や締結までの経緯などを説明します。
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日本の気候変動の現状
豪雨、猛暑など日本において気候変動によりどのような影響が発生しているのでしょうか。 特に被害が大きかった近年の災害で言えば、2018年の7月豪雨や2019年に大型となって到来した台風15号や19号による被害などが挙げられます。
特に2018年の7月豪雨は過去の豪雨災害と比較しても極めて大きいものであり、7月の月降水量平均値の2~4倍にまで増加している地点もあるほどです。もちろんこれだけではなく、夏期の水による災害は各地で猛威を振るっています。
また気温についても大きな変動が起こっており、1946年の統計開始以来、過去最高となる41.1℃を埼玉県熊谷市で2018年7月23日に観測しています。
東京都では初めて40℃を記録するなど、全国的に猛暑となった年でもあります。世界各地で異常気象が確認されていますが、日本でも気候変動により温度の上昇が続いています。
夏だけでなく冬でも暖冬となるケースも増えており、地球温暖化の影響を受け、様々な気候変動や異常気象が起こっているのが現状です。
(出典:九州地方環境事務所「気候変動適応法の施行について,2019)
- 地球温暖化を抑えるために、気候変動適応法などの法律が制定された
- 2018年の7月豪雨は7月の月降水量平均値の2~4倍に増加した地域がある
- 異常気象によって、豪雨や猛暑、暖冬になるケースが増えている
気候変動適応法とは締結までの背景
地球温暖化は自然環境や私たちの生活に様々な影響や被害を出しています。
これが続けば日本自体も、また世界的にもさらに深刻な状況となることは明らかです。 地球温暖化をこれ以上進行させないための対策を講じるため、世界で様々な会議や取り組みがなされています。
日本でも取り組みを行うための法整備などが実施され、その一つが気候変動適応法です。 気候変動適応法は地球温暖化防止法に関連する法律であり、同様に地球温暖化を防止するために制定されています。
近年の地球温暖化による気温の上昇や大雨の頻度の増加、農作物の品質低下、動植物の分布域の変化、熱中症リスクの増大など気候変動による影響が各地で起こっており、今後さらに長期化・拡大化する恐れがあると懸念されています。
この気候変動に対処し、国民の生命・財産を将来にわたって守り、経済・社会の持続可能な発展を図るために、温室効果ガスの長期大幅削減への取り組みや、予測される被害の防止、軽減を量り気候変動に適応して、関係者の連携や協議のもとで一丸となって取り組むことを目的として制定されました。
このような背景を元に気候変動への適応を初めて法的に位置づけ、これを推進するための措置を講じようとしたことから、この法律が現在も運用されています。
(出典:衆議院「気候変動適応法」)
(出典:環境省「気候変動適応法」)
- 地球温暖化防止のため、日本だけでなく世界で様々な会議や取り組みが行われている
- 気候変動適応法は地球温暖化防止法に関連する法律であり、同様に地球温暖化を防止するために制定されている
- 地球温暖化による気候変動が各地で起こっており、今後も長期化・拡大化する恐れがある
適応をめぐる国際情勢
気候変動への適応を巡っては日本だけでなく、世界に目を向けても様々な国際情勢がありました。 その根幹にあるのは、2010年12月に開催された第16回気候変動枠組条約締約国会議(COP16)です。
COP16では中長期の適応計画プロセスの開始と適応委員会の設立などを含む「カンクン適応枠組み」が合意されました。 さらに2015年12月に行われたCOP21では、条約の下で全ての国に適用される新たな法的合意文書として「パリ協定」が採択され、2016年11月に発効されました。
これについては日本も締結しています。 パリ協定では温室効果ガス排出削減に関して世界全体の平均気温の上昇を2℃以内に抑える目標などに加え、適応能力の拡充と強靭性の強化といった適応に関する目的も規定されています。
他にも締結国は、情報共有や制度的な措置の強化、科学上の知識の強化を含む適応に関する行動を推進する協力を強化すべきなど、取り組みを進めていく上での必要事項をまとめたものでもあります。
このような枠組みの設置や条約の締結に伴い、イギリスやフランス、ドイツ、アメリカ、韓国でも適応に関する法整備が行われました。
イギリス
イギリスでは気候変動対策や環境政策に関する法整備として、2008年に気候変動法を制定しています。 この法律は「クリーン成長」のペース加速を目指した包括的な政策及び提案を戦略の位置づけとしています。
それにより2050年までに温室効果ガスの削減目標を1990年比で80%以上に設定し、気候変動委員会の設置や気候変動リスク評価、気候変動適応プログラムの計画立案と実施、公益の事業に対する適応報告指令などについて定めているのがこの法律です。
フランス
フランスでも同様に、気候変動の対策や環境政策に関する法整備を行っています。そのために2009年に制定されたのが環境グルネル法です。 フランスではこの法律を目標達成に向けた全体的な枠組みと解決法の明確化をするものと位置づけています。
その上で2050年までに1990年比で75%削減を目標とし、気候変動対策を始めとして生物多様性の保全や廃棄物管理などの環境政策を定めており、これをもとに政府は国家気候変動適応計画を策定することとしています。
ドイツ
ドイツでは気候変動適応に関しての法律は制定されていません。 しかし戦略としては、全ての関係者に必要な方向性を示す長期的な気候変動対策の基本方針を定め、2050年までに1990年比で80~95%の削減を目指して取り組んでいます。
連邦政府決定した適応計画による対応を行っており、電力確保を再生可能エネルギーへ転換したり、電力コストを抑えつつ需給バランスを確保したりするなど、対応を進めています。
アメリカ
アメリカでは法律ではなく、2つの大統領令で対応しています。2013年には気候変動の合衆国への影響に対する準備に関する大統領令を、2015年には連邦政府の持続可能性のための今後10年における対策に関する大統領令を出しました。
これにより各政府関係機関はホワイトハウス環境諮問委員会が作成する実施方針に基づき、適応政策を策定しています。
また国家気候評価の公表1年以内に適応計画を改訂することも規定に定めています。 これらの下で2005年比で80%以上の削減を目標とし、政策及び投資を導く戦略的な枠組みの提供と位置づけ、対策や施策の方向性を提示しています。
韓国
韓国では2010年に低炭素グリーン成長基本法を制定しています。温室効果ガスの主となる気体は二酸化炭素であるため、その原料となる炭素を抑制することを目的としています。
低炭素社会実現に向けた取り組みや気候変動影響評価、気候変動適応マスタープランの策定、各省庁・地方公共団体による詳細思考計画の策定なども定め、取り組みに当たっています。
(出典:環境省「気候変動適応法」,2018)
(出典:環境省「各国の長期戦略の概要について」)
- 2010年12月に第16回気候変動枠組条約締約国会議(COP16)が開催
- 2015年12月のCOP21ではパリ協定が採択、2016年11月に発効され日本も締結
- パリ協定は、世界全体の平均気温の上昇を2℃以内に抑える目標や、適応能力の拡充と強靭性の強化といった適応に関する目的も規定されている
気候変動は世界で深刻な問題に
気候変動は世界で深刻な問題となっています。熱波や洪水、干ばつといった自然災害による被害や、山火事や土砂災害などの二次被害なども各地で起こっています。
このような自然災害で命を奪われる人や住む場所を追われる人も大勢います。あるいは被害を免れたとしても、農作物の不作などにも繋がり食料不足に直面する人も少なくありません。
このまま地球温暖化、気候変動が進めばさらに深刻な事態に陥る可能性もあり、実際に2050年、そして2100年には大きな被害が出るという専門家の予想も出ています。 このような深刻な事態を回避するためにも、地球温暖化そして気候変動への対策を講じ、取り組みを進めていく必要があります。
政府が主体となって行っていかなければ変えられないこともありますが、私たちの生活から見直さなければいけないこともあります。
私たちにできることが何なのか考え、行動に移していくことも結果として、現在を、そして未来を守っていくことに繋がるため、さらに深刻な問題となる前に対処していきましょう。
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