日本の子ども

きょうだい児とは?抱えている問題や行われている支援を知ろう

「きょうだい児とは何?」
「きょうだい児のどんな点が問題視されているの?」

このように感じている方に向けて、本記事では下記の内容を紹介します。

  • ・きょうだい児とは?
  • ・きょうだい児が抱える問題
  • ・きょうだい児のために私たちができること

きょうだい児とは、障がいを持ったきょうだいがいる子どものことです。

きょうだい児に関する話題がメディアやインターネットで取り上げられることもありますが、未だ完全には認知されていません。

きょうだい児について詳しく知りたい方は、ぜひご一読ください。

きょうだい児とは

きょうだい児とは、重い病気や障がいを持つ兄弟や姉妹がいる子どもを指します。きょうだいが持っている障がいには、発達障がいや知的障がい、体の一部が不自由な身体障がいが挙げられます。

親でもなく、当事者でもない彼らだからこそ、抱えている悩みや問題があります。

また、障がいを持った子どもの入院が必要なとき、親が「付き添い入院」を、病院から事実上強制されることがあるのです。付き添い入院で親がいない間、きょうだい児は孤独感を抱くことがあり、ときにストレスを生み出します。

「付き添い入院」については下記の記事をご覧ください。
>>付き添い入院とは?断れない・しんどい理由と私たちにできること

きょうだい児とヤングケアラーの違い

きょうだい児は、ヤングケアラーになりうる対象の1つです。

ヤングケアラーとは、日常生活で家族の介護や世話、家事を行う18歳未満の子どものことです。家庭の事情により、あまり学校に通えなかったり、自由な時間が取れなかったりする事態が問題視されています。

親が仕事で忙しいなどの理由で、障がいのあるきょうだいの世話をしなければいけないきょうだい児がヤングケアラーにあたります

ヤングケアラーについて、詳しく知りたいという方は、以下をチェックしてください。
>>ヤングケアラーを支援したい!ボランティアや必要な支援、支援団体を紹介

なぜきょうだい児は漢字ではないのか

きょうだい児の「きょうだい」がひらがなで示される背景には、漢字表記が関係しています。本来、「きょうだい」は漢字で「兄弟」「兄妹」「姉妹」「姉弟」と表され、なかでも「兄弟」が代表的です。

しかし、漢字で表してしまうと、兄と弟などに限定するようなイメージを与えてしまいます。すべてのきょうだい児に使えるよう、ひらがな表記となりました。

きょうだい児を取り巻く社会問題とは

きょうだい児として生活していると、社会において様々な問題に直面します。場合によっては、きょうだい児というだけで理不尽な差別を受けることも否定できません

ここでは、きょうだい児を取り巻く社会問題を解説します。

  • ・友人・恋愛・結婚などの人間関係に影響がある
  • ・仕事など将来の選択肢の幅が狭まる
  • ・様々な経験をする機会が少ない
  • ・精神的に不安定になりがち
  • ・世間の偏見に悩まされる

具体的に説明します。

友人・恋愛・結婚などの人間関係に影響がある

きょうだい児を取り巻く社会問題の1つは、人間関係への影響です。

きょうだい児は、病気や障がいのあるきょうだいについて理解されず、周囲と距離ができてしまう場合があります。ひどい場合、きょうだいに障がいがあるというだけでいじめを受けることもあります。

また、自分の兄弟に病気や障がいがあることを友人や恋人に話せず、1人で悩んでしまいがちな部分も見られます。恋人や結婚相手には問題がなくても、相手の両親に反対され結婚や交際を諦める事例もあり、人間関係におよぶ影響は深刻です。

仕事など将来の選択肢の幅が狭まる

きょうだい児は、将来の選択肢の幅が狭まってしまう場合もあります。

具体例の1つとして、進学先や就職先を自ら制限してしまうケースがあります。きょうだいの世話をする親の負担を減らそうと実家の近くに進学や就職をし、本来希望していた進路先を諦めてしまうのです。

また、親が亡くなったあと、きょうだいを支えるために仕事や住む場所を変えざるを得ないきょうだい児もいます。

様々な経験をする機会が少ない

きょうだい児の親は、障がいを持った子どもの世話に時間を取られがちです。そのため、きょうだい児は、友人との交流や習い事など、様々な経験をする機会が少なくなってしまっています

また、きょうだいの障がいによっては行動が制限されて、遠出が難しかったり、行けない場所があったりします。

精神的に不安定になりがち

きょうだい児は、精神的に不安定になりやすい傾向にあります。障がいを持って生まれたきょうだいが優先されてしまうことが多いため、親に甘えることを我慢し、孤独感を抱いているきょうだい児が少なくありません。

また、障がいを持ったきょうだいから暴力を受けるケースもあります。

様々な障壁の中で生活することにより、きょうだい児は精神的に不安定な状態になりやすいのです。

世間の偏見に悩まされる

世間から向けられる、きょうだい児への偏見も深刻です。

障がいを持ったきょうだいのことを周囲に驚かれる場合があります。また好奇の目で見られたり、嫌がられたりすることもあるのです。

また、世間では、「病気や障がいのあるきょうだいをサポートするきょうだい児」という美しい姿が好まれる傾向にあります。しかしそれが、きょうだい児にネガティブな気持ちを出してはいけないというプレッシャーを与えているのです。

きょうだい児に対して行われている支援

様々な問題と直面しているきょうだい児のために、支援を行う団体や企業があります。

ここでは以下を紹介します。

  • ・きょうだい児を含めた、医療的ケア児を持つ家庭への支援
  • ・きょうだい児同士の交流の場を提供
  • ・きょうだい児への相談支援
  • ・きょうだい児の啓発活動

きょうだい児を含めた、医療的ケア児を持つ家庭への支援

障がい児保育や支援に取り組む支援団体「フローレンス」では、障がいを持った子どもとその家族を支える活動を行っています。

例えば、仙台で行われているプロジェクトでは、映画館を貸し切りにして、普段映画館に行けない医療ケア児とその親やきょうだいを無料招待しました。今後は水族館に行くイベントも企画されているそうです。

他にも、医療的ケア児家庭に無料で看護師がお弁当や食材を届ける「医ケア児おやこ給食便」を実施しています。普段障がいを持つ子どもの世話や食事の準備に忙しい親が、ゆっくり休んだり、きょうだい児と過ごす時間を生み出しています。

フローレンスの活動内容や評判について詳しくは下記の記事をご覧ください。
>>【怪しい?】フローレンスの気になる評判や実態は?寄付先として信頼できるかを徹底解説

きょうだい児同士の交流の場の提供

ほかのきょうだい児と出会い、様々な悩みを共有するウェブサイトやオンラインサービスを提供する支援団体があります。

きょうだい児のリアルな体験や本音の語り合い、イベントを通した気軽な交流が行われています。1人で悩みを抱えているきょうだい児にとって、同じ境遇の仲間と出会う場は、心強い支えになるのです。

きょうだい児への相談支援

臨床心理士や社会福祉士などプロのカウンセラーが対応する相談支援サービスを提供している企業もあります。

ひとことできょうだい児と言っても、抱えている悩みは人それぞれです。きょうだい児によっては、複雑な問題に直面することも考えられます。

身近な人に相談しづらい内容を相談したり、公的支援などにつなげてもらうことができます。

きょうだい児の啓発活動

一部の支援団体では、SNSを中心に、きょうだい児に関する啓発活動を行なっています。

具体例として、きょうだいとの思い出や、思い出の品について画像やイラストを投稿する活動があります。

また、きょうだい児を支援したい人が、きょうだい児にメッセージを送れる取り組みも行われています。周囲の人たちとの交流は、きょうだい児にとって悩みの解決や精神面への支えにつながるのです。

きょうだい児支援のためにわたしたちができること

本記事では、きょうだい児について解説しました。ここで紹介した内容をまとめます。

  • ・きょうだい児とは、重い病気や障がいのある兄弟や姉妹がいる子どものことを指す
  • ・きょうだい児は問題を抱えているため、私たちができる範囲で手を差し伸べることが大切である
  • ・きょうだい児を支援している企業、団体があり当事者たちの助けになっている

きょうだい児の中には、自身で抱えている問題を誰にも相談できないまま過ごしている人もいます。きょうだいのことで悩んでいる方がいるときは、相手の話に耳を傾けるだけでも十分な支えになるでしょう。

悩みを抱えるきょうだい児の役に立ちたいと考えている方は、彼ら彼女らが抱える問題について知ることからはじめてみてはいかがでしょうか

きょうだい児を含め、サポートが必要な家族のことで悩んでいるヤングケアラーもたくさんいます。
「ヤングケアラーについて詳しく知りたい」という方は、下記の記事をご覧ください。
>>ヤングケアラーとは?子どもが家族の世話を担う実態・事例を解説

また、日常生活で悩みを抱えているヤングケアラーを支援するための活動も存在します。
「ヤングケアラーへの支援」については、以下をチェックしてください。
>>ヤングケアラーを支援したい!ボランティアや必要な支援、支援団体を紹介

この記事を書いた人
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