動物虐待は身近なところから起こり得る問題です。それはペットとして飼っている動物の世話を怠るだけでなく、野生に生息している動物を殺傷したり、苦痛を与えることを指すため、容易に起こることがあります。
動物も命があり、意思を持っていますが、人を相手にすれば弱い立場となるため、彼らを守るためのルールが必要です。
この記事では、動物虐待に関する法律について紹介します。
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動物虐待とはどんな行為?法律上の定義
動物虐待とは、正当な理由なく動物に苦痛を与える行為全般を指します。環境省が定める動物愛護管理法では、以下のような行為が虐待とみなされます。
- ・殴る、蹴るなど暴力を加える
- ・必要なエサや水を与えない(ネグレクト)
- ・病気やケガを治療せずに放置する
- ・不衛生な環境で飼育する
虐待の対象となる「愛護動物」とは、飼育されている哺乳類・鳥類・爬虫類(犬・猫・牛・豚・ウサギなど)を指します。
動物虐待の具体的な例は、以下の記事で解説しています。
>>動物虐待とは?種類がある?どんな行為が虐待になるのか解説
動物虐待を取り締まる法律と罰則
ここでは、虐待から動物を守る法律や罰則はどのようなものがあるのかを解説します。
動物愛護管理法とは
動物愛護管理法は、2000年に施行された法律です。
1973年に制定した「動物の保護及び管理に関する法律」の名称変更がされ、一般的な飼い主に対しての規定も設けた「動物の愛護及び管理に関する法律」として生まれ変わりました。
動物愛護管理法は、基本原則として以下のように定められています。
すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めています。
(引用:環境省「動物愛護管理法の概要」)
つまり虐待をせず、適正な飼養や管理を行うことを定めた法律なのです。
2020年に至るまで3回の法改正がなされ、殺傷や虐待の事件や事例、時代の流れに合わせて内容の追加や変更が行われてきました。
一貫して行われているのは、「動物の飼い主等の責任」「飼養及び保管に関するガイドライン」「動物取扱業者への規制」などです。
また法律である以上、違反した場合には罰則がかけられます。これは規制を受ける動物取扱業者だけでなく、一般的な飼い主に対しても発生します。
それだけ動物の命への軽視が問題となっており、特に遺棄に関しては、保護や引き取り件数と合わせて深刻な状況になりました。
動物愛護管理法が施行された4年後の2004年の調査では犬猫の引き取り数は41万8,413匹にものぼり、そのうちの39万4,799匹が殺処分されています。
これは全国の合計数であり、それだけの犬猫が保護される、あるいは飼い主から引き取りを依頼されて保健所や動物愛護センターで保護されています。
しかし、引き取り数が増えれば殺処分せざるを得ない状況になってしまうのです。
このような問題から動物取扱業者だけでなく、一般的な飼い主の責任の所在を記し、違反者に罰則を与えることで厳罰化しています。
(出典:環境省「動物愛護管理法の概要」)
(出典:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」,2018)
犬や猫の殺処分についての記事は、こちらを参考にしてください。
>>【年間2400頭】犬の殺処分の現状とゼロを目指す活動、私たちにできることを解説
>>保護猫を殺処分から救いたい!おすすめの寄付先や信頼できる団体の選び方を紹介
動物虐待や遺棄の禁止と罰則
虐待の禁止
動物虐待は、動物愛護管理法で以下のように定められています。
動物虐待とは、動物を不必要に苦しめる行為のことをいい、正当な理由なく動物を殺したり傷つけたりする積極的な行為だけでなく、必要な世話を怠ったりケガや病気の治療をせずに放置したり、充分な餌や水を与えないなど、いわゆるネグレクトと呼ばれる行為も含まれます。
なお、食用にしたり、治る見込みのない病気やけがで動物がひどく苦しんでいるときなど、正当な理由で動物を殺すことは虐待ではありませんが、その場合でもできる限り苦痛を与えない方法をとらなければなりません。
(引用:環境省「虐待や遺棄の禁止」)
遺棄の禁止
世話を怠るという意味では、遺棄も虐待の一つと考えることができます。世話をすることを放棄し、飼い主としての責任を果たさないことは、動物を危険にさらし、飢えや渇きなどの苦痛を与えることになるのです。
また野生化することで、近隣住民にも多大な迷惑をかけるだけなく、農業被害や外来種の場合は生態系の破壊などの問題にもつながります。
このように殺傷や虐待、遺棄は深刻な問題です。
動物虐待の罰則
虐待や遺棄を犯罪とし、違反した場合には罰則として懲役や罰金を処します。
行為の内容 | 罰則内容 |
---|---|
正当な理由なく動物を殺した・傷つけた | 5年以下の懲役または500万円以下の罰金 |
暴力や酷使により動物を衰弱させるなどの虐待 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
飼っていた動物を捨てる(遺棄) | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
※愛護動物とは、牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひるが該当。一般的に飼育している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類が当たる。
※2020年12月時点
(出典:環境省「虐待や遺棄の禁止」)
動物虐待の罪と罰則はこちらの記事でも詳しく解説しています。
>>動物虐待の罪とは?罰則についても解説
実際にあった動物虐待の事例
動物虐待のニュースはメディアで取り上げられることがあります。
それはどれも凄惨なものであり、虐待の事例はいくつも存在しています。
1973年から2017年までに動物愛護管理法に違反し、通常受理された件数を見ると2000年以降は徐々に増加していき、2000年に14件だった違反件数は2017年には109件まで増加しています。
これは虐待だけの件数に留まらず、殺傷や遺棄も含まれており、どれも動物に深刻な影響を与えるものです。
過去に起きた動物虐待のなかで、報道されたものからいくつか事例を挙げて紹介します。
北海道登別市で起きた動物虐待
北海道登別市で起きた虐待事件では、白骨化した5匹の猫の頭部やふん尿を放置したまま、9匹の猫を飼っていた女性がいました。
適正な管理をしないまま繁殖によって猫が増え、世話ができなくなったことで猫をそのままにして引越し、定期的に来ていた餌やりにも来なくなったという事件です。
女性は動物愛護管理法違反で書類送検され、猫は胆振総合振興局に引き取られています。
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神奈川県川崎市で起きた動物虐待
神奈川県川崎市では、24匹もの猫を飼っていた女性が、マンションの一室で排泄物を適切に処理しないまま不衛生な環境で飼っていたため虐待と認定されました。
排泄の処理だけでなく、病気の治療なども行わなかったため、24匹のうち1匹は死亡し、痩せている猫、下痢をしている猫が複数いたということです。
その後、動物保護センターに猫は保護されましたが、2018年に猫を取り返そうと女性が動物保護センターに侵入するという事件にまで発展しています。
当人が動物虐待に当たらないと考えていても、法律に定める適正な飼養や管理が行われていなければ、それは虐待であり犯罪です。
そのような状況は明るみになっていないものも含めると、より多くの事例があるのかもしれません。
(出典:環境省「動物の虐待事例等調査報告書」,2018)
滋賀県甲賀市で起きた動物虐待
2020年3月、滋賀県甲賀市水口町の山中で、尻にボウガンの矢が刺さった猫が保護される事件が起こりました。矢は深く刺さっており、猫は大きな苦痛を負っていたと考えられます。
警察は近隣住民への聞き込みを行い、さらにボウガンの購入履歴をたどるなどの捜査を重ねた結果、54歳の男性が動物愛護管理法違反の疑いで逮捕されました。
その後、5月20日には甲賀区検がこの男性を略式起訴し、甲賀簡易裁判所は5月29日付で10万円の罰金命令を出しました。
この事件は、道具を使った動物虐待の悪質さと、法的に罰せられる現実を示す典型的な例として注目されました。
愛知県名古屋市で起きた動物虐待
2021年10月動物虐待の疑いで59歳の男性が逮捕されました。容疑の内容は、前年の2020年6月3日、当時暮らしていた住宅で子猫を浴槽に入れ、足が届かない状態で1分29秒間泳がせたというものです。
さらに問題となったのは、男性がこの虐待行為を自らSNSに投稿していたことです。動画には、片手で子猫の首を押さえつけるような場面もあり、多くのユーザーの通報により問題が発覚しました。
この事件は、SNS上での“見せる虐待”が法に触れる犯罪行為として処罰されることを強く印象づけました。
(出典:環境省「動物の虐待事例等調査報告書」,2022年)
動物虐待や逮捕事例は、以下の記事でも紹介しています。
>>動物虐待の逮捕件数は?逮捕事例も合わせて紹介
動物虐待を見つけたら?通報先と対応方法
動物の虐待を発見した場合は、速やかに通報・相談を行ってください。
発見した場所の所在地に応じて、以下のいずれかに連絡するのが基本です。
- ・都道府県・市町村などの自治体の動物愛護担当窓口
- ・緊急性が高い場合は、最寄りの警察署または110番通報
なお、明確に虐待と断定できない場合でも、「虐待の疑いがある」「不適切な飼育環境に見える」と感じた時点で、迷わず自治体に相談してください。早期の対応が、動物の命を救うことにつながります。
令和5年5月現在の各自治体の連絡先は、環境省「地方自治体動物虐待等通報窓口一覧」を参考にしてください。
また、以下の記事でも通報の方法について解説していますので、参考にしてみてください。
>>動物虐待を見つけたときの通報先や手段とは
動物虐待から守るために法律を理解しよう
動物は私たちと共生する生命であり、パートナーとしても存在しています。
特にペットなど、私たちとともに暮らす動物の命は、飼っている人の責任のもと守られなければいけません。
動物愛護管理法は、そのための法律であり、遵守すべき規定です。
動物を飼うということは責任が伴い、法律に則った適正な飼養と保管の上で、それぞれの家庭に合ったコミュニケーションが必要となります。
動物虐待による違反者とならないため、そして何より動物たちの命を守るためにも、法律をしっかりと理解し遵守していくことが大切です。