日本では、多くの食べ物が生産・消費されています。
しかし生産した全ての食べ物が消費されるわけではなく、購入されず消費期限が来たことで廃棄されるものや購入しても食べきれず廃棄される食品ロスもあるのです。
これが問題となっており政府は食品ロスを削減するため、食品ロス削減推進法を制定し取り組みを行っています。
ではこの食品ロス削減推進法とはどのようなものなのか、国内で行われている取り組みとともに紹介します。
食品ロスの問題とは?世界や日本の現状、行われている取り組みとは
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食品ロス削減推進法とは
食品ロス削減推進法の正式名称は「食品ロスの削減の推進に関する法律」です。2019年10月1日に施行された新しい法律でもあります。
その概要は食品ロスの定義や施策による食品ロス削減の推進、基本的な方針や施策などが盛り込まれています。
そして食品ロスの削減に関して国や地方自治体などの責務などを明らかにしつつ、基本方針の策定や食品ロス削減に関する施策の基本事項を定め総合的な推進を目的としているのです。
- 食品ロス削減推進法の正式名称は「食品ロスの削減の推進に関する法律」
- 食品ロスの定義や施策による食品ロス削減の推進、基本的な方針や施策が盛り込まれている
- 食品ロス削減に関する施策の基本事項を定め総合的な推進が目的
(出典:消費者庁「食品ロスの削減の推進に関する法律の概要」,2019)
(出典:農林水産省「「食品ロスの削減の推進に関する法律」の施行及び本年10月の食品ロス削減月間について」,2019)
日本の食品ロス(フードロス)の現状は?
日本では2015年時点で年間2,842万トンの食品廃棄物が出ており、そのうち「まだ食べられるのに廃棄される食品」と定義された食品ロスは646万トンとされています。
この食品ロスを国民一人当たりに換算すると約139g、ちょうどお茶碗一杯分の食品が毎日捨てられていることになります。
また、世界では飢餓・食糧不足が問題となっており、食糧援助量が2017年時点で年間380万トンも必要とされていますが、日本の食品廃棄物などはその1.7倍に相当しています。
これらの食品ロスをこのまま続けていれば環境への負荷が増大し、資源の枯渇などを起こす可能性もあります。
そのため食品ロスの削減が早急に求められており、農林水産省や消費者庁、環境省を中心として、施行された食品ロス削減推進法のもとに取り組みを進めています。
食品関連事業者に適用される食品リサイクル法
食品ロス削減に関してはここ数年で取り組みが増加していますが、食品関連事業者に向けては食品リサイクル法が適用され、食品ロス削減の取り組みが以前から行われてきました。
食品リサイクル法は2001年に施行され、2007年に改正されています。
この法律は食品の売れ残りや食べ残し、あるいは食品の製造工程で大量に発生している食品廃棄物に関して発生抑制と減量化を行い、最終的に処分する量を減少させることを目的としています。
また処分となってしまったとしても飼料や肥料などの原材料として再利用するなど、食品循環資源の再生利用を促進する目的も盛り込まれており、削減と再利用を推進する取り組みが進められてきました。
- 日本では年間に2,842万トンの食品廃棄物がある
- そのうち「まだ食べられるのに廃棄される食品」と定義された食品ロスが646万トン
- 農林水産省や消費者庁、環境省を中心として、施行された食品ロス削減推進法のもとに取り組んでいる
(出典:農林水産省「食品リサイクル法」)
(出典:消費者庁「食品ロスの削減の推進に関する法律の概要」,2019)
(出典:環境省「我が国の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値(平成28年度)の公表について」,2019)
(出典:消費者庁「食品ロス削減関係参考資料」,2019)
食品ロス削減に向けて行われている政府の取り組み
食品関連事業者に対しては上記のように以前から取り組みが行われていましたが、消費者を含め、幅広い食品ロス削減のための活動が本格的に行われています。
政府ではこの活動のため予算を組み、問題を知ってもらうための様々な取り組みを幅広く行っています。
ここからはその取り組み内容の一部を紹介します。
消費者への普及啓発
消費者への普及啓発のため、具体的な数値などを用いた食品ロスの現状を記した啓発用リーフレットや、削減の取り組みを実践することでどれだけの効果があるかの啓発資材を作成しています。
他にも消費者庁ウェブサイトでの情報の集約と発信、レシピ投稿サイトを通した食品ロス削減レシピの発信、期限表示の理解の促進による早期廃棄の抑制などを行っています。
商習慣の見直し
食品を取り扱う事業者に対して、商習慣を見直す働きかけも行っています。
過剰在庫や返品といった製造業や卸売業、小売業に跨る課題について、農林水産省は「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」を設置し、取り組みの支援を行っています。
他にも納品期限の緩和や賞味期限の年月表示化など、賞味期限の延長を促すことで食品ロスが出にくい取り組みも進められています。
食品ロスの削減につながる容器包装の工夫
食品ロス削減につながる容器包装の工夫は3種類あります。
1つは醤油など液体系の商品について、容器の構造を2重構造にするなど工夫を行い鮮度保持をすることで長持ちさせるような取り組みが行われています。
また、切り餅などは個包装に酸素を吸収させることで水分蒸散を抑える構造を用いて、賞味期限の延長をはかっています。
他にも1人前ずつの個包装を用いることで食べ残しを防ぐような工夫が見られる商品もあります。
気象情報等を用いた需要予測の共有
気象の変化はその日の需要の変動をもたらします。
そのため経済産業省と日本気象協会が連携して気象情報などを活用したサプライチェーンの無駄を削減する「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」を実施しています。
これにより需要予測を行い、売れ残りによる食品ロスゼロの実現に向けた取り組みが行われ一定の効果が確認されています。
小売店舗における消費者への啓発
消費者に取り組みをアプローチしやすい最も身近な場所が小売店舗です。
そのため大手流通業者と連携して、店頭での消費者への啓発資材による啓発が行われてきました。
例えば商品棚に陳列の手前から購入する「てまえどり」と名付けたキャンペーンを実施しています。
これは値引きシールの隣に、啓発を呼びかけるステッカーを貼り付けることで、消費者の購入行動に働きかけ食品ロスを削減するという取り組みです。
地方公共団体との連携
地方公共団体との連携も行っています。2015年以降、食品ロスに対する取り組みを行う都道府県と市区町村は順調に増加しており、2018年時点で都道府県では63.8%から100%に、市区町村でも10.9%から57.5%にまで増えています。
地方公共団体によって取り組み内容は様々ですが、最も多いのは住民や消費者への啓発であり、839もの団体が行っています。
他にも「おいしい食べ物を適量で残さず食べきる運動」に賛同する地方公共団体により食べきり運動などを推進する全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会も設立されています。
学校での取り組み
地方公共団体の取り組みにもつながりますが、学校での食品ロス削減の取り組みも行われています。
食に関する指導や啓発はもちろんのこと、学校給食で食品ロスを出さないための地産地消の推進や、生産過多の食品を用いた食品ロス削減献立の開発などを行っています。
家庭での食品ロス削減の促進
家庭での食品ロスを減らすため、食品ロスの計量を行い、タイプ別に実践のおすすめポイントを紹介した冊子を作成して、全国の地方公共団体に配布しています。
このような計量で約2割、加えて取り組みを行うことで約4割の食品ロスが削減したことが判明しました。
また、家庭での使いきり・食べきりの啓発促進も行われています。家庭でできる食品ロスを減らすポイントやコツについての情報発信が主な取り組みです。
災害時用備蓄食料の有効活用の促進
災害用の備蓄食料は賞味期限切れになることがあり、これらが食品ロスとして廃棄されることがあります。
そのため地方公共団体、家庭へそれぞれ呼びかけることでこれらのロスを削減する取り組みが行われています。
地方公共団体へはフードバンクへの寄付による有効活用、家庭では食べたら補充していくローリングストック法を紹介・啓発していくことで賞味期限が近い備蓄食料を消費していくことを進めています。
フードバンク活動
先に出てきたフードバンク活動は生産や流通、消費を行う過程で発生する未利用食品を食品企業や生産者である農家から寄付をしてもらい、必要としている人や施設へ提供する取り組みです。
このような活動を行うことで、生産段階で出た余りものや、未利用食品を有効活用することができるので、食品ロスを減らすことに繋げられます。
- 消費者を含め、幅広い食品ロス削減のための活動が政府により行われている
- 2018年にはフードロスへの対策を行う都道府県では63.8%から100%に増加
- 小売店舗や家庭、学校など様々なコミュニティに働きかけている
(出典:消費者庁「食品ロス削減関係参考資料」,2019)
私たちも日ごろの生活を見直してみよう
食品ロスは私たちの生活に直結した問題であり、日ごろの生活の中でも出ている可能性があります。見直してみると、もしかすると食品ロスにあたるものがごみの中に含まれているかもしれません。
そのような食品ロスは日ごろの生活を見直すだけで削減することができます。できることは小さなことかもしれませんが、一人ひとりが意識することで食品ロスは大幅に削減できる可能性があるのです。
今一度私たちの日ごろの生活を見直し、食品ロスを削減できることを見つけ、取り組んでいくことが重要です。
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