世界では様々な職業が存在しています。その労働形態もいくつもあり、自分の能力に見合った職業に誰もが就けることが望ましいですが、実際には一部の人々は働きたくても仕事に就けず、失業している状況にあります。
国連サミットで採択された開発目標SDGsでは、そのような問題を解決するために目標8「働きがいも経済成長も」という目標を定めました。
この記事では、SDGs目標8「働きがいも経済成長も」についての説明と世界の失業率について紹介します。
持続可能な開発目標・SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」のターゲットや現状は?
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世界の失業率を減らして経済成長するための必要な雇用
各国の経済は、その国に住み、労働に従事する一人ひとりによって支えられています。
長期的な経済成長を持続的に続けていくためには、現在ある産業をより多様化、生産性の高い産業の拡大を行っていく必要があります。
産業の多様化や拡大をするということは、そこに従事する人々の収入や健康、教育、就業機会などにおいて、適切な生活を営んでいける環境を構築していくことが必要となります。
収入や労働環境など、様々な面で平等な待遇がなされなければ、長期的な経済成長は望めません。
現在、そして将来的に持続可能な経済成長を目指すため、国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)では目標8に「働きがいも経済成長も」という目標と12のターゲットを掲げ、取り組みが行われています。
SDGsにおいては「包摂的かつ持続可能な経済成長およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進する」ことを目指しています。
しかし、その目標を達成する上で、まず問題となっているのが失業率です。
世界では2008年に起こったリーマンショック以降、失業率が非常に高くなった時期がありました。
その後回復した国もあれば、失業率が上がった国もあり、その国の情勢などに左右され変化しています。
世界全体で経済成長をしていくのであれば、この失業率の改善は優先度の高い課題の1つと言えます。
(出典:国際開発センター「目標8 働きがいも経済成長も」,2018)
世界の失業率の現状
世界の失業率の推移と近年の状況について見ていきます。
下記は日本の失業率の推移とグラフです。(国際比較)
(出典:総務省統計局「失業率の推移」,2018)
(出典:労働政策研究・研修機構「4-1 ILO定義失業率」,2018)
2008年、世界ではリーマンショックの影響を受け、2009年の失業率が全体的にも跳ね上がりました。
主要7カ国の2009年の失業率を見たとき、日本は5.1%、アメリカが9.3%、イギリスが7.6%、ドイツが7.7%、フランスが9.1%、イタリアが7.8%、カナダが8.3%でした。
日本は他国に比べても失業率は低めなことが分かりますが、2008年までの失業率に比べれば高くなっています。
アメリカやフランスは10%に迫る勢いで失業率が上昇しており、イギリスやドイツ、イタリアもこの時点では7%後半とやや高めの失業率です。
日本は翌年の2010年には同程度の失業率でしたが、2011年以降は改善し、2011~2013年は4%台、2014年以降は3%に推移し、2016年には3.1%となりました。
同様に失業率が改善したのはアメリカとイギリス、ドイツです。特に驚異的な回復を見せたのはアメリカです。2010年には9.6%まで上昇したものの、2011年以降は回復に転じ、2016年時点で4.9%と4%以上も改善しました。
イギリスとドイツも7%後半から、徐々に回復し、2016年時点でイギリスが4.8%、ドイツが4.1%となりました。
さらにドイツに至っては、リーマンショックの影響で失業率が上昇したわけではなく、それ以前に2005年の11%強の失業率から、回復傾向にあったため2009年にはほぼ微増程度で、順調に回復した形になります。
一方でフランスやイタリアは、2009年以降失業率は上昇してしまい、2016年時点でフランスは10.1%、イタリアは11.7%となりました。
イタリアは2014年に12.7%まで上昇して、その後1%改善しましたが、それでも高い状況であることは変わりません。
失業率を世界全体、先進国、新興国、途上国に分けて2016年のデータを見てみましょう。
先進国では6.3%、新興国と途上国は5.6%、世界全体では5.7%でした。あくまで区分ごとの割合なので全体的にも5%~6%代の失業率になっています。
国際労働機関(ILO)では2016年までのデータしか公開されていないため、現在はさらに変動していますが、世界人口に対して6%の人々が完全失業状態にあるということになります。
※2017、18年は予測値。貧困勤労者比率とは極度のまたは中程度の貧困状態、つまり、1人当たり所得額または1日当たりの消費額が3.10ドルに満たない勤労者が就業者に占める割合。貧困勤労者の世界総計には先進国は含まれていない。
(出典:国際労働機関「ILO定期刊行物最新版-2017年に失業者数は世界全体で340万人増」,2017)
各地域の失業率の動向
国際労働機関(ILO)では世界経済の動向を毎年公表していますが、最新の2019年度版では各地域の状況がまとめられています。
この報告によると2018年時点で、世界の33億人いる就業者のうち、大半が経済保障や物質的福祉、機会平等の点で不十分な状況にあり、世界の労働市場では雇用の質の低さが大きな問題となっていることを指摘しています。
そのような状況であることから、不十分な労働条件を受け入れるしかなく、過酷な労働を強いられている人は数百万人にも上ることを明らかにしました。
また失業率は2016年と比較すると0.6%改善して5.0%にはなったものの、失業者数は1億7200万人にものぼり、今後2年ほどこの状況が続くと予測されています。
地域別の状況としては、日本が属するアジア太平洋では失速しながらも経済成長は持続しており、失業率は世界平均を下回っていることから、2020年までは3.6%前後で推移するものと見られています。日本自体も失業率は継続的な低下傾向を予測しています。
一方で隣の欧州・中央アジアでは、北欧、南欧、西欧の失業率はいずれもここ10年来で最も低く、2020年も低下すると予想されています。
東欧も2020年にかけて毎年0.7%ずつ低下すると予想されていますが、高齢化により労働力人口も同時に低下することからくる失業率の低下であると見込まれています。
中南米・カリブやアラブ諸国の失業率は思わしくありません。中南米・カリブでは景気回復しているにも関わらず、2020年の雇用成長率は1.4%と予想されており、失業数値の改善は比較的鈍くなっています。
アラブ諸国も地域の失業率は2020年まで7.3%と高止まりすると予想されています。特に現状は女性の失業率が男性の3倍、若年層の状況も不均衡に悪く、年長層の失業率の4倍に達しています。
北米では失業率が最低水準の4.1%と予想されていますが、雇用成長や経済活動は2020年から下降が予測されています。
ただ速報値ではありますが、アメリカの2019年12月の失業率は北米地域の予測を上回り、3.5%とさらに低い水準にあることも分かっています。
アフリカの失業率は4.5%と低い水準ではあるものの、安全保障や人並みの賃金、社会的保護の欠く質の低い仕事に就くしかない労働者が多いことから、失業率よりも質の高い雇用の創設が課題となっています。
(出典:国際労働機関「ILO新刊:世界の雇用の主な課題は劣悪な労働条件」,2019)
(出典:日本貿易振興機構「2019年12月の米失業率は3.5%と約50年ぶりの低水準を維持、雇用者数の増加幅は前月から縮小」,2019)
新型コロナウイルスが失業率に大きな影響
2020年に入ってから世界では新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を古い、様々な国や地域で感染が拡大、多くの死者を出す結果となりました。
その影響は経済にも影響を与えており、2020年の失業率の予測を覆して、失業率の増加が見られます。
日本でも経済活動ができず、失業者は増加傾向にあります。企業の経営への影響から新卒者の内定取消しなども起こるほどです。
これに対して政府や自治体は賃金・休業手当に関する相談や、解雇・雇止めに関する相談などの窓口を設け、対応にあたっています。
失業した人への総合支援資金の準備なども行われており、対策が行われていますが、今後の同行次第で雇用について、そして失業率の変化がどうなるか、先行きは見えない状況です。
(出典:都留市「新型コロナウイルス感染症に関する労働者・失業者への支援」,2020)
SDGs目標8「働きがいも経済成長も」の達成は失業率の改善が必須
この記事ではSDGs目標8「働きがいも経済成長も」についての説明や世界の失業率を紹介しました。
SDGsにおける持続可能な経済成長や働きがいのある人間らしい雇用を生み出すためには、失業率の改善は必要不可欠です。
すべての人が質の高い雇用のもとで就業し、収入や労働条件において公平な環境で働けることができなければ、各国の、そして世界の経済成長は望めません。
日本や海外で失業率が低下しているとはいえ、まだまだ課題はあります。
この問題はすぐに改善することは難しいですが、政府や企業だけでなく働く私たち一人ひとりもまずは目を向けてみることから初めてみてはいかがでしょうか。
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