2017年時点、日本では輸入する原油の88%を中東地域に依存しています。
しかし中東地域の政情は、不安定な状態にありエネルギーを安定して確保することが難しくなっています。
この記事では2030年、2050年に向けた日本のエネルギー政策を紹介し、再生可能エネルギーへの移行のための取り組みと課題、私たちができる省エネアクションなどをお伝えします。
(出典:経済産業省資源エネルギー庁公式サイト)
持続可能な開発目標・SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のターゲットや現状は?
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日本のエネルギー事情とは
資源に乏しい日本は、エネルギーの供給のなかで石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が8割以上を占めていて、そのほとんどを海外から輸入しています。
エネルギー自給率は1割にも満たず、他のOECD諸国と比較すると大変低い水準です。
資源を他国に依存しなければならない日本は、国際情勢の影響なども強く受け、エネルギーを安定して確保することが課題といえます。
(出典:経済産業省資源エネルギー庁公式サイト)
近年の電源構成の推移は?
日本の発電の歴史をみると、時代に翻弄されている日本のエネルギー事情が見えてきます。1965年頃までは水力発電に頼り、1973年の第一次オイルショックまでは石油、その後は石油に変わって石炭と液化天然ガス(LNG)、原子力が担ってきました。
しかし、2011年の東日本大震災後、原子力発電の割合がほぼゼロになり、その大半をLNGがカバーしています。
日本の電源構成は2018年の時点で、液化天然ガス、石炭、石油を合わせた火力発電で87.4%を占め、再生可能エネルギーは6.9%で2009年の1.1%からわずかに伸びているにすぎません。
2018年7月に政府から出された「第5次エネルギー計画」では、水力と再生可能エネルギーで22%から24%、原子力を20%から22%の伸びを2030年の目標としています。
そして、化石燃料に替わるエネルギーとして水素エネルギーも期待されています。
水素は地球上で一番軽い気体で、無色・無臭です。水素は気体で存在しますが、-253℃まで冷やすと、液体になります。
水素エネルギーは二酸化炭素を出さずクリーンで、地球上の様々な資源からつくることができ、エネルギーを水素に変えて貯めることができるというメリットがあります。
再生可能エネルギーで余った電力を有効に活用して水素を製造すれば、CO2を全く排出しないエネルギーにすることも可能になります。
既に様々な実証実験がおこなわれ、将来のエネルギーの中心になることが期待されています。
(出典:経済産業省資源エネルギー庁公式サイト)
2030年に向けエネルギーミックスを目指す
2011年の東日本大震災後、原子力エネルギーの利用が止まり、日本の温室効果ガス排出量は増加しました。
2013年度には過去最高となる14億トンの温室効果ガスを排出しましたが、2017年度には東日本大震災前の排出量を下回りました。しかし、「パリ協定」に基づいて決められた温室効果ガスの削減目標を実現するには、さらなる努力が必要といえます。
2020年以降の温室効果ガス削減に向けた「日本の約束草案」は、後述するエネルギーミックスと整合的なものとなるよう、実現可能な削減目標として2030年度に2013年度比マイナス26.0%(2005年度比マイナス25.4%)の水準にしています。この目標を実現するために、現在「3E+S」の取り組みを行っています。
3E+S(エネルギーミックス)とは?
「3E+S」とは、安全性(Safety)を大前提とし、自給率(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を並行して行うという考え方で、各エネルギー源の強みが最大限に活かされ、弱みが補われるようにエネルギーや電源を組み合わせることが必要だということで、「エネルギーミックス」と呼ばれています。
2018年に発表された「第5次エネルギー基本計画」では、エネルギーの「3E+S」の原則をさらに発展させ、より高度な「3E+S」を目指し、2050年に向けて「温室効果ガスを80%削減する」という高い目標を設定しています。
以下、計画の詳細を見てみましょう。
①再生可能エネルギー
太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも役立つ重要な低炭素の国産エネルギー源です。
国は電源構成比率22~24%のエネルギーミックス水準を2030年までに実現したいという目標を立てています。
②原子力発電(原発)
原子力発電への依存度をできるかぎり低減するという方針ですが、2030年に実現を目指すエネルギーミックス水準は電源構成比率20~22%です。
東日本大震災時の影響による社会的信頼の回復がまず不可欠となるでしょう。
③石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料
2030年に実現を目指すエネルギーミックス水準は電源構成比率56%となり、災害リスクへの対応強化を図ることが必須です。
エネルギー転換の過渡期においては、主力エネルギー源として必要であり、よりクリーンなガス利用にシフトし、非効率な石炭火力発電は減らしていく方で進めることが重要です。
④省エネルギー
2030年に実現を目指すエネルギーミックス水準は実質エネルギー効率35%減で、2018年6月に国会で成立した「改正省エネ法」や支援策を一体として実施することで、徹底した省エネを進める方針です。
その他、各分野の技術革新を行うことで省エネを進め、脱炭素化に挑戦するため、水素や蓄電池などの技術開発も進めるとしています。また「分散型エネルギーシステム」の構築と、それによる地域開発を推進します。
(出典:経済産業省資源エネルギー庁公式サイト)
再生可能エネルギーの導入の拡大のための取り組みと課題
日本は再生可能エネルギーの導入で世界の後進国になっています。
経済産業省資源エネルギー庁の資料によると、再生可能エネルギーの導入は、2016年の時点でドイツでは30.6%、イギリスでは25.9%もの発電電力量比率を占めています。
一方日本は、15.3%にとどまり、水力を除いた再生可能エネルギーはわずか7.2%です。
再生可能エネルギーを長期安定的な主力の電源にしていくためには、以下にあげる4つの問題を解決していく必要があります。
再生可能エネルギーのコストの高さ
FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)によって、再生可能エネルギー電気を買い取るための必要経費の一部は、電気料金として国民が広く負担しています。
国民負担を抑えつつ、再生可能エネルギーを最大限に導入していくには、ほかの電源と比較して競争力のある水準まで発電コストを下げなくてはなりません。
安全性
再エネを主力電源化していくには、長期的に安定した電源にすることも必要です。
再エネの導入が進む一方で、太陽光発電の設置に関して地域とのトラブルも増加しているため、安全の確保や地域との共生をはかったり、太陽光発電設備を適切に廃棄するための対策などに取り組んだりしています。
再生可能エネルギーを電力系統へつなぐ際の問題
日本の電線は、安定的に強い風が吹く場所などに整備されているとは限らず、そのため、再生可能エネルギーの発電所を電線につなぐことができない問題が起こっています。
発電量が不安定
最後に、再生可能エネルギーは発電量が不安定というデメリットがあります。
太陽光や風力などは発電量が天候や季節に左右され、コントロールすることが困難です。条件に恵まれれば、電力需要以上に発電する場合もある反面、放置しておくと需要と供給のバランスがくずれて停電などに見舞われる結果になります。
発電量が不足する場合には不足分を火力発電などで補い、余る場合には再生可能エネルギーの発電量を調整して抑えたりしています。
そのため、電力システム全体の改革を行うことで、電気が余った地域から不足している地域へと広域的に調達をはかるなど、より柔軟で効率的な調整ができるようになります。
再生可能エネルギーの普及のために私たちにもできることがある?
日本は先進国でありながらも、再生可能エネルギーの導入率では他国に後れをとっています。
二酸化炭素を排出せず、クリーンなエネルギーを安定して確保することが求められており、再生可能エネルギーの普及を目指す取り組みが各地で行われています。
しかし、活動を継続して行うには資金や人材がまだまだ足りていません。
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