2030年までに電力を全世界に普及させるためには、化石燃料への依存から脱し、太陽光や風力、地熱など代替的なエネルギー源に移行することが重要です。
すべての開発途上国でインフラを整備し、クリーンなエネルギー源を提供できる技術開発が待たれます。
世界のエネルギーの現状や課題、再生可能エネルギーへの移行、今後の展望について解説します。
持続可能な開発目標・SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のターゲットや現状は?
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SDGsの目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」が目指す世界
私たちが必要な教育や医療を受け、よりよい暮らしをするためには最低限のエネルギーへのアクセスが必須です。
しかし、18世紀なかば以降は産業革命が起こり生産活動や移動を中心に発展を続けてきた私たちの経済活動は、今なお石炭・石油・天然ガスといった有限の化石燃料に大きく依存しています。
こうした化石燃料は資源が有限なだけでなく、得られる地域が限られているために価格の抗糖化や需要のひっ迫、供給の滞りなどの問題も発生します。
そのため、太陽光や水力、風力、地熱といった自然から得られる無限のエネルギーを資源にし、国や地域に適した再生可能エネルギーや効率的なエネルギー利用の構築が望まれているのです。
SDGsの目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」では、脱化石燃料、そして持続可能性と安価で信頼できるエネルギーのサービス構築を目指すとともに、後発途上国、内陸途上国におけるインフラ拡大と技術向上に向けた国際協力の必要性などが掲げられています。
そして、世界中のすべての人々が、クリーンで安価なエネルギーにいつでもアクセスできること、それがSDGsの目標7です。
(出典:国際開発センター公式サイト)
世界のエネルギーの現状や課題
世界銀行、国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、2017年時点で世界の30億人以上の人々が化石燃料で生活を送っていて、現在の取り組み速度のままでは、100年後には化石燃料の資源が枯渇するといいます。
化石燃料は気候変動を助長する最大の要素であり、全世界の温室効果ガス排出量の約60%をも占めていることを考えると、太陽光・水力・風力・地熱といった無限のエネルギー資源、再生可能ネルギー資源への移行が急務です。エネルギーの現状を知り、課題を模索してみましょう。
(出典:国際エネルギー機関(IEA) 報告書「世界エネルギ―見通し2017」)
(出典:国際連合広報センター公式サイト)
エネルギーの安定供給
新興国を中心とする目覚ましい経済成長に伴い、エネルギー需要も大幅に増加しています。
安定した経済活動や快適な生活にはエネルギーの安定供給の確立が欠かせませんが、そのためには再生可能エネルギー資源の促進、エネルギーの効率向上、技術革新などが求められています。
しかし、今でも世界では化石燃料源が主役であることより、各国は、化石燃料をベースとした安定供給の確保を意識しなくてはなりません。
経済成長と脱炭素化の共存を目指すには、化石燃料から再生可能エネルギーの利用への移行だけでなく、省エネルギーの改善努力、革新的な技術開発、インフラ投資を推し進める政策が必要です。
途上国の電力不足
途上国における電力不足は依然として深刻です。例えば、2018年にはサブサハラ・アフリカの電力不足のコストは、同地域のGDPの約2%に及ぶと試算されています。
サブサハラ・アフリカで電力アクセスのない人口は、同地域の人口の約62.5%に相当する6億900万人と言われています。
また、南アジアでは人口の20%、東アジア・環太平洋で 人口の3.5%の人に電力アクセスがありません。インド1カ国で、電力アクセスのない全世界人口の30%に当たる2億7000万人を抱えています。
(出典:国際連合広報センター公式サイト,2018)
再生可能エネルギーへの移行
電力需要が増え続ける中で、全世界で再生可能エネルギーの生産を大幅に拡大する必要が生じています。
エネルギー業界の現状と予測を知る報告書として幅広く活用されている2018年版「BPエネルギー予測」のよると、再生可能エネルギーは年平均7.5%で成長し、2040年までに発電量は4倍になり、新規電源開発では半数以上が再生可能エネルギーとなると予想しています。発電コストも徐々に低下しており、十分に他の電源に匹敵するようになると報告しています。
また、国際エネルギー機関(IEA)が2017年に発表した報告書の中で、再生可能エネルギーが2040年には現在の2.6倍になり、発電量全体の伸びの3分の2を占め、発電量のシェアは2016年の24%から40%へと高まる一方で、化石燃料は65%から50%に減り、原子力は11%から10%に減ると予想を立てています。
上記の2機関の報告は数値の違いこそあれ、全世界が今後ますます再生可能エネルギーに移行していく流れにあることは確かなことだと想像できます。
(出典:2018年版「BPエネルギー予測」)
(出典:国際エネルギー機関(IEA) 報告書「世界エネルギ―見通し2017」)
エネルギー効率の向上
エネルギー効率改善に対する世界の投資額は年々上昇していて、2016年には前年より9%増加の231億USDに達しました。
特に、中国では24%も増加しており、世界全体の投資額の約30%を占めています。
同時に、省エネサービス事業も成長しており、2016年には市場規模が26.8億USDに達しました。この分野でも、中国のシェアが大きく、世界の約60%を占めています。
エネルギー効率を改善すると温室効果ガスを削減でき、環境面にメリットがあります。
さらにエネルギー安全保障の強化にもつながる重要な分野です。
2000年以降、エネルギーの効率改善が実現しなかった場合と比較すると、日本は、石油・ガスの輸入量の約2割の削減効果が、また、欧州の最大ガス市場であるドイツと英国でも、ロシアからのガス輸入量の3 割の削減効果がありました。
(出典:国際連合広報センター公式サイト,2018)
クリーン・エネルギー技術の研究
太陽光や風力をはじめとする再生可能エネルギーは天候・条件により発電量の変動が大きすぎるため、バックアップとして他のエネルギー源がなければ十分な信頼性が得られません。
クリーン・エネルギー源がエネルギー送電網の中核となるためには、より低コストの長期エネルギー貯蔵手段か、より優れた送電システムが必要となります。
また、太陽光、洋上風力(海洋上における風力発電)、バイオマスなどの分野の技術革新に年々多くの資金が投じられており、ますますテクノロジーの進化は進んでいきそうです。
これは従事する企業にとっては国際競争がより激化していくことも意味しています。エネルギーの分野はこれからますます多くの企業の関心と協力を必要としていくと考えられます。
(出典:国際連合広報センター公式サイト,2018)
エネルギーの動向や今後の展望
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が発表したデータによると、再生可能エネルギーの発電コストについて2010年と2017年を比べると、特に太陽光(PV)、太陽熱(CSP)でコストが大きく下がり、風力もコストが下がっています。
背景には、太陽光発電パネルメーカーと風力発電機メーカーの両者においてグローバル規模で熾烈な企業競争があり、とりわけ中国やインドなどの新興国メーカーの台頭が目覚ましく、発電コストをどんどん押し下げてくれています。
SDGsの目標7が目指す、安価で持続可能なエネルギーシステムは、燃料の多様化と分散化電源型に大きく依存するシステムであることが予想されています。
このため、将来のエネルギーシステムは、より統合され、システム管理可能な機能を有することが条件となり、様々な分野におけるエネルギー技術の革新的な開発が不可欠となります。
特に、バッテーリ技術などシステムを結合させる技術分野が重要と言えそうです。
効率的な新エネルギー社会システムの構築には、一地方や一カ国による試みでは不十分で、地域的な協力に基づく投資計画が必要です。
既に、電力の輸送容量がネックとなり、電化率の拡大や再生可能エネルギーの利用に制約が発生している事例が世界にありますが、送電線の増設や強化がこうした投資分野の1つに挙げられます。
また、クリーンな化石燃料技術の利用に不可欠なCO2の輸送・貯蔵技術の開発も、新社会システムの一つの要素ですが、地域や国レベルでの協調した計画に基づく開発が必要とされます。
そして、そのためには長期的な視野に基づく、継続した強い政治的コミットメントが不可欠でしょう。
(出典:経済産業省資源エネルギー庁公式サイト「国際エネルギ―動向」)
SDGsの目標7を達成するために私たちにもできること
SDGsの目標7では、安価で持続可能かつ信頼できる近代的なエネルギーに、すべての人がアクセスできることを目指しています。
そのため、再生可能なクリーンエネルギーの割合を世界中で拡大することや、エネルギー効率の向上など、技術向上への取り組みが急務とされています。
しかし、このような活動を継続して行うには資金や人材がまだまだ足りていません。
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