日本では貧困に苦しむ家庭が増えています。貧困には絶対的貧困と相対的貧困の2通りあり、日本で起こっている貧困は後者です。
絶対的貧困とは、食べ物や家がないといった人として最低限の生存条件にも満たないような貧困状態のことです。
相対的貧困とは、日本の生活水準と比較してそれに及ばない貧しい状態を指します。
つまり国自体が貧しい地域で起こる人として最低限の生活すらできないような絶対的貧困と、自分自身の生活が国の生活水準と比較して低い状態にある相対的貧困は判断基準が大きく異なるのです。
今回の記事では日本での30代女性の貧困について、原因と解決策を解説します。
30代を越えたときの男女の収入格差は非常に大きなものであり、女性にとっての大きなリスクとなっています。
30代の女性が貧困に陥ってしまう現状について解説します。
独身女性の貧困が深刻化し非正規雇用の生活で老後への不安も拡大。
対策や支援団体はあるのか?
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30代の女性の貧困率は?年収や貯蓄など生活の実態とは
はじめに問題の焦点となる30代女性の貧困率(収入から税金や社会保険料を引いた可処分所得を高い順に並べ、中央の額の半分に満たない人が全体に占める割合)について確認してみましょう。
図は男女別・年齢階層別相対的貧困率を表しています。
(引用:男女共同参画局 平成24年版「男女共同参画白書」)
上図からわかるように30代女性の貧困率は15%程度となっています。
特徴的なのは、男女の貧困率がちょうど30歳あたりで逆転する点です。
これには後述する男女の平均給与の差が関係していると考えられます。30歳以降については、50歳の時点で一度男女の貧困率が逆転しますが、それ以外は常に女性の貧困率の方が高いのです。
以下では、男女の平均年収、貯蓄額、男女の非正規雇用の割合から30代女性の貧困率について考察します。
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30代男女の平均年収は?
ここでは男女の平均年収について確認します。まずは以下の年齢階層別の平均給与を表した図をみてください。
(引用:国税庁 平成29年分「民間給与実態統計調査」)
図にある男女の平均給与を簡単にまとめると以下のとおりになります。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20~24歳 | 279万円 | 243万円 |
25~29歳 | 393万円 | 318万円 |
30~34歳 | 461万円 | 315万円 |
35~39歳 | 517万円 | 313万円 |
(出典:国税庁 平成29年分「民間給与実態統計調査」)
30代になると男女間に150~200万円程度の給与格差が存在しているのです。
さらに男性の平均収入が50代までは順調に伸びているのに対して、女性の平均収入は歳を重ねるごとに少しずつ減っていく点です。30代を皮切りに男女の収入格差はどんどん広がっていくことになります。
こうした状況の背景には、以下の2つが原因として存在しています。
- 女性の非正規雇用者の割合が高いこと
- 女性管理職が少なく、昇給の幅が小さいこと
女性の非正規雇用者の割合が高い点については詳しく後述するので、ここでは女性管理職の少なさについて解説します。
企業規模にもよりますが、30代というと係長や課長が視野に入ってくる年代です。
しかし平成28年度「雇用均等基本調査」によると、課長相当職以上(役員も含む)における女性の割合は12.1%となっています。これは世界的にみても低い水準であり、日本における女性の社会進出がまだまだ遅れているのです。
女性の管理職割合が低いということは、正規雇用であっても女性の給与の昇給幅が低いことを意味します。これも女性の平均給与が低い一つの原因といえます。
(出典:厚生労働省「平成28年度 雇用均等基本調査」)
30代男女の貯蓄額は?
男女の給与に続いて、ここで男女の貯蓄額について解説します。
以下は男女をあわせた年代別の平均貯蓄額です。
(引用:厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」)
30~39歳の平均貯蓄額は403.6万円であり悪くない数字に思えますが、これはあくまで世帯ごとの貯蓄額なのです。
つまり結婚していない30代女性の貯蓄額はこれよりも相当に低くなることが予想されます。
30代男女の非正規雇用の割合は?
先ほど女性の非正規雇用者の割合が高いと述べましたが、まずは以下の図を確認してみてください。
下図は年齢階級別被正規雇用労働者の割合の推移(男女別)を表しています。
(引用:男女共同参画局 「男女共同参画白書 令和元年年版」,2019)
どの年代層でも男性より女性の方が非正規雇用の割合が高いですが、なかでも35~44歳においては男女で大きな差が出ていることが分かります。
女性が52.5%と半分以上が非正規雇用であることに対し、男性は9.3%です。
既婚者の女性も含まれるため、パート・アルバイトで家計を支えている人も含まれますが、シングルマザーで世帯主として非正規雇用で働いている人も多くいます。
2016年度の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」では、母子家庭世帯の非正規雇用率は43.8%と発表されており、4割以上の母親がパート・アルバイトとして働いているのです。
このように男女間における非正規雇用者割合には大きな差が存在しているのです。
- 30代女性の貧困率は15%程度
- 女性は男性よりも非正規雇用者の割合が高い
- 女性の管理職割合が低いため正規雇用であっても女性の給与の昇給幅が低い
(出典:厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査(各種世帯の所得等の状況),2016」
(引用:平成26年版「男女共同参画白書」)
30代の女性が貧困になってしまう原因は?
ここでは30代女性が貧困になる原因を確認していきましょう。以下では女性の非正規雇用者が多い理由と、30代ゆえの支出について解説します。
30代女性に非正規雇用者が多い理由
30代女性の非正規雇用者の割合が高いのには、結婚と出産が大きく関係しています。
結婚・出産を機に正社員を辞める女性が多いのです。もちろんそのまま結婚を継続していれば収入に大きな問題は発生しませんが、以下のような事情があると女性が一気に貧困層になります。
- 離婚をしてシングルマザーになった
- 夫が怪我や病気で働けなくなった
- 夫と死別した
こうした状況では女性も収入が必要ですが、一度正社員を辞めてしまっていたり、働くことに対してのブランクが影響し、低い給与の仕事にしか就くことができない場合が多いのです。
30代はローンや保険など月々の支払いも多くなる
シングルマザーにならずとも世帯ごと貧困になる恐れがあります。30代はマンションを購入したり、将来に備えて保険に加入したりと月々の出費がぐっと増えるタイミングでもあるためです。
こうした事情から結婚している状況においても貧困が生まれるのです。昨今は年齢による給与の上昇幅も小さくなっているため、安易にローンを組むと毎日の生活が過度に圧迫される恐れがあります。
- 非正規雇用者の割合が高いのには、結婚と出産が大きく関係している
- 離婚や夫の病気、死別などによる収入の減少
- ローンや保険、子供の学費などによる支出の増加
(出典:厚生労働省「母子家庭等関係」)
シングルマザーには様々な支援も
ここまで解説してきたとおり、30代女性の貧困は深刻な問題です。中でも特に厳しい状況に置かれているのがシングルマザーでしょう。
シングルになる理由は前述したとおり、離婚・死別があります。こうしたことが起こると場合によっては一気に貧困層となってしまうのです。
そのためシングルマザーは以下のような手当を活用するという方法もあります。
- 児童扶養手当
- 母子家庭の住宅手当
- 母子家庭の医療費助成制度
- 生活保護
- 母子家庭の遺族年金
- 児童育成手当
各種手当を受け取る要件については自治体ごとに違う場合があるため、事前に確認してみるのが良いでしょう。
- 各種手当を受け取る要件については自治体ごとに違う場合があるため、事前に確認が必要
- 児童扶養手当、母子家庭の住宅手当など支援を活用しよう
- 離婚・死別などにより一気に貧困層に陥る可能性が高い
(出典:厚生労働省「母子家庭等関係」)
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貧困に悩む場合は協力者や理解者を見つけよう
以上のように30代女性の貧困は深刻な問題です。シングルマザーはもちろんのこと、結婚していても貧困となる恐れがあります。
こうした中で、30代女性のそもそもの給与を上昇させるためには各企業における結婚・出産に対するケア、女性管理職を増やす社会的な取り組みが必要であり個人の力で状況を改善するのは決して簡単ではありません。
そのため貧困の状態にある場合は紹介した各種手当を利用して生活を安定させることが急務となります。
また自治体ごとに女性の貧困を支援するコミュニティがあったり、低所得の女性が利用できる保育サービスがあったりするので、それらを活用しながら少しずつ生活を立て直すことが大切です。