児童労働はこれまでの長い歴史のなかでいつの時代にもあった悲劇です。
子どもたちが時代に飲み込まれ、教育を受けられず労働を強いられてきた過去が、現在にも残って世界の様々な国や地域で児童労働が行われています。
この記事では、児童労働にどのような歴史があったのか、そして子どもたちを守るための条約や法律はあるのかを紹介します。
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児童労働とは何か
法律で定められた就業最低年齢を下回る年齢の児童によって行われる労働が児童労働です。
この児童労働が禁止される理由は子どもに身体的、精神的、社会的または道徳的な悪影響をおよぼし、教育の機会を阻害するという懸念があるためです。
2016年に公表されたデータによると5~17歳による児童労働者数は1億5,200万人であり、うち7,300万人は危険有害労働に就いています。
これは世界の5~17歳の子どものうち10人に1人が児童労働に従事していることになり、男女別で見ても男子が8,800万人、女子が6,400万人と女子もかなりの児童労働者がいることが分かります。
また、これを地域ごとに見ると、アフリカで7,200万人、アジア太平洋で6,200万人、南北アメリカで1,000万人、ヨーロッパ・中央アジアで553万人、アラブ諸国で116万人という結果が出ているのです。
特にアフリカには多くの児童労働者がいることが分かりますが、この人数は地域の子ども全体に占める割合に換算すると19.6%であり、約2割の子どもが児童労働に携わっているということになります。
(出典:国際労働機関「児童労働」,2016)
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児童労働が今に至る歴史
日本で記録されている児童労働の歴史は非常に古いです。
人身取引は奈良時代には始まっていたと言われており、子どもが奴隷として酷使されていたという事実も残っています。
そのような奴隷や人身取引が禁止された江戸時代においても、遊女というシステムによる児童労働があり、子どもの強制労働はあとを絶ちませんでした。
現在世界で問題視されているような児童労働が行われたのは、明治時代以降になります。
富国強兵を掲げた明治政府による殖産興業は、世界遺産にも指定された官営模範工場である富岡製糸場をはじめ、全国各地に中小様々な工場を作り上げました。
この時代は軽工業を貿易の要としており、巨額の輸出額を生み出していたため、多くの人手が必要でした。
産業革命以降に機械化は行われていたものの、その導入は緩やかであり、力や高度な知識、技術が不要であったことから、女性労働者への需要が高まっていたのです。
当時は女性への差別もあったことから、子どもを含め多くの女子が働いていました。
明治時代になっても貧富の差が児童労働を増やす原因となっており、出稼ぎのために貧しい農家の娘が連れて来られることも少なくありませんでした。
一方で危険で力が必要な仕事であるガラス工場や鉄工業の工場、あるいは印刷工場では男性の労働者が必要とされていたのです。
軽工業から重工業にシフトしていた1900年代には、このような工場が増加していましたが、特にガラス工場ではそのほとんどの労働者が男性であり、なかには14歳以下の男子が含まれていたという記録もあります。
1911年に工場法が成立したことにより、児童労働はその数を大きく減らすことになりました。
しかし2度の世界大戦の戦時中には再び子どもが工場で働かなければいけない状況や、兵士として徴兵される学徒出陣が行われるなど、国そのものが児童労働を求める事態にまで発展しました。
また戦後は教育を受ける権利や労働基準法の成立により、児童労働を厳しく禁止する動きはあったものの、戦後の混乱により人身取引も多く、高度経済成長期に至るまで検挙数は一定数あったと言われています。
そして、現在は隠れた児童労働が日本で行われているという事実があるのです。
それはバブル時代にフィリピンやタイ、コロンビアなどから幼い少女を含む女性が日本に送り込まれ風俗の世界で働かされていたように、現在は未成年が風俗店で働かされるという児童労働の事例があります。
もちろんこれは法律違反となりますが、それでも毎年一定数が検挙されており、それと同等かそれ以上の児童労働の被害者がいるということになります。
産業革命と植民地化による児童労働
18世紀半ばに起こった産業革命は、多くの変化をもたらしました。特に機械化が進むことになり、生産性は格段に上がっていきます。
しかし一方で、機械化が進んでもオートメイションが可能となるわけではなく、どこかに人の手は必要であったことから、労働力の需要がありました。
産業革命が起こったイギリスでは工場で子どもが労働するのは当たり前の状況にあり、危険な仕事を行うこともしばしばあったとされています。
このような工業が盛んとなった国でも児童労働は求められていましたが、それが植民地ともなればさらに過酷で劣悪な環境だったのです。
列強となったイギリスやフランス、スペインなどの欧米諸国は領土と労働力の確保のため、植民地を増やしていきました。
今なお貧困国として農業に頼らざるを得ない国の多くは、元々植民地であったという歴史があります。
植民地として奴隷のように強制させられる労働には子どもも含まれており、児童労働が当たり前に行われていました。
現在は植民地ではないものの、貧困である事実から脱せられず、子どもを働かせている国や地域も少なくありません。
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「日本の児童労働」,2013)
児童労働の歴史のなかで成立した条約や法律
児童労働が歴史的に行われてきたなかで、それを禁止し、撲滅しようとする動きもありました。現在も世界中に児童労働は存在しますが、それでも数は減少しています。
それは世界の多くの国で批准されている条約や、各国で成立した法律による規制が抑止力として働いている結果でもあるのです。
児童労働の歴史のなかで、この問題を世界規模で抑制しようとした組織が国際労働機関(ILO)です。
この国際労働機関の働きにより採択された2つの条約が、現在の世界の児童労働を減少させる要因の一つとなっています。
また日本では労働に関する法律や、子どもを守るための法律が定められています。
これらの条約、そして法律についても簡単に紹介しましょう。
世界から児童労働をなくすために採択された2つの条約
国際労働機関の働きにより世界の多くの国が批准しているのが、「就業の最低年齢に関する条約」と「最悪の形態の児童労働に関する条約」です。
就業の最低年齢に関する条約では世界での就業最低年齢を義務教育終了年齢後である15歳に、危険有害業務に至っては18歳未満の就業を禁止にすることを原則として定めています。
ただし軽労働については一定条件下で13歳以上15歳未満とし、開発途上国のための例外として就業最低年齢は当面14歳、軽労働は12歳以上14歳未満と定めています。
また最悪の形態の児童労働に関する条約は危険有害業務に関する条約であり、特に18歳未満の子どもによる最悪の形態の児童労働の禁止と撤廃を確保するための措置を随時求める条約です。
これによると最悪の形態の児童労働とは次のような労働を指します。
- 人身売買、徴兵を含む強制労働、債務労働などの奴隷労働
- 売春、ポルノ製造、わいせつな演技に使用、斡旋、提供
- 薬物の生産・取引など不正な活動に使用、斡旋、提供
- 児童の健康、安全、道徳を害するおそれのある労働
(引用:国際労働機関「児童労働に関するILO条約」,2021)
1973年に成立した就業の最低年齢に関する条約は、現在日本を含め173ヶ国が、1999年に成立した最悪の形態の児童労働に関する条約は日本を含め187ヶ国が批准しています。
日本で児童労働を規制する2つの法律
日本では児童労働を規制する法律がいくつもあります。
そのなかでも直接的に労働の状況を規制するのが労働基準法、子どもの権利を守るためにあるのが児童福祉法です。
労働基準法によれば、原則として満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの児童を労働者として使用することを禁止しています。
また満18未満の年少者についても、その就業に様々な制限を設けて保護を図っています。
つまり義務教育卒業後のアルバイトなどにも保護規定があり、それを守らなければ罰則が設けられるということです。
ただし満13歳未満の児童について、映画の製作または演劇の事業に限っては、一定の条件を満たしていれば可能であるという規定も設けられています。
一方で児童福祉法ではすべての児童は生活を保障され、愛護されなければならないと規定されており、児童とは満18歳未満の者と定めています。
こういった児童の人権を侵害し、心身の成長や人格の形成に重大な影響を与えるものなどを禁止し、児童の権利利益の擁護を目的として作られた法律です。
(出典:国際労働機関「児童労働に関するILO条約」,2021)
(出典:厚生労働省「年少者使用の際の留意点」)
(出典:厚生労働省「児童福祉法・児童虐待防止法の目的・理念」)
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児童労働は世界の歴史が生んだ悲劇
児童労働はこれまで世界中で当たり前に行われており、規制されだしたのは近代になってからです。
それまでは子どもは商品や労働力として扱われ、十分な教育を受けられず、権利も保障されないまま成人し一生を終えることもしばしばありました。
しかし子どもにも人権はあり、それは保障され、十分な教育を受けて然るべき存在です。
子どもたちを守るためには現在結ばれている条約や法律だけでなく、私たち一人ひとりがこの問題について知り、身近にいる子どもを守れる行動を起こしていく必要があります。