児童労働は私たちの身の回りでも起こっている、世界の大きな問題の一つです。
そのため国際機関を中心として各国が政策を行っていますが、その方法は国によっても異なります。
この記事では児童労働の解決策について、世界や日本が講じる政策などを紹介します。
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児童労働は世界が抱える問題の一つ
児童労働は、法律で定められた就業最低年齢を下回る年齢の児童によって行われる労働と定義されています。
また国際基準の就業最低年齢は15歳であり、健康や安全、道徳を損なう恐れのある労働については18歳を原則としています。
この児童労働は子どもに身体的、精神的、社会的または道徳的な悪影響をおよぼし、教育の機会を阻害するという懸念があるため禁止されているのです。
日本では国際基準と定義のもとに国や企業などが児童労働をさせない取り組みを行っていますが、世界には子どもたちの成長に悪影響をおよぼす児童労働が存在します。
国際労働機関が公表している児童労働の現状によれば、2016年時点で5~17歳による児童労働者数は1億5,200万人とされており、うち7,300万人は危険有害労働を行っています。
これは世界の5~17歳の子どものうち10人に1人が児童労働に従事していることになり、児童労働者を男女別で見ても男子が8,800万人、女子が6,400万人と男子が多いものの、女子も相当数の子どもが児童労働者となっていることが伺えます。
さらに地域ごとに児童労働者数を見ると、アフリカで7,200万人、アジア太平洋で6,200万人、南北アメリカで1,000万人、ヨーロッパ・中央アジアで553万人、アラブ諸国で116万人という結果が出ています。
児童労働は開発途上国で起こっているイメージが強いかもしれませんが、実は先進国でも行われている行為なのです。
そのため世界的にも問題視されており、持続可能な開発目標(SDGs)の目標8でも取り上げられています。
目標8のターゲットには次のように掲げられています。
強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。
(引用:国際労働機関「ILOと持続可能な開発目標(SDGs)」)
このように、持続可能な開発目標(SDGs)では、あらゆる形態の児童労働を2025年までに撲滅することを目標に掲げています。
そのためには国際機関だけでなく、政府や自治体、関連団体、そして私たち市民に至るまで解決策に取り組む必要があるのです。
そのなかで各国政府はどのような政策を行っているのか、触れていきましょう。
(出典:国際労働機関「児童労働」,2016)
(出典:国際労働機関「ILOと持続可能な開発目標(SDGs)」)
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児童労働に対して世界が取り組む解決策
児童労働は開発途上国を中心として様々な国や地域で起こっている問題です。
SDGsでも取り上げられることで現在は多くの国が対策を行っていますが、実際にはどのような政策などが行われているのか、いくつか分けて紹介していきます。
国際労働機関(ILO)による解決策
これは国ではなく国際機関の一つによる解決策になりますが、児童労働をなくすための重要な取り組みを行っています。
それが良質な教育と、一貫性のある効果的な政策を行うことによる児童労働の撲滅です。
児童労働が行われる背景には十分な教育が行き届いていないことが挙げられています。
十分な知識や技能を身に付けていないと、成人後の賃金は低く不安定な仕事に就くか、失業する可能性も高くなります。
一方で良質な教育を受けた子どもが成人し労働者となった場合、その生産性の高さから家庭の収入が上昇するだけでなく、国そのものの経済も豊かになる可能性があることも示唆されています。
そうなれば貧困国を脱し、そこに住む人々に対して行われる社会福祉などが充実し、雇用なども増加するという好循環が生まれるかもしれません。
つまり国際労働機関は児童労働と教育問題について一貫性のある効果的な政策や戦略を打ち出し、各国で取り組むことが重要であると考えています。
そのため国際労働機関はほかの国連専門機関と連携して、各国政府への要請や協力を児童労働の解決策の一つとして行っています。
ガーナで行われる解決策
ガーナ政府が児童労働を解決するために行っている政策が児童労働フリーゾーン制度です。
これは児童労働の問題が起きたとしても、総合的なアプローチで問題を解決するための仕組みが存在し、機能している地域のことを言います。
また各種システムが機能することで、児童労働がない地域を維持することができる地域についても児童労働フリーゾーンとしています。
主には世帯登録システムや児童労働モニタリングシステムによる現状の把握、学校の就学や出席状況の管理システム、労働の現場における子どもの危険労働の監視や予防のシステムを構築しています。
また自治体には脆弱な家庭に対する経済支援や福祉制度、児童労働に関する基礎データの収集、法律に則って違法事例を取り締まり、裁くシステムもあります。
このようなシステム構築を政府だけでなく自治体でも行い、連携して児童労働を撲滅、そして予防していく状態を作り上げています。
フィリピンでの解決策
フィリピンも児童労働が問題となっている国でした。
しかし現在は政府が主導する児童労働を解決するための政策により、改善しつつあります。
まずこの国が行ったのは児童労働の実態把握と未成年による売春などが行われている店などに対する厳しい取締りでした。
当然売春だけでなくあらゆる児童労働が行われている状況に対して、取締りを行い、被害者である児童の保護を行いました。
また児童労働が行われる原因の根幹にあるのは貧困です。
フィリピンでもそれは例に漏れませんが、そういった貧困家庭に生まれてしまうと貧困状態から脱出するには困難を極めます。
そこでフィリピンでは医療を無料で受けられ、薬をもらえるヘルスセンターを開設したり、手続きを経ることで、無償で大学に通える制度などを設けています。
社会保障制度を充実させることで貧困の状態でも子どもを働かせることなく、高い知識を得られる教育が受けられる環境を作り出しているのです。
教育に対する政策は何も大学に限ったことではありません。
フィリピンの小学校での授業では、稼ぎを得るための実践的な教育を行っています。
小学校は無償の義務教育期間であり、この期間に働くための技術や能力を身に付けることで、親は子どもを働かせず学校に通わせるようになります。
これにより就学率も高まりつつ、将来に活かせる実用的なスキルを身に付けることができるので、成人後は安定した職に就ける可能性が高くなるのです。
(出典:国際労働機関「児童労働をなくして、良質の教育を」)
(出典:JICA「児童労働撤廃に向けて力を結集 ガーナ」,2020)
(出典:経済産業省「新興国等におけるヘルスケア市場環境の詳細調査報告書フィリピン編」,2017 )
児童労働に対して日本が取り組む解決策
日本では途上国とは異なる児童労働の問題が存在しています。
それが「隠れた児童労働」です。世界に見る児童労働の多くが農林水産業であり、農園などで行われることがほとんどです。
しかし日本ではそのような児童労働はほとんど行われておらず、児童労働があるのは、サービス業での違法労働です。
18歳未満の危険有害労働は児童労働に該当しますが、日本では売春や風俗店での性的搾取による児童労働が一定数あることが分かっています。
これは警視庁が公表しているデータからも明らかであり、児童買春・児童ポルノ禁止法や児童福祉法違反などで検挙される事件が多くあるのです。
多少の増減はあるものの毎年600~1,000件程度の検挙があり、未だ検挙されていないケースもあると考えると、それ以上の児童労働者がいると推察されます。
そのため国内の児童労働については労働基準法はもとより、児童買春・児童ポルノ禁止法や児童福祉法、青少年保護育成条例などを元に厳しい取締りが進められています。
また国内でも、子どもの貧困は大きな問題となっているのです。
貧困がさらなる貧困を生んでしまう状況は他国と同様であることから、貧困状態にある家庭、特にひとり親世帯への様々な支援や福祉、加えて貧困にある子どもへの学業支援なども政策として自治体や関連団体と連携しながら行っています。
日本の児童労働に関する政策は国内だけに留まりません。先述したガーナの児童労働フリーゾーン制度には、日本の国際協力機構(JICA)も関わっています。
JICAを通じた支援により、児童労働フリーゾーン制度の普及に協力するほか、2021年に行われている児童労働撤廃国際年に、その活動を主導する国際労働機関への拠出を通じた支援なども行っています。
(出典:警視庁「令和2年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」,2020)
(出典:厚生労働省「2021年児童労働撤廃国際年」について」)
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児童労働撲滅に向けて私たちにもできる解決策を探そう!
児童労働撲滅は世界中の目標であり、各国が取り組む問題の一つでもあります。
途上国などでは国際機関や先進国などの協力を仰ぎながら政策を打ち出していますし、日本でも児童労働を撲滅するために日々取り組んでいます。
しかしこの問題は私たちが意識して労働の現場や周辺にある児童労働に気付き、予防や撲滅に協力しなければ、本当の意味での撤廃は難しい問題です。
私たちにもできることがあります。児童労働撲滅に向けて何ができるのか、その解決策を探るためにも、まずは児童労働についての知識を身に付けましょう。