現在世界でも大規模なデモとして、度々ニュースに取り上げられるのが香港です。
香港は中国の中にありながら特殊であり、そこで起こったデモなだけに注目が集まっています。
香港のデモは暴動にも発展していますが、その背景には逃亡犯罪人条例等改正案が関係しています。
逃亡犯罪人条例等改正案はどのようなものなのか、中国と香港との関係とともに解説します。
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一国両制の中国・香港
中国と香港の関係を紐解くには、その歴史的背景を知る必要があります。
香港は1997年7月までイギリスの領地として存在していました。つまり中国の中にありながら、香港との間には国境がありました。
そして1997年7月1日に香港がイギリスから中国へと返還されるとともに、香港は「一国両制」となっています。
これは1984年にイギリスと中国で結ばれた共同声明内にて、返還後に香港を特別行政区とする取り決めがされていたためです。香港は正式には「中華人民共和国香港特別行政区」となります。
中国という1つの国の中で社会主義と資本主義の2つの制度が併存して実施される、一国両制が実施されました。
香港特別行政区は社会主義の制度と政策を実施せず、従来の資本主義制度と生活様式を保持するとされ、50年間変えないという取り決めになっています。
これは世界でも初の試みであり、2019年の現在もこの一国両制は継続されています。
(出典: 外務省「各国・地域情勢 アジア」)
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香港で度重なるデモ活動
香港で2019年3月に「逃亡犯罪人条例等改正案」が提出されました。
これにより、民主派だけでなく、親政府派や財政界など香港社会全体から懸念や不安の声が挙がり、同年6月以来、この改正案をめぐる抗議活動が香港島や九龍、新界の市街地などを中心に行われています。
デモの拡大を受けた中国政府は改正作業を行わないと明言しましたが、抗議側は改正案の完全撤回と6月12日の衝突を「暴動」とする見解の撤回など5大要求を掲げ、7月以降も香港各地で抗議活動が継続されました。
当初こそ警察への許可を得た抗議デモが行われていましたが、抗議が続くにつれ、警察不許可の抗議活動やゲリラ的な抗議活動が見られました。
そのため一部を暴動と見なすといった見解がなされ、抗議側の反発が起こり、その行為はエスカレートして破壊行為や警察当局との衝突が発生する事態にまで悪化しています。
政府は、9月5日に5大要求の1つである「条例改正案の完全撤回」を表明しました。また9月26日には香港市民と行政長官との対話集会も開催しています。
しかし10月5日に「覆面禁止法」と言われるデモ参加者が顔を隠すことを禁止する条例の導入を発表したことで、市民は再び反発し、混乱はさらに深まることとなりました。
このような大規模デモにより、年間延べ5,000万人以上の観光客が激減し、百貨店などの売り上げが大幅に減少するといった経済的な影響が広がっています。
(出典:外務省「海外安全ホームページ 香港の危険情報(新規)」)
逃亡犯罪人条例等改正案とは?
このような大規模かつ長期的なデモに発展した要因は先述した中国と香港の間にある「一国両制」が関係しています。
この制度では高度な自治が認められていますが、逃亡犯条例改正がもし施行されれば、この自治が崩れるという見方もされています。
逃亡犯条例の改正案では香港が犯罪人引き渡し協定を締結していない国や地域の要請に基づいて、容疑者引き渡しを可能とする、と記されています。
このような動きとなったのは、2018年2月に香港人の男性が台湾で恋人を殺害し、逮捕される前に香港に戻るという事件が起きたことが発端となっています。
これにより香港政府は犯罪人引き渡し協定を結んでいない台湾に身柄移送ができないことを理由とし、事態解消のため条例改正に乗り出しました。
この改正案に対して、香港に住む人々は反発し、抗議デモを起こすこととなりました。
(出典:公益財団法人日本国際問題研究所 「国際問題(2019年11月No.686)」,2019)
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今後の動向に注意が必要
現在も香港での抗議デモは続き、2019年12月時点でも収束していません。10月1日には香港警察がデモ隊に向けて発砲し、高校生が重体となる事件が起こりました。
これが香港社会に大きな衝撃を与え、デモは長期化の様相を呈しています。
今はデモ発生の時間帯や場所を除けば、出張や観光に大きな支障は無いといわれています。
しかし今後の動向には目が離せず、現在の状態ではどのように進展するのか予測ができない状況です。
香港への渡航は可能ですが、空港周辺や駅、道路で抗議活動が行われる可能性はあり、今後の動向や進展には注意が必要です。