2020年にはいよいよ日本で2回目となる夏季オリンピック・パラリンピックが開催され、各国の選手や関係者、観客だけでなく要人も来日します。
そうなると懸念されるのがテロであり、世界の人々が集まる機会にはそのリスクが何倍にも高まります。
では日本が行っているテロ対策は何があるのでしょうか。この記事ではその取り組みなどを紹介します。
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テロとは?
世界では紛争や内戦が問題視されていますが、同様にテロも深刻な問題として取り上げられています。
テロは国際法上の定義がありません。
しかし外務省によると、「一般的には特定の主義主張に基づいて、国家などにその受け入れを強要したり、社会に恐怖を与える目的で殺傷・破壊行為(ハイジャック、誘拐、爆発物の設置など)を行ったりすること」をテロリズムといい、省略された呼び方がテロと言われています。
これまでにも世界では多くの事件がテロ事件として認定されています。
テロが要因となり紛争や内戦、戦争にまで発展したものもあります。テロの背景には、民族間の対立や過激思想勢力によるものなど多岐にわたり、世界的にテロへの対策が大きな課題となってきました。
(出典:外務省「わかる!国際情勢 テロのない世界を目指して」)
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テロ撲滅に向けて国際社会の取組が必須
テロ撲滅に向けての取り組みは各国での対策だけでは不十分です。国際社会が連携して、協力した取り組みを行うことが必須であり、そのための議論や条約、議定書の締結が行われています。
以下の表は、これまでにテロ防止を目的として結ばれてきた条約や議定書です。
テロ防止関連13条 | |
1969年 | 航空機内の犯罪防止条約 |
1971年 | 航空機不法奪取防止条約 |
1973年 | 民間航空不法行為防止条約 |
1977年 | 国家代表等犯罪防止処罰条約 |
1983年 | 人質行為防止条約 |
1987年 | 核物質防護条約 |
1989年 | 空港不法行為防止議定書 |
1992年 | 海洋航行不法行為防止条約 |
1992年 | 大陸棚プラットフォーム不法行為防止議定書 |
1998年 | プラスチック爆弾探知条約 |
2001年 | 爆弾テロ防止条約 |
2002年 | テロ資金供与防止条約 |
2007年 | 核テロリズム防止条約 |
国際社会ではこれらを用いた連携により、テロを撲滅しようという動きがあります。
軍事的な掃討作戦やテロリストへの大量破壊兵器の拡散を防ぐことももちろんですが、国際的なテロリスト処罰箒の強化やテロ資金対策、出入国管理など国境を越えた活動を自由に行わせないような対策が重要です。
それについての協力がASEAN(東南アジア諸国連合)やAPEC(アジア太平洋経済協力)など多国間の枠組みでも進められています。
(出典:外務省「わかる!国際情勢 テロのない世界を目指して」)
日本が行うテロ対策
他国では日本人がテロに巻き込まれるような事件も起こっていることから、テロ対策が行われています。
テロ対処能力向上支援を含む外交上の「3本柱」
2015年にシリアにて日本人がテロに巻き込まれ殺害される「邦人殺害テロ事件」が起こりました。
他にも同年に起こったチュニジアにおける襲撃事件や2016年のダッカ襲撃テロといった日本人がテロの被害にあった事件を受け、「テロ対策の強化」、「中東の安定と繁栄に向けた外交の強化」、「過激主義を生み出さない社会の構築支援」の3本柱に取り組んでいます。
テロ対策の強化
中東やアフリカでのテロ対処能力向上支援による国境管理や捜査・訴追能力、法整備などに取り組んでいます。
また国際的な法的枠組みの実施と強化、マルチ(多国間)・バイ(2国間)の枠組みを通じたテロ対策強化、在外邦人の安全対策強化など、テロの取り締まりや対策、安全確保に対しての強化が進められています。
中東の安定と繁栄に向けた外交の強化
テロ組織が多数存在する中東の安定化と繁栄を支援することで、テロ行為の縮小・撲滅を目指した政策です。
首脳や外相レベルのハイレベル要人往来を通じた積極的な中東外交を展開するとともに、ビジネス界など多様なコミュニティとパイプの強化、テロ関連情報をめぐる協力強化などを行っています。
また人道支援の充実や経済成長の促進に必要な地域の経済・社会安定化の支援も進めています。
過激主義を生み出さない社会の構築支援
過激主義が生まれることでテロリズムにつながると考えられます。
そのため、活力に満ちて安定した社会の実現を目指しており、具体的には若者の失業対策や格差是正、教育支援に力を入れています。
またポスト紛争国における平和の定着に向けた支援や人的交流の拡充、ASEANとの連携も実施されています。
テロ及び暴力的過激主義対策に関するG7行動計画
2016年5月にはG7伊勢志摩サミット首脳会合で「テロ及び暴力的過激主義対策に関するG7行動計画」の取りまとめが発表されました。
この行動計画では関連安保理決議の完全な履行や情報共有などのテロ対策、暴力的過激主義に代わる他の意見を表明させる力と寛容の拡大、能力構築支援などをまとめています。
(出典: 首相官邸「テロ・暴力的過激主義対策に関するG7行動計画概要」)
アジア地域に対する総合的なテロ対策強化策
2016年9月にはASEAN関連首脳会議で「アジア地域に対する総合的なテロ対策強化策」が発表されました。
この強化策では日本がアジア地域に対し、総合的なテロ対策強化策として以下の3つの取り組みを行うことが表明されています。
これらを2019年までの3年間で450億円規模実施するとともに、3年間で2,000人のテロ対策人材を育成することを目標としました。
(出典:外務省「ASEAN関連首脳会議でのテロ対策強化策の表明」,2016)
(出典:外務省「我が国の国際テロ対策」)
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東京2020に向けて行われているテロ対策
東京2020に向けて主に7つの項目でテロ対策が行われています。
テロを防ぐ上で情報収集や集約、分析は何よりも必要であり、その強化が第1の対策です。
昨今のテロ行為の主犯格として出てくるイスラム過激派などの情報収集を徹底的に行っていくとともに、情報の収集や分析に必要な体制の充実、情報収集衛星の活用などが行われています。
水際対策の強化として出入国及び税関体制の管理強化はもちろんのこと、最先端技術の活用による合同訓練などを行い、水際情報の収集や分析の強化も図っています。
またソフトターゲット(警備などが手薄で攻撃されやすい民間人や民間の建物・車両など)に対するテロの未然防止として、車両突入テロ対策の推進や空港ターミナルビルの警備体制の強化が行われています。
これはフランスで起こった車両による突入テロや、アメリカで起こった同時多発テロのようなハイジャックによる自爆テロなども想定した強化対策です。
そして、テロ対策は政府だけが行うものではなく、官民が一体となった対策が必要です。そのため官民協働対策体制の強化を行い、国内の外国人コミュニティとの連携強化も同時に進めています。
さらに海外にいる日本人が人質となるケースもあるため、そうした人々への情報発信や注意喚起なども強化。他にも国際協力事業に係る安全対策の推進も行われています。
日本国内でにおけるテロの防止を対策していますが、国内だけでなく近隣国や地域でのテロも視野に入れる必要があるのです。
そのためテロ対策のための国際協力の推進も進められています。東南アジア地域に拡大するテロの脅威への対策を国際社会と緊密に連携して行うことが推進されています。
(出典:首相官邸「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会等を見据えたテロ対策推進要綱」)