ニュースでは日本や世界で起こる暴動やデモについて報道されることがあり、暴動やデモを知るということは、その国の今の状況を知る手がかりにもなります。
この記事では暴動とデモの違いや、21世紀にあった大規模な暴動やデモなどを解説します。
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暴動とデモの違いとは
暴動とは「多数の市民や民衆が集団で暴行や脅迫、あるいは破壊活動や暴力的な活動など社会の秩序を乱す不穏な行動」を指して使われます。
これに対して、デモは「デモンストレーションの略称であり、特定の意思や主張を持った人が集まり、集団でその意思や主張を他に示す行為」になります。
暴動とデモを比較した場合、暴動は暴力的な行為が伴う反面、デモは主義主張を訴えることが目的です。
デモは集会や行進などでその意思や考えを示す行動であり、暴力的な行為に及ばないことが多く、その点では暴動とは異なります。
しかし、デモがエスカレートして暴動に発展することもあります。
日本ではデモを行うとき、一般道などを占有する場合は警察の許可を取る必要があり、暴動などに発展する可能性がある場合は警察の監視が付くことになります。
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21世紀にあった大規模な世界の暴動は?
デモと暴動に違いはあるものの、デモが暴動へと発展してしまうリスクもあります。
実際に21世紀に入ってから起こった大規模な世界の暴動はどのようなものがあったのでしょうか。
暴動はたくさんありますが、その中でも大規模なものを抜粋して紹介します。
2005年パリ郊外暴動事件
フランスは1970年代半ばまで旧植民地出身の移民の労働力を期待して積極的に受け入れていました。受け入れの停止をした後でも家族の呼び寄せは許可していました。
これによりフランスの移民が増加。そのため政策の柱として移民をフランス社会に同化させる取組みを始めました。
しかし異文化や宗教観の違いにより、同化を超えた「フランスの価値観の押し付け」を感じる政策に批判が集まったのです。
またZUS(zones urbaines sensibles)と呼ばれる様々な社会問題を抱える地区に居住しているというだけで就職は困難であり、人種差別や失業、貧困、教育問題を受ける「郊外問題」への対応が不十分でした。
不法移民への取り締まり強化などもあり、蓄積していた不満が爆発する形で、パリ郊外暴動事件が勃発。
これに対して当時のドビルパン政権は、非常事態法の適用とともに、職業訓練開始年齢の引き下げや移民審査の厳格化、雇用差別に対する罰則の強化など、矢継ぎ早に対応策を発表。
これを受け、いくつかの労使がホームページを通して意見を発表し、その後も暴徒化した市民と警察との衝突が続きましたが、11月17日に収束したとされています。
(出典:労働政策研究・研修機構「フランス暴動を分析する:自由・平等・博愛の陰に」,2006)
2009年クロナラ暴動
2005年12月にシドニー南部のクロヌラ・ビーチでレバノン系の若者らがライフガードを襲撃した事件が発生しました。
これを機に反発した白人のサーファーらによる暴動が発生しています。
これはオーストラリアの政策である積極的な移民の受け入れとそれぞれの文化の共存を認める多文化主義に衝撃を与えました。
熟練労働者不足の解消には移民労働力が不可欠と考えたため始まった政策で、積極的な移民政策をとるなどイギリスが参考にするほど高い評価を受けていました。
この暴動の背景にはエスニックコミュニティ間の感情的反発の存在が要因の一つと考えられています。
(出典:労働政策研究・研修機構「多文化国家の課題」,2006)
2011年イギリス暴動
2011年8月4日に黒人が警官に射殺されたことが原因で起きた暴動です。
当初彼の死は家族に通知されず、知らされたのは事件から3日後のことでした。この事件を皮切りに8月6日に群衆がトッテナム警察署まで抗議デモの行進が行われました。
抗議行動は最初こそ平和的でしたが、開始から数時間後には投石が頻繁になり、警察車両が焼かれて暴動状態に突入。
翌日には暴動がロンドンの北部とシティ南方に拡大し、警官との衝突だけではなく、店への侵入と商品の略奪、暴行などの行為が発生しました。
他にも略奪行為や放火などの行為が生じ、ノッティンガム市などにも暴動が飛び火したのです。
イギリス全域に暴動は拡散したものの、8月9日にはロンドンでの暴動は沈静化し、翌日、全土での暴動が沈静化しました。
(出典:「英国: 外務省海外安全ホームページロンドンにおける暴動の発生に伴う注意喚起」,2011)
2019年チリ暴動
チリでは2019年10月18日に暴動が発生しています。この暴動はサンディエゴ市旧市街を中心として、10月7日から始まった地下鉄運賃値上げに反対する抗議活動が発端となりました。
この抗議活動はチリ各地へと飛び火し、一部の参加者が暴徒化して、放火や略奪などの暴力行為が行われたことで治安部隊と衝突し、暴動へと発展していきました。
この暴動に関して翌日の19日ピニュラ大統領は首都圏州サンティアゴ市とプエンテアルト区、サンベルナルド区、チャカブコ区で緊急事態宣言を発令すると発表。
デモ活動、そして国民感情の高まりを鎮火させるため、内閣の大幅改造と弱者救済や格差是正を目的とした「社会アジェンダ」と呼ばれる政策を発表しています。
(出典:外務省「海外安全ホームページ チリ:地下鉄運賃値上げに反対する大規模な抗議活動に関する注意喚起(新規)」,2019)
21世紀にあった大規模な世界のデモは?
21世紀に起きた大規模な世界のデモについても見ていきましょう。
代表的なデモはアメリカやスペイン、フランスなど、どれも先進工業国で起こっています。どのようなデモだったのかまとめました。
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2013年アメリカ:最低賃金引き上げを求めるデモ
アメリカでは毎年感謝祭(11月の第4木曜日)後の最初の金曜日に大規模なバーゲンセールが行われます。
2013年は11月29日にバーゲンセールが行われましたが、スーパーマーケットのウォルマートを標的に、労働条件の改善や生活できる賃金などを求めて、全米規模で抗議デモが展開されました。
生活できる賃金は年2万5000ドル以上とされていましたが、ウォルマート従業員は貧困状態にあったことから最低賃金引き上げの要求だったのです。
「市民的不服従」とも命名されたこのデモには同社の従業員のほか、支援の労働組合、コミュニティ組織などから広範な人々が参加。
抗議の目的は、従業員の年収を生活できるレベルに引き上げるとともに、労働条件と細切れ雇用の状態を改善することでした。
この抗議デモと連動する形で12月6日には全米130都市で、「ファースト・フード・ストライキ」という名称の低賃金労働者の賃金を一時間あたり15ドルに引き上げることを求める運動が実施されています。
(出典:労働政策研究・研修機構「ウォルマートに対し全米で抗議デモ」,2013)
2018年スペイン:カタルーニャ地方のデモ
スペインのカタルーニャ地方では、2017年に独立を問う州民投票が実施され、独立支持派と反対派の衝突などはあったものの、賛成多数で独立宣言が行われました。
しかしその独立宣言が反乱行為であると非難され、前州首相などが逮捕され、有罪判決が下されたのです。
この判決に支持派の市民は抗議し、バルセロナ中心部にて抗議デモを開始し、最高裁判所の判断に抗議を行いました。
またエル・プラット国際空港では独立支持派と警察との衝突も起こっており、大規模な抗議運動の影響で108便が欠航となっています。
(出典:在スペイン日本国大使館「スポット情報 スペイン:カタルーニャ州における分離独立運動に伴う注意喚起(その2)」)
2018年フランス:黄色いベスト運動
2018年11月から毎週土曜日に行われるようになったのがフランスの「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト運動)」です。
黄色いベスト運動は2019年1月に実施予定となっていた燃料税の引き上げに対するデモ運動から始まったものです。
抗議デモを伴う暴力や破壊行為を行う暴動と化し、マクロン大統領はこの行為を糾弾しました。
これらの抗議デモおよび暴動を沈静化するため、政府では社会および経済的な対策として早急な減税の実施と財政支出の効率を推し進める意向を示しました。
また12月10日には法定最低賃金の引き上げや超過勤務手当にかかる所得税および社会保険料の免除、特別手当に対する非課税措置を発表しています。
しかしこの運動は縮小化が見られるものの2019年11月現在も行われており、運動が行われるようになってから1年が経過しています。
(出典:労働政策研究・研修機構「特別手当、1,000ユーロを上限として非課税措置」)
2019年:香港「逃亡犯条例」改正に関するデモ
香港では2019年6月から「逃亡犯罪人条例等改正案」に対する抗議デモが香港島、九龍、新界の市街地を中心に行われています。
一連の抗議デモは警察への事前申請が行われ、許可を受けて平和的に行われていましたが、次第に不許可の抗議活動やゲリラ的な活動が行われる傾向も見られ、警察との衝突がエスカレートしています。
衝突を鎮圧するために警察側が催涙弾やゴム弾などを大量に使用する一方で、抗議者側も火を使用するなど、手段が激化する傾向にあり、抗議者・警察側ともに負傷者が増大しています。
地下鉄駅構内や商業施設、空港などでも行われるケースがあり、公共交通機関などではストライキやサボタージュも行われ、交通機関が麻痺するなどの影響も出ています。
この抗議デモは2019年11月現在も行われています。
(出典:外務省「海外安全ホームページ 香港の危険情報(新規)」)
政治や情勢に影響を与える暴動・デモ
大規模な暴動やデモは政治・情勢に多大な影響を与えます。
政策に対しての不満や差別、宗教的な思想の違いによる行動など、暴動やテロが起こることで世論が動き、政府が対応に追われ、それまでの姿勢を一変することも少なくありません。
例えばデモに参加することは、自らが持つ主義主張を訴える意思表示にもなります。
これらを注視することで世界の情勢などを知ることができるため、現在起こっているデモなどに注目することは大切なことです。