世界には内戦や紛争により自国にとどまることができなくなった難民がどれくらいいるのでしょうか。
国や地域、紛争問題ごとに難民の人口に見られる特徴について解説します。
世界の難民問題の原因や解決策とは?受け入れ国での生活や日本の対応、支援協会の活動は?
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世界の難民人口は?中東・アフリカ以外にも世界中で増加
難民とは、紛争や内戦による迫害を受けた、もしくは受ける可能性があり命の危険におびえ自国を追われている人を指します。
2018年には世界に7,080万人もの人々が故郷を追われ、難民生活を行っています。
なぜ、難民が生み出されてしまうのでしょうか。難民が増加する原因として、主に以下の3つが挙げられます。
- 内戦や紛争による迫害
- 政治的立場のある人たちによる人権侵害
- 環境や気候の変化による生命の危機
世界中に難民が生み出されている最も大きな原因は内戦や紛争による迫害です。
シリア内戦やイエメン紛争などをはじめ、長期化する戦争により故郷から逃げざるを得なくなっています。
また、政治的立場のある人が自己利益を求めるがゆえに、国民が生活できなくなっているのです。
それゆえ、人間らしい生活を求めて、先進国へと逃げてくる難民も生み出されています。加えて、発展途上国では気候や環境が変化して自国では生きていけなくなった人々もいます。
このように、世界中に国や故郷を追われた難民が大勢いるのです。
(出典:国連難民高等弁務官事務所UNHCR「グローバル・トレンズ・レポート(年間統計報告書)」,2019)
難民受入人数が多い国
世界中で毎年大勢の難民が生み出されており、その数は年々増加しています。2018年時点で難民を受け入れている国を見てみましょう。
順位 | 難民受け入れ国 | 難民受け入れ人数 |
---|---|---|
1 | トルコ | 370万人 |
2 | パキスタン | 140万人 |
2 | ウガンダ | 120万人 |
4 | スーダン | 110万人 |
4 | ドイツ | 110万人 |
(出典:国連難民高等弁務官事務所UNHCR「グローバル・トレンズ・レポート(年間統計報告書)」,2019)
- 難民とは紛争や内戦による迫害を受けた、もしくは受ける可能性があり命の危険におびえ自国を追われている人
- 難民を生み出している大きな原因が紛争や内戦
- トルコ、パキスタ、ウガンダ、スーダン、ドイツは多くの難民を受け入れている
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難民発生国の67%が5カ国に集中
難民の流出が多い国をみてみるとシリア、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマー、ソマリアに全難民の約67%が集中しています。
なぜこれらの国でこれほどまでに難民が多いのでしょうか。
特に難民が多く発生しているシリア、アフガニスタン、南スーダンで起きている主な問題について紹介します。
(出典:国連難民高等弁務官事務所UNHCR「グローバル・トレンズ・レポート(年間統計報告書)」,2019)
シリア問題
シリア問題は、2011年から続いているシリア政府軍と反体制派による内戦です。長年続く内戦により多くの人が難民としてシリア国内や近隣国へ避難し、多くのシリア難民が生まれました。
シリア難民は日本でも難民申請者が見られており、切実に避難場所を求めています。
2019年8月にシリア紛争は停戦合意がなされていますが、いつまた再発するか油断を許さない状態です。
そのため、できるだけ早くより安全な場所に移動したいという国内避難民も大勢います。
2018年には670万人以上のシリア難民が紛争に巻き込まれ命を落とす危険と恐怖のもとで生活をしていました。
シリア国内でも支援は行われていますが、670万人のうち約460万人は支援が届きにくく、生活必需品を得ることもできていません。また、40万人ほどのシリア難民は完全に身動きが取れず包囲された状態で暮らしています。
シリア国内にとどまりながら避難生活を送っている難民だけでなく、周辺国に逃れることはできたものの長引く緊張状態ゆえに厳しい暮らしをしなければならない人は少なくありません。今後もシリア難民は増え続け、これまで以上に支援の手が届きにくくなると予想されています。
(出典:国連難民高等弁務官事務所UNHCR「グローバル・トレンズ・レポート(年間統計報告書)」,2019)
アフガニスタン
アフガニスタンでは1979年にソ連軍が侵攻して以来、40年近く混乱状態にあり、国際問題に発展しかねない危険が満ちています。ソ連軍が侵攻してから対人地雷が全国的に広がっており、アフガニスタンでは命の危険と隣り合わせの暮らしが強いられています。
アフガニスタン難民が非常に多い原因がいくつかあります。
- 女性の就労禁止・教育禁止などの人権侵害
- 麻薬栽培・密輸・テロ
- 未だに多く残っている対人地雷
- イスラム教徒民兵組織による戦争
- タリバーンとの摩擦
このように、アフガニスタンでは戦争や人権侵害などによる危険がいつもあるため、周辺諸国への難民流入が増加しています。現在アフガニスタン国内で避難生活を行っている人たちも420万人を超えており、未だに支援を必要とし続けています。
(出典:外務省「アフガニスタンの現状と問題」)
南スーダン
南スーダンはスーダン共和国からの独立のため半世紀にわたり続いた内戦が終結した今でも、世界でも深刻な人道危機に面しています。
独立して間もなく警察隊による衝突が起こり、激しい銃撃戦が行われました。現在でも政治勢力の衝突や経済悪化による犯罪が引き続き発生しており油断ができない状態です。
家が不当に奪われたり放火されたりする危険、子どもの誘拐や女性の性的暴力など様々な問題が相次いでおり、家族が生きているかも知ることができないまま、飢えに苦しみながら避難生活を送っている難民が数多くいます。
現在、南スーダン国内にとどまり避難生活を行っている人は2017年時点で190万人以上もいます。さらに、親と離ればなれになってしまった子どもたちは16,000人もいるのです。
また、2018年には南スーダンの人口の約3分の2にのぼる700万人以上が飢餓の恐れがあると発表されています。
南スーダンでは引き続き難民支援が必要とされています。南スーダンに渡航し医療支援を行う人たちにも被害が及んでいるため、支援する側にも余談が許されない非常に危険な状態です。
(出典:ユニセフ「南スーダン 女性たちの安全を守るために避難民キャンプにおける水と衛生の取り組み」,2017)
(出典:国連世界食糧計画(WFP)「南スーダン:人口の3分の2が飢餓の恐れ」)
- シリア、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマー、ソマリアに全難民の約67%が集中している
- シリアでは長年続く内戦により多くの人が難民としてシリア国内や近隣国へ避難している
- 南スーダンでは人口の約3分の2にのぼる700万人以上が飢餓の恐れがあると発表された
世界の難民に行われている支援とは
世界中の難民人口の67%を包括しているシリア、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマー、ソマリアではどのような支援が行われているのでしょうか。
難民流出が多いTOP3の国から避難している難民に行われている支援活動についてみていきましょう。
シリア
シリアで行われている支援活動の一部として以下のものなどがあります。
- 食料バウチャー(クーポン)による生活環境の改善
- トラウマによるストレスや心の傷の予防
- 女性向け能力向上プログラムの提供
- 難民同士の交流の機会を提供
仕事に就くことも生活することも困難なシリア難民が生活環境を改善できるように、食料バウチャー(クーポン)が提供されています。
そのバウチャーを使って食料品や日用品を購入し、通常の生活にいち早く戻れるように支援しているのです。
また難民生活にありがちな孤独感や、不安、いじめなどによるストレスから守るための心理的な支援も行われています。
(出典: 外務省「ジャパン・プラットフォーム イラク・シリア人道危機対応計画 第2版(2015年11月20日版)」)
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アフガニスタン
アフガニスタン難民のためにも様々な支援がなされています。
- 日本からODA(政府開発援助)による支援
- 生活関連物資の提供・輸送
- 女性に対する人権支援
アフガニスタンでは女性や子どもへの人権侵害が深刻な問題となっており、暴力や摂取などによる危険な状態から保護するためのあらゆる取り組みが行われています。
女性と子どもが実の安全を確保できるように支援し、暴力の被害を受けた女性や子どもの身体的・精神的支援を行っています。
さらに、通学支援や、男女平等の社会におけるコミュニティの連携などを支援し、女性も教育を受けて身の安全を確保し、社会的立場を確立できるように助けているのです。
ODAでは以下の分野における支援を重点的に行っています。
- アフガニスタン政府の治安維持能力の向上のための支援
- 開発支援(持続的・自立的発展のための支援)
(出典:外務省「対アフガニスタン・イスラム共和国 国別開発協力方針」,2018)
南スーダン
南スーダンでは、暴力や人権侵害、犯罪から逃げてきた難民が貧困や飢えに苦しんでいます。
そのような難民のために大規模な援助物資が送られています。財源がなければ支援が行えず、犯罪の増加や感染症の流行につながります。
そうならないように日用品や食料品が入手困難な地域にも、調理器具やマット、蚊帳などをはじめとする様々な支援物資が提供されています。
さらに次のような支援も行われています。
- 水や衛生環境の改善
- 作物の種や農具、漁具などの配給
- 暴力による身体的・精神的被害者のケア
- 子どもたちの安全確保・保護者との再会支援
(出典:国連世界食糧計画(WFP)「南スーダン:人口の3分の2が飢餓の恐れ」)
難民の人々を救うために私たちにもできることは?
紛争や迫害から逃れてきた難民は、十分な食事をするほどのお金も、日常生活を送るための家もない場合がほとんどです。
そのような難民の命を守り、新しい生活を始めるための支援を行う人々や団体がありますが、活動を継続して行うには資金や人材がまだまだ足りていません。
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