日本を含め、世界には多くの絶滅危惧種と認定される生物が存在しています。その中でも河川や海に生息する魚や海に住む海洋生物の中には、保護しなければすぐにでも絶滅するかもしれないものもいます。
日本における魚や海洋生物にはどれだけの絶滅危惧種がいて、どのような生物が指定されているのか紹介します。
海の絶滅危惧種とは?レッドリストにある魚・海洋生物の種類・数、原因と対策についても紹介!
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日本の絶滅危惧種
日本では現在、確認されているだけでも9万種類以上の生物が生息しています。
これまでに多くの種が生まれては、自然環境の変化などでその姿を消してしまった生物がいるのです。地球上から完全に姿を消してしまうことを種の絶滅と言いますが、現在の日本や世界を見ると、人間の活動によって生存を脅かされ絶滅へ追いやられている種が存在します。
このような絶滅に瀕している生物を保護する活動が行われており、そのような生物を把握するために「レッドリスト」と呼ばれるものがまとめられています。
環境省が発表するレッドリストとは
レッドリストとは、絶滅の恐れがある野生生物の種をまとめたリストのことです。
元々は1948年にスイスで発足したIUCN(国際自然保護連合)が作成したものであり、国際的なレッドリストはこの組織が取りまとめています。
日本では環境省のほか、地方公共団体やNGOなどが作成しています。
環境省のレッドリストでは、日本に生息する野生生物について、動物と植物をそれぞれ以下のように分類し、生物学的な観点から個々の種の絶滅の危険度を評価してまとめています。
動物 | 植物 |
---|---|
哺乳類 鳥類 両生類 爬虫類 汽水・淡水魚類 昆虫類 陸・淡水産貝類 その他無脊椎動物 |
維管束植物 蘚苔類 藻類 地衣類 菌類 |
概ね5年ごとに全体的な見直しを行っており、2014年には第4次レッドリストを、2019年には最新の第4次レッドリストを見直し第4回改訂版を公表しています。
現在環境省が選定する絶滅危惧種は2019年の改訂版において、合計で3,732種となりました。
カテゴリーの分類
絶滅危惧種と言ってもその状態は種によって異なるため、レッドリストでは絶滅のおそれの程度に応じてカテゴリー分けを行い、評価しています。以下は環境省のレッドリストカテゴリーと評価基準です。
分類 | 判定 |
---|---|
絶滅(EX) | 既に絶滅したと考えられる種 |
野生絶滅(EW) | 飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態で飲み存続している種 |
絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) | 絶滅の危機に瀕している種 |
絶滅危惧ⅠA類(CR) | ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの |
絶滅危惧ⅠB類(EN) | ⅠA類ほどではないが、近い将来における野性での絶滅の危険性が高いもの |
絶滅危惧Ⅱ類(VU) | 絶滅の危険が増大している種 |
準絶滅危惧(NT) | 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種 |
情報不足(DD) | 評価するだけの情報が不足している種 |
絶滅のおそれのある地域個体群(LP) | 地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの |
絶滅危惧種とは絶滅のおそれがある種であることは触れましたが、レッドリストには既に絶滅してしまった種も公表されているため、評価基準に含まれています。
(出典:環境省「日本の絶滅危惧種と生息域外保全」)
(出典:環境省「レッドリスト」,2019)
(出典:環境省「レッドリストのカテゴリー(ランク)」)
日本の魚・海洋生物の絶滅危惧種
日本の魚や海洋生物については一部の種を除き、2012年まで絶滅危惧の評価を行っていませんでした。
しかし愛用生物への関心の高まりを受け、同年からレッドリストの作成を行ってきました。
2017年には魚類、サンゴ類、甲殻類、軟体動物(頭足類)、その他無脊椎動物の5分類群について評価を行ったところ、絶滅危惧種として56種類が掲載されました。
その中には小学校、あるいは中学校の理科の授業で観察の対象としても用いられ、小川などに多く生息していたメダカといったごく身近にいた生物も含まれています。
分類群 | 評価対象種数 | 絶滅 | 野生絶滅 | 絶滅危惧種 | 準絶滅危惧種 | 情報不足 | 絶滅のおそれのある地域個体群 | 合計 | ||
IA類 | IB類 | II類 | ||||||||
EX | EW | CR | EN | VU | NT | DD | LP | |||
魚類 | 約3,900種 | 0 | 0 | 16 | 89 | 112 | 2 | 219 | ||
8 | 6 | 2 | ||||||||
サンゴ類 | 約690種 | 1 | 0 | 6 | 7 | 1 | 0 | 15 | 0 | 1 | 5 |
甲殻類 | 約3,000種 | 0 | 0 | 30 | 43 | 98 | 0 | 173 | 5 | 9 | 23 |
軟体動物(頭足類) | 約230種 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
その他無脊椎動物 | 約2,300種 | 0 | 0 | 4 | 20 | 13 | 1 | 38 | 1 | 2 | 1 |
合計 | 1 | 0 | 56 | 162 | 224 | 5 | 448 | 17 | 20 | 19 |
上記の表を見ると、最も多いのは甲殻類の30種です。その多くは干潟や南西諸島の海底洞窟に生息する種で、他の生物に寄生・共生する種も挙げられています。寄生あるいは共生する種の減少により、こういった甲殻類の絶滅の危険度も高まっているのです。
魚類では16種が絶滅危惧種に指定されています。南西諸島などの暖かい地域の沿岸域に分布する種が多く、特定の環境に依存する傾向が見られます。分布範囲の限られる種が多く挙げられています。
サンゴ類は沖縄周辺など生息域が局所的であったり、分布が極端に分断されているなど特徴があります。極めて稀にしか確認されないものなども多いことから、絶滅の危険度が高まっているとして6種類が登録されています。
また、サンゴの中には魚・海洋生物で唯一絶滅と判定された種があります。それが「オガサワラサンゴ」です。1935年に小笠原で記録された新種であり、記載されたあと日本国内では一度も生息が確認されていないことから、この1種だけが絶滅(EX)と判定されています。
調査は不足している種も
絶滅危惧種を含めて、生態調査も完璧ではありません。絶滅危惧種であるかどうかの判定をするにも、それに足る情報が得られなければいけません。しかし、現在この5分類群の合計でも224種が情報不足で判定ができずにいます。
今後の調査によっては、新たに絶滅危惧種であると判定される種も現れる可能性もあります。調査などによる情報の蓄積が必要です。
(出典:環境省「環境省版海洋生物レッドリストの公表について」,2017)
絶滅危惧種を守るために行われている活動
絶滅危惧種を保護するための活動は、かなり前から行われています。政府では、日本国内や海外において絶滅のおそれのある野生生物の種を保存するために、1993年に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」を制定・施行しました。
この法律に則り、国内希少動植物種における販売や頒布目的の陳列・広告、譲渡、捕獲・採取、殺傷・損傷、輸出などを原則禁止にするという個体の取り扱い規制が行われています。
また、生息域の保護としては生息・生育環境の保全を図る必要がある場所を「生息地等保護区」に指定します。保護増殖事業としては関連機関や保護支援を行う団体と協力して、個体の繁殖の促進や生息地などの整備といった事業の推進をしています。
保護増殖事業の必要があると認めた場合には「保護増殖事業計画」を策定して、保護増殖のための取り組みを行っています。
海外の希少野生生物については、ワシントン条約、二国間渡り鳥等保護条約・協定(通報種)に基づき「国際希少野生動植物種」と指定します。「国際希少野生動植物種」の販売や頒布目的の陳列・広告と、譲渡などを原則として禁止しています。
- 絶滅のおそれのある野生生物の種を保存するために、1993年に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」を制定・施行
- 生息・生育環境の保全を図る必要がある場所を「生息地等保護区」に指定
- 保護増殖事業の必要があると認めた場合には「保護増殖事業計画」を策定
- 海外の希少野生生物については、ワシントン条約、二国間渡り鳥等保護条約・協定(通報種)に基づき「国際希少野生動植物種」と指定
(出典:環境省「種の保存法の概要」)
(出典:外務省「ワシントン条約」)
絶滅危惧種を増やさないために
この地球上で生息しているのは私たち人間だけではありません。多種多様な生物が生息し、共生しています。
しかし最初にも触れたように、人間の活動によって様々な種がその生息域を追われ、絶滅しつつあるのが現状です。今生息している生物が絶滅していけば、その影響は周りの生物にもおよび、いずれは人間もその影響を受けることになります。
食物連鎖というように、全ての生物はつながっています。それを人間の活動によって制限し、絶やしてはいけません。
私たちにできることは、まず絶滅危惧種について知ることです。その上で、身近なところに生息している生き物の保護の方法を学び、国内外に生息する絶滅危惧種を保護する活動を支援することではないでしょうか。
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