日本では貧困な状態にいる人の多さが深刻な問題になっていますが、グラミン日本ではそうした人々が生活に困窮している状態から脱却し自立した生活を送るための支援を行っています。
2018年に新たに活動を開始したグラミン日本について、またその支援者(メンバー)になる方法をについて紹介します。
グラミン日本の支援方法、融資を受ける方法は?
グラミン銀行の仕組みとは
グラミン銀行の仕組みとは
1983年にバングラデシュで設立されたグラミン銀行のシステムは、当初はドナー機関から資本の提供を受けることで活動を行っていましたが、1990年代半ばごろからはバングラデシュ中央銀行から資本の提供を受けるようになりました。
そして近年では資金の調達のために債券が発行されています。
そして、集まった資金を支援対象者に融資を行うのが基本のシステムです。
グラミン銀行の特徴として、借り手は約97%が女性であり、高い返済率が注目されています。
また、そのシステムはマイクロファイナンスと呼ばれているものです。
マイクロファイナンスの特徴は
- 生活困窮者に対するものである
- 小規模な融資額である
- 無担保融資である
というもので、グラミン銀行はその代表的な事例とされています。
マイクロファイナンスと一般的な消費者金融の違いは、マイクロファイナンスが「起業や就労のため」の準備資金であるということです。
融資された資金を生活費に充てて一時的にしのぐという性格のものではありません。
また、グラミン銀行は、その理念として「4つの原則」と「16の決意」を公表しています。
4つの原則とは「規律」「団結」「勇気」「勤勉」であり、16の決意は以下の項目の通りです。
- 私たちはグラミン銀行の4つの原則に従い、私たちの人生のあらゆる歩みの中でこれを推進する:規律、団結、勇気、そして勤勉。
- 繁栄は家族のために。
- 私たちはあばら家には住まない。まず第一に家を修繕し、新しい家を作るために働く。
- 私たちは一年を通して野菜をつくる。私たちはそれらを豊富に食べ、余った分を売る。
- 私たちは耕作期にはなるべく多くの種をまく。
- 私たちは家族を増やしすぎないように計画する。支出をおさえ、健康に気を遣う。
- 私たちは子供たちを教育し、子供たちの教育費を払えるよう保証する。
- 私たちはつねに子どもと周囲の環境を清潔に保つ。
- 私たちは穴を掘ったトイレ (pit-latrine) をつくり、使う。
- 私たちは筒井戸から水を飲む。もし井戸がない場合は、水を沸かすかミョウバンを使う。
- 私たちは息子の結婚式で持参金をもらわず、娘の結婚式にも持参金を持っていかない。私たちのグループは持参金の呪いから距離をおく。私たちは幼年での婚姻をさせない。
- 私たちは不正なことをせず、また他人に不正なこともさせない。
- 私たちはより多くの収入を得るため、共同で大きな投資をする。
- 私たちはつねにお互いに助け合えるよう用意する。もし誰かに困難があれば、私たちは全員で彼または彼女を助ける。
- もしどこかのグループが破綻しそうだとわかったときは、私たちはそこへいって回復を手助けする。
- 私たちはすべての社会活動に共同で加わる。
「4つの原則」と「16の決意」は世界中に広がるグラミン銀行団体の根本の理念とされています。
(出典:グラミン日本公式サイト)
グラミン日本で支援対象者(メンバー)になるには?
グラミン日本から支援を受けるためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。
根本にあるのは「働く意欲があるがそのための準備資金がない」ということです。
その上で条件をクリアしていくという方法となります。
条件をクリアするとグラミン日本でもグラミン銀行と同様に低金利・無担保で少額の融資をメンバーに行うことが可能となります。
この融資によって起業や就労の準備資金とし、貧困状態から脱却しての自立を支援することを目的としています。
グラミン日本を支援する人々から集められた寄付は、「グラミン・ローン」と呼ばれるグラミン型マイクロファイナンス事業に使用されます。
グラミン日本でもグラミン銀行やグラミンアメリカと同じシステムで、借り手が5人1組となって互助グループを作り、励まし合いながらローンを返済。これにより自立した経済活動を行うことを目指しています。
消費者金融などのように、貸した後のお金の使い方が不明になるということではなく、融資された後は毎週1回センターミーティングが行われ、グラミン日本のスタッフが助言を行いながらフォローをしていきます。
そのため、非常に高い返済率を維持しているのもグラミン型マイクロファイナンスの特徴です。
そうしてグラミン日本のスタッフと常に相談をしながら、メンバーとなった人は起業や就労することができるのです。
支援対象者(メンバー)となる条件
グラミン日本の融資である「グラミン・ローン」を受ける対象者となるには以下の規定があります。
- 日本の貧困ライン以下の生活困窮者であること。
- 働く意欲があり生活をステップアップしたい人であること。
- 互助グループ(5人一組)を作ること。
- 毎週1回のセンターミーティングに参加できること。
- 事前に開催される金融トレーニングに参加できること。
融資される資金は、消費されていく生活資金に使用することはできません。
起業や就労によって、所得を創出することができるものに対してのみ融資されます。
グラミン・ローンの申し込みから融資までの流れとは
まずグラミン日本に問い合わせして、グラミン・ローンの説明会に参加の申し込みをします。
そしてグラミン・ローンについてのプログラムやシステムについての説明を受け、質問対応や意見交換を行います。
その後、5人1組での互助グループが形成されますが、この時点で仮申し込みが実施されます。
次に5日間の金融トレーニングが行われ、ここでグラミンのルールや金融知識についての事前研修を受けます。
そしてグラミン日本のスタッフが家庭訪問を行い、基本的なシステムを理解しているかどうかの簡単なテストが行われます。
お金のやり取りに使用する預金口座を開設し、借り入れの申し込みが行われます。
まず5人のうちの2人に融資が行われ、その返済具合などを見て残りの3人に融資が行われます。
そして融資された資金の使い道について正常に進行しているかどうかを相互に確認します。
融資を受けたのちも毎週センターミーティングが行われ、返済に関してのフォロー、起業や就労に関しての助言をグラミン日本のスタッフが行うことで返済や融資を繰り返していくという基本の流れができあがります。
グラミン日本は貧困を抜け出しいきいきと働ける暮らしをサポート
日本は世界の中でも先進国と言われていますが、それでも貧富の差は大きくあります。
病気や怪我、失業だけでなく、配偶者との離別や死別などによって急激に生活環境が変わることで生活が困窮状態になるということは、誰にでも起こりうることです。
そして、一度その状態に陥ってしまうと、なかなかそこから抜け出せない構造があるのが現状です。
グラミン日本では、人々が生活に困窮した状態から抜け出すことを支援しているのです。
シングルマザーやワーキングプアの人たちに、一時的な生活資金ではなく、「起業や就労」のために準備資金を支援することで自立を促し、貧困状態から抜け出させることを目的に活動しています。
こうした活動によって、貧困のない社会を作ることを目指しているのがグラミン日本なのです。