日本の少子化問題とは?原因や将来への影響を知り対策を考えよう


少子化は日本で起こる深刻な問題の1つです。少子化自体は以前から始まっていましたが、現在はより大きな影響を受けており、さらなる対策が求められています。

少子化が起こる原因は何なのか、少子化によってどのような影響が起こり、どういった対策を行っているのでしょうか。

日本で起こる少子化問題について説明します。

少子高齢化問題とは?現状や課題を知り解決策を考えよう

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少子化とは?

少子化とは出生率が低下し、子どもの数が減少することを表した言葉です。

日本で初めて使われたのは1992年に出された国民生活白書で、出生率の低下やそれに伴う家庭や社会における子ども数の低下傾向を「少子化」、子どもや若者が少ない社会を「少子社会」と表現しています。

さらに15歳から49歳までの女子の年齢別出生率を合計したものを「合計特殊出生率」と定義しており、1人の女子が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に産むとしたときの子どもの数に相当します*。

「合計特殊出生率」が人口を維持するのに必要な水準を相当期間下回っている状況を、「少子化」と定義しています。

  • 少子化とは出生率が低下し、子どもの数が減少すること
  • 1992年に出された国民生活白書で、出生率の低下やそれに伴う家庭や社会における子ども数の低下傾向を「少子化」、子どもや若者が少ない社会を「少子社会」と表現している
  • 「合計特殊出生率」が人口を維持するのに必要な水準を相当期間下回っている状況を、「少子化」と定義

*出典:内閣府「第1部 少子社会の到来とその影響」

日本の少子化の現状

日本では、1970年代半ばから少子化現象が続いています。

2021年時点でのデータと総人口に対する割合は以下の通りです*。

総人口 1億2,550万人
年少人口(0~14歳) 1,478万人(11.8%)
生産年齢人口(15~64歳) 7,450万人(59.4%)
高齢者人口(65歳以上) 3,621万人(28.9%)

高齢者人口の割合が年少人口の割合よりも高いことが分かります。

続いて出生数と合計特殊出生率についてですが、第1次ベビーブームの期間に当たる1949年の出生数は269万人で合計特殊出生率は4.32と過去最高でした。それに対して第2次ベビーブームがあった1973年はそれぞれ209万人、2.14と減少しています*。

この2つの年と2020年を比較したとき、それぞれの数値は出生数が84万人、出生率が1.33**となり、出生数は過去最低を記録しました。

先ほどの現在の各層の人口と割合を1950年付近で比較すると、年少人口は35.4%と今の3倍近くあったことも分かっています。

もちろん総人口も違うので割合だけでは正確な比較はできませんが、実際の出生数や出生率を比較しても、非常に低いのが現状です。

第1次ベビーブームと第2次ベビーブームとの間では出生数が一時的な回復を見せていますが、それ以降は減少の一途をたどっています。

*出典:内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」

都道府県における出生率の違いや諸外国との比較

続いて都道府県別の出生率の違いを見てみましょう。2020年の全国の合計特殊出生率は1.33であることは先述したとおりです。

都道府県別に比較した時、1.33を上回るのは35都道府県です。その中で最も高いのは沖縄県の1.83、続いて宮崎県の1.65になります。反対に最も低いのは東京都の1.12、次点が宮城の1.20です*。

フランス、スウェーデン、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアといった先進諸国と2017年の合計特殊出生率を比べてみます。

アメリカ、フランス、イギリス、スウェーデンは、現在にいたるまで合計特殊出生率が増加傾向となっており、日本とイタリア、ドイツは2000年以降緩やかに増加傾向にはあるものの、前述の国と比較すると低い水準です。

このような推移のもと2020年時点での合計特殊出生率はフランスが最も高い1.82で、最も低いのはイタリアの1.24、日本はイタリアに次いで1.33となっています。

*出典:内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」

今後予測される少子化

日本の総人口は2010年にピークを迎え、そこを境に減少を始めています。それに加え、高齢者人口の層は増加し続けて高齢化が進行し、2050年代にはこちらもピークを迎えます。

少子化が続いていることから、今後出生率が好転しない限りは、生産年齢人口は大幅に減り続けます。2050年の年少人口の数値は1,077万人と想定され、2021年より400万人近くも減ると推計されており、さらなる少子化が進むと考えられています*。

  • 日本では、1970年代半ばから少子化現象が続いている
  • 2020年の全国の合計特殊出生率は1.33で、それを上回るのは35都道府県(最も高いのは沖縄県の1.83、最も低いのは東京都の1.12)
  • 2017年時点での合計特殊出生率はフランスが最も高い1.82で、最も低いのはイタリアの1.24、日本はイタリアに次いで1.33

*出典:内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」

少子化が進む要因

日本の少子化が進む要因は結婚や出産が関連しています。

婚姻件数と婚姻率は出生率にも関わっており、日本の婚姻件数は近年継続的に減少している傾向にあります。

第2次ベビーブームが起こる1年前の1972年にはここ80年ほどで最も多い109.9万組の婚姻件数でしたが、2016年には62万件と半分近くまで落ち込んでいます。

婚姻率も1973年には概ね10.0程度だったものが、2020年には4.3と過去最低の婚姻率を記録し、低下傾向にあります。

婚姻件数や婚姻率の低下には、未婚化や晩婚化が進行していることが要因にあり、出生率にも影響してきます。

未婚化が進行している背景には、経済的な理由が男女どちらにも見られました。加えて男女とも圧倒的に多いのは「適当な相手にめぐり合わない」という理由です*。

結婚に関する障害について調査した結果では男女共に結婚資金が最大であり、さらに住居や職業など経済的事情が近年増加傾向にあります。

年齢別・雇用形態別に見た男性の有配偶率で見ても、どの年齢層も非正規雇用労働者の有配偶率が顕著に低くなっており、所得や雇用形態といった経済状況が大きな影響を及ぼしていると考えられています。

時代が進むにつれて価値観が変わり、独身時代を長く楽しみたいなどの理由や女性の社会進出も少子化に影響を与えていると言われています。

法整備などにより女性の社会進出が進む一方で、子育て支援の体制が十分でないことなど、仕事と育児の両立を阻害する要素があったため、出産・育児をする選択肢が制限されて、晩婚化や未婚化が進んでいます。

晩婚化が進めば、それだけ第1子を授かるタイミングが遅くなり、出産年齢も上がります。

晩婚化・晩産化が、一世帯あるいは一夫婦の理想的または予定している子どもの平均人数は2人以上で推移していますが、実際の子ども人数は2人未満となっており、理想と現実の間にはギャップがあると考えられています**。

晩婚化により第1子を産む年齢が上がると必然的に第2子以降を産む年齢も上がります。健康や体力を必要とする出産・子育てが年齢的に厳しいものになることから、第2子以降の子どもを断念せざるをえないと考えられます。

このような理由から出生率が減少傾向にあり、少子化が進行していると考えられています。

*出典:内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」

**出典:国立社会保障・人口問題研究所「現代日本の結婚と出産」(2015年)

日本の制度も結婚や出産に影響を与えている

日本における妊娠・出産と結婚との関係も少子化に影響しています。

日本では出生のほとんどが戸籍法に基づいた婚姻の届出をした夫婦によるものです。法律上、婚姻をした夫婦間に出生した子どもを嫡出子と呼びますが、日本は97.7%がこの嫡出子にあたり、非嫡出子は2.3%です*。

これを欧米諸国と比較するとどの国も日本より非嫡出子の割合が高く、中でもスウェーデンやフランス、イギリス、アメリカでは非嫡出子の割合が多いという結果が得られています**。

これは男女のカップルが結婚にいたるまでに同棲など事実婚の状態にあり、結婚するまでに出産し、非嫡出子であっても法的には嫡出子とほぼ同じ権利を受けられることや、結婚形式の多様化に対して社会が受け入れていることが要因であると考えられています。

  • 日本の少子化が進む要因は結婚や出産が関連している
  • 時代が進むにつれて価値観が変わり、独身時代を長く楽しみたいなどの理由や女性の社会進出も少子化に影響を与えている
  • 日本における妊娠・出産と結婚との関係も少子化に影響している

*出典:e-Stat(政府統計ポータルサイト)「人口動態調査 人口動態統計 確定数 出生」

**出典:厚生労働省「平成27年版厚生労働白書 – 人口減少社会を考える 」

少子化の影響

少子化の影響は経済的影響と社会的影響の2つに分けられます。

経済的影響としては15~64歳の労働年齢人口の減少とともに、短時間勤務を希望することの多い高齢者の割合の増加により、労働力供給の減少をもたらすおそれがあります。

少子化は将来的な労働力が減少していることを意味し、現在の生産年齢人口に属する人々が高齢者層に移ることにより、労働力の供給がより困難になることを意味しています。

労働力の制約と、貯蓄を取り崩すと考えられる退職者の割合の増加に伴う貯蓄率の低下と相まって投資を抑制し、労働生産性の上昇を抑制する要因になるとも考えられています。

少子高齢化が進むことで、年金などの社会保障への現役世代の負担が増大することも大きな問題となっています。

もし現状のまま推移すると、労働者の手取り所得は減少に転じるという厳しい予測もあり、少子化を解消しなければ日本経済全体に大きな影響を与えるでしょう。

社会的影響としては、独身の人や子どものいない世帯が増加し、社会の基礎的単位である家族の形態も大きく変化するとともに多様化します。特に独身の高齢者の増加は、介護やその他の社会的扶養の必要性を高めることにもなります。

子どもの人数が減少するため、子ども同士の交流の機会の減少や保護者による過保護化などにより、子どもの社会性がはぐくまれにくくなるなど、子ども自身の健やかな成長への影響が懸念されています。

地域によっては過疎化がさらに進行し、現在の地方行政のままでは、市町村によっては住民に対する基礎的なサービスの提供が困難になると懸念されます。

  • 少子化の影響は経済的影響と社会的影響
  • 経済的影響としては、労働力供給の減少、年金などの社会保障への現役世代の負担が増大
  • 社会的影響としては、社会的扶養の必要性を高める、子ども自身の健やかな成長への影響が懸念される、住民に対する基礎的なサービスの提供が困難になる

日本の少子化対策

日本の少子化対策には少子化社会対策基本法を定め、その中で少子化社会対策大綱を策定し、施策に当たることが規定されています。

少子化は日本の社会経済の根幹を揺るがす危機的状況ですが、解決できる課題であるとされています。

2016年から2020年までの5年間を集中取組期間と位置づけ、重点課題を設定し、各段階に応じた切れ目のない取り組みと、地域・企業などの社会の取り組みを両輪としてきめ細かく対応することで、政策を効果的かつ集中的に投入しました。

2015年までの少子化対策から設定された重点課題は以下の通りです。

  • 子育て支援施策を一層充実
  • 若い年齢での結婚・出産の希望の実現
  • 多子世帯へ一層の配慮
  • 男女の働き方改革
  • 地域の実情に即した取組強化

これらの課題に施策を打ち出して取り組みつつ、結婚、妊娠・出産、子育て、教育、仕事と各段階に応じた支援に加えて社会全体で行動し、推進していく対策に取り組みました*。

施策を推進するにあたって、内閣総理大臣をトップとする「少子化社会対策会議」を中心に、「まち・ひと・しごと創生本部」と連携しつつ、政府一体で推進。

2025年に向けた子育て施策の指針となる、第4次「少子化社会対策大綱」が2020年5月に閣議決定されました。

  • 少子化は日本の社会経済の根幹を揺るがす危機的状況ですが、解決できる
  • 重点課題を設定し、各段階に応じた切れ目のない取り組みと、地域・企業などの社会の取り組みを両輪としてきめ細かく対応する
  • 結婚、妊娠・出産、子育て、教育、仕事と各段階に応じた支援に加えて社会全体で行動し、推進していく対策に取り組む

*出典:内閣府「少子化社会対策大綱 (概要)」,2015

少子化は日本全体で取り組むべき問題の1つ

少子化は今後進行していくことで経済や社会に深刻な影響を与えます。政府でも様々な施策を行っていますが歯止めは利かず、今も進行している状態です。

結婚や出産、子育ては1人でできるものではなく、取り巻く環境や周りの助けがあってこそできるものです。現代は子育てまでのプロセスが厳しく、選択肢から遠のいてしまうことが多いのも確かです。

結婚や出産は強要できませんが、結婚や出産をしたくても迷っている、またはできないという人たちを助けることはできます。

例えば、認定NPO法人 フローレンスでは、子育てがしやすい社会を目指し、病児保育、小規模保育園などを行っています
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