地球温暖化は様々な影響を及ぼしています。
温暖化による気温の上昇は陸だけでなく海洋の海水温や海洋循環といった環境への影響も目立ちます。
環境への影響は、海洋生物にとっても大きな負担となり、絶滅危惧種などを増やしてしまうだけでなく、私たちが普段受けている恩恵も受けられなくなる可能性があるのです。
この記事では、地球温暖化による海水温や海洋循環への影響を紹介します。
地球温暖化のメカニズムや原因、現状は?私たちへの影響やすぐにできる対策も解説
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上昇し続ける地球の気温
現在地球全体で気温の上昇が起こり続けています。これは地球温暖化によるもので、その進行は加速度的に進んでいます。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、第5次評価報告書で陸域と海上を合わせた世界平均地上気温は、1880年から2012年までの132年間で0.85℃上昇したことが報告されました。
最近30年の各10年間、つまり1990~1999年、2000~2009年、2010~2019年のそれぞれの10年は、1850年以降のどの10年間よりも高温を記録しています。
これは産業革命が大きく関係しています。産業革命には石炭を燃やして蒸気機関を動かすシステムが開発されました。
産業革命以降、人間の生産活動は石油や石炭などの化石燃料を燃焼させることによるエネルギーを用いて行われてきました。
経済成長を経るごとに大気中の二酸化炭素濃度は上昇し、産業革命以前に比べて40%増加しています。
GOSAT(温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」)による世界の二酸化炭素濃度分布観測結果を見ると、2009年には多くの国や地域が370~380ppmだったのに対して、2018年には400~410ppmと10年ほどで急激に二酸化炭素濃度が上がっているのが分かります。
(出典:環境省「地球温暖化の現状」,2019)
地球温暖化が及ぼす海への影響
地球温暖化は世界全体に影響を与えています。
それは陸に生息する動植物や環境だけではなく、海水温や海洋循環などの海洋環境にも影響を与えているのです。
海水温への影響
地球温暖化による気温の上昇は、海水温の上昇も引き起こしています。
地球温暖化の原因は二酸化炭素などの温室効果ガスです。二酸化炭素は森林などの植物が取り込み、酸素にして大気中に放出してくれます。
しかしそれだけでは大気中の二酸化炭素は減りません。なぜなら酸素への転換は植物にしかできず、地球上に生きるほとんどの生物は酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出すためです。
植物でさえ、昼間は光合成をしながら、夜間は光合成ができないため呼吸を行い、二酸化炭素を吐き出すのです。
しかし、二酸化炭素を吸収する存在が植物以外にもあります。それがこの地球表面の7割を占める海洋です。
海洋は二酸化炭素や熱エネルギーを吸収し、地球温暖化を和らげる役割があります。
1971年から2010年までの40年間に蓄積された熱エネルギーの9割以上は、海洋に吸収されているのです。
また人間の生産活動で放出された二酸化炭素の約3割も海洋が吸収し、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑えています。
しかしこれらは海洋自身も地球温暖化を進めていることになります。熱エネルギーを吸収することで海水温が上昇し、海水が膨張して海面水位の上昇が世界的に起こっているのです。
海水温の上昇率
日本近海の海水温の上昇率の特徴について見ると、2018年までの約100年間で、海域平均海面上昇の上昇率は∔1.12℃でした。
これは、約100年間に渡る日本全国の年平均気温上昇率∔1.21℃と同程度の値です。
世界全体や北太平洋全体で平均した海水温の上昇率よりも大きくなっています。
世界全体の海水温の年平均上昇率は100年間で∔0.54℃、北太平洋全体で∔0.52℃です。
IPCCの第5次評価報告書によれば、世界年平均地上気温の上昇率は地域や海域によって異なります。日本に近い大陸の内陸部で上昇率が大きくなっている影響を受けて、日本周辺海域における大陸に近い海域の海面水温の上昇率を上げています。
海洋は大気に比べて変化しにくい特徴があります。そのため海水温が高くなり、海面水位が上昇すると、元に戻りにくく長期化します。
つまりただちに地球温暖化の対策を行って、気温の上昇を抑えられても、海水温や海面水位はすぐには変化せず、変化するまでには相当な時間がかかると考えなければいけません。
十年規模変動の特徴
日本近海の海面温度の上昇に関しては、長期的な昇温傾向だけでなく十年規模の変動が見られます。
十年規模の変動は、全海域平均水温において2000年ごろに極大になり、その後は下降傾向、2010年には極小となりました。
日本近海の海水温の十年変動でみると、東シナ海北部や日本海中部などを終身に広い海域において冬季の季節風の強さの影響が深く関係し、海水温が変動しています。
他にも黒潮などの海流や、太平洋十年規模変動に関する海洋内部の水温変動が影響していると考えられている海域もあります。
海水温は十年規模を含む様々な時間スケールの変動と地球温暖化などの影響が重なり合って変化していることから、地球温暖化の進行を正確に監視するためには、十年規模の変動を把握することが大切です。
そのため海洋の変化は世界気象機関(WMO)をはじめとした国際機関や各国政府と研究機関との連携で行われており、日本は気象庁が1930年代に観測船による海洋観測を開始しています。
今後も観測を続けながら、海水温や海面水位の上昇の推移には注意していく必要があります。
海洋循環への影響
海洋の中では深層循環が常に行われています。これは海水の水温と塩分による密度差によって動く熱塩循環と呼ばれています。
熱塩循環
熱塩循環は、以下の1と2を繰り返すことです。
1.表層にある海水は北大西洋のグリーランド沖と南極大陸の大陸棚周辺で冷却され、重くなり底層に沈む。
2.世界の海洋の底層に広がり、底層を移動する間にゆっくりと上昇して、表層に戻る。
この循環は約1000年スケールで行われています。
地球温暖化や気候変動の影響は、この海洋循環にも影響を与えると考えられています。
海洋循環
本来であれば底層にまで沈みこむような重い海水が形成される海域の海水の昇温や、降水の増加、氷床の融解などによる低塩分化によって、表層の海水密度が軽くなり、底層に沈みこむ量が減少してしまう可能性があります。
そうなると深層循環が一時的にでも弱まると考えられており、南からの暖かい表層水の供給の減少や、北大西洋とその周辺の気温の上昇が比較的小さくなると指摘されています。
実際にIPCCの第5次評価報告書によると、大西洋の深層循環の変化傾向を示す観測上の証拠はないものの、1992年から2005年の期間に3,000mから海底までの層で海洋は温暖化した可能性が高いと報告されています。
また、大西洋の深層循環の予測については、深層循環が数十年規模の自然変動により強まる時期があるかもしれないとしています。
さらに21世紀を通じて弱まる可能性は非常に高いとしています。
21世紀中に突然変化または停止してしまう可能性は非常に低いものの、22世紀以降については大規模な温暖化が継続すると大西洋の深層循環が停止してしまう可能性があるとしています。
(出典:気象庁「地球温暖化と海洋」)
(出典:全国地球温暖化防止活動推進センター「1-1 地球は温暖化してきているのか」)
(出典:気象庁「海面水温の長期変化傾向(日本近海)」,2018)
(出典:気象庁「深層循環の変動について」)
地球温暖化による海洋への影響は私たちにも及ぶ
地球温暖化は海水温や海洋循環に影響を与えています。海洋に住んでいる魚や海洋生物だけに限らず私たちにも影響を与えます。
海洋は熱エネルギーや二酸化炭素を吸収し、地表温度を調整してくれています。しかしその一方で、海水の膨張により地球温暖化が進行していることも解説しました。
これは本来のキャパシティを超えて、海洋が支えられないほどの熱エネルギーや二酸化炭素が放出されているとも言えます。
二酸化炭素の吸収は海洋酸性化にもつながり、それに加えて海水温の上昇や海洋循環が滞れば、海洋生物が生きていけない環境ができあがってしまいます。
海洋の恩恵を受けている人私たち人間にとって、地球温暖化以外にも多大な損失の可能性があります。
地球温暖化などを防止しても、すぐに海洋の環境が改善するわけではありません。だからこそすぐにでも効果的な対策を行い、地球温暖化や気候変動を抑えないと将来的な海洋環境はさらに悪化するといえるでしょう。
私たちにできることをしっかりと把握し、今すぐできることから一人ひとりが取り組むことをおすすめします。
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