森林火災は世界で起こる自然災害の1つです。世界各地で発生しては鎮火されてきましたが、近年鎮火できないほど大規模な森林火災が発生している地域があります。
なぜそのような森林火災が発生しているのか、消火方法はあるのか、この記事で紹介していきます。
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森林火災と深刻化する森林破壊
森林火災は世界の様々な場所で起こっています。森林には枯れ葉や枯れ草、木々など燃えるものが大量にあることから一度火がつき燃え広がれば大規模化する恐れもあります。
日本でも森林火災は毎年1,000~2,000件ほど発生していますが、大規模なものは数年に1度程度しか発生していません。これは早期の鎮火、森林火災が大規模化しないための対策などが取られているためです。
海外でも同様に鎮火作業や対策によって大規模な森林火災が起こることはそれほどありませんでした。
日本とは立地や森林の面積、発生件数などの違いから、大規模化する可能性の有無には違いがありますが、全体の発生件数から考えれば大規模化する森林火災は、それほど多くはないのです。
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近年の大規模化・長期化の原因は気候変動
近年、大規模化・長期化した森林火災が複数起こっています。
森林火災の火種は自然発火あるいは人為的要因のどちらかです。自然発火であれば、高温で乾燥した環境下で枯れ草や枯れ葉が摩擦を起こし、それが火種となります。人為的要因ならば焚き火や火入れ、たばこの不始末などが火種となって燃え広がります。
カリフォルニア州では秋から冬にかけて、山頂から風下に向けて高温で乾燥した風が吹き降ろすフェーン現象が起こります。
火種が生まれたとき、フェーン現象が起こると一気に燃え広がることがあり、森林火災へと発展するのです。それでもこれまでの経験と対策から、大規模化や長期化することは全体の発生件数から見ればそれほど多くありませんでした。
それが近年は森林火災そのものの発生件数が増加しており、大規模で甚大な被害を出す森林火災が増えているのです。その原因としては地球温暖化や気候変動が考えられています。
地球温暖化により気温の上昇や気候変動による異常少雨や干ばつによって乾燥化が進んでいます。
実際、北半球や北極圏では異例の高温乾燥状態に陥っていることから、森林火災が多発していると世界気象機関(WMO)が報告しています。
(出典:農林水産省 林野庁「日本では山火事はどの位発生しているの?」,2018)
(出典:国立環境研究所「世界気象機関、北極圏で記録的森林火災が発生していると報告」,2019)
(出典:気象庁「1.2 世界の最近の異常気象と気象災害」)
(出典:農林水産省林野庁「山火事の直接的な原因にはどのようなものがあるの?」,2018)
(出典:気象庁「気温について」)
アマゾンとオーストラリアで起こる壊滅的な森林火災
世界で発生件数が増え、大規模化や長期化によって様々な被害をもたらしている森林火災ですが、特に近年アマゾンとオーストラリアで起きた森林火災が壊滅的な被害を出しています。
どちらも非常に大規模な森林火災となり、オーストラリアにいたっては2020年2月時点でも森林火災は継続しています。それぞれがどのような森林火災となったのか紹介します。
アマゾンの森林火災
南米にあるアマゾン川流域では森林火災による環境の悪化が進行しています。
欧州宇宙機関の報告によれば2019年8月1日から24日にかけて4,000近い森林火災が確認されています。
アマゾン川流域には広大な熱帯雨林が広がっています。これまではその熱帯雨林がこの地域の生態系や環境を形成してきただけでなく、「世界の肺」と呼ばれ世界の二酸化炭素を吸収する重大な役割を担ってきました。
しかしその熱帯雨林は伐採が深刻化しており、それによって二酸化炭素の吸収量が落ち、地球温暖化や気候変動に大きな影響を与えています。このようなことが要因となり大規模な森林火災の発生につながったのです。
気温の上昇や干ばつによる乾燥化がこの地域を襲い、過伐採をすることで生態系のバランスが崩れ、森林火災が起きやすく、大規模化・長期化しやすい環境へと変わりました。
2019年には非常に大規模な森林火災がアマゾンで発生し、先住民の村落などの直接的な火災被害が起こっています。それだけではなく、一酸化炭素、窒素酸化物、非メタン揮発性有機化合物などの大気中への放出も懸念されています。
この森林火災による二酸化炭素放出量は255メガトンにものぼるとされ、地球温暖化を進めてしまうだけでなく、熱帯雨林そのものが焼失しているので炭素吸収機能低下の危険性も報告されています。
オーストラリアの森林火災
オーストラリアでは2019年9月以降、相次いで森林火災が発生しています。日本でもニュースなどで何度も取り上げられていますが、2020年2月時点でも森林火災は続いています。
森林火災がここまで長期化するのは前例がなく、現在も継続中であることから焼失した面積や被害は把握しきれていないのが現状です。
未曾有の大災害となってしまったオーストラリアの森林火災ですが、特に壊滅的な被害となったのはニューサウスウェールズ州の森林火災です。
死者は28人を超え、住宅や土地の焼失、生態系や環境の破壊など様々な被害が出ていると報告されています。
この森林火災が起こった2020年第1週目のこの地域とオーストラリア南部および東部の気温は40℃を超えており、長期の雨不足に加え、強風が吹いていたため森林火災の危険度は最高レベルになっていました。
オーストラリアでの森林火災は珍しいことではありませんが、降雨量の減少や気温の上昇といった大規模化する条件が重なっていたため激化し、甚大な被害をもたらす森林火災となったと考えられています。
ACT(オーストラリア首都特別地域)では2020年1月31日から2月2日にかけて高温の影響により新たに森林火災が発生する可能性があると緊急事態宣言が発令されました。
このときナマジ国立公園で森林火災が発生しており、そのときの気候などからさらなる火災が起こり、大規模化することが予想され、被害の拡大から避難が呼びかけられています。
オーストラリアの森林火災は被害だけでなく、環境にも大きな影響を与えています。火災によって発生した有害物質が大気中に放出され、オーストリアの主要都市で大気質が悪化しています。また火災の煙はニュージーランドや南米にまで達しています。
広がり続ける森林火災は約400メガトンにもなる二酸化炭素が放出されており、地球温暖化や気候変動への影響が懸念されています。
(出典:J-STAGE「アマゾン熱帯雨林による二酸化炭素吸収の日変化・季節変化」)
(出典:国立環境研究所「世界気象機関、世界各地で発生している森林火災の気候影響を報告」,2019)
(出典:国立環境研究所「世界気象機関、オーストラリアの壊滅的な森林火災について報告」,2020)
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森林火災で用いられる消火方法
森林火災が起こった場合、鎮火作業を行わなければいけません。その場合用いられるもの一つがヘリコプターです。
火災である以上、消防車による地上からの消火が主になりますが、それだけでは周りの木々の影響で火災現場での消火が難しい場合もあります。
そこで空中消火を行い、地上の消化と連携して鎮火を行うために導入されるのがヘリコプターです。これにより上空から広い範囲の消火を行うことができます。
また海外では発生件数の多さや、消火範囲が広くなることがあることから、より大量の消火剤や放水を行うためヘリコプターではなく消防機と呼ばれる消防飛行艇や陸上消防機が用いられています。
火災シーズンに運用され、湖などの水を大量に運び、上空から放水して消火作業を行います。
ただし大規模な森林火災となってしまうとヘリコプターによる消火は、効果が薄くなります。消防機であってもアマゾンやオーストラリアの甚大な被害を出す森林火災になると、鎮火にはなかなか至らない状況なのです。
(出典:岐阜県「岐阜市東部・各務原市林野火災(2002年(平成14年)4月5日、6日)」)
(出典:北九州市立大学国際環境工学部「世界の森林火災と航空消火について<第1報>」)
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森林火災を防ぐために私たちにもできることがある
森林火災は小さなものであっても周辺に被害を及ぼします。近年は地球温暖化や気候変動により大規模化・長期化する条件が整うことが多いため、危険な自然災害として認識されています。
日本でも水際対策として見回りや、発生した場合も早期の鎮火が行われているため、ここまで大規模な森林火災が起こることは少ないですが、一度大規模化すれば被害も大きくなり危険であるとされています。
私たち自身も日ごろから森林火災を起こさない取り組みが必要となります。
植物や木々が多い場所、燃えそうなものがある場所では焚き火は控える、火を使っているときは目を離さず、使用後はしっかり消火する、たばこは火をしっかり消して投げ捨てないなど心がけることはあります。
また、世界で森林火災の発生件数が増える、あるいは大規模化・長期化する原因が地球温暖化や気候変動なのであれば、それらを緩和する取り組みに積極的に参加していくことも防止策につながるのです。
森林火災は被害を出すだけでなく、私たちが住む地球の環境を悪化させるという悪循環になります。これからも住み続けられるように、私たちにできることを取り組んでいきましょう。