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小1の壁とは?その原因と対策・乗り越え方を徹底解説

子どもが小学校に入学するのを機に、共働き家庭が育児と仕事の両立に困難を感じる「小1の壁」が問題視されています。

「なぜ小1の壁が起こってしまうのか」
「小1の壁を乗り越えるにはどうしたらいいのか」

と不安を抱える共働きの保護者の方に向けて、本記事では以下の内容を解説します。

  • ・「小1の壁」とは何か
  • ・「小1の壁」が起こる主な原因
  • ・政府の対策や自治体のサポート
  • ・民間企業が提供するサービス

この記事を参考に、小1の壁を乗り越えるヒントを見つけてみてください。

小1の壁とは

「小1の壁」とは、子どもの小学校入学を機に、共働き家庭が直面する仕事と子育ての両立を困難に感じる状況を指します。

小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)に希望しても入れないこと、保育園の預かり時間と、小学校の登校の時間および学童の閉所時間の違いなどが主な要因です。

また、夏休みなどの長期休暇、学校行事、宿題のサポートなども共働きの親を悩ませています。さらに小学生になると、短時間勤務制度が利用できない企業も少なくありません。

これらが共働き家庭の保護者の負担となり、子育てと仕事の両立が難しくなることが問題視されています。

小1の壁に直面した共働き世帯の実情

子どもの小学校入学に伴い、保護者は働き方の見直しを迫られることが多いのが現状です。

2023年に実施された、放課後NPOアフタースクールの「小1の壁に関するWEBアンケート調査(※)」によると、子どもの小学校入学を機に働き方の見直しを検討した保護者は50.7%

※小学校1年生〜6年生の子どもがいる働く女性(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)1000人が回答

そのうち12.4%が正社員から別の就労形態に、27.4%が職場を変えずに時短勤務に変更しています。

理由としては「育児と仕事のバランスをとりたい」や「子どもの生活リズムに合わせたい」などが挙げられ、柔軟な働き方を求める声が少なくありません。

また、「家計のために働く」と答えた保護者が87.8%に上り、小1の壁によって仕事と育児の両立に悩みながらも、必要性から働き続けている実態が明らかになっています。

出典:特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール 「小1の壁」に関するWEBアンケート調査結果

小1の壁が起こる原因:働く親にも子どもにも影響が

「小1の壁」が生じるのは、以下のような原因が挙げられます。

  • ・学童の不足
  • ・小学校の登校時間が遅く、学童保育の閉所時間が早い
  • ・長期休暇の対策が必要
  • ・短時間制度の利用が難しくなる

これらが原因で、転職や退職を検討しなければならないケースもあります。小1の壁が起こる原因と影響について見ていきましょう。

学童保育の不足

こども家庭庁は、2024年5月時点で学童保育に入れなかった児童数は1万8462人と発表。前年より2186人増加し過去最多を更新したと報告しました。

2024年の利用登録者数も前年から5万7821人増え、151万5205人となり、こちらも過去最多となっています。子どもの受け皿の整備は進められているものの、供給が追いついていない状況です。

出典:こども家庭庁「令和6年度 放課後児童クラブの実施状況(速報値)」

小学校の登校時間が遅く、学童保育の閉所時間が早い

親の出勤時間よりも小学校の登校時間が遅い場合、子どもを家に残して先に出勤せざるを得ないケースもでてきます。

例えば、親の勤務時間が8時から17時で、子どもは8時15分の校門開放に合わせて登校しなければならない場合などです。保育園では早朝保育で預けることができたため、こうした問題は起こりませんでした。

このような状況では、子どもの安全面への懸念、親が出発前に子どもの準備を急いで整える慌ただしさ、さらには親子のコミュニケーション時間が減るといった様々な問題が生じます。

また、放課後に関しては、学童保育に預けたとしても大半の施設は18時半~19時の間に終了します。そのため勤務時間の調整や民間学童の利用が必要となり、保護者にとってさらなる負担となっています。

さらに、17%の学童が17時から18時の間に閉所しており*、勤務先からの移動を考えると定時退社でも迎えが間に合わないケースもあります。

出典:こども家庭庁「放課後児童クラブ運営指針の改正について(2024年)」

親の参加やサポートが必要な機会が増える

小学校入学に伴い、PTA活動や朝の交通当番、面談、授業参観など、平日に親が学校へ出向く行事が増え、その度に休暇の取得や出勤時間の調整が必要になります。

さらに、宿題や翌日の持ち物の準備など、日常的に親のサポートが欠かせない場面も増え、仕事から帰宅した後も親の負担が大きいことがうかがえます。

長期休みの対応策が必要

小学校に入ると、春休みや夏休み、冬休みといった長期休暇があり、その期間中に子どもの世話が必要になることも、「小1の壁」が生じる一因です。

学童保育で預かってもらえる場合でも、お弁当の準備や送迎が必要になります。その他、送迎サービスやシッターなどを利用することで、コストの増加も負担となっています。

短時間勤務制度の利用が難しくなる

育児・介護休業法では、3歳未満の子どもを育てている従業員がいる場合、短時間勤務制度を設けることが義務づけられています。しかし、厚生労働省の調査によると、小学校入学以降は短時間勤務ができない事業所は72%にも上り、多くの企業で制度を利用できないのが現状です。

そのため、休暇の取得や勤務時間の調整が必要となり、親の精神的、肉体的な負担が増加します。また、親子の時間や子どもたちが家でリラックスする時間が減る原因にもなっています。

出典:厚生労働省「令和4年度雇用機会均等基本調査」

政府や自治体が行う対策やサポートを紹介

政府や一部の自治体では、小1の壁や学童保育の待機児童を解消するため、以下のような対策を行っています。

  • ・放課後児童対策パッケージの策定
  • ・学校による朝の校庭開放の取り組み(一部自治体)
  • ・ファミリーサポート
  • ・柔軟な働き方推進のための法改正

それぞれ詳しく解説します。

放課後児童対策パッケージの策定

政府は以下の目標を掲げ、小1の壁・待機児童の対策を行っています。

1. 学童保育の整備
約152万人分の受け皿を早期に整備し、待機児童の解消を目指す

2. 放課後子供教室との連携
全ての子どもに安全で安心できる居場所を提供するため、同じ小学校区で学童と放課後子ども教室の両事業を連携型にし、参加児童が交流できる環境を整える

3. 学校施設の活用
子どもの居場所確保のため、放課後児童クラブの新規設置時には学校施設を優先的に活用し、調整を進める

また学童を運営する人材や、放課後児童対策に従事する職員、コーディネートする人材の確保などにも力を入れています。

出典:こども家庭庁「放課後児童対策パッケージ」

学校による朝の校庭開放の取り組み(一部自治体)

一部の自治体では、登校時間と出勤時間のギャップを埋めるため、学校の校庭を始業時間の1時間ぐらい前に開放する取り組みを行っています。

例えば、東京都三鷹市では、長期休業日(夏休み・冬休み・春休み)を除き、午前7時30分に校門を開放し、校庭で待機できるようにしました。朝から校庭を利用することで、子どもの体力向上を図ると同時に、保護者の負担軽減も目的としています。

三鷹市の例:三鷹市教育委員会「朝の校庭開放のお知らせ」

ファミリーサポート

ファミリーサポート制度は、子育て家庭が地域の会員に育児サポートを依頼できる制度で、主に市区町村が運営しています。

提供されるサービスには、保育施設や学校の送迎、放課後の預かり、急用時の預かりなどが含まれ、0歳から小学校6年生までの子どもが対象です。

料金は1時間あたり600円〜1,000円が目安で、交通費などの実費が必要になることもあります。自治体によってサービス内容が異なるので、住んでいる地域のサービス内容を確認しましょう。

柔軟な働き方推進のための法改正

子育てしながらより働きやすい環境を整えるため、育児・介護休業法が改正されます(2025年4月1日施行)。これまで「子の看護休暇」は、小学校入学までが対象でしたが、改正後は小学校3年生修了までに延長されます。

また、取得理由も従来は病気・けが、予防接種・健康診断のみが対象でしたが、法改正により感染症による学級閉鎖、入園・入学式、卒園式なども追加され、利用範囲が広がります

小1の壁の乗り越え方のヒントに?民間が提供するサービスを紹介

共働き家庭をサポートするサービスを提供する民間団体や企業もあります。

例えば、以下のようなサービスが利用できます。

  • ・民間学童
  • ・送迎サービス
  • ・キッズシッター

これらを活用することで、小1の壁を乗り越える手助けになるかもしれません。ぜひ参考にしてください。

民間学童

民間学童保育は、小学1~6年生を対象に企業やNPO法人が運営しています。多くの場合、親の就労状況にかかわらず利用できることが特徴です。また、預かり時間が長く、中には22時まで延長可能な施設もあります。

習い事や送迎、夕食提供などのサービスを実施する施設もあるので、必要な場合は利用すると良いでしょう。ただし、利用料金は公立と比べて高めで、祝日や年末年始は休業となる場合があるため、事前に確認しておくことが重要です。

送迎サービス

タクシー会社によっては、学校や学童から自宅、習い事の場所まで送迎するサービスもあります。顔なじみの乗務員が担当してくれる場合は、子どもだけの乗車も安心でしょう。

料金形態はサービスによって異なりますが、走行距離のシステムを採用している場合は、区内の短距離移動なので比較的コストは抑えられます。

キッズシッター

キッズシッターサービスを利用するのも一つの方法です。例えば以下のようなサービスがあります。

  • ・小学校へのお迎え
  • ・子どもの帰宅時間に訪問
  • ・塾や習い事の送迎
  • ・家事代行と子どもの世話

キッズシッターのサービスを活用することで、仕事と子育ての両立ができるだけでなく、子どもにとっても安心できる環境を作るのに役立ちます。

仕事と子育てを両立するには?先輩親が考える「子育てと仕事の両立のための三要素」


前述の放課後NPOアフタースクールの調査によれば、子育てと仕事を両立するには、以下の三つが重要だと多くの共働き親が回答しています。

【子育てと仕事の両立のための三要素】

  • ・配偶者の理解や協力
  • ・学童保育や習い事など放課後の居場所の充実
  • ・上司や同僚など職場の理解

これらの要素を充実させることで、子どもが安心して過ごせる環境が整い、親の負担も軽減されるでしょう。この三大要素をヒントに、家庭の状況に合わせた対策を考えてみてはいかがでしょうか。

出典:特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール 「小1の壁」に関するWEBアンケート調査結果

様々な制度やサポートを活用して小1の壁の負担を軽減しよう

この記事では、「小1の壁」が生じる原因やその乗り越え方のヒントについて解説しました。
内容をまとめます。

  • ・学童の不足や利用時間の制約が共働き家庭の悩みの一因となっている
  • ・自治体や民間のサービスを利用することで、小1の壁で生じる負担を軽減できる
  • ・配偶者や職場の理解、放課後の居場所の確保が、仕事と子育ての両立における鍵となる

育児と仕事を両立するためには、家族で事前に話し合い、政府や自治体、民間のサポートを上手に活用することが大切です。

SNSなどで先輩親の経験談やアドバイスから情報を集め、参考にするのも良いでしょう。また、職場とも相談しながら柔軟な働き方を取り入れ、「小1の壁」をうまく乗り越えましょう。

以下の記事では、知っておくと便利な子育て支援制度や、国の政策の方向性を紹介しています。
>>【何がある?】子育て支援制度のサービスや手当・給付金をわかりやすく解説
>>こども大綱とは?基本方針や具体的な目標を分かりやすく解説

この記事を書いた人
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