現代の様々な問題や事情に合わせた労働環境を作り上げるために働き方改革は実施されています。
その中でも特に重要視されるのは労働時間についてであり、残業時間や時間外労働は厳しい規定が設けられました。
これは過労死などの問題による改正ですが、実際にどのような規定が設けられ上限はどう変わったのかを説明します。
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働き方改革関連法とは?
働き方改革関連法は正式には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」と名づけられた、働き方に関する改革を行うための法律です。
その目的は現代において多様化する労働者の事情に応じ、働き方の選択ができる社会の実現と働き方の改革を総合的に推進することとしています。
そのため、これまで問題となっていた長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保など、様々な対策や措置を講じる旨を記しています。
さらに働き方改革の総合的かつ継続的な推進として「雇用対策法」などの改正を行うための法律としても機能しています。
雇用対策法ではその題名や目的規定など働き方改革関連法の制定に合わせて改正しています。
国の講ずべき施策と事業者の責務を明確にし、国からは現行の雇用関係の施策に加えて次の4つを新たに規定することを定めました。
- 労働時間の短縮とその他の労働条件の改善
- 雇用形態または就業形態の異なる労働者の間の均衡の取れた待遇の確保
- 多様な就業形態の普及
- 育児や介護、治療など仕事と生活との両立
また、これに関わり事業者の責務としては「労働者の労働時間の短縮その他の労働条件の改善など、労働者が生活との調和を保ちつつ意欲と能力に応じて就業できる環境の整備に努めなければならない。」と改正により規定されています。
- 働き方改革関連法案の正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」
- 「雇用対策法」などの改正を行うための法律としても機能している
- 長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保などを目指す
(出典:厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)の概要」)
時間外労働時間の上限規制
働き方改革の大きな目的の1つに長時間労働の是正があります。
以前から労働時間については原則が定められていましたが、時間外労働については厚生労働大臣の告示によって規定が設けられていました。
しかしこの働き方改革関連法により時間外労働の上限規制が設けられ、違反した場合は罰則付きとなるよう規定されています。
また、時間外労働をさせる、あるいは休日労働をさせる場合には労働基準法第36条に基づく労使協定、通称「36(サブロク)協定)」の締結と、所轄労働基準監督署への提出が必要となりました。
労働基準法における労働時間の定めとは
労働時間の規定は、労働基準法によると次のように原則が設けられています。
- 法律で定められた労働時間の限度は1日8時間及び1週間で40時間
- 法律で定められた休日は毎週少なくとも1回
この労働時間の限度を法定労働時間、休日の原則を法定休日といいます。
時間外労働は月45時間・年360時間まで
労働基準上の時間外労働の上限は原則月45時間、年360時間と定められています。
さらに臨時的な特別の事情があり、労使が合意する場合の特別条項であっても以下のような時間外労働の上限規制が定められています。
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計について
- 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月が限度
「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」
が全て1ヶ月あたり80時間以内
また、特別条項が適用される、されないに関わらず、年間で常に時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満で2~6ヶ月の平均は80時間以内になるようにしなければいけないのです。
例えば時間外労働である45時間を超えない、40時間に収まっているならば特別条項にはなりません。
しかし休日労働が62時間となっている場合、その合計は102時間となるため法律違反となります。
このような規定が設けられており、これらを違反した場合には6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金を科せられることになります。
- 労働時間については原則が定められていたが、時間外労働については厚生労働大臣の告示によって規定が設けられていた
- 働き方改革関連法により上限規制が設けられ、違反した場合は罰則付きとなった
- 時間外労働をさせる、あるいは休日労働をさせる場合には通称「36(サブロク)協定)」の締結と、所轄労働基準監督署への提出が必要
(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」,2019)
時間外労働時間の上限規制はいつから?
時間外労働時間の上限規制については、一部例外を除き2019年4月1日より施行されています。
ただし中小企業への上限規制の適用は1年間猶予されていることや、36協定の始期によっては適用時期がずれる「経過措置」なども存在します。
そして、中小企業に関しては2020年4月1日から適用となっています。
この中小企業と判断されるのは、「資本金の額または出資総額」と「常時使用する労働者の数」のいずれの基準を満たしている企業です。
業種 | 資本金の額または出資総額 | 常時使用する労働者数 |
---|---|---|
小売業 | 5000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他 (製造業、建設業、運輸業、その他) |
3億円以下 | 300人以下 |
これらは中小企業の範囲と判断され、時間外労働時間の上限規制が2020年4月1日から事業所単位ではなく企業単位での判断となります。
経過措置も設けられている
36協定に対して上限規制の適用がされるのは中小企業を除いて2019年4月1日以後の期間です。
ただし2019年3月31日を含む期間について定めた36協定に関してはその協定の初日から1年間は引き続き有効となり、上限規制は適用されません。
例えば2018年10月1日に協定を結んだ場合、2019年3月31日以前に定めたものであり、この日を含む期間となるため2019年9月30日までは適用外となります。
1年の経過措置期間を経て2019年10月1日からは上限規制の適用が開始されることになります。
上限規制の適用が猶予・除外となる事業や業務
事業、業種の中には上限規制の適用が猶予、あるいは除外となるものがあります。
例えば建設事業、自動車運転の事業、医師は2024年3月31日まで上限規制の適用を受けません。また、2024年4月1日以降も一部の規制は除外されます。
建設事業 |
災害の復旧・復興の事業に関しては時間外労働と休日労働の合計について以下の規制は適用されません。 ・月100時間未満 ・2~6ヶ月平均80時間以内 ※災害の復旧・復興の事業を除いて全て適用されます。 |
自動車運転の事業 |
特別条項付き36協定を締結する場合の年間時間外労働の上限は年960時間となります。 時間外労働と休日労働の合計については以下の規制は適用されません。 ・月100時間未満 ・2~6ヶ月平均80時間以内 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されません。 |
医師 | 具体的な上限時間は今後、省令で定めることとされています。 |
また、鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業に関しては2024年3月31日までは時間外労働と休日労働の合計については「月100時間未満」と「2~6ヶ月平均80時間以内」は適用外となっています。
ただし2024年4月1日以降は上限規制が全て適用されると定められています。
- 一部例外を除いては2019年4月1日より施行されています
- 中小企業への上限規制の適用は1年間猶予されている
- 36協定の始期によっては適用時期がずれる「経過措置」なども存在
(出典:厚生労働省 「働き方改革特設サイト 「時間外労働の上限規制」」)
(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」,2019)
残業と時間外労働の違いを認識しよう
ここまで時間外労働についての規定などを紹介しましたが、時間外労働と「残業」が会社によっては異なることがあります。
法定労働時間については先述したとおり1日8時間、1週40時間と定められています。
法定労働時間に対し、会社で定めた労働時間を「所定労働時間」と言い、所定労働時間を超えて労働することを残業と言います。
この所定労働時間が法定労働時間と必ずしもイコールではない会社もあります。
例えばその会社の始業時刻が10:00、休憩時間が12:00~13:00、就業時間が18:30だった場合、所定労増時間は7:30となります。
この所定労働時間に対して、19:00に就業した労働者に関しては30分の残業がつくことになります。
しかしこのときの労働時間は8:00となるため法定労働時間内となり、法律上の時間外労働はないと判断されるためこの違いはしっかりと認識しておく必要があります。
- 法定労働時間については先述したとおり1日8時間、1週40時間と定められている
- 会社で定めた労働時間を「所定労働時間」と言い、この時間を超えて労働することを残業という
- 所定労働時間が法定労働時間と必ずしもイコールではない会社もある
(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」,2019)
ワーク・ライフ・バランスが大切!
働き方改革はこれまでに起こった過労死など労働に関する問題、社会や生活の変化による多様性など現代の社会構造に合わせて柔軟な変化を求められたことによりより厳格化された法律と言えます。
私たちが生きていく中でワーク・ライフ・バランスは何よりも大切であり、このバランスを崩してしまえば仕事と生活の両立は難しくなることでしょう。
適切な労働時間と充実した生活を送るためにもこの働き方改革による変化を一人ひとりが意識して法律を守った労働をしていくことが重要になります。
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