「国立社会保障・人口問題研究所」による2007年の分析では、単身で暮らしている20~64歳の女性の3人に1人が「貧困状態」にあるということがわかりました。
これは生活が苦しい人の割合を示す「相対的貧困率」が32%だったことを指すもので、単身の20~64歳男性が25%であることを考えるとやはり女性の方が割合が高くなっています。
ここでは貧困な女性たちの年収や未婚率について紹介します。
独身女性の貧困が深刻化し非正規雇用の生活で老後への不安も拡大。
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女性の未婚率の変化とは?
総務省統計局「平成27年国勢調査」から女性の未婚率を見ていきます。
全体の傾向としては男性と同じで1980年ごろから未婚率が上昇してきています。
20代
男性は20代前半では未婚率は横ばいですが、女性は1960年の時点では3割が既婚、7割が独身という割合でした。
しかし、近年では1割未満が既婚、9割以上が独身という割合に変化してきています。
20代後半では4割未満が既婚、6割以上が独身となっています。
これは20代なかばごろに結婚して家庭に入ることが多かったのに対し、「働く女性」が増加していることが大きく関係していると言われています。
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30代
女性の30代の未婚率、未婚率は20代後半とほとんど同じ傾向が見られます。
この傾向は2010年以降はほとんど変化していません。
30代前半では未婚率が約35%、30代後半では未婚率は約24%となっています。
つまり30代前半の女性10人のうち、3~4人ほどが独身。
30代後半の女性10人のうち、2~3人は独身ということになります。
40代
20代、30代までの未婚率は2010年ごろからほとんど変わっていませんが、40代以降は年々増加傾向にあります。
2015年を超えると40代前半では未婚率が約20%、40代後半では約16%となっており、
これは10人の40代女性のうち1~2人が独身であるということを意味しています。
ここには女性の管理職が増加していることも関係していると考えられています。
50代
50代もどんどん未婚率が上がっています。
1960年の時点では未婚率は2%以下でしたが、それから年々上昇しており、2015年の時点では50代前半で12%、50代後半で8%ほどとなっています。
このことから50代の女性では10人のうち1人は独身という計算になります。
- 1980年ごろから未婚率が上昇
- 近年では1割未満が既婚、9割以上が独身という割合に変化
- 「働く女性」が増加していることが大きく関係している
(出典:総務省統計局「平成27年国勢調査」,2015)
女性の平均収入は?貧困との関連とは
次に男女別・年代別の平均年収を紹介します。
年代 | 平均年収(単位:万円) | ||
全体 | 男性 | 女性 | |
20代前半 | 262 | 279 | 243 |
20代後半 | 361 | 393 | 318 |
30代前半 | 407 | 461 | 315 |
30代後半 | 442 | 517 | 313 |
40代前半 | 468 | 569 | 308 |
40代後半 | 496 | 630 | 310 |
50代前半 | 519 | 677 | 302 |
(出典:国税庁「平成29年分民間給与実態統計調査」,2018)
この表を見る通り女性の平均年収は男性より低くなっていることがわかります。
また、女性で貧困状態になっていることが多い母子家庭について見てみると、母子家庭の世帯収入は両親のいる家庭の年収に比べると3分の2ほど低く、生活保護などの受給率も高くなっています。
勤労所得も合計していることを考えると、母親一人が生活保護を受給の上で低賃金の仕事をして家計を支えていることになります。
母子家庭になった理由の8割以上が離婚であり、ひとり親世帯の9割にも達していることを考えると離婚した際にほとんどの割合で親権は母親が持っているということもわかります。
国勢調査によれば19歳以下の子どもがいる母子家庭では貧困率が48%に達しています。
母子家庭のおよそ半分が貧困に陥っているということです。
(出典:総務省統計局「平成27年国勢調査」,2015)
なぜ独身男性より独身女性の方が貧困率が高い?
戦後の日本社会では、女性が家族によって生活を支えてもらうことを前提に社会保障制度が作られてきました。
未婚女性は父親に、既婚女性は夫によって基礎的生活条件を用意されることを想定して社会が成り立っていたのです。
そのため女性が就業するにしても、非正規雇用が主となり、男性と比較して低賃金となっています。
貧困に陥る女性は、家族による基礎的生活条件を受けられず、就業による十分な収入が得られない、母子世帯、未婚女性、離婚や死別による単身女性になります。
男女雇用機会均等法など男女平等に関する法整備などによって改善傾向にあると言われていますが、正規雇用率を考えると厳しい状況です。
(出典:独立行政法人 労働政策研究・研究機構「女性の貧困問題の構造」,2015)
(出典:総務省統計局「平成27年国勢調査」,2015)
- 戦後の日本社会では、女性が家族によって生活を支えてもらうことを前提に社会保障制度が作られた
- 女性が就業するにしても、非正規雇用が主となり、男性と比較して低賃金
- 男女雇用機会均等法など男女平等に関する法整備などによって改善傾向にある
貧困な独身女性の老後の不安とは
女性がずっと独身のままでいた場合と、結婚して老後を迎える場合では老後の不安も異なります。
世帯主が夫の場合は妻の分の年金や社会保険料も夫と夫の勤めている会社が支払っていることが多い傾向にあります。
独身女性の場合、これらの支払い額が低いケースが多く、老後に受け取る年金の金額が違ってきます。
こちらも国勢調査によると65歳以上の単身で生活している女性の貧困率は47%に達しており、同じ条件の男性が29%ほどであることを考えると女性の方がはるかに高い貧困率となっていることがわかります。
(出典:総務省統計局「平成27年国勢調査」,2015)
老老介護による問題
もう一つは介護の問題です。
独身のまま老後を迎える場合、自分の両親の介護を一人でしていくという可能性もあります。
自分も老齢に差し掛かってくることから老人が老人を介護するという「老老介護」の状態を生み出しやすくなるのです。
貧困で両親の介護が重なると心身ともに疲弊していくことが予想されます。
また、精神的な不安がどんどん募ってきてしまうことが多いのも特徴です。
「ずっと一人かもしれない」
「子どもを産んでいないと永遠に一人かも」
「親や親戚に余計な心配をかけているのではないか」
「だれも自分に興味を持ってくれないのでは…」
などのように自分を追い詰めてしまう想像が膨らんでしまうと、さらに不安が増していくという悪循環に陥ってしまうケースもあります。
- 女性が独身のままでいた場合と、結婚した場合では老後の不安も異なる
- 世帯主が夫の場合は妻の分の年金や社会保険料も夫と夫の勤めている会社が支払っていることが多い傾向にある
- 65歳以上の単身で生活している女性の貧困率は47%に達しており、同じ条件の男性が29%ほどである
(出典:総務省統計局「平成27年国勢調査」)
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女性の貧困や未婚率が高まる時代、老後への不安も募る一方?
女性の未婚率はますます高まってきており、それに伴って貧困率も上がってきています。
独身女性や貧困状態の女性は老後に対しての不安も募る一方ですが、それに対して世間ではまだまだ理解は進んでいません。
まずはそういった状況を打開するような社会環境を整備していくことが重要だと言えるでしょう。