今世界では、様々な生物が絶滅の危機に瀕しています。
実に多種多様な生物が生息していますが、環境や生態系の変化により個体数を減らし続けている種が存在するのです。
例えば海にはどんな絶滅危惧種がいるのか、なぜ個体数が減少しているのか、この記事では魚・海洋生物など海の絶滅危惧種について詳しく見ていきます。
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絶滅危惧種とは
現在の世界には多くの絶滅危惧種が存在します。
日本だけでも何万もの生物が生息していますが、それぞれの生息できる環境に合った生物多様性の中で共存して生きています。
その環境が壊れ始め、多くの生物が絶滅の危機に瀕しています。
主な原因として、私たちの生産活動による地球温暖化や気候変動、森林伐採や海洋汚染などの環境破壊などが挙げられます。
かつて恐竜はこの世界に生き、いくつかの要因で絶滅していきました。
過去を見れば生物の絶滅はこれまでもありましたが、現在は過去の比にならないスピードで多くの生物が絶滅しつつあります。
生物の絶滅は生態系が崩れてしまうため、その影響を受ける動植物も現れます。
そうなると次の生物の絶滅を進めてしまい、連鎖的に絶滅が引き起こされる可能性もあります。
その影響はすでに私たちの生活にも現れ始めているため、このまま何もしなければ私たちも絶滅へと歩を進める危険性もあります。
絶滅危惧種の分類
絶滅危惧種はその危険性を調査・研究、そして保護などにつなげてもらうため、レッドリストというものが存在します。
レッドリストについては後述しますが、このリストには絶滅危惧種の情報が収められており、その中では絶滅危惧種は状況に合わせて評価が分類されています。
以下はレッドリストでの評価になりますが、絶滅した生物や野生絶滅というような分類も含め、分類と判定を紹介します。
分類 | 判定 |
---|---|
絶滅(EX) | すでに絶滅したと考えられる種 |
野生絶滅(EW) | 飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態で飲み存続している種 |
絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) | 絶滅の危機に瀕している種 |
絶滅危惧ⅠA類(CR) | ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの |
絶滅危惧ⅠB類(EN) | ⅠA類ほどではないが、近い将来における野性での絶滅の危険性が高いもの |
絶滅危惧Ⅱ類(VU) | 絶滅の危険が増大している種 |
準絶滅危惧(NT) | 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種 |
情報不足(DD) | 評価するだけの情報が不足している種 |
絶滅のおそれのある地域個体群(LP) | 地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの |
このように絶滅の程度に応じて、カテゴリーを分けて評価を行っています。
(出典:環境省「日本の絶滅危惧種と生息域外保全」)
(出典:環境省「レッドリストのカテゴリー(ランク)」)
国際自然保護連合(IUCN)とレッドリスト
国際的に絶滅危惧種の調査・研究を行い、レッドリストに取りまとめているのが、IUCN(自然及び天然資源の保全に関する国際同盟(通称:国際自然保護連合)という組織です。
この組織は1948年にスイス・グランのジュネーブ郊外で設立されており、自然及び天然資源の保全に関わる国家や政府機関、国際的非政府機関などの連合体として専門家による調査研究を行い、関係各方面への勧告や助言、開発途上地域に対する支援などを実施しています。
IUCNが定期的に公表するレッドリストでは、2022年時点でレッドリストには4万1,459種が絶滅危機種として登録されており、うち1万1,783種が危急種とされています。
レッドリストとは
レッドリストとは絶滅の恐れがある野生生物の種をまとめたリストのことです。
国際的なものはIUCNが公表していますが、各国の政府や様々な組織がまとめたものも公表されています。
日本では環境省のほか、地方公共団体やNGOなどが作成しています。
環境省のレッドリストでは、日本に生息する野生生物について、動物と植物をそれぞれ以下のように分類して、生物学的な観点から個々の種の絶滅の危険度を評価し、まとめています。
動物 | 植物 |
---|---|
哺乳類 鳥類 両生類 爬虫類 汽水・淡水魚類 昆虫類 陸・淡水産貝類 その他無脊椎動物 |
維管束植物 蘚苔類 藻類 地衣類 菌類 |
現在環境省からは2020年に最新の第4次レッドリスト第5回改訂版が公表されていますが、日本の絶滅危惧種は合計で3,772種となりました。
(出典:環境省「レッドリスト」)
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海の絶滅危惧種
海には多くの生物が生きています。
地球の約7割は海であることから、まだ確認できていない生物や、生態が分かっていない生物もいるため、すべてを評価できているわけではありませんが、それでも多くの魚や海洋生物が絶滅の危機に瀕しています。
海の資源の恩恵を受ける日本や、各国にとっても絶滅危惧種が増え続けるのは大きな損失であり、対策が必要であることは明白です。
日本の魚や海洋生物
日本の魚や海洋生物については一部の種を除き、2012年まで絶滅危惧の評価を行っていませんでした。
しかし海洋生物への関心の高まりを受け、レッドリストの作成を行い、2017年には5分類群について評価を行ったところ、絶滅危惧種として56種類が掲載されました。
その中で最も多いのは甲殻類の30種であり、続いて魚類が挙げられます。甲殻類の多くは干潟や南西諸島の海底洞窟に生息する種、魚類では南西諸島などの暖かい地域の沿岸域に分布する種が多いですが、特定の環境や共生する生物に依存する傾向が見られ、環境の変化や共生・寄生生物の減少が影響しています。
また沖縄周辺に生息するサンゴ類も、絶滅の危険度が高まっているとして6種類が登録されています。
世界の魚や海洋生物
世界規模で見ても多くの魚や海洋生物が絶滅危惧種に指定されています。その中には日本固有のニホンウナギ(Anguilla japonica)も絶滅危惧ⅠB類として登録されています。
その他にも食用魚や熱帯魚など多くの魚類が絶滅危惧種として評価されています。
海洋生物の中ではサメやエイなどは食物連鎖の頂点にいて、元々繁殖率が低い生物が絶滅危惧種となっています。有名なサメだとジンベイザメ(Rhincodon typus)も絶滅危惧ⅠB類として登録されています。
調査は不足している種も
先述したように海は広大であり、絶滅危惧種を含めて生態調査も完璧ではありません。絶滅危惧種であるかどうかの判定をするにも、十分な情報が得られなければいけませんが、日本だけでも現在5分類群の合計で224種が情報不足でその判定ができずにいます。
(出典:環境省「環境省版海洋生物レッドリストの公表について」,2017)
(出典:IUCN「RED LIST」)
海の絶滅危惧種が増える要因と対策
海は命を育む環境として私たち人間もその恩恵を享受していますが、その育まれるべき命が危機に瀕しています。
海洋生物に限りませんが、生物全体で1975年から2000年までの25年間に年間平均4万種、13分に1種の生物が絶滅したとも言われています。
恐竜が存在した時代でも絶滅は1000年に1種程度と言われていることから、急速に種の個体数が減少していることが分かります。
なぜ海の絶滅危惧種が増えるのか
魚を含む海洋生物の中に絶滅危惧種が増える原因はいくつかありますが、その根幹にあるのは私たち人間の生産活動によるものです。
生息や生育は環境が整っていなければ成り立ちません。
本来であれば生物が生きていくための健全な環境が海にはあったはずですが、私たちが何十年と続けてきた急速な開発や生産活動、環境破壊などにより海は汚染されてしまいました。
また絶滅危惧種を増やす要因は間接的なものだけでなく、直接的なものもあります。
以下は直接的・間接的な要因をまとめたものです。
海洋汚染 | 地球温暖化による影響 |
---|---|
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|
海の絶滅危惧種を増やさないための対策
このような絶滅危惧種の増加防止のため政府では様々な取り組みが行われています。
絶滅危惧種を増やしてしまう、または絶滅を促進してしまう要因を探り、それに対しての対策を講じています。
この絶滅危惧種を保護する取り組みは国際的にも行われており、政府や関連機関による取り組みも大事ですが、私たち自身が取り組んでいかなければ根本的な解決にはなりません。
二酸化炭素やゴミの発生を抑制するなどの取り組みを一人ひとりが意識的にしていかなければ、絶滅危惧種や海洋環境の保全はできないのです。
国際的な取り組み
生物の絶滅は加速度的に進んでいます。
これは人間の活動による環境の破壊や乱獲などが大きな要因となっていますが、この野生生物の生息や生育環境の保全、乱獲の防止、絶滅危惧種の保護増殖といった様々な取り組みが世界各地で行われています。
取り組みは各国政府で異なるものもありますが、世界で共通して締結し、取り組んでいるものがワシントン条約です。
この条約は1975年に発行された野生動植物の国際取引の規制のための条約です。
野生動植物の国際取引の規制を輸出国と輸入国とが協力して実施することにより、絶滅のおそれのある野生動植物の保護を図ることを目的としており、2018年9月末時点で182ヶ国および欧州連合が締結しています。
この条約により規制は3種類に分けられており、その中でも絶滅のおそれがある種で取引による影響を受ける、あるいは受けるおそれがあるものに関しては、商業目的の取引の禁止はもちろんのこと繁殖目的を含む学術目的の取引は可能ですが輸出国、輸入国双方の許可書が必要です。
政府の取り組み
日本政府でもかなり前から取り組みが行われています。
1993年に政府から日本国内や海外において絶滅のおそれのある野生生物の種を保存するため、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」を制定・施行されました。
この法律に基づき、国内希少動植物種における販売や頒布目的の陳列・広告、譲渡、捕獲・採取、殺傷・損傷、輸出などを原則禁止にするという個体の取り扱い規制が行われています。
また生息域の保護としては生息・生育環境の保全を図る必要がある場所を「生息地等保護区」に指定し、保護増殖事業としては関連機関や保護支援を行う団体と協力して、個体の繁殖の促進や生息地などの整備といった事業の推進をしています。
その必要があると認めた場合には「保護増殖事業計画」を策定して、保護増殖のための取り組みを行っています。
これを元に海洋生物については、「海洋保護区」を設定しています。設定の基準などが定められているわけではないですが、日本では自然公園や自然海浜保全地区などが多数存在しています。
漁業に関しても海洋資源を適切に保存し、管理すること、そして漁具や漁法などの制限や規制区域・期間の設定、主要な魚種に対する漁獲可能量などを設定して対応しています。
外来種の問題についても、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」を策定し、駆除と抑制にあたっています。
私たちにできる取り組み
私たちの生活の中には二酸化炭素を排出するものが多く存在します。
地球温暖化の原因である温室効果ガス、その主となるのが二酸化炭素である以上、この排出抑制が何よりも必要です。
私たちができることとしては、カーテンによる太陽光の調節やクールビズ・ウォームビズにより冷暖房機の使用を控えること、温度を控えめに設定することが挙げられます。
冷暖房機に限らず、電化製品の主電源をこまめに切る、長時間使わないものはコンセントから抜くなど節電を心がけることで電力の消費を抑えられるので、火力発電による二酸化炭素の排出を抑制することができます。
また通勤や通学、買い物を行うときには自家用車の使用は控え、バスや鉄道などの公共交通機関、自転車などを利用する、自家用車を利用する際にもアイドリングストップなどのエコドライブを実践することで、二酸化炭素の排出量を抑えられます。
プラスチックゴミの排出量を抑制することも対策となります。
例えば買い物の際にマイバックを持参してレジ袋をもらわない工夫やマイボトルやマイ箸を持ち歩くことで、プラスチックのカップやスプーン、フォークの使用を減らすことができます。
プラスチック製のストローやラップの使用を控えること、シャンプーなどは詰め替え用ボトルを利用すること、屋外やレジャーではゴミを持ち帰って適切に処理することも大切です。
ほかにも沿岸地域のゴミ拾いなどに参加するのもその一つです。生物多様性が生まれる干潟や砂浜の保全はゴミ拾いを行うことも必要となります。
さらに資産資源の持続的利用や環境に配慮した漁業・養殖業を行っている証明となるエコラベルが貼られている海産物を購入するのも海洋生物を守る活動につながります。
(出典:環境省「種の保存法の概要」)
(出典:外務省「ワシントン条約」)
(出典:政府広報オンライン「海のプラスチックごみを減らし、きれいな海と生き物を守る!」)
(出典:環境省「海のめぐみってなんだろう?」)
(出典:環境省「海とのつきあい方:”海洋保護区”で守る」)
(出典:環境省「わたしたちにできること:国の取り組み(2) -海の生物多様性への影響要因の解明とその軽減策の実施-」)
(出典:気象庁「地球温暖化を緩やかにするために私たちにできること」)
(出典:環境省「わたしたちにできること:国の取り組み(3) -海域の特性をふまえた施策の推進-」)
(出典:水産庁「水産エコラベルをめぐる状況について」)
海を守り、絶滅危惧種を減らそう
私たちは直接的または間接的に海の恩恵を受け、生活しています。
それは海産物であったり、環境の維持であったりと様々ですが、海に依存するばかりで多くの負担を強いてしまっています。
その結果、環境が変化してしまい、海に住む多くの生物を絶滅の危機にさらしてしまっています。
海がこれまでの機能を発揮できず、魚や海洋生物が失われれば、私たちの生活は立ち行かなくなり、次に絶滅に瀕するのは人間となる危険性もあります。
海を守り、絶滅危惧種を減らすことができるのは人間だけであり、環境を守るための取り組みは必須です。
今からでも私たちにできることがあります。海の現状、そして絶滅危惧種について知り、私たちが取り組めることを把握して、すぐにでも行動に移すことをおすすめします。
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