グラミン日本は2018年に設立されたばかりで、採用されているマイクロファイナンスは日本でこれから認知度の拡大に期待ができる方式です。
しかし、グラミン日本の基礎となっているグラミン銀行については、「ノーベル平和賞」を受賞した実績を持っています。
そこで、ここではグラミン銀行の仕組みや目的、グラミン日本の融資方法などについて紹介します。
グラミン日本の支援方法、融資を受ける方法は?
グラミン銀行の仕組みとは
グラミン日本とは
国民の6人に1人の割合で貧困ラインより下の生活をしているという日本で、シングルマザーや生活困窮者の自立を支援するのが、グラミン日本です。
設立日に会見を行ったグラミン日本理事長菅正広は、「働いて生活をステップアップしたい人、前向きに生きていきたい人で互助グループ(5人一組)を作れる人が融資対象である」と説明しています。
融資の限度額は初回は20万円となっており、返済している期間はグラミン日本のスタッフと毎週会合(センターミーティング)に参加することになります。
(出典:グラミン日本公式サイト)
グラミン銀行とは
グラミンアメリカやグラミン日本のようなグラミン銀行の流れを組むプロジェクトは世界中に広がっています。
ここでは、グラミン日本のベースとなっているグラミン銀行について紹介します。
グラミン銀行が創設された背景
1974年にバングラデシュで飢饉が起こったとき、バングラデシュの経済学者・実業家ムハマド・ユヌスが農村などの貧困者にも銀行サービスを広げていくことで、融資システムを構築していくための可能性についてのプロジェクトを立ち上げたのが、そもそもの起源です。
バングラデシュ中央銀行の支援もあり、徐々に広がりを見せていったこのプロジェクトは1983年に出されたバングラデシュの政令によって独立銀行として認定され正式にグラミン銀行が発足しました。
グラミン銀行の仕組み・システム
グラミン銀行のシステムは、当初はドナー機関から資本の提供を受けることで活動を行っていましたが、1990年代半ばごろからはバングラデシュ中央銀行から資本の提供を受けています。
近年では資金の調達のために債券が発行され、グラミン銀行の特徴として、借り手がグラミン銀行の総資産の約90%を所有しており、残り10%はバングラデシュ政府が所有をしています。
その借り手は約97%が女性であり、高い返済率が注目されています。
また、そのシステムはマイクロファイナンスと呼ばれているものです。
マイクロファイナンスには以下の特徴があります。
- 生活困窮者に対するものである
- 小規模な融資額である
- 無担保融資である
そして、グラミン銀行はマイクロファイナンスの代表的な事例とされています。
マイクロファイナンスと一般的な消費者金融の違いは、マイクロファイナンスが「起業や就労のため」の準備資金であるということです。
融資された金額を生活費に充てて一時的にしのぐという性格のものではありません。
また、グラミン銀行はその理念として「4つの原則」と「16の決意」を公表しています。
4つの原則とは「規律」「団結」「勇気」「勤勉」であり、16の決意の詳細は以下の項目となっています。
- 私たちはグラミン銀行の4つの原則に従い、私たちの人生のあらゆる歩みの中でこれを推進する:規律、団結、勇気、そして勤勉。
- 繁栄は家族のために。
- 私たちはあばら家には住まない。まず第一に家を修繕し、新しい家を作るために働く。
- 私たちは一年を通して野菜をつくる。私たちはそれらを豊富に食べ、余った分を売る。
- 私たちは耕作期にはなるべく多くの種をまく。
- 私たちは家族を増やしすぎないように計画する。支出をおさえ、健康に気を遣う。
- 私たちは子供たちを教育し、子供たちの教育費を払えるよう保証する。
- 私たちはつねに子どもと周囲の環境を清潔に保つ。
- 私たちは穴を掘ったトイレ (pit-latrine) をつくり、使う。
- 私たちは筒井戸から水を飲む。もし井戸がない場合は、水を沸かすかミョウバンを使う。
- 私たちは息子の結婚式で持参金をもらわず、娘の結婚式にも持参金を持っていかない。私たちのグループは持参金の呪いから距離をおく。私たちは幼年での婚姻をさせない。
- 私たちは不正なことをせず、また他人に不正なこともさせない。
- 私たちはより多くの収入を得るため、共同で大きな投資をする。
- 私たちはつねにお互いに助け合えるよう用意する。もし誰かに困難があれば、私たちは全員で彼または彼女を助ける。
- もしどこかのグループが破綻しそうだとわかったときは、私たちはそこへいって回復を手助けする。
- 私たちはすべての社会活動に共同で加わる。
これらの「4つの原則」と「16の決意」は、世界中に広がるグラミン銀行団体の根本の理念とされています。
グラミン銀行の実績
グラミン銀行のもっとも大きな実績は「ノーベル平和賞」を受賞していることです。
これは企業としては唯一のもので、「底辺からの経済的および社会的発展の創造に対する努力」が認められたためです。
2006年10月13日にグラミン銀行及び創設者のムハマド・ユヌスが受賞したもので、その受賞はバングラデシュで熱狂的に迎え入れられました。
グラミン日本でも融資を行っている
グラミン日本でもグラミン銀行と同様に貧困状態にある人々に低金利・無担保で少額の融資を行っています。
この融資によって起業や就労の準備資金とし、貧困状態から脱却して自立することを目的として支援しています。
グラミン日本の資本は「グラミンアメリカ」を参考に7億円を目途としており、「寄付・基金・賛助会員会費・クラウドファンディング」などによって資金を調達しています。
このグラミンアメリカではすでに約10年の間に約12万人を支援対象にして12.4億ドルの融資が行われており、それに関連して12万件を超える雇用が創出されるなど大きな成果をあげています。
このグラミンのシステムは先進国、開発途上国を問わず世界中で取り入れられています。
(出典:グラミン日本公式サイト)
支援対象者(メンバー)の条件
グラミン日本の融資である「グラミン・ローン」を受けることができる対象者には以下のような規定があります。
- 日本の貧困ライン以下の生活困窮者であること。
- 働く意欲があり生活をステップアップしたい人であること。
- 互助グループ(5人一組)を作ること。
- 毎週1回のセンターミーティングに参加できること。
- 事前に開催される金融トレーニングに参加できること。
融資される資金は消費されていく生活資金に使用することはできません。
起業や就労によって所得を創出することができるものに対してのみ融資されます。
貧困のない社会を目指すグラミン日本
失業や病気、離別、死別などによって生活に困窮した状態に陥ると、問題が解決しにくくなかなか抜け出せない構造になっているのが現状です。
グラミン日本では、生活に困窮した人々を支援しています。
シングルマザーやワーキングプアの人たちに、一時的な生活資金ではなく、「起業や就労」のために準備資金を支援することで自立を促し、貧困状態から抜け出させることを目的に活動しています。
こうした活動によって、貧困のない社会を作ることを目指しているのがグラミン日本なのです。