「2025年問題って具体的にどんなこと?」
「私たちの生活にどんな影響があるの?」
このように考える人のために、この記事では以下の内容を解説します。
- ・2025年問題の概要
- ・2025年問題による生活・企業への影響
- ・2025年問題に向けた国の施策
- ・2025年問題に向けて個人ができること
ほかにも2040年問題との違いや企業がどのように対応すべきか、という点について徹底解説しているので、ぜひ最後までお読みいただき、未来に備えるためのヒントを見つけてください。
そもそも2025年問題とは?
2025年問題は、日本の人口構造の大きな転換点を迎える中で生じるものであり、超高齢化社会の到来を象徴しています。
ここでは、課題の具体的な内容や関連する問題について詳しく解説していきます。
- ・超高齢化社会がもたらす諸問題のこと
- ・「2040年問題」との違い
- ・「2025年の崖」とは何か
超高齢化社会がもたらす諸問題のこと
2025年問題とは、団塊の世代がすべて75歳以上になることで、医療・介護・雇用など幅広い分野に深刻な影響を及ぼす社会的課題の総称です。
2025年には、日本の75歳以上の人口は2,000万人を超え、国民の約4人に1人が75歳以上という「超高齢化社会」に突入します。一方で、現役世代の割合は減少し、1.3人で1人の65歳以上を支える社会が到来すると推計されています。
このような人口構造の変化に伴い、社会保障費の増大や労働力不足など、さまざまな課題が顕在化するといえるでしょう。
出典:内閣府「令和6年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」
「2040年問題」との違い
「2025年問題」と「2040年問題」との違いは、人口構造の変化のタイミングにあります。
「2025年問題」は、団塊世代が75歳以上となり、後期高齢者の人口が急増する過渡期のことを指します。一方、「2040年問題」は団塊ジュニア世代が高齢者に達し、総人口の約35%が65歳以上になるピークを迎えるタイミングを指します。
2025年は高齢化の進行期で、医療・介護体制の逼迫や社会保障費の増加が中心的な課題です。2040年には労働力不足や老朽化したインフラの維持がさらに深刻化します。少子化と超高齢化への持続的な対応策が必要な点は、両者に共通する課題といえるでしょう。
なお、日本が高齢化社会から高齢社会へと移り変わる過程については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
>>日本が高齢化社会になった要因は?これまでの推移とは
「2025年の崖」とは何か
「2025年の崖」とは、経済産業省の「DXレポート 」で指摘された、デジタル化の遅れが招く経済的リスクのことを指します。
日本の多くの企業で、老朽化・複雑化した既存システムの問題が解決されないままでは、IT人材の引退やシステムのサポート終了による競争力低下が避けられません。その結果、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が発生すると予測されています。
この状況を克服するには、既存システムの刷新や業務の見直し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が不可欠です。「2025年の崖」は、日本企業の未来を左右する重要な課題とされています。
出典:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
2025年問題が生活に及ぼす影響
2025年問題は、医療・介護、人材不足など、私たちの生活に多大な影響を与えるとされています。ここでは、以下の主な課題について解説します。
- ・社会保障費の増加
- ・医療・介護における体制維持の限界
- ・後継者不足に伴う廃業と経済の減退
- ・ビジネスケアラーの増加
社会保障費の増加
2025年には、団塊世代が75歳以上になることで医療や介護の需要がさらに高まり、社会保障費が急増すると予測されています。
特に後期高齢者の医療費と介護費用は、ほかの世代に比べて高く、2025年の社会保障給付費は約140兆円に達するとされています。この増加分は、現役世代の保険料負担に反映され、報酬の3割を超える水準に達する見込みです。
このような状況は、家計負担の増加や若年層の所得減少を引き起こし、社会全体の経済活力を低下させる可能性があるといえるでしょう。
出典:財務省「社会保障」
医療・介護における体制維持の限界
2025年には高齢化が進む一方、医療・介護サービスを支える人材の不足が深刻化するとされています。
介護職員は2026年度までに約240万人必要とされており、現在の水準から約25万人の増員が求められます。しかし、看護師などの職種でも求人倍率が高く、人材確保が困難な状況です。
国は報酬改定や処遇改善を進めていますが、供給は需要に追いついていません。このままでは医療・介護体制の維持が難しくなり、サービスの質の低下や地域格差が拡大するリスクが懸念されています。
出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
後継者不足に伴う廃業と経済の減退
中小企業庁によると、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人に達すると見込まれていますが、そのうち約127万人が後継者未定の状態です。
この状況が放置されると、事業承継が進まず、累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があります。特に、経営者のノウハウや技術に依存する中小企業では「黒字廃業」が増加するリスクが高いでしょう。
後継者の育成やM&Aによる事業承継の促進が、地域経済の活力を維持するために急務となっています。
出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」
ビジネスケアラーの増加
2025年には、仕事を続けながら家族の介護を担う「ビジネスケアラー」の増加が深刻化すると予測されています。
団塊世代の多くが後期高齢者となる一方、その子ども世代である団塊ジュニア世代は共働きが多く、兄弟姉妹の少ない家庭が一般的です。その結果、一人で複数の親の介護を担う「マルチ介護」や、介護と仕事の両立に苦しむケースが増加しています。
経済産業省によると、今後、介護離職者は毎年約10万人に上り、2030年には家族介護者のうち約4割(約318万人)がビジネスケアラーになる見込みです。
この傾向が進めば2030年には労働生産性の低下による経済損失が約9.1兆円に達するとされています。高齢化社会を持続可能にするには、従業員の自己努力に依存せず、国や企業が仕事と介護の両立を支援する施策を進めることが重要です。
出典:経済産業省「経済産業省における介護分野の取組について」
2025年問題が企業に与える影響
2025年問題は、企業の活動にも深刻な影響を与えると予測されています。ここでは、以下の2025年問題が企業に与える影響を詳しく解説します。
- ・人材不足
- ・既存システムの維持が企業の発展を停滞させる
人材不足
2025年には、日本企業全体で人材不足が深刻化し、特にIT分野での影響が顕著になると予測されています。
若年層の人口減少によりIT人材は2019年をピークに減少し、2030年までに需給とのギャップが拡大する見込みです。また、企業の多くが「DXを推進する人材が大幅に不足している」と認識しており、デジタル化の遅れが競争力の低下を招くリスクも指摘されています。
このような人材不足は、ITに限らず介護や製造業など多くの分野で影響を及ぼし、企業の持続的成長を阻害する要因となっています。
既存システムの維持による企業発展の停滞
多くの企業では、部門ごとにカスタマイズされたシステムがブラックボックス化し、全社的なデータ活用や効率化が妨げられています。その結果、IT予算の大半が維持管理に充てられ、新たなDXへの投資が難しくなる「技術的負債」が深刻化しています。
既存システム維持がもたらす具体的な問題は、以下のとおりです。
- ・DXの遅れが招く競争力の低下:データ活用や市場変化への迅速な対応が困難になり、ビジネスモデルの刷新や顧客ニーズへの対応が遅れる
- ・情報漏洩リスクの拡大:老朽化したシステムではセキュリティの脆弱性が高まり、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクが増加する
- ・システムの維持・運用費用の増大:複雑化したシステムの保守に高額なコストがかかり、新しい技術やサービスへの投資が困難になる
これらの問題を克服するには、経営層の強いリーダーシップと長期的なシステム刷新の計画が不可欠です。しかし、刷新には高額なコストと長期的な実行期間が必要なため、多くの企業で実行が進まない状況が課題となっています。
2025年問題に向けた国の施策
2025年問題に対応するため、国は社会保障体制の見直しや介護人材の確保など多岐にわたる施策を実施しています。ここでは、国が実施している以下の具体的な施策を解説します。
- ・社会保障体制の見直し
- ・介護人材の確保
社会保障体制の見直し
2025年の社会保障費増大に対応するため、国は主に以下の施策を進めています。
- ・地域包括ケアシステムの構築
- ・後期高齢者医療費負担の見直し
- ・高齢者の就労促進
それぞれ詳しく解説します。
地域包括ケアシステムの構築
政府は2025年までに、要介護状態となっても住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援を包括的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築を目指しています。
このシステムによって在宅ケアの強化や病気の予防が進み、結果として社会保障費の削減されることが期待されています。
また、認知症高齢者の増加を見据えた地域支援の強化も重要で、地域特性に応じた柔軟な対応が求められています。
高齢者の医療費負担の見直し
政府は、少子高齢化による社会保障負担の増加に対応するため、令和4年10月から一定以上の所得がある75歳以上の高齢者の医療費負担割合を1割から2割に引き上げました。
この見直しにより、現役世代の負担を軽減しつつ、全世代が公平に支え合う社会保障制度の構築を目指しています。
高齢者の就労促進
政府は、少子高齢化の進展に伴う労働力不足への対策として、「高年齢者雇用安定法」を改正し、令和3年4月から施行しました。
事業主は70歳までの定年引き上げや継続雇用制度の導入、業務委託や社会貢献事業への従事を可能にする制度整備に努めることが求められています。
この改正を通じて、高齢者が自身のスキルを発揮しながら働き続けられる仕組みが整い、経済活動の活力維持につながることが期待されています。
介護人材の確保
厚生労働省は、介護人材不足への対応として、介護未経験者の参入を促進するための入門的研修を推進しています。
また、人材育成や就労環境の改善に取り組む介護事業者を評価・認証する制度を設け、支援を強化しています。
さらに、柔軟な勤務形態や多様な働き方を導入するモデル事業を実施し、効率的な事業運営の普及を図りながら、介護人材の安定確保を目指しています。
企業が2025年問題に備えるためのポイント
2025年問題に備え、企業は柔軟な働き方の導入や公的支援制度の活用など、多面的な対策を講じることが求められています。ここでは、以下の企業が2025年問題に備えるためのポイントを解説します。
- ・多様な雇用形態の導入
- ・公的支援を活用した事業承継
多様な雇用形態の導入
2025年問題に備えるために、企業は多様な雇用形態の導入を検討する必要があります。
たとえば、フレックスタイム制やリモートワークを活用することで、育児や介護を抱える人材の働きやすい環境を整えられます。また、短時間勤務や副業を認めるなど柔軟な働き方を提供することで、幅広い人材を確保しやすくなるでしょう。
こうした取り組みは、生産性の向上と人手不足の解消が期待でき、企業の競争力強化にもつながります。多様性を活かした経営は、今後企業が成長するためのカギになるでしょう。
公的支援を活用した事業承継
2025年問題に備える企業対策として、事業承継に公的支援を活用する方法もあります。国や自治体は、中小企業の後継者不足解消に向けて、奨励金や助成金制度を提供しています。
たとえば、後継者の確保や高齢者雇用の促進のために「定年引上げ等奨励金」や「中高年トライアル雇用奨励金」などを活用できるでしょう。
2025年問題に向けて個人ができること
2025年問題に対応するには、健康管理や地域とのつながり、スキルアップなど、個人でできる対策も重要です。ここでは、以下の具体的な取り組みを紹介します。
- ・健康管理をして寿命を延ばす
- ・家族や地域コミュニティと連携する
- ・スキルを習得してキャリアアップを目指す
健康管理をして寿命を延ばす
健康寿命を延ばすことは、社会保障制度の維持や経済活性化に直結します。
健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。2016年の健康寿命は男性72.14歳、女性74.79歳とされており、2040年までに、それぞれ3年以上延伸する目標が掲げられています。
日々の食事や運動習慣を意識し、健康づくりに取り組むことが2025年問題に向けた個人の対策として重要です。
家族や地域コミュニティと連携する
2025年問題に備えるには、家族や地域コミュニティのつながりを強化することも重要なポイントです。
高齢者世帯には日頃から気を配り、困ったときには支援の手を差し伸べることが求められます。また、元気な高齢者はボランティア活動や地域の支援者として積極的に関わることも大切です。
家族や社会保障だけでは補えない部分を地域全体で支え合うことが、持続可能な社会の実現につながるでしょう。
スキルを習得してキャリアアップを目指す
スキルを習得してキャリアアップを目指すことも、2025年問題に向けた個人の取り組みのひとつです。新しい知識や技術を学ぶことで、労働市場での競争力が高まり、希望する職業や働き方を実現する可能性が広がるでしょう。
スキル習得のために、以下のような公的支援制度を活用することも検討してみてください。
- ・教育訓練給付金:一定の要件を満たすと、対象講座修了で受講費用の20~70%を支給
- ・高等職業訓練促進給付金:ひとり親が資格取得のため学ぶ場合、条件により月10万円支給
- ・職業訓練受講給付金:職業スキルを無料で習得可能で、条件により月10万円支給
さらに、文部科学省では、学び直しを希望する方々が制度を有効活用できるよう関連情報や支援制度をまとめています。これらの支援を活用して、未来の働き方に備えましょう。
未来の社会構造を見据えて、できることから始めよう
本記事では、2025年問題が引き起こすさまざまな課題と、それに備えるための具体策について解説しました。
2025年問題を迎えるうえで、押さえるべきポイントは以下のとおりです。
- ・2025年問題とは、団塊の世代がすべて75歳以上となることで、医療・介護・雇用など幅広い分野に影響を及ぼす社会的課題のこと
- ・超高齢化社会の到来により、社会保障費の増加、医療・介護体制の限界、人材不足などが深刻化することが予想される
- ・2025年問題に対して国・企業・個人それぞれができることを行い、超高齢化社会に備えることが重要
これらを踏まえ、個人としての行動を積み重ねるとともに、社会全体で課題解決に向けた取り組みを進めていくことが大切です。未来に向け、今できることから始めましょう。