児童虐待は私たちの身の回りで起きているかもしれない問題の一つです。
法律で児童虐待についての明確化が行われ、しつけと称した体罰などが禁止され、子どもを守るための法整備や取り組みが行われています。
この記事では、児童虐待を防止するために具体的にどのような取り組みが行われているのか紹介します。
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増える児童虐待と防止策
児童虐待は近年問題となっている事件ですが、その理由の一つとして、児童虐待の件数の増加が挙げられます。
1990年と2021年の児童虐待相談対応件数を見てみると、1990年には1,101件だった相談件数は、2021年に約20万7,700件にもなり、180倍以上に膨れ上がっています*。
これは表面化しなかった児童虐待がある可能性や、この28年間で児童虐待についての定義が明確化したことなども増加した理由として考えられますが、それでも180倍にまで増加したのは児童虐待が行われる事態が増えているためです。
児童虐待は身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトの4つに分類されており、厚生労働省では児童虐待の件数増加の要因に、心理的虐待の対応件数増加を挙げています。
これは子どもが同居する家庭で配偶者に対する暴力がある事案、いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)のなかでも面前DV(※)が増加したことが心理的虐待が増加した要因とされています。
このような現状を受け、政府や地方自治体では児童虐待を防止するための対策に取り組んでいます。
※面前DV:子どもの見ている前で家族(配偶者など)に暴力をふるうこと
(*出典:厚生労働省「令和3年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値>」)
児童虐待防止のための取り組み
増え続ける児童虐待について、政府や地方自治体は様々な対策を展開しています。
その先駆けとなるのは法整備ですが、これはすでに2000年に行われており、それに基づいた取り組みが進められています。
子どもを守るための法律はいくつもあります。児童福祉法や児童買春・児童ポルノ禁止法、学校教育法などが挙げられますが、より児童虐待の防止に効力を発揮するよう整備されたのが児童虐待防止法です。
この児童虐待防止法は、1933年に一度制定されています。これは経済恐慌や凶作により、子どもが家計のために働かされていた背景などから整備されました。
しかし2021年時点での児童虐待防止法は、これとは異なります。
この旧法律は、1947年に児童福祉法が制定されると同時に内容が引き継がれ、廃止されています。
しかし、児童福祉法だけの効力では児童虐待を防ぐことは難しく、児童虐待に係る相談対応件数や死亡事例の増加したことから、2000年に「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」が改めて整備されています。
この児童虐待防止法も万能ではありません。そのため、児童福祉法とともに何度も一部改正が進められ、その時代の変遷とともに変わる児童虐待の様相に対応させてきました。
近年では児童の権利擁護や児童相談所の体制強化および関係機関間の連携強化などを含んだ一部改正が2020年4月から施行されています。
また施行されるためにも児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策や児童虐待防止対策体制総合強化プランを新プランとして策定するなどの動きが見られます。
それでは児童虐待防止のための具体的な取り組みについても見ていきましょう。
(出典:総務省「第2 政策の概要」)
(出典:厚生労働省「最近の児童虐待防止対策の経緯」,2020)
児童虐待の発生予防
児童虐待を防止するためには、根本から児童虐待を予防することが望まれます。
児童虐待の多くは乳児や幼児に起こることから、その原因に注目した取り組みとして、子育て中の人への支援サービスが行われています。
妊娠や出産、育児期の家庭では、産前産後の心身の不調や悩みを抱え、周囲の支えを必要としているにも関わらず、それが得られないことで児童虐待に至ってしまうことがあります。そのため政府は、子育て世代包括支援センターを設置し、妊娠期から子育て期までの相談支援に取り組んでいます。
支援事業として展開されているのが、乳児家庭全戸訪問事業や養育支援訪問事業、地域子育て支援拠点事業です。
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児童虐待に対する迅速かつ的確な対応
児童虐待は家庭のなかで起こるため、発見が難しいものでもあります。
そんな虐待を受けている子どもや支援を必要としている家庭をできるだけ早期に発見するために設けられているのが要保護児童対策地域協議会、いわゆる子どもを守る地域ネットワークです。
これは関係機関の間で情報や考え方を共有し、連携して対応していくため、情報の交換や支援内容を話し合う場として地方自治体がその設置を行っています。
また、より身近なところで子どもや妊産婦の福祉に関する支援業務を行う場所として、「市区町村子ども家庭総合支援拠点」も設置されています。
子どもと家庭、妊産婦などを対象にして、状況の把握や子どもに関わる相談、通所・在宅支援を主に専門的な相談対応や調査、訪問といった継続的なソーシャルワーク業務を行うとされています。
しかし児童虐待はこのような関係機関だけの調査だけですべてを見つけるのは困難です。
そのため近隣住民や親類などからの情報提供も呼びかけています。取り組みとして児童相談所と相談窓口が設置されています。
基本的には住んでいる市町村の児童相談所に相談する必要がありますが、「189(いちはやく)」という児童相談所虐待対応ダイヤルにかけると、自動的に住んでいる地域の児童相談所につながるようになっています。
児童相談所も子どもに関する家庭などからの相談に応じて適切な援助を行い、子どもの福祉の権利を擁護することを目的とした機関として機能しています。
児童虐待に対する普及啓発活動
児童虐待が起こった原因のなかには、しつけのつもりでやったという理由が挙がることがあります。
それにより、児童虐待防止法のなかで児童虐待の明確化が行われていますが、それでも児童虐待について正しい知識が不足している人がいることから、政府や自治体では児童虐待に関する普及啓発活動が取り組みの一環として行われています。
2019年6月に行われた児童福祉法などの改正法の成立によって、親権者などは児童のしつけに際して、体罰を加えてはならないことが法定化されています。
このような体罰禁止に関する考え方を普及し、社会全体で子育てについて考えてもらうためにも、ポスターやパンフレット、リーフレットによる広報活動が行われています。
児童虐待防止推進月間
厚生労働省では、児童虐待防止の広報や啓発活動など様々な取り組みを行う過程で、児童虐待の取り組みを強化していく期間として、児童虐待防止推進月間を毎年11月に定めています。
また家庭や学校、地域などの社会全般にわたって児童虐待問題に対する深い関心と理解を得られるように「子どもの虐待防止推進全国フォーラム」などが開催されているのです。
2020年はオンライン開催となったイベントですが、毎年47都道府県のなかから一つが選出され、フォーラムが行われています。同時に児童虐待を防止し、虐待を受けた子どもが幸福になれるようにという祈りを込めたオレンジ・リボンキャンペーンが全国的に展開されます。
(出典:厚生労働省「体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~」)
(出典:三島市「子どもの虐待防止への取組強化について~児童虐待根絶に向けた宣言について~」)
地方自治体独自の児童虐待防止の取り組み
児童虐待を予防、あるいは防止するための取り組みは政府主導で行われていますが、地方自治体独自の取り組みも行われています。
例えば妊婦期から出産にかけての支援として育児支援ヘルパーの派遣事業や子育てアドバイス派遣事業、子育て中の親子が集う場の提供支援としてみんなの子育てひろば事業、関係機関からの通告体制の整備などが行われています。
これはあくまで一例であり、地域によってはほかにも児童虐待を防ぐための取り組みが進められているため、住んでいる地域の取り組みについて調べてみるのも良いでしょう。
(出典:厚生労働省「児童虐待防止対策」)
(出典:堺市「令和元年度児童虐待防止への取組状況」)
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児童虐待を防止し、子どもたちを守ろう
児童虐待は、予防や防止の取り組みなどが行われていても、その相談対応件数は増え続ける一方です。
ただ相談対応件数が増えているのは、発生件数が増加するなかで、児童相談所に相談などがなされ、止められた件数とも見ることができます。
児童虐待は子どもの心身に傷を残し、最悪の場合は命を落としてしまうこともあります。
そのような事態を減少させるためには、児童虐待が発生しないように予防することが大事であり、少しでも早く見つけるためには周りの人々の協力も必要です。
もし児童虐待の疑いがある子どもや、今後そうなる可能性がある人を見つけた場合は、恐れずに児童相談所などに相談するようにしましょう。
また、児童虐待の防止に取り組む団体を支援することで児童虐待の数を減らす手助けができます。
認定NPO法人 3keysは、子どものセーフティーネットづくり、学習支援、調査及び啓発活動などを行っています。10代にとって身近なオンラインを積極的に活用しているのが特徴です。
深刻な悩みを抱えながらも誰にも相談できない子どもたちが支援団体の検索・相談ができるポータルサイト「Mex(ミークス)」を運営しており、2020年度は利用者が180万人、年間約8,500人がMexを通じて支援機関につながっています。
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