近年急増している児童虐待は各地で起こっている身近な問題です。
その発生件数や推移を見ても明らかですが、周辺で起きている可能性があるほどの件数となっています。
このような児童虐待は児童相談所などで対応されていますが、どれだけの件数になっているのでしょうか。
この記事では、児童虐待相談対応の件数について、その傾向なども合わせて紹介します。
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児童相談所での児童虐待相談対応件数
児童虐待は十数年で急激に増加しています。厚生労働省では毎年児童相談所に寄せられる児童虐待相談の対応件数などをまとめており、2018年までに寄せられた相談と対応件数についての推移を見れば、その多さは明らかです。
児童虐待相談対応件数は1990年が1,101件、1998年が6,932件となり、この年以降、件数が増加し始め1999年には1万1,631件と9年で約10倍になりました。
2000年には児童虐待防止法が制定されましたが、その年の児童虐待相談対応件数は1万7,725件でした。
2010年には5万6,384件、2015年には10万3,286件、2018年には15万9,850件と急増しており、
2017年の13万3,778件から2018年の15万9,850件は1.2倍近く増加しています。
2008年から2009年は、4万2,664件から4万4,211件とわずかに減少していますが、全体では増加の一途をたどっており、1998年から2018年までの間に15万2,918件も対応件数が増加していることが明らかになっています。
児童虐待の内容別件数
児童虐待は増加が見られますが、これらは総数です。
児童虐待は、主に身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトの4つの項目に分けることができ、これらが単数あるいは複数で起こることがあります。
児童相談所での虐待相談の内容別に件数を見てみましょう。
身体的虐待は2009年に1万7,371件あったのに対して、2018年には4万256件になっています。
これだけ見ると増加したことが分かりますが、児童虐待の総数に占める割合で見てみると、2009年には39.3%と4割近くを占めており、2018年には25.2%と割合は減少しています。
同様に性的虐待は2009年に1,350件で全体の3.1%だったのに対して2018年は1,731件で全体の1.1%、ネグレクトは2009年には1万5,185件で全体の34.3%だったのが、2018年には2万9,474件で全体の18.4%でした。
どちらも身体的虐待同様に件数は増加しているものの、総数に占める割合は減少しています。
これは心理的虐待が占める割合が、ほかに比べ圧倒的に増加しているためです。
具体的な数字で見ると、2009年には1万305件で全体の23.3%だったものが、2018年には8万8,389件と全体の55.3%と半分以上が心理的虐待として対応されています。
このデータを取りまとめる厚生労働省でも、児童虐待相談対応件数が増加している要因として、心理的虐待の相談対応件数の増加を主な要因の一つとして挙げています。
2009年以降、2018年までの心理的虐待の増加数で見ても、多くの子どもが虐待を受けていることが明らかです。
この心理的虐待が増加した要因として、子どもが同居する家庭における配偶者に対する暴力がある事案、いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)のなかでも面前DV(※)について、警察からの通告が増加したことが挙げられています。
※面前DV:子どもの見ている前で家族(配偶者など)に暴力をふるうこと
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都道府県ごとの児童虐待対応件数
児童虐待の対応件数を都道府県別でも見てみましょう。
2018年において最も児童虐待対応件数が多かったのは東京都で1万6,867件でした。2番目に多いのが埼玉県で1万2,374件、3番目が大阪府で1万2,208件であり、4番目が千葉県の7,547件と大きな差がありますが、これは単純に都道府県の人口にもよるところがあります。
これを2017年との対前年度増減割合で見たときに、最も多いのは沖縄県です。
2017年から2018年の間に409件増加しており、その割合は対前年度比で159%も増加しています。
次に多いのが山形県で142件の152%増加、島根県が97件の148%増加と1.5倍前後の増加をしていることが分かります。
(出典:厚生労働省「平成30年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値>」,2018)
児童虐待により起こった死亡事例
厚生労働省では、児童虐待の対応件数と同様に、児童虐待による死亡事例の検証結果なども毎年まとめています。
この報告によれば、2018年4月1日から2019年3月31日、つまり2018年度において、発生または表面化した児童虐待による死亡事例は64例、人数にして73人もの犠牲が出たことを明らかにしています。
ただしこの件数には心中による虐待死(未遂含む)も対象のため、心中以外の虐待死は51例54人でした。
児童虐待による死亡事例の詳細
心中以外の虐待死の死亡事例を項目ごとに分析してみると分かってくることがあります。
死亡した子どもの年齢は0歳児が最も多く、22例で22人が該当しており、これは全体(54人)の40.7%にあたります。
また主な虐待としてはネグレクトが最も多く25例で25人、全体の46.3%を占め、次に身体的虐待が22例で23人と全体の42.6%となっています。
2005年度の第1次報告から2017年度の第15次報告までは、身体的虐待が最も多かったのに対して、2018年度の第16次報告ではネグレクトの人数および割合が上回ったことも報告されています。
直接の死因で最も多かったのは、頭部外傷の10例10人で28.6%、主たる加害者は実母の24例25人で46.3%でした。
先の児童虐待の内容別件数とも合わせると、全体の件数の増加は心理的虐待の急激な増加が要因である一方で、死亡に至ってしまうのは直接的に身体へ影響を及ぼす身体的虐待やネグレクトであることが分かります。
2013年度以降、死亡事例は減少傾向にはあるものの、未だに50件以上の死亡事例が発生しています。そして身体的虐待よりも全体に占める割合が低いネグレクトが死亡事例の主な虐待として多いということは、暴力よりもネグレクトによる虐待が子どもに深刻な影響を与えやすいとも考えられます。
虐待を行った動機についても調査が行われており、保護を怠ったことによる死亡が8例8人で14.8%と、この結果からもネグレクトが死につながる可能性が高いことが伺えます。
また、しつけのつもりが虐待の動機であるものが3例3人となりました。
(出典:厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第16次報告)の概要」,2020)
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児童虐待の件数は増え続けている
児童虐待は今もどこかで起こっている深刻な問題です。
虐待は子どもの成長に著しい問題を発生させます。健やかな成長を妨げるだけでなく、心身に傷を負わせ、心の傷は一生消えることのないものになるかもしれません。
児童虐待の結果、子どもが死亡する危険性も否定はできません。
実際に起こってしまった死亡事例を見ても、ほかの身体的虐待やネグレクトで起こり得るものです。
そのような児童虐待を防ぐためには、周囲が気付くほかありません。近隣住民や学校など小さな変化に気付いたら児童相談所などに相談することで、児童虐待を止めることにつながります。
児童虐待の現状などをしっかりと理解し、自分たちの周りにいないかどうか注視してみることも重要です。