動物愛護

犬のネグレクトとは?具体例と通報先をわかりやすく解説

「近所の犬がずっと外につながれている」

「自分の飼い方は大丈夫だろうか」

殴る・蹴るといった暴力がなくても、必要な世話をしないことは動物虐待にあたることがあります。本記事では、犬のネグレクトの定義と具体例、動物愛護管理法での位置づけと罰則、そして気づいたときの通報・相談先を、環境省の一次情報をもとに整理します。

なお、動物虐待の全体像は gooddoマガジン『動物虐待』カテゴリ で、虐待の法的責任と罰則の詳細は 動物虐待の罪とは?罰則についても解説 で詳しく解説しています。よろしければ合わせてご確認ください。

ネグレクトとは?犬に「必要な世話をしない」飼育を指す

犬のネグレクトとは「飼い主が本来すべき世話をせず、犬の健康や安全を損なわせること」を指します。動物虐待には、殴る・蹴る・熱湯をかけるといった「積極的虐待」と、世話をしないことで苦痛を与える「消極的虐待」があり、ネグレクトは後者にあたります。餌や水を与えない、病気やケガを治療しない、不衛生な環境に放置するといった行為が典型です。

積極的な虐待との違い

積極的虐待は行為そのものが目に見えるため、周囲も「虐待だ」と判断しやすいのが特徴です。一方ネグレクトは「何もしていない」状態なので、飼い主本人にも虐待の自覚がないことが多く、周囲も「飼い方の違いかもしれない」とためらいがちです。しかし動物愛護管理法は、給餌や給水をやめる行為なども明確に虐待として規定しています。

「しつけ」「飼い方の違い」との境界

短時間の留守番や、天候の良い日の屋外飼育そのものが直ちにネグレクトになるわけではありません。ネグレクトかどうかを見極める際、判断の軸になるのは「犬の健康と安全が保たれているか」です。痩せている、ケガや病気が放置されている、体が汚れて皮膚が荒れている、暑さ寒さをしのげない——こうした犬の状態に表れているかどうかが目安になります。
(出典:環境省『動物の愛護と適切な管理』)

・ネグレクトとは、必要な世話をしないことで犬の健康や安全を損なわせる「消極的虐待」

・暴力がなくても、給餌・給水をやめる行為などは動物愛護管理法上の虐待にあたる

・判断の軸は「犬の健康と安全が保たれているか」で、犬の状態に表れる

飼育放棄にあたる具体例チェックリスト

以下は、動物愛護管理法や環境省の資料で示されている虐待の要素をもとに、犬のネグレクトにあたり得る行為を整理したものです。複数当てはまる場合は、通報・相談を検討する目安になります。

食事・水に関するもの

・十分な餌や水を与えず、犬が痩せている・衰弱している
・水入れが空のまま、または汚れた水しかない状態が続いている

健康・治療に関するもの

・病気やケガをしているのに動物病院に連れて行かない
・毛玉だらけ、皮膚病で毛が抜けているのに放置している
・爪や毛が伸び放題で歩行や視界に支障が出ている

住環境・衛生に関するもの

・糞尿やゴミが放置され、極端に不衛生な環境で飼っている
・真夏の炎天下や真冬の屋外に、日陰・雨風をしのぐ場所もなく放置している
・車内など高温になる場所に長時間閉じ込めている

拘束・運動に関するもの

・短い鎖で常時つなぎっぱなしで、ほとんど動けない
・散歩や運動をまったくさせず、長期間ケージに閉じ込めている

頭数・管理に関するもの

・世話しきれない頭数を飼い、個々の犬に世話が行き届いていない(多頭飼育崩壊)
・飼えなくなったからと、山や公園などに置き去りにする(遺棄)(出典:環境省『動物の愛護と適切な管理』)
・餌・水・治療・衛生・拘束・頭数の6つの観点で、ネグレクトの有無を確認できる
・「つなぎっぱなし」「炎天下の放置」「治療しない」は、ネグレクトの代表的な形
・飼えなくなって置き去りにする「遺棄」は、それ自体が犯罪

どこからが違法?動物愛護管理法と罰則

犬のネグレクトは、道徳的な問題にとどまらず、動物愛護管理法(動物の愛護及び管理に関する法律)で罰則の対象になっています。犬は同法が定める「愛護動物」に含まれます。

第44条:給餌・給水をやめる行為なども「虐待」として処罰

同法第44条は、愛護動物をみだりに殺したり傷つけたりした者を「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」に処すると定めています。そのうえで第2項では、愛護動物に対し、みだりに給餌や給水をやめる、酷使する、健康や安全を保てない場所に拘束する、飼養密度が著しく不適切な状態で飼って衰弱させる、といった行為を含む「虐待」を「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」の対象としています。さらに第3項で、愛護動物を遺棄した者も同じく「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」と定めています。つまり、暴力をふるっていなくても、餌や水を与えない、つなぎっぱなしで衰弱させる、置き去りにするといったネグレクトは、法律上の犯罪になり得るということです。

2019年の法改正で罰則が大幅に強化された

これらの罰則は2019年6月に公布された改正動物愛護管理法によって強化されたもので、2020年6月から施行されています。改正前は殺傷が「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」だったため、大幅な厳罰化といえます。なお、2025年6月の刑法改正により、懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化されています。罰則や法的責任の詳しい解説は、動物虐待の罪とは?罰則についても解説 をあわせてご覧ください。
(出典:環境省『動物の愛護と適切な管理(法令・基準)』/ 環境省『愛護動物の遺棄の考え方に係る通知について』/ 東京都保健医療局『動物の虐待等に対する罰則が強化されました』)

・動物愛護管理法第44条は、給餌・給水をやめる、拘束して衰弱させるなどの行為を「虐待」として処罰対象にしている

・虐待・遺棄は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、殺傷は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金

・2019年改正(2020年6月施行)で罰則が大幅に強化された

なぜ起きるのか——背景にある知識不足・困窮・多頭飼育崩壊

ネグレクトは「ひどい飼い主」だけが起こすものではありません。背景には、飼い方の知識不足、経済的な困窮、飼い主の高齢化や病気、そして飼える頭数を超えてしまう多頭飼育崩壊といった、いくつもの要因があります。

知識不足と経済的困窮

「犬は外で飼うもの」「食べ残しを与えればいい」といった古い認識のまま飼育しているケースや、治療費や餌代を払えなくなって世話が滞るケースは少なくありません。飼い主が高齢になり、自分自身の生活も立ち行かなくなる中で、犬の世話まで手が回らなくなることもあります。

多頭飼育崩壊とアニマルホーダー

不妊去勢手術をしないまま犬が増え続け、飼い主が世話しきれなくなる状態を「多頭飼育崩壊」と呼びます。餌が行き渡らず、糞尿が堆積した環境で多くの犬が衰弱する、深刻なネグレクトの形です。集めること自体が目的化してしまう「アニマルホーダー」のケースもあり、飼い主の生活困窮や精神的な問題が絡むため、動物の問題であると同時に福祉の問題としても対応が求められています。

行き場を失う犬たち——引取りと殺処分の現状

飼育放棄された犬の一部は、自治体に引き取られます。環境省の統計によると、犬猫の殺処分数は減少傾向が続いているものの、依然として毎年数千頭の命が失われています。2022年6月からは、ペットショップやブリーダーが販売する犬猫へのマイクロチップ装着が義務化され、遺棄の抑止や迷子の返還につなげる仕組みも整いつつあります。
(出典:環境省『犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況』/ 環境省『人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト(現状と推移)』)

・背景には知識不足、経済的困窮、飼い主の高齢化・病気がある

・多頭飼育崩壊は、餌が行き渡らず多くの犬が衰弱する深刻なネグレクトの形

・殺処分は減少傾向だが、飼育放棄が引取り・処分につながる構造は続いている

気づいたときの通報・相談先と伝え方

「他人の家の犬のことで通報していいのか」「逆恨みされないか」と迷う方は多いですが、ネグレクトの通報は犬を守るための正当な行動です。通報先の使い分けと、伝えるときのポイントを整理します。

通報・相談先

・自治体の動物愛護センター、または保健所の動物愛護担当窓口(飼育状況の確認・飼い主への指導を行う)
・警察(緊急性が高い、または明らかに犯罪性がある場合)。相談は #9110、緊急時は 110番
・自治体の窓口が分からない場合は、市区町村の代表番号に「動物の飼育のことで相談したい」と伝える

伝えるときに役立つ情報

通報の際は、いつ・どこで・どんな状態の犬を見たかを具体的に伝えると、行政が動きやすくなります。日時、場所(住所や目印)、犬の様子(痩せている、ケガをしている、水がない、つなぎっぱなしなど)、そして可能であれば公道から撮影した写真が手がかりになります。他人の敷地に無断で立ち入ることは避けてください。匿名での相談も受け付けられています。

通報後はどうなる?

行政は飼い主への聞き取りや飼育状況の確認を行い、必要に応じて改善を指導します。改善が見られない悪質なネグレクトや、犬の生命に危険がある場合は、警察と連携して捜査に進むこともあります。通報したからといって、すぐに飼い主が処罰されるわけではなく、まずは「適切な飼育に戻す」ための働きかけが基本です。
・通報先は自治体の動物愛護センター・保健所。緊急・犯罪性が高い場合は警察(#9110/110)
・日時・場所・犬の状態・公道からの写真を伝えると行政が動きやすい。匿名可
・通報後はまず飼い主への指導が基本で、悪質な場合は警察と連携する

飼い主として気をつけたいこと

ここまで読んで「自分の飼い方は大丈夫だろうか」と不安になった方もいるかもしれません。動物愛護管理法は、飼い主に対して、動物の健康と安全を保ち、命を終えるまで適切に飼う「終生飼養」の責務を定めています。以下は、ネグレクトを防ぐために日常で確認したいポイントです。

・毎日、新鮮な水と適切な量の食事を与えているか
・体調の変化に気づいたら、動物病院で診てもらっているか
・寝床や排泄場所を清潔に保ち、暑さ・寒さ対策ができているか
・散歩や遊びなど、犬種や年齢に合った運動をさせているか
・不妊去勢手術など、飼える頭数を超えない管理をしているか

もし、仕事や病気、経済的な事情で世話が難しくなってきたときは、一人で抱え込まないことが大切です。自治体の動物愛護センターやかかりつけの動物病院、保護団体に早めに相談すれば、一時預かりや新しい飼い主探しなど、犬を守るための選択肢が見つかります。
(出典:環境省『動物の愛護と適切な管理』)

・飼い主には命を終えるまで適切に飼う「終生飼養」の責務がある

・水・食事・治療・衛生・運動・頭数管理の6点を日常的に確認する

・世話が難しくなったら、動物愛護センターや保護団体に早めに相談する

犬を守る活動に取り組む団体・私たちにできること

ネグレクトから犬を救い、新しい家族につなぐ活動を応援したい方におすすめしたいのが、ピースワンコ・ジャパンの活動です。こちらのリンクでは、活動を知ったり、あなたの負担はゼロで支援金を届けられる方法をご紹介しています。

今日からできる4つのこと

・ネグレクトが疑われる犬を見かけたら、自治体の動物愛護センターに相談する
・犬を迎えるときは、保護犬の譲渡という選択肢を検討する
・保護団体に寄付やボランティアで参加し、保護・譲渡の活動を支える
・正しい飼い方の知識を身近な人と共有し、飼育放棄を未然に防ぐ

まとめ:「気づく」ことが犬を救う最初の一歩

犬のネグレクトは、暴力のように目に見える形ではないぶん、周囲も飼い主本人も気づきにくいのが特徴です。しかし、餌や水を与えない、治療しない、つなぎっぱなしにするといった行為は、法律上も虐待にあたり、犬の命に関わります。気になる犬に気づいたとき、確証がなくても動物愛護センターに一本電話をかける。自分の飼い方に不安を感じたとき、早めに相談する。その小さな一歩が、犬の命と、飼い主自身を守ることにつながります。

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