地域猫

動物愛護

「地域猫」とは?耳カットの理由やさくら猫の意味、TNR活動について解説

街で見かける野良猫の中に、耳をカットされている猫に気づいたことはありませんか。
耳の一部がカットされた猫は「地域猫」と呼ばれ、街全体で見守られている猫です。

「どうして耳をカットするの?」
「地域猫ってどんな猫?」

このように疑問がたくさん出てくるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、地域猫について、以下のことを紹介します。

  • ・地域猫の耳カットに込められた意味と理由
  • ・地域猫活動のメリットと注意点
  • ・地域猫を守るために自分にもできること

地域猫活動は猫を守るだけでなく、人と人のつながりを広げ、街の美化にもつながる取り組みです。
この記事をきっかけに、地域猫活動でできる猫と共生する方法を探してみませんか?

目次

「地域猫」とは地域住民で管理している猫のこと

野良猫を触る女性
地域猫とは、野良猫のように外で暮らしているものの、地域住民に管理・見守られている猫のことです。

地域住民が適度に餌を与えたり、食べ残しやフンの片付けを行ったりしながら、猫と共に暮らす環境を保っています。

地域猫の耳がカットされている理由は?

保護猫
地域猫の片耳がカットされている理由は、主に以下が挙げられます。

  • ・「不妊・去勢手術済み」のしるし
  • ・同じ猫が再手術されないため

詳しく見ていきましょう。

耳カットは「不妊・去勢手術済み」のしるし

地域猫の耳カットは、その猫が「不妊・去勢手術済み」であることを示す目印です。

猫は1回の出産で4〜8頭の子猫を産み、年に2〜4回も出産できるほど繁殖力の高い動物です。もし不妊・去勢手術を行わなければ、街中に飼い主のいない猫が急速に増えてしまいます。

不妊・去勢手術は、繁殖を防ぐだけでなく、尿のにおいが和らぐ、発情期の大きな鳴き声が減る、メス猫をめぐるケンカが少なくなるといったメリットもあります。

同じ猫が再手術されないため

地域猫の耳カットは、同じ猫が再び手術されないようにするための目印にもなります。

目印がないと、すでに手術を受けた猫であることが分からず、野良猫と誤認されて再び捕獲されてしまうことがあります。

何度も捕獲されたり、麻酔をかけられて手術を受けたりする大きなストレスを防ぐためにも、耳カットは重要な役割を果たしているのです。

地域猫の耳カットでよくある疑問

野良猫

地域猫の耳カットについて、よくある疑問を以下にまとめました。

  • ・猫は耳をカットされて痛くないの?
  • ・右耳と左耳のカットで意味が違うの?
  • ・「さくら猫」と呼ばれる理由は?

これらの疑問に答えていきます。

猫は耳をカットされて痛くないの?

不妊・去勢手術の手術中に麻酔がかかっている状態で少しだけカットするため、痛みを感じることはほとんどありません。出血もわずかで安全に処置されます。

右耳と左耳のカットで意味が違うの?

オス猫は右耳、メス猫は左耳の先端を三角にカットするのが一般的です。ただし地域や実施団体によって異なることもあります。

ただし、三角形以外に水平にカットすることもあり、カットの形に明確な決まりはありません。

「さくら猫」と呼ばれる理由は?

耳のカットがさくらの花びらのように見えるので、さくら猫とも呼ばれています。

「さくら猫」はその地域で見守る人たちがいることの証です。

地域猫活動で重要なTNRとは

保護猫
「TNR(トラップ・ニューター・リターン)」とは、野良猫の繁殖を防ぐために不妊・去勢手術を行い、地域住民との話し合いやルールづくりを進めていく活動です。

すべての野良猫にTNRを実施できれば、繁殖が抑えられ、将来的に猫たちの殺処分ゼロの実現につながると考えられています。

ここでは、TNRがどのように行われるのかを詳しく解説します。

Trap(トラップ)|安全に捕獲する

猫を捕獲する際は、ケガをさせないよう細心の注意を払います。

捕獲器には、連絡先や目的などを記した紙を貼り、イタズラや誤解を防ぐことも重要です。

また、捕獲器を仕掛けている間はその場を離れず、猫が入ったあとはすぐに布で全体を包み、猫を安心させます。

Neuter(ニューター)|不妊・去勢手術をする

捕獲した猫には、繁殖を防ぐために全身麻酔をかけて不妊・去勢手術を行います。

猫への負担を最小限に抑えるため、手術と同時に、地域猫であることを示す「耳カット」も実施されます。

Return(リターン)|元いた場所へ戻す

手術と耳カットを終えた猫は、捕獲した元の場所に戻されます。 その後も、地域の猫ボランティアによる見守りが続けられます。

術後の経過観察に加え、餌を与える際には猫が食べ終わるまで見守り、周辺の清掃を行うことも重要です。

地域猫活動のメリット

保護猫
地域猫活動には、主に3つのメリットがあります。

  • ・野良猫の繁殖抑制と殺処分の減少
  • ・周辺地域の衛生環境悪化を防ぐ
  • ・猫の健康状態が保たれる

詳しく紹介します。

野良猫の繁殖抑制と殺処分の減少

犬猫殺処分
地域猫活動は、飼い主のいない猫に関する苦情や殺処分の減少に貢献する活動です。

環境省の資料では、殺処分された猫は約7,000匹と犬よりも数倍多く、そのうち60%が子猫となっていることがわかります。これは猫の繁殖能力の高さも関係していることが指摘されています。

こうした背景から、不妊・去勢手術を通じて繁殖を抑える地域猫活動は、野良猫の命を守るだけでなく、殺処分を減らすうえでも有効な手段であると言われているのです。

出典:環境省|統計資料 「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」

猫の殺処分については、以下の記事で詳しく解説しています。
>>【6割が子猫】猫の殺処分の現状は?処分数の多い都道府県や猫を救うためにできること

周辺地域の衛生環境悪化を防ぐ

野良猫が増えすぎると、フン尿の放置やゴミの散乱といった問題が深刻化し、地域の衛生環境に悪影響を及ぼします。

また、野良猫へ餌を与えることで、食べ残しが腐敗し、害虫の発生や悪臭の原因になることもあります。

地域猫活動では、餌の時間・量・場所を適切に管理し、トイレの清掃も行うため、こうした問題の予防にもつながります。

猫の健康状態が保たれる

地域猫活動では、衛生的な管理を徹底することで、寄生虫や感染症の発生リスクを減らし、猫の健康を守ることができます。

また、出産による大きな負担を抱える猫にとって、不妊・去勢手術は体への負担を抑え、健康に長く暮らしていくことにもつながります。

地域猫活動をする際の注意点

泥水を飲む野良猫
地域猫活動を行う際には、いくつか注意すべき点があります。

まず、食べ残しや腐敗を防ぐために、餌の放置は禁止です。

また、周囲とのトラブルを避けるためにも、トイレの設置や定期的な清掃を行い、地域の衛生を保つことが重要です。

さらに、猫が苦手な人や関心のない住民とも良好な関係を築くには、周辺住民と事前に合意を得たうえで活動を行うことが欠かせません。

地域猫活動は、猫のためだけでなく、「人との共生」を前提とした取り組みなのです。

野良猫へのむやみな餌やりがだめな理由については、こちらの記事でも解説しています。
>>野良猫への餌やりがダメな理由とは?適切な関わり方と地域猫活動も解説

地域猫のために私たちにできること

保護猫
地域猫のために私たち一人ひとりができることもたくさんあります。

  • ・保護団体へ寄付や物資支援を行う
  • ・地域猫活動のボランティアに参加する
  • ・SNSで地域猫活動について情報を発信する

詳しく紹介します。

保護団体へ寄付や物資支援を行う

地域猫活動を支えるには、保護団体への寄付や物資の提供が効果的な支援のひとつです。

地域猫のお世話には、キャットフードや猫砂、捕獲器、ケージなど、多くの物資が必要です。

さらに、不妊・去勢手術や病気の治療といった医療面にも費用がかかり、活動を続けるうえで大きな負担となっています。

こうした現場を支えるために、寄付や物資の提供は重要な支援となります。

寄付金は、現場でいま最も必要とされていることに活用され、活動の継続や猫たちの安全な暮らしに直接つながります。

また、物資の支援もすぐに役立てられる実用的なサポートになります。

どのような支援が求められているかは、団体に直接確認してみると良いでしょう。

地域猫活動のボランティアに参加する

地域猫活動のボランティアに参加すれば、猫たちに直接関わることができます。地域によっては、餌や片付け用品を入れるバッグの配布や、専門家によるアドバイスなど、積極的に支援している自治体もあります。

地域猫活動に興味がある人は、自治体や地域猫活動を行っているボランティア、動物愛護団体のホームページなどをチェックしてみましょう。

自治体の活動例については、環境省の資料でも確認できます。
出典:環境省自然環境局「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト:事例紹介」

SNSで地域猫活動について情報を発信する

SNSでの情報発信は、手軽に始められる取り組みのひとつです。

費用がかからず、地域猫活動を知らない人の目にも触れやすいため、活動への理解や参加者の増加も期待できます。

保護団体に関する情報を発信する際は、信頼できる団体やボランティアが発信している活動報告や寄付金の使い道などを確認し、正確で信頼性のある情報を広めることが大切です。

地域猫活動に取り組む動物愛護団体5選

野良猫の保護や地域との共生をめざす「地域猫活動」には、支援団体の存在が欠かせません。ここでは、野良猫を救うために日々活動している団体を5つ紹介します。

また寄付という形でこうした団体を応援することも、猫たちの命を守る力になります。各団体の活動内容や、NPOの専門家・gooddoマガジン編集部による注目ポイントも参考にしてみてください。

 

NPOの専門家:河合将生(まさお)さん
非営利団体の運営支援コンサルタント。寄付の講座を開催しその魅力を伝えている。
数々の団体の経営に携わりながら、自らもNPOに寄付を続ける。
※詳細なプロフィールは文末に掲載

公益財団法人どうぶつ基金:保護・避妊・啓発を通じて殺処分される猫を減らす

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どうぶつ基金
公益財団法人どうぶつ基金は、野良猫の繁殖を抑制するための無料不妊手術事業「さくらねこ活動」を中心に活動しています。また、多頭飼育崩壊の救済支援や保護猫の里親マッチング、動物愛護に関する普及啓発活動を通じて、人と動物が共生できる社会を目指しています。

35年以上の長い歴史があり、活動報告書や会計報告書を詳細に公開していることから、信頼性の高い活動実績を持つ団体です。殺処分ゼロを目指し、多様なボランティアが協力して取り組む点が大きな特徴です。

寄付アドバイザー河合さんの注目ポイント3つ!

  1. 無料不妊手術(TNR)という方法で殺処分をなくし、動物が人や自然と自由に幸せに共生することができる世の中をめざしている
  2. 広報とロビー活動を積極的に行い課題を発信している
  3. 行政や他団体、獣医師、ボランティアとの連携・協働により活動を広げている
寄付金控除の対象団体です

どうぶつ基金の口コミが知りたい方はこちら
>>どうぶつ基金は怪しい?活動実態や口コミ評判を調べてみた

ピースニャンコ(認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン):医療支援をもとに保護猫ボランティアをサポート

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ピースニャンコ

ピースニャンコは、保護猫ボランティアを医療面からサポートする活動を行っています。

自然災害や紛争の被災地支援活動を行う、特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパンが運営しているプロジェクトです。保護犬を支援するプロジェクトにはピースワンコがあり、既に蓄積されたノウハウがあります。

ピースニャンコでは、動物病院での診療費支援や不妊・去勢手術の費用援助を実施ピースワンコの譲渡センターを活用した医療支援を通じて、保護猫の健康管理をサポートしています。

保護猫ボランティアの負担軽減を図りながら譲渡促進にも取り組み、1匹でも多くの保護猫が新しい家庭で幸せに暮らせる未来を目指しています。

gooddoマガジン編集部の注目ポイント3つ!

  1. 不妊・去勢手術の費用や治療費の支援で、猫の殺処分を減らしている
  2. 災害時の緊急保護や医療支援にも対応し、猫の命を守る体制づくりに取り組んでいる
  3. 保護猫ボランティアと連携しながら、現場の声を反映した支援の仕組みを広げている
寄付金控除の対象団体です

保護犬を殺処分から救うピースワンコの口コミを知りたい方は、こちらをご一読ください。
>>【怪しい?】ピースワンコ・ジャパンの口コミ評判は?専門家に詳しく聞いてみた

特定非営利活動法人 犬猫みなしご救援隊:行き場のない犬猫専用の「終生飼養ホーム」を運営


一般家庭では飼養が困難な、引き取り手のない犬猫たちを積極的に保護し、命が尽きる時まで責任を持って育てる「終生飼養」や猫の譲渡活動、野良猫の不妊手術などを行っています。

動物と人間が共生できる明るい未来の実現を目指しています。

gooddoマガジン編集部の注目ポイント3つ!

  1. 障害や傷病を負っていたり、人になつかない野良犬や野良猫など、引き取り手のない犬・猫たちの受け皿として、犬猫専用の「終生飼養ホーム」を運営している
  2. 犬や猫だけでなく、ウサギ、鹿、ハクビシンなどの動物の引き取りも行っている
  3. オリジナルグッズの購入を通して、活動を応援できる。エコバッグ、Tシャツ、書籍、サーモスボトルなど種類豊富
寄付金控除の対象団体です

公益財団法人 日本動物愛護協会:人と動物が共に生きられる社会を目指す

動物愛護協会

幸せな動物を増やすため、犬や猫の譲渡会の開催、災害時の動物救援、動物愛護講座の開催を始めとした啓発活動、日本動物大賞・動物愛護表彰などを通した提言活動を行っています。

1948年に設立され、70年以上も動物愛護の活動を継続している歴史と実績のある団体です。

「今を生きている命は幸せに、不幸な命は生み出さない!」をスローガンとした活動を通し、人と動物が共に生きられる社会を目指しています。

gooddoマガジン編集部の注目ポイント3つ!

  1. 動物に関わる相談をメールや電話で受け付け、アドバイスを行っている
  2. 飼い主のいない猫の不妊去勢手術費用の助成を行い、人間の都合で不幸になってしまう猫を減らしている
  3. 1948年に設立され、70年以上も動物愛護の活動を継続している歴史と実績のある団体
寄付金控除の対象団体です

NPO法人犬と猫のためのライフボート:20,000頭以上の里親探しの実績あり

ライフボート
NPO法人犬と猫のためのライフボートは、保健所からの保護犬・猫の救命と譲渡を20年以上行う団体であり、今までに22,477頭の譲渡実績があります。

保護から医療、譲渡までを総合的にケアし、施設内には動物病院も併設。全国7か所の保健所と連携し、殺処分を防ぐ活動に取り組んでいます。

gooddoマガジン編集部の注目ポイント3つ!

  1. 動物病院の併設により健康面のサポートしている
  2. 長年にわたり里親探しの実績がある
  3. 幅広い地域で活動している

>>保護猫を殺処分から救いたい!おすすめの寄付先や信頼できる団体の選び方を紹介

耳カットは地域猫を守る「やさしいサイン」

保護猫 寄付
本記事は、地域猫やその活動について解説しました。内容をまとめます。

  • ・耳カットされた猫は去勢・不妊手術済みで、地域猫として見守られながら生活している
  • ・地域猫活動では安全な捕獲、不妊・去勢手術、元いた場所に戻すという3つのTNR活動が大切
  • ・ボランティアの他に、動物愛護団体への寄付や物資提供も効果的

地域猫活動は、行政・住民・ボランティアが協力して進める取り組みです。猫との共生を通じて、調和のとれた地域づくりを目指しています。

こうした活動を継続していくためには、多くの費用や物資が必要となるため、寄付という形での支援も大きな力になります。

あなたの街でも地域猫活動が行われているかを確認し、できることから一歩踏み出してみましょう。

▼保護猫活動の寄付におすすめの団体

団体名 寄付アドバイザー・gooddoマガジンの注目ポイント
どうぶつ基金 ・無料不妊手術(TNR)で殺処分をなくし、動物が人や自然と自由に幸せに共生することができる世の中をめざしている
・広報とロビー活動を積極的に行い課題を発信している
・行政や他団体、獣医師、ボランティアとの連携・協働により活動を広げている
ピースニャンコ 不妊・去勢手術や治療費の支援で、保護猫の命を守り、殺処分を減らしている
・災害時の緊急保護や医療支援にも対応し、猫の命を守る体制づくりに取り組んでいる
・保護猫ボランティアと連携しながら、現場の声を反映した支援の仕組みを広げている

寄付先の選び方ガイド:河合将生(まさお)さん

NPO組織基盤強化コンサルタント office musubime代表/日本ファンドレイジング協会・認定講師・関西チャプター共同代表・准認定ファンドレイザー

大学卒業後、国際協力分野のNGOにボランティアスタッフとして参加。その後、国際交流・協力分野の中間支援組織へのインターンシップ、職員を経て、office musubime (オフィス ムスビメ)を2011年7月に設立。
寄り添って伴走する第三者として、身近な相談相手や多様な人・団体をつなぐ役割を通し、組織診断・組織基盤強化、ファンドレイジング支援など、各団体の支援に取り組む。
国際協力や子ども/子育て支援、まちづくり分野、コミュニティ財団などの役員、大学の非常勤講師としてNPO論やボランティア論などの担当も。

この記事を書いた人
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