2009年に設立した「日本ファンドレイジング協会」では様々な活動を行っています。
日本ファンドレイジング協会の事業の一つである「社会貢献教育事業」は、寄付や支援に関心が高まっている今、より多くの人が知るべき活動の一つです。
ここでは日本ファンドレイジング協会で行われている社会貢献教育事業の内容を紹介します。
日本ファンドレイジング協会とは
日本ファンドレイジング協会は特定非営利活動法人として「寄付をもっと身近に!」をスローガンに活動しています。
ファンドレイジングとは、民間の非営利団体が活動のための資金を集めることを言います。
非営利団体にとって自主的に財源を確保・調達していくことは、円滑に事業を行う上で欠かせない課題です。
そして近年、自然災害や社会情勢などによって非営利団体や被災地への寄付に対する関心が高まってきています。
そこで協会では日本のファンドレイジングの課題を解決し、発展を阻害している要因を取り除き、2030年には「個人所得・企業活動・株式市場の1%が社会課題の解決のために循環する社会」を実現することを目指して活動しています。
「寄付」という行為が社会的にも心情的にも高く評価され、ファンドレイジング(資金調達)担当者は自信と誇りを持って仕事を行い、寄付者は幸福と満足を実感できる社会を創造していくことを目標としています。
そのために、ファンドレイジング担当者同士の交流や情報交換、日本の寄付市場データの整備、ファンドレイジング担当者の教育推進などを行っています。
同時にファンドレイジングに対する日本で唯一のカンファレンスを開催したり、「ファンドレイザー」の資格認定制度を導入することでNPO団体が活動に必要な資金を開拓する「ファンドレイジング」という概念を広めることも同時に行われています。
ファンドレイジングとは
日本では公益法人や特定非営利活動法人、大学法人、社会福祉法人などを含む「民間非営利団体」が、活動のための資金を個人や法人、政府などから集めることを指します。
社会貢献教育とは
日本ファンドレイジング協会が展開する社会貢献に関する教育プログラムには寄付に関するもの、ボランティア活動、その他の方法で社会課題に関係していくものなど様々なプログラムがあります。
そういった教育プログラムの中で子どもたち一人ひとりが社会の中で自分が誰かの役に立っている、誰かに必要とされている、社会の中で役割を果たしていくという自覚、自己肯定感を養います。
さらに社会貢献教育を通じて、教科の枠を超えて地域と学校の相乗効果が生まれるだけでなく、子どもの人格的な成長にもつながるのです。
社会貢献教育事業で行われている社会貢献プログラムについてそれぞれ紹介します。
寄付教育プログラムの一例
- 寄付の教室(日本ファンドレイジング協会)
- チャリティーチャレンジ・プログラム(日本フィランソロピー協会)
- あしなが学生募金(あしなが育英会)
寄付の教室
寄付とボランティアは個人ができる社会貢献の方法であり、諸外国では寄付教育が一般的に行われています。しかし日本ではほとんど寄付教育が行われていないことから、日本中のすべての小中学校・高校で寄付教育を実現するために行われているのが「寄付の教室」です。
教室に担当者が出向き、寄付とはどういう行動で、誰のためにどのように使われるか、また寄付をするにはどうするのかなど、寄付についてわかりやすく説明していきます。
ここで子どもたちに「自分の価値観によって支援する場所、する方法を選択する楽しさ」「支援するということで達成感を得るという感覚」を味わってもらい、社会のなかでの自分の役割を知ってもらいます。
社会課題を考える教育プログラムの一例
- 社会に貢献するワークショップ(日本ファンドレイジング協会)
- 新・貿易ゲーム(NPO法人開発教育協会)
- 世界がもし100人の村だったら(NPO法人開発教育協会)
- パーム油の話(NPO法人開発教育協会)
- 世界の飢餓を知り行動するための教材とワークショップ(NPO法人ハンガー・フリー・ワールド)
- 人権グローバル教育ワークショップ(NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン)
- 夏の体験学習ボランティア(社会福祉法人東京ボランティア・市民活動センター)
※「平成26年消費者教育教材資料表彰」優秀賞受賞プログラム
社会に貢献するワークショップ
2015年5月に日本ファンドレイジング協会が出版した『社会に貢献する Youth Philanthropy in Global Community』を元にしたワークショップ型プログラムです。
社会貢献について、国際社会でも通用する柔軟で幅広い考え方を鍛えることを目的に作成されています。
掲載されている4つのショートストーリー(豪雨の翌日、自信を失ってしまった、事故を境に、ある日突然)を通じて、また自分の実体験を友人と話すことで、社会の様々な課題を自分の身近にも起きうることとして考えてもらうことが最初の目標です。
社会貢献や社会の課題に参加することについて、多角的な視点から情報が学べます。
お金と人生を考える教育プログラムの一例
- 金融基礎教育「MoneyConnection」(NPO法人育て上げネット)
- カタリ場(NPO法人カタリバ)
- ライフプランニング授業(ソニー生命保険株式会社)
- ハッピー・マネー教室(I-Oウェルス・アドバイザーズ株式会社)
子どもたちは、お金がどういった意味を持つのか、どのように社会を循環しているのかなどあまり深く理解していません。
ここではお金の持つ意味や役割、流れなどをシンプルにわかりやすく説明します。
海外の社会貢献教育プログラム
- Learning To Give(Learning TO GIVE)
- Learning by Giving(Learning by Giving Foundation)
- Youth in Philanthropy[Making World of Good](Association of Fundraising Professionals)
本プログラムは、米国Learning by Giving Foundationの協力の元、日本独自のプログラムを作成し日本ファンドレイジング協会が提供しています。
プログラムやワークショップの詳細
先述した社会貢献プログラムのなかから、代表的なものについて詳しく紹介します。
寄付の教室
「寄付の教室」は大掛かりな準備や設備が必要なく行うことができる体験学習型プログラムです。
これまでに250教室以上で実施されており、参加した人数8,000名以上に及びます。
ここでは子どもたちが社会課題を知り、自分にできることは何か、自分の価値観で社会にどのような役割が果たせるか、人それぞれの価値観とはどういったものかということをわかりやすく学ぶことができます。
基本プログラム「90分モデル」
基本プログラム「90分モデル」は、寄付の模擬体験をする教室内授業(45分×2コマ)となり以下の内容で構成されています。
アイスブレイク | 「NPOってなんでしょう?」でNPOと寄付について学ぶ |
NPOの活動紹介 | ビデオとプレゼンで複数の団体を知る |
個人ワーク |
「個人でどの団体を応援したいですか?」 模擬紙幣で寄付先を選ぶ |
グループプレゼン | 各グループの発表を聞き、違いについて意見交換をする | 寄付体験の共有と学びについて共有する |
フォローアップ学習 |
書き損じはがき集めや、チャリティコンサートの開催など、 生徒主体の寄付集めの実践体験の実施など |
社会に貢献するワークショップ
2015年5月に日本ファンドレイジング協会が出版した「社会に貢献する Youth Philanthropy in Global Community」を元にしたワークショップ型プログラムです。
こちらでは国際社会でも通用するような幅広い知識、考え方を持つことを目的に作成されたもので、4つのショートストーリーから成り立っています。
その4つは「豪雨の翌日、自信を失ってしまった、事故を境に、ある日突然」で、これらのショートストーリーを通して自分のしてきた体験を話し合うことで社会で起こっている問題や課題を自分の身近なものとして考えることができるようになっています。
基本プログラム「45~50分モデル」
アイスブレイク |
「部屋の四隅アクティブクイズ」で社会貢献について学ぶ ※『社会に貢献する』の中から出します。 |
社会貢献って? |
「寄付とボランティア、人に役立った経験はある?」、 著名人のビデオメッセージ |
個人ワーク | ここまでで社会貢献ってどんなイメージ |
全体ワーク |
身近な社会課題を考える。4つの社会課題(災害・不登校・子どもの貧困・難病) のショートストーリーの中から一つを選んで、 困難な状況になったときのことを想像し考える |
振り返り学習 |
自分はどんな課題に関心があるか、それはなぜかを考え、 寄付・ボランティア・社会貢献を自由に表現してみる |
参加した子どもたちや先生の声は?
これらのプログラムに参加した子どもたちや先生からは以下のような声が挙がっています。
私みたいなごく普通の一般人には社会は動かせないと思っていたので、最後の「あなたが共感し応援したい活動に参加することで社会は変わります」というのがすごく心に残った。
表面的に見るだけでなく、「こうやったらこうなる」「これをやったらいいよね」とグループで考えることで、日本で活動している団体から応援してみようと思った。
今回の授業はいっぱいもめたし、協力することも多かったのでよかったと思います。それにみんな1人ずつちゃんと意見をいえていたのでよかったと思います。
今まで全く知らなかった何かを守る団体がたくさんあるということが知れたのでよかったです。機会があれば自分が良いと思う団体に参加したいと思いました。
寄付という行為を、生徒自ら出来ること(社会参加)の1つとして意識づけられたと思います。また、寄付によって具体的に何が出来るか理解できたのではないでしょうか。他の人と価値観を共有することもでき、学びが多い授業でした。
個別に考える時間と、グループで考える時間がある等プログラムも工夫されており、参加型の討議にも移りやすかったように思います。NPOの映像資料のメッセージ性が高く、生徒にも活動内容が分かりやすくてよかったです。
といった声が上がっています。
社会貢献教育をもっと日本に広めよう
日本では寄付に対しての関心は高まってきているものの、まだまだその具体的な方法や寄付の活用のされ方については知らない人が多いのが現状です。
また、日本ファンドレイジング協会が行っている社会貢献教育では具体的にどういったことが行われているかを広めるための活動も行われています。
そこでまず社会貢献教育を知り、どういった方法があるのかを理解することが支援の一歩となるでしょう。